頬をつたう砂糖水の行方(改)
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今日も新しい一日が始まる。
外はあいにくの雨。6月に入ってここのところ毎日雨だ。学校内がじめじめしている。職員室で朝の会議を終えると保健室の掃除をする。普通の学校だったら掃除の時間に生徒達が交替で掃除にきてくれるのだが、ここ鈴蘭では一度もない。それどころか自分たちの教室でさえまともに掃除してない。一応掃除の時間のアナウンスは流れるものの、それに従っている様を見たことがない。最初は注意していた自分も今では見切りをつけ、保健室以外にも順番に各階トイレなどを中心に掃除をして回るようにしている。
そういえば、岩城に校内で初めて会ったのは美術室だった。校舎内の点検・整備は前の学校でも時々行っていた。だから初めてこの学校の中を見回ったときは唖然とした。落書きだらけの壁、ほとんどの教室にはガラスがない。トイレなど目のつかないスペースに吸い殻。とんでもないところに来てしまったと認識した。そんな中他の教室とは少し違ったのが美術室だ。ポスターや彫刻などは破損しているものの、床は掃除されているようだった。美術の先生がちゃんとしているのか、誰だっけと考えていると教室の扉が開いた。
「誰だ?」
入ってきた岩城は私を怪訝な様子で見た。
「なんで女がいる?」
「私はここの養護教諭だよ」
岩城さん、と付け加えると目を丸くした。
「アンタ、あん時の…?」
あの時の岩城の反応ったらなかったな、思い出しながら笑ってしまう。さて、と保健室の掃除も終えたところで書類の整理を始めた。健康診断の準備やらで何かと溜まっているのだ。しかしここの生徒は大人しく健康診断をしてくれるのだろうか。一抹の不安が過ぎる。
書類を片付けていると、突然勢いよく扉が開いて生徒が入ってきた。その生徒は二年の神戸。私が鈴蘭に勤務して初めて手当てした人物だ。誰にやられたかは言わなかったが、喧嘩をしたようだった。
「どうした神戸。どこか痛むの?」
「あー…、いやー…手首が、ちょっと…」
どこか歯切れの悪い返事が気になったが、とりあえず手首を見せて貰う。今日は湿気も多い。怪我したところが痛むのかもしれない。
「痛い?」
手首を曲げ伸ばしして状態を見る。骨は大丈夫そうだ。どうすると痛むのか聞こうと神戸の顔を見ると、顔が赤くなっていた。
「そんなに痛い?」
「…ゆりちゃんは、か、彼氏とかおるんか?」
え?
「彼氏?いないけど」
隠すことでもないので普通に答えた。
「マ、マジか?」
「うん……って、神戸?」
答えるや否や、神戸は保健室を飛び出して行った。恋愛絡みの相談だったのかな。話を聞いてあげられずに悪いことをした。顔を真っ赤にして、勇気を出して話そうとしてくれたのかもしれない。何も言わず飛び出していった神戸のことを考える。
(そんなゆりの心配を余所に、その扉の向こうで神戸はガッツポーズをして喜んでいたのであった。)
・・・・・・・・・・・
「今日は静かになりそうですね」
職員室から保健室に向かう廊下で男性教師が声を掛けてきた。
「どういうことですか?」
どこかと揉めてるらしいですよ、と並んで歩く。
「生徒が少ないでしょう、こんな時学校は平和なんです」
「へぇ、そうなんですか」
この学校の平和がどんなものか計りかねるが、平和なのはいいことだと思った。―――と、ふいに包帯を巻いた生徒の姿が目に入る。
「っ岩城?!」
顔も痣だらけ、腕に包帯を巻きボロボロの状態だった。
「どうしたの、それ、」
近寄って尋ねる。
「…転んだだけですよ」
「嘘!そんな怪我で…っ」
それ以上追求するなという鋭い目線に何も言えなくなる。
「どうせ喧嘩だろ、岩城。お前世間様に迷惑掛けるなよ」
男性教師が言う。
「喧嘩ばかりしてないで、少しは…」
「そんな子じゃないですよ」
くどくどと厭味なのか説教なのか分からないことを言い出す教師に思わず言い返してしまった。
「…ゆり先生?」
「この子は世間に迷惑を掛けるような子じゃないです。」
確かにやんちゃで喧嘩はしているかもしれないが、ちゃんと分別を持ってしている。短い付き合いでもそれは分かる。
「何を言ってるんですか、」
明らかに不満そうだが、知ったことではない。自分の生徒をそんな風に言うなんてどうかしてる。
「岩城くんに失礼でしょう、」
男性教師も譲る気はない様で険悪な雰囲気になった。それでも引き下がれない。教師が生徒にそんなことを言っていいはずがない。
「―――##NAME2##先生、」
と、そんな雰囲気を壊して別の声が割って入った。
「そんな律儀に約束守ってくれなくてもいいっすよ」
「…?」
「この前先生がゲームで負けたから、何かあった時にはフォローして下さいってお願いしてたんすよ」
男性教師に向けて言っている。
「あぁ、そういうことですか。そんなことしなくていいんですよ、ゆり先生。それにしても岩城、お前は先生に対してなんてことを言うんだ」
「ちが…」
「スイマセン、冗談のつもりだったんすけどね」
「あ、授業の準備がまだだった。先生、失礼しますね」
と言って男性教師は去っていった。廊下には私と岩城が残された。
「あんなの放っときゃいいのによ」
「…違うものを違うと言っただけだよ」
「そんなんであんたの仕事やりにくくしてもしょーもねぇだろ、」
「……」
「##NAME2##?」
「私は自分が正しいと思ったことをするよ」
尊敬するあの先生のようにありたい。それでも助かった。岩城の言葉で多分私とあの先生の関係はややこしいことにはならなさそうだ。少し冷静になったその頭でそう考えた。
「軍司!」
米崎に呼ばれ、岩城が背を向けた。米崎もまた見過ごせない怪我をしていた。2人は自分には聞かれないように話し、そのままその場を去っていく。
(翌日、天狗の森で決着をつける事が決まった)
→
外はあいにくの雨。6月に入ってここのところ毎日雨だ。学校内がじめじめしている。職員室で朝の会議を終えると保健室の掃除をする。普通の学校だったら掃除の時間に生徒達が交替で掃除にきてくれるのだが、ここ鈴蘭では一度もない。それどころか自分たちの教室でさえまともに掃除してない。一応掃除の時間のアナウンスは流れるものの、それに従っている様を見たことがない。最初は注意していた自分も今では見切りをつけ、保健室以外にも順番に各階トイレなどを中心に掃除をして回るようにしている。
そういえば、岩城に校内で初めて会ったのは美術室だった。校舎内の点検・整備は前の学校でも時々行っていた。だから初めてこの学校の中を見回ったときは唖然とした。落書きだらけの壁、ほとんどの教室にはガラスがない。トイレなど目のつかないスペースに吸い殻。とんでもないところに来てしまったと認識した。そんな中他の教室とは少し違ったのが美術室だ。ポスターや彫刻などは破損しているものの、床は掃除されているようだった。美術の先生がちゃんとしているのか、誰だっけと考えていると教室の扉が開いた。
「誰だ?」
入ってきた岩城は私を怪訝な様子で見た。
「なんで女がいる?」
「私はここの養護教諭だよ」
岩城さん、と付け加えると目を丸くした。
「アンタ、あん時の…?」
あの時の岩城の反応ったらなかったな、思い出しながら笑ってしまう。さて、と保健室の掃除も終えたところで書類の整理を始めた。健康診断の準備やらで何かと溜まっているのだ。しかしここの生徒は大人しく健康診断をしてくれるのだろうか。一抹の不安が過ぎる。
書類を片付けていると、突然勢いよく扉が開いて生徒が入ってきた。その生徒は二年の神戸。私が鈴蘭に勤務して初めて手当てした人物だ。誰にやられたかは言わなかったが、喧嘩をしたようだった。
「どうした神戸。どこか痛むの?」
「あー…、いやー…手首が、ちょっと…」
どこか歯切れの悪い返事が気になったが、とりあえず手首を見せて貰う。今日は湿気も多い。怪我したところが痛むのかもしれない。
「痛い?」
手首を曲げ伸ばしして状態を見る。骨は大丈夫そうだ。どうすると痛むのか聞こうと神戸の顔を見ると、顔が赤くなっていた。
「そんなに痛い?」
「…ゆりちゃんは、か、彼氏とかおるんか?」
え?
「彼氏?いないけど」
隠すことでもないので普通に答えた。
「マ、マジか?」
「うん……って、神戸?」
答えるや否や、神戸は保健室を飛び出して行った。恋愛絡みの相談だったのかな。話を聞いてあげられずに悪いことをした。顔を真っ赤にして、勇気を出して話そうとしてくれたのかもしれない。何も言わず飛び出していった神戸のことを考える。
(そんなゆりの心配を余所に、その扉の向こうで神戸はガッツポーズをして喜んでいたのであった。)
・・・・・・・・・・・
「今日は静かになりそうですね」
職員室から保健室に向かう廊下で男性教師が声を掛けてきた。
「どういうことですか?」
どこかと揉めてるらしいですよ、と並んで歩く。
「生徒が少ないでしょう、こんな時学校は平和なんです」
「へぇ、そうなんですか」
この学校の平和がどんなものか計りかねるが、平和なのはいいことだと思った。―――と、ふいに包帯を巻いた生徒の姿が目に入る。
「っ岩城?!」
顔も痣だらけ、腕に包帯を巻きボロボロの状態だった。
「どうしたの、それ、」
近寄って尋ねる。
「…転んだだけですよ」
「嘘!そんな怪我で…っ」
それ以上追求するなという鋭い目線に何も言えなくなる。
「どうせ喧嘩だろ、岩城。お前世間様に迷惑掛けるなよ」
男性教師が言う。
「喧嘩ばかりしてないで、少しは…」
「そんな子じゃないですよ」
くどくどと厭味なのか説教なのか分からないことを言い出す教師に思わず言い返してしまった。
「…ゆり先生?」
「この子は世間に迷惑を掛けるような子じゃないです。」
確かにやんちゃで喧嘩はしているかもしれないが、ちゃんと分別を持ってしている。短い付き合いでもそれは分かる。
「何を言ってるんですか、」
明らかに不満そうだが、知ったことではない。自分の生徒をそんな風に言うなんてどうかしてる。
「岩城くんに失礼でしょう、」
男性教師も譲る気はない様で険悪な雰囲気になった。それでも引き下がれない。教師が生徒にそんなことを言っていいはずがない。
「―――##NAME2##先生、」
と、そんな雰囲気を壊して別の声が割って入った。
「そんな律儀に約束守ってくれなくてもいいっすよ」
「…?」
「この前先生がゲームで負けたから、何かあった時にはフォローして下さいってお願いしてたんすよ」
男性教師に向けて言っている。
「あぁ、そういうことですか。そんなことしなくていいんですよ、ゆり先生。それにしても岩城、お前は先生に対してなんてことを言うんだ」
「ちが…」
「スイマセン、冗談のつもりだったんすけどね」
「あ、授業の準備がまだだった。先生、失礼しますね」
と言って男性教師は去っていった。廊下には私と岩城が残された。
「あんなの放っときゃいいのによ」
「…違うものを違うと言っただけだよ」
「そんなんであんたの仕事やりにくくしてもしょーもねぇだろ、」
「……」
「##NAME2##?」
「私は自分が正しいと思ったことをするよ」
尊敬するあの先生のようにありたい。それでも助かった。岩城の言葉で多分私とあの先生の関係はややこしいことにはならなさそうだ。少し冷静になったその頭でそう考えた。
「軍司!」
米崎に呼ばれ、岩城が背を向けた。米崎もまた見過ごせない怪我をしていた。2人は自分には聞かれないように話し、そのままその場を去っていく。
(翌日、天狗の森で決着をつける事が決まった)
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