君中毒



スーツを来たサラリーマンがぽつぽつと駅に向かい始めた頃
ポンはあるビルの前に居た
作業着のままのその姿は些かその街並みに不釣合いだったが
それを気にすることもなく佇んでいた
ある男を待って、
その男が現れるまで何時間でも待つつもりでいた

「村田、ちょい顔貸せ」

一刻は経っただろうか
何本目かの煙草に手を付けたところで待ち人が姿を現した
近くのバーにでも行くかという十三の提案を断り、人の居ないところがいいと告げる

「軍司に手ぇ出すの止めてもらえねーか、」

真っ暗な河川敷に二人は立っていた
川を跨ぐ橋の上を車のライトが行き交いしている
対岸の街のネオンがチカチカと光る

「…何の話だ?」
「恍けてんじゃねーよ、この前ウチの店であいつとキスしてただろーが」

ポンが蹴った石がころころと土手を転がり落ちていく

「覗き見か?」
「あんなとこでやる方が悪ぃだろ」

十三の吐き出した煙が空へ消える
……その余裕が憎たらしいんだよ

「釘を刺す相手が違うんじゃないのか?」

十三の指先から灰が落とされる
そうだろうよ、あいつは強制されたって男にやらせるような男じゃねぇんだ
嫌なもんは嫌だって断るだろうよ
じゃあなんだってんだ
あんな顔して、あいつが好きでやってるわけがねーんだ

「そもそも、お前にそんなことを言う権利があるのか?」
「何?」
「…いや、話がそれだけなら帰らせてもらうぜ」

……なんでなんだよ

「村田!」

背を向けて歩き出した十三にポンが叫んだ

「なんであいつなんだよ、」

その声に振り返りもせず十三は歩く
どうしたらいいんだよ
なんであいつが村田とそんなことしてんのかは分かんねぇけど、黙ってられねぇじゃねぇか

葛藤するポンを余所に十三との距離はひらいていく

十三の右手には携帯が握られていた












































「っ……、ん…………」

しんとした部屋に響く湿った音と軍司の息遣い
洗浄後丁寧に穴を解し
性感帯と言われるところを緩く刺激する
いつもより時間をかけてゆっくりと
反応を見て溶かしていく

顔を背け、目元を腕で隠しながら
歯を食いしばって耐える軍司を見下ろしながら十三はポンの言葉を思い出す

「、」

意識が他へいっていたのが分かったのか
軍司の目が十三を見た

その目と視線を絡ませたまま
十三が軍司の乱れた前髪をかき上げてやる

こいつをぐちゃぐちゃにしてやりたい
奥に挿れたまま軍司のモノを刺激する
口元にあった腕を外すと僅かに声が漏れた
いよいよ絶頂を迎える手前、軍司の耳元で十三が呟いた

「さっきお前の先輩が俺んとこ来たぜ」

何故突然そんなことを言い出すのか
揺さぶられながら軍司が疑問の目を十三へ向けた

「後輩に手を出すのは止めろと言われた」
「!!」
「後輩想いの優しい先輩だな」

その言葉と同時、軍司が俄かに震えた




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