頬をつたう砂糖水の行方(改)
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「原田!」
昼休み、生徒が交錯する購買付近で生徒に声を掛けた。戦場のようなそこから出てきた様が目に留まった。
「?」
「大丈夫?」
今日は夏を感じさせるような暑い日だ。なんだかふらふらしているように見えたのもあり声を掛けた。
「え、あぁ、はい。」
「おいで」
手を引いて保健室に引っ張る。
「あ、ちょっと…!」
「熱中症かもな」
暑さに慣れてないこの時期、熱中症になりやすい。夜遅くまでテスト勉強でもしてるの?と冗談まじりに言うとテストの為に勉強なんてしないと返ってきた。
エアコンの効いた保健室で、氷嚢を使って渡しベッドの上に寝かせる。
「しばらく寝てて、次の授業は何?先生に連絡しておくね」
「あー、授業はいいんで、軍司さんに連絡してもらえませんか、」
「岩城に?」
「呼ばれてるんすよ、携帯で連絡しようにも繋がらなくて、」
「わかった。行ってくるね」
「あ、美術室か屋上だと思います」
そう言うと原田は素直に目を閉じた。…クラスに居るんじゃないのね。
ガラッと美術室のドアを開ける。特別教室の棟にあるその教室は賑やかなA棟などとは違い静まり返っていた。
「岩城居る?・・・・あ、」
目先には岩城が机に伏せて寝息を立てている。カーテンがヒラヒラと舞っていた。ここは風が通るんだなぁ。美術室特有の絵の具の匂い。大きな木製の机を回り、岩城の近くに寄って声を掛けた。
「起きないな、」
隣りの椅子を引いて腰を下ろした。カタン、と音を立てたが岩城には届いていないようだ。
こうして見るとやはり高校生だと思う。実は同い年くらいに感じる時もあったが、比べるとやはり幼い。少ししたら起こそうと時計を見る。すやすやと眠る姿を見て自分も眠気に誘われる。一つあくびをして岩城と同じように机に突っ伏した。
ふわ、と気配がして目を開ける。
「あ、悪ぃ、起こしちまったな」
「…どれくらい寝てた?」
岩城が傍に立っていて、煙草の香りが鼻を掠めた。
「俺もさっき起きたところだからなぁ、でも今2時だぜ?」
自分が来たときから10分程。
「用事は?」
「え?」
「なんか用があったから来たんじゃねぇのか?」
「あぁ、原田が、」
忘れるところだった。
「十希夫?」
「保健室に寝かしてるんだけど、岩城に連絡して欲しいって。少し寝たら良くなるだろうから心配は要らないと思う。携帯繋がらないって言ってたよ」
「あぁそうか、世話掛けたな、」
まるで身内の様な言い方だな、と不思議に感じた。言わずとも伝わってしまったのか、岩城がそれに答えた。
「ガキの頃からの付き合いだからな。ゆっくり休めっつっといてくれるか」
「伝えとくよ」
背伸びをしてふと見ると、机の上に教科書とプリントがあることに気がついた。
「えらいね、授業はサボっても勉強はちゃんとしてるんだ」
「これか?六限の数学の宿題なんだよ。これやっときゃ今度のテストで五点くれるっつーんだ」
十希夫を頼りにしてたんだけど自力でやるしかねーと笑った。少し前に勉強を教えてくれと泣いて頼んできた小林を思い出した。
「どれ、見せて」
「あ?数学なんか出来んのか?」
「これでもちゃんと大学卒業してるのよ」
そう言うとじゃあ、と言って岩城が隣に座った。書きかけてある解答は落書きではないだけ小林の解答よりはまともだ。
「途中まで出来てるじゃない」
「分かんねー、なんとなく教科書に書いてあるようにやってみただけだからよ」
「それでいいよ、そのままやってみて」
教科書を開いて取り組み始める。ペンで頭を叩いたり、回したり、教科書とプリントとを往復してみる岩城。その様子を見て笑ってしまった。
「…んだよ、」
「いや、一生懸命なのが可愛いなと思って」
そう言うと少し拗ねたような顔をした。
「分かんねーんだもんよ」
「ごめんごめん、ここは……」
解き方を少し教えるとそこからはスムーズにペンを進めた。やれば出来るじゃない、と言ったらやらないから出来ねぇんだよと至極まともな答えが返ってきた。
岩城のプリントに目処がついたところで保健室に戻った。原田は大人しく寝ていたようで、カーテンを開けて顔色を見る。
「気分はどう?」
気配に気付いて目を開けた原田に尋ねた。
「大分よくなりました」
体を起こしてベッドを降りた。
「もういいの?ゆっくり寝ていっていいよ?」
大半の生徒はいい加減にしろと言いたくなるほど寝ていくというのに。
「あんま授業サボると面倒なんで」
そんな風に考えている生徒も居るんだな、と感心した。
「あ、岩城には言っといたよ」
「なんか言ってました?」
「ゆっくり休めって」
その言葉を聞いた原田が嬉しそうだったのは見逃さない。仲いいんだな。そう言うとガキの頃からの付き合いですから、と岩城と同じ言葉が返って来たので驚いた。
そしてきちんと礼を言って出て行く。原田みたいな生徒ばかりだと鈴蘭ももう少し平和なのにな。きちんと閉められた扉を見ながらそう思った。
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