君中毒



ドン、と一発
後頭部に入れられたと思うと本城さんの体が力無く倒れ込んだ
そして流れるような動作で抱えられ
止める間も無く光の無い路地に連れ込まれていった

「何しやがる!!」

慌てて追いかけたが突然の暗闇で目が慣れない
何も見えなかった

探るようにゆっくりと前へ進んだ




「…わしら今物足りひん仕事の後で気が立ってんねん」

闇に紛れて背後から声だけが静かに響いた

「動いたら殺す、声を出しても殺す」
「ふざけ……!!」

背中に当たる鋭利な感触、
そして少し慣れてきた目で見えたのは
横たわる本城さんとその横に佇む男の
光の無い目だった




















「指の一本でももろとくか」

ス、と男の手にナイフが握られた

「……っ!!」
「どうした?ボウズ、真っ青やぞ?」

男達が音無く笑う

自分でもはっきりと感じる程体が震えた

「ど・れ・に・し・よ・う・か・な」

歌うように指を選ぶ

それはカウントダウンの様に
じわじわと俺を追い詰めた



















「よし、人差し指やな」










本城さんの指にナイフがそっと添えられた時
全身がドクンと大きな音を立てた

瞬きをするのも忘れてその様子を凝視する

吹き出た汗が頬を伝って落ちた
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