再びここから始める頃に

▼十希夫目線











意識が浮上する。

「、」

力を入れた右手に鈍い痛みが走った。
自分が喧嘩中だったと気付く。
瞼の腫れを感じながら目を開ける。
暗闇の中誰かが立っている姿がぼんやりと映った。
その人が振り向く。
少し乱れた髪を撫で付け、口端を上げた。右目の上に血が滲んでいるから何発かはもらったのだろう、うっすらと汗も滲んでいる。

「もらったんすか」
「7発、」

煙草をくわえ、不満そうに言った。




・・・・・・




俺と軍司さんが学校を出たのが4時半。
適当にバカな話をしながら歩いていた。
と、いつものトンネルに差し掛かったところで前から集団が現れた。

「軍司さん」
「あぁ」

すぐに後ろからも現われ、挟まれる形となる。

「岩城と原田だな」

向こうのボスらしき人物が口を開いた。

「何だお前ら」
「この間河川敷で後輩が世話になってな」
「河川敷…?」

軍司さんに覚えがないのも当然だ。
あの時はべろべろに酔っ払った軍司さんを迎えに行って絡まれたのだから。

「河二か、お前ら」

軍司さんに代わって問うとそのボスらしき人物が手を上げた。
それが合図となり、集団が動き出した。




・・・・・・・・・・・・・




「いつまで休んでんだ」
「…すんません」

足に力を入れて立ち上がるものの背は壁に預けたまま。頭を殴られたらしい、ガンガンと痛みが走っている。
足元に転がる男の数を数えた。

「18…か」
「歩けるか?」
「そう、すね」

5,6人は片付けた記憶がある。途中で意識を失ってしまったらしい。
情けないが、その後の喧嘩がどんなものだったかは分からない。

「12?」
「あ?」
「軍司さんが倒した数」
「数えちゃねーよ」

別にこの人にライバル意識があるわけではない。
けれど時折無性に嫌になる。
自分との力の差に。
こんなにも近くに居るのに、背中が遠い。

「もう来ねーだろ」

確かに、これだけ完膚なきまでにやられれば復讐する気も起きないだろう。

「歩けるか」

頭の傷だからと医者へ行くように促され、俺たちはその場を後にした。

























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