君中毒



「喉仏、肋骨、肝臓、」




















相手の男の指がゆっくりと、
辿るように本城さんの体を押さえた

「人体に急所がいくつあんのか知ってるか?ボウズ、」

男が口の端を上げてこっちを見る

「口の聞き方には気ぃつけぇ。この場でお前ら殺ってもうてもいいんやからな」

その、感情の無い眼に寒気を覚えた

関西弁のその男は
ただの脅しを言っているようには見えない
体の芯から震えた
軍司の頭の中で警鐘が鳴り響く












































事の発端は俺達にあった



「おい、」
「あ?」
「ぶつかっといて何も無しか?!」

俺と二人で並んで歩いていた本城さんが
唐突に振り向いて肩を掴んだのは黒尽くめの男二人組だ

普段なら当たったくらいで何も言わない
ただこの時は酒を飲んで気が大きくなっていたんだ
正面から歩いてきた二人組と
お互い道を譲ることなく
肩がぶつかって絡んでしまった

「本城さん、」

一応名前を呼んで止めてはみるが
こうなった本城さんが俺の言うことなんか聞かないのは分かっている
俺はただ本城さんが絡んでいるのを呆れて見ていた
この時俺が力ずくでも止めておけばよかったんだ
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