廻れ。廻れ。
屋上に行くと酷く気分が悪くなる。イライラするしぶっ壊したくなる。だから自ずと避けるようになった。
数日後の週末。運悪く軍司さんとの約束があった。そして俺はその日を複雑な気持ちで迎えた。
集合時間も場所も決めてない。俺はとりあえず軍司さんの家へ向かう。こんな時軍司さんは多分まだ寝ているだろうけど。勝手に敷地に入り、離れになっている軍司さんの部屋に入る。思ったとおり軍司さんはベッドの中だ。小さくお邪魔します、と呟いて上がる。
スースーと寝息を立てる軍司さんを見て胸が苦しくなった。実のところ、あれ以来軍司さんと二人きりになるのは初めてだ。軍司さんをみるとあの情景がフラッシュバックして平静を保っていられなかったから。軍司さんとの接し方を忘れてしまったかのように俺の受け答えはぎこちなくなっていた。体調が悪いのかと周りに心配されるほどだ。俺が締め出されたあの後、秀吉さんと何をしていたんだろう。それを考えては何度も振り払った。何度も何度も軍司さんの夢を見た。そして夢から覚めると、毎回どうしようもない虚無感に襲われた。
「軍司さん、」
小さく呼びかけて寝顔を覗き込む。寝顔は本当昔から変わらない。俺が知っている顔だ。普段格好良くセットしている分幼く感じる。ぐんじさん、ともう一度呼びかける。うーん、と言葉にならない言葉を発して寝返りをうつと軍司さんの服が捲れて咄嗟に目を逸らす。なんて純情なんだと自分でも笑ってしまうが。ふわりとシャンプーの香りが漂った。
「?!」
漂った香りに違和感を覚える。いつもの軍司さんのものと違う。シャンプー?いや、……香水?覚えのあるこの香り。これは……秀吉さんの……、
「っ!!」
首元からちらりと紅い痕が見えた。服が捲れて見えていた腹にもそれみたいな痕がある。
体中の熱が沸騰した。そして頭の奥でプツンと何かが切れたのを感じた。
後先考える余裕も無く
俺は軍司さんに覆い被さり口付けた。
「……っ、……ん、」
初めて貪ったそれに俺は夢中になった。軍司さんは眠っているのにも関わらず、だ。
少しして後頭部の髪の毛を引っ張られた。唇を離すと、軍司さんと目が合った。
「…おまえ…朝っぱらから酔っ払ってんのか?」
眉間に皺を寄せて呆れ顔。
誰に何してんだよ、と軍司さんが体を起こした。
俺はそれと同時に床に座り込む。
「トキオ?」
寝起きのまだ掠れた声。
誤魔化すか?
酔っ払ってますって、そんなわけないけど
そういうことにしといた方がいいんだろうか
「…あの人はよくて、俺は駄目なんですか」
軍司さんは何かを考えたように片眉を上げて俺を見た。
「なんの話だ」
「秀吉さんと…してたじゃないですか」
「……屋上に来たのはお前だったのか」
軍司さんが目を伏せる。
「そんで?」
怖い。
「秀吉と俺がしてたからなんでお前が俺にすんだよ」
心臓が痛い、喉が詰まる。苦しい。
「顔洗ってくるわ」
ダメだ。
唐突にそう思った。
このままだと無かったことにされる。
俺のは無かったことににされて
秀吉さんとは続いていくんだ。
それだけはもう耐えられない。
俺は立ち上がっていた軍司さんの手を掴んだ。
「好きです、軍司さん」
立ち上がって軍司さんと同じ目線に立つ。
軍司さんの目が数秒見開いた。
そしてすぐ元に戻って
俺も、家族だと思ってると言った。
はっきり言わねぇとはぐらかされる。
もう言うしかねぇじゃねぇか。
「違います。俺の好きは家族じゃありません。俺は」
「トキオ」
遮るように名前を呼ばれた。
「冷静になれよ。変なもん見て混乱してんだろ」
悪かったな、と掴む手を外される。
言わせてもくれない。
でも俺だってもう引き下がれない。
「混乱したのは当たってます。けど、俺は本気です。」
「何言って」
「俺は、中学の時から軍司さんのことがレンアイ的な意味で好きでした。」
言った。
言ってやった。
もう後戻り出来ねー。
一年、いや二年
悩んで悩みまくって伝えないって決めたのに。
アレが想定外過ぎたんだ。
軍司さんが俺を見ている。
驚いてるだろうな。そんな顔をしてる。
まさか中学の時からとは思わないだろうし。
でも、流石に流せねえだろ。
「…トキオ。気持ちは、ありがてぇけど……
俺は男相手にそんな風に思えねぇ。」
「秀吉さんは」
「あんなのただの遊びだ」
「俺も遊びでいいです」
「お前をそんな風に扱えるわけねーだろ」
「じゃあ!その遊びやめてください!」
俺は軍司さんの1番でいたい。
俺の居場所だ。
こんなこと言う権利無いけどな。
「…お前は今までもこれからも1番だよ。変わってねぇ。でも、あいつとも切れねぇよ。遊びだけど、理由があって遊んでんだ」
軍司さんの手を引っ張る。
抵抗することなく、軍司さんが一歩近づいた。
そして俺は軍司さんの口にねじ込んだ。
ベッドへ押し倒す。
秀吉さんに触られてんのは我慢ならねぇ。
「1番ならやらせてください」
見下ろした軍司さんはたまらない。
でも軍司さん、なんでそんな顔してるんですか
瞳がゆらゆらと揺れている
だけどその理由を考えることを放棄して俺は再び口付ける
何度も
がっつきすぎてんなって
格好悪ぃって思うけど止められない
もう下半身も反応しちまってる
軍司さんの口弄りまくって
服の中に手を入れて
脇腹から胸まで
指先でなぞる
首筋舐めて
鎖骨辿って痕を残す
軍司さんの下半身に触ろうと手を伸ばしたとき
止められた。
「やめてくれ。たのむ」
軍司さんとは思えない弱々しい声にハッと我に戻った。
「…すみません」
殴られた方がマシだった。
ヤバいことをした、と肌で感じた。
軍司さんから離れる。
何してんだ俺は。
同意も無いまま無理矢理やろうとしてた
軍司さんも体を起こした
けど、下を向いて何も言わず黙ったまま。
軍司さんに声かけようと口を開くけど
言葉が出ない。
取り返しのつかないことをやっちまったんだ。
もう終わりだ。
「すみません、俺…帰ります」
苦しくてもう居られない。
俺はその場から逃げた。
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数日後の週末。運悪く軍司さんとの約束があった。そして俺はその日を複雑な気持ちで迎えた。
集合時間も場所も決めてない。俺はとりあえず軍司さんの家へ向かう。こんな時軍司さんは多分まだ寝ているだろうけど。勝手に敷地に入り、離れになっている軍司さんの部屋に入る。思ったとおり軍司さんはベッドの中だ。小さくお邪魔します、と呟いて上がる。
スースーと寝息を立てる軍司さんを見て胸が苦しくなった。実のところ、あれ以来軍司さんと二人きりになるのは初めてだ。軍司さんをみるとあの情景がフラッシュバックして平静を保っていられなかったから。軍司さんとの接し方を忘れてしまったかのように俺の受け答えはぎこちなくなっていた。体調が悪いのかと周りに心配されるほどだ。俺が締め出されたあの後、秀吉さんと何をしていたんだろう。それを考えては何度も振り払った。何度も何度も軍司さんの夢を見た。そして夢から覚めると、毎回どうしようもない虚無感に襲われた。
「軍司さん、」
小さく呼びかけて寝顔を覗き込む。寝顔は本当昔から変わらない。俺が知っている顔だ。普段格好良くセットしている分幼く感じる。ぐんじさん、ともう一度呼びかける。うーん、と言葉にならない言葉を発して寝返りをうつと軍司さんの服が捲れて咄嗟に目を逸らす。なんて純情なんだと自分でも笑ってしまうが。ふわりとシャンプーの香りが漂った。
「?!」
漂った香りに違和感を覚える。いつもの軍司さんのものと違う。シャンプー?いや、……香水?覚えのあるこの香り。これは……秀吉さんの……、
「っ!!」
首元からちらりと紅い痕が見えた。服が捲れて見えていた腹にもそれみたいな痕がある。
体中の熱が沸騰した。そして頭の奥でプツンと何かが切れたのを感じた。
後先考える余裕も無く
俺は軍司さんに覆い被さり口付けた。
「……っ、……ん、」
初めて貪ったそれに俺は夢中になった。軍司さんは眠っているのにも関わらず、だ。
少しして後頭部の髪の毛を引っ張られた。唇を離すと、軍司さんと目が合った。
「…おまえ…朝っぱらから酔っ払ってんのか?」
眉間に皺を寄せて呆れ顔。
誰に何してんだよ、と軍司さんが体を起こした。
俺はそれと同時に床に座り込む。
「トキオ?」
寝起きのまだ掠れた声。
誤魔化すか?
酔っ払ってますって、そんなわけないけど
そういうことにしといた方がいいんだろうか
「…あの人はよくて、俺は駄目なんですか」
軍司さんは何かを考えたように片眉を上げて俺を見た。
「なんの話だ」
「秀吉さんと…してたじゃないですか」
「……屋上に来たのはお前だったのか」
軍司さんが目を伏せる。
「そんで?」
怖い。
「秀吉と俺がしてたからなんでお前が俺にすんだよ」
心臓が痛い、喉が詰まる。苦しい。
「顔洗ってくるわ」
ダメだ。
唐突にそう思った。
このままだと無かったことにされる。
俺のは無かったことににされて
秀吉さんとは続いていくんだ。
それだけはもう耐えられない。
俺は立ち上がっていた軍司さんの手を掴んだ。
「好きです、軍司さん」
立ち上がって軍司さんと同じ目線に立つ。
軍司さんの目が数秒見開いた。
そしてすぐ元に戻って
俺も、家族だと思ってると言った。
はっきり言わねぇとはぐらかされる。
もう言うしかねぇじゃねぇか。
「違います。俺の好きは家族じゃありません。俺は」
「トキオ」
遮るように名前を呼ばれた。
「冷静になれよ。変なもん見て混乱してんだろ」
悪かったな、と掴む手を外される。
言わせてもくれない。
でも俺だってもう引き下がれない。
「混乱したのは当たってます。けど、俺は本気です。」
「何言って」
「俺は、中学の時から軍司さんのことがレンアイ的な意味で好きでした。」
言った。
言ってやった。
もう後戻り出来ねー。
一年、いや二年
悩んで悩みまくって伝えないって決めたのに。
アレが想定外過ぎたんだ。
軍司さんが俺を見ている。
驚いてるだろうな。そんな顔をしてる。
まさか中学の時からとは思わないだろうし。
でも、流石に流せねえだろ。
「…トキオ。気持ちは、ありがてぇけど……
俺は男相手にそんな風に思えねぇ。」
「秀吉さんは」
「あんなのただの遊びだ」
「俺も遊びでいいです」
「お前をそんな風に扱えるわけねーだろ」
「じゃあ!その遊びやめてください!」
俺は軍司さんの1番でいたい。
俺の居場所だ。
こんなこと言う権利無いけどな。
「…お前は今までもこれからも1番だよ。変わってねぇ。でも、あいつとも切れねぇよ。遊びだけど、理由があって遊んでんだ」
軍司さんの手を引っ張る。
抵抗することなく、軍司さんが一歩近づいた。
そして俺は軍司さんの口にねじ込んだ。
ベッドへ押し倒す。
秀吉さんに触られてんのは我慢ならねぇ。
「1番ならやらせてください」
見下ろした軍司さんはたまらない。
でも軍司さん、なんでそんな顔してるんですか
瞳がゆらゆらと揺れている
だけどその理由を考えることを放棄して俺は再び口付ける
何度も
がっつきすぎてんなって
格好悪ぃって思うけど止められない
もう下半身も反応しちまってる
軍司さんの口弄りまくって
服の中に手を入れて
脇腹から胸まで
指先でなぞる
首筋舐めて
鎖骨辿って痕を残す
軍司さんの下半身に触ろうと手を伸ばしたとき
止められた。
「やめてくれ。たのむ」
軍司さんとは思えない弱々しい声にハッと我に戻った。
「…すみません」
殴られた方がマシだった。
ヤバいことをした、と肌で感じた。
軍司さんから離れる。
何してんだ俺は。
同意も無いまま無理矢理やろうとしてた
軍司さんも体を起こした
けど、下を向いて何も言わず黙ったまま。
軍司さんに声かけようと口を開くけど
言葉が出ない。
取り返しのつかないことをやっちまったんだ。
もう終わりだ。
「すみません、俺…帰ります」
苦しくてもう居られない。
俺はその場から逃げた。
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