【長編/佐野万次郎】オレンジの片割れ
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武道は松野や龍宮寺、その他の東卍幹部たちととあるファミレスにいた。
八戒を救う為、黒龍を潰すと言う決意を敷いた武道は、龍宮寺たちに事のあらましを話した。
「あ?それで黒龍と揉める?」
「はい!」
武道は龍宮寺のその問いかけに、真剣な眼差しで答えた。
「ふざっけんなよテメェ。“殺す”なんて俺は百万回言ってるわ!」
「そんなんで人殺してたら地球終わんぞ、バカヤロー」
「殺すぞタケミッチ!あ、ほらまた言った!」
「とにかく、八戒が大寿殺す為に黒龍潰すなんて却下!」
武道の話を聞いたナホヤと武藤は、まともに取り合わずそう言った。
けれど、無理もない。
あの残酷な未来を知っているのは、武道だけだ。
八戒が大寿を殺すのを阻止する事が、未来を変える事に繋がるなんて誰一人知らないのだから。
「どう思うよ?ドラケン」
「んー、却下」
ナホヤにそう問いかけられた龍宮寺も、同じく武道の提案を受け入れる事はなかった。
「タケミっち、お前らにも何か思うところがあるのかもしんねぇけど、お前らは三ツ谷の約束した和平もぶっ壊すつもりか。三ツ谷の顔に泥を塗る行為だぞ」
龍宮寺の言う事は、最もだ。
三ツ谷も自分の守りたいものを守る為、和平を結んだのだ。
ここで武道たちが黒龍を潰してしまえば、三ツ谷の気持ちを踏み躙る事にもなってしまう。
龍宮寺のその言葉に、武道は何も言えなくなってしまった。
「話は終わりだ!」
黒龍を潰すのは、却下。
そう結論が出ると、龍宮寺や他の幹部たちはファミレスを後にしていった。
武道と松野の二人だけになると、松野は徐にその口を開く。
「三ツ谷くんの顔に泥を塗る…確かになぁ。うまくいかねえもんだなぁ、タケミっち」
「千冬…こうなったら、俺ら二人でやるしかねぇよな」
深刻そうな表情を浮かべながら、武道がそう呟く。
するとそんな武道の背中に、誰かが声をかけた。
「俺も交ぜろ」
武道が振り向くと、そこに立っていたのは稀咲だった。
「え!?稀咲!?」
「俺と組まねえか」
予想外の稀咲の言葉に、武道の口からは?と困惑の声が零れ落ちる。
「俺も、八戒を止めたい」
「見え透いた事言ってんじゃねぇぞ、コラ!」
松野は立ち上がると、そのまま稀咲に詰め寄り声を荒げた。
「俺らがテメェらと組むわけねぇだろうが!」
「………じゃあどうすんだ?」
けれど、稀咲は冷静な様子でそう言い、更に言葉を続けた。
「三ツ谷が黒龍と交わした和平協定がある限り、他の東卍幹部は絶対黒龍相手に争わない。かと言ってお前ら二人で潰せる程、黒龍は甘くねぇ。………今マイキーは弱ってる。最近力をつけてきている黒龍をここで潰しておきたい」
店内に、ガラスが割れるパリンという音が響く。
松野は割れたグラスの破片を手に持ち、それを稀咲の首元へ突きつけた。
「“マイキー”じゃねえだろ!?“マイキーくん”な!?いくら隊長でもテメェは俺らとタメなんだ。調子こいてんじゃねぇぞ」
「千冬…」
松野のあまりの迫力に、武道はただ呆然とその光景を見ていた。
その時、武道の背後から誰かがカトラリーのナイフを突きつける。
「オイオイ、内輪揉めは御法度だろ?」
「半間!?」
「テメェらが破んなら、俺も暴れちゃうぞ」
半ば人質に取られたような武道を見て、松野は舌打ちをしながら稀咲に突きつけたガラスの破片を下げた。
そして、冷静な声色で稀咲に問いかける。
「………俺らがテメェらと組むメリットは?」
「黒龍の中に、内通者がいる」
稀咲のその言葉に、武道は思わず息を呑んだ。
「時間を無駄にするのは嫌いだ。ついてこい」
武道と松野は稀咲に連れられ、とあるカラオケボックスの一室へとやってきた。
そこには稀咲が言っていた、内通者と思われる者がいた。
「絶対バレねぇようにしてくれよな。バレたら俺の命ねえからさ」
「大丈夫だ。ここにいるメンバーは絶対口外しねぇ。それより分かったのか」
稀咲がそう問いかけると、内通者は恐る恐ると言った様子で話し始めた。
稀咲が知りたかった情報は、大寿の1日の動きだ。
何時にどこで何をしているのか、それが分かればその人物がどんな人間なのかが分かると稀咲は言う。
更に相手を知れば、攻略も楽になるという訳だ。
「まず総長は…」
するとその時、突然扉が開き九井が中へ入って来た。
「なんだこの部屋!ラット臭ぇな!」
「ココくん…」
九井の姿を見て、内通者は顔を青くした。
いとも簡単にバレてしまっていた事に武道や松野だけでなく、稀咲も険しい表情を浮かべる。
「この前のラット、可哀想だったな。耐えられなくて自殺したっけ」
九井の渇いた視線で見下ろされた内通者は、顔中に冷や汗を滲ませながら言い訳を並ようと口を開く。
「ちっ違うんすよココくん。俺はただ…」
「拷問決定〜!」
九井は無慈悲な笑みを浮かべながら、内通者へそう告げた。
九井は一緒に来ていた取り巻きたちに、内通者を連れて行くように言いつける。
内通者は涙を流しながら、あっという間に連れて行かれてしまった。
内通者の姿が見えなくなると、室内はシンと静まり返る。
「さて、どうする?」
九井は不気味な笑みを浮かべて、そう問いかけた。
あまりの不気味さに、武道はゾクッと身体を震わせる。
「争う気はねぇよ」
稀咲がそう言うと、九井はつまらなそうな表情を浮かべた後、テーブルの上に置かれた万札の束に視線を落とす。
そして、徐にその口を開いた。
「10万だ」
「え?」
「10万で、テメェらの知りてぇ事を教えてやる」
稀咲は黙ったままテーブルの上に置かれた10万円を、九井に手渡した。
「大寿が一人になる時が知りてぇ」
「………ボスが一人になる事はない。常に兵隊を5人連れてる。1日を除いてな」
「それはいつだ?」
「クリスマスだ。ボスはああ見えて熱心なクリスチャンでね、クリスマスの夜は毎年教会に礼拝に行く。必ず一人でね」
「なるほど」
九井の話を聞いた稀咲は、納得した様子でそう言った。
それを見た九井は少々不満げな表情を浮かべながら、それだけか?と問いかける。
「ああ、十分だ」
「たとえ一人でもボスは強ぇぞ。テメェら4人で勝てんのか?クリスマスが楽しみだな」
九井はそう言いながら、ドアノブに手をかけた。
部屋を出ようとする九井を引き止めるように、武道はその背中に声をかける。
「なんで大寿くんを裏切るんスか?」
「…俺はただ強ぇ奴が好きなだけだ。もっと知りたきゃ、あと10万用意しな」
そう言って、九井は去って行った。
「黒龍も一枚岩じゃねえって訳か」
「…タケミっち、俺は大寿を襲う為だけに一人になる時を知りたかった訳じゃねぇ」
「え?」
「八戒が大寿を殺すって言ったな?」
殺すならいつだと、稀咲に問いかけられた武道は思考を巡らせた。
そして、ある可能性が浮上する。
八戒が大寿を殺すのは大寿が一人になる時、つまりクリスマスの夜だ。
「これで八戒を止められるな?」
「…稀咲、その為に動いたのか?」
「仲間を助ける為に動いて何が悪い」
稀咲は真顔のまま、そう言った。
けれど拭きれない違和感から、稀咲が何かを企んでいるのは武道にもすぐに分かった。
「ここにいる4人で八戒を止めて大寿を潰す!クリスマスの夜の隠密決戦だ」
武道は何も言わず、ただ稀咲を真っ直ぐ見ていた。
その目はまるで稀咲の真意を見透かそうとするような、鋭い目だった。
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