廻れ。廻れ。




ドアに鍵を掛けると秀吉の腕が軍司の首に回ってきた。

「待て、ここですんの?」
「それ以外どこがあんだよ」

既にやる気満々の様子の秀吉が睨む。

「流石に無理だろ。」

汚れるし準備もいるだろ、と軍司が言うと
秀吉は真面目か、と不満気にこぼした。

「今日は最後の授業に出なきゃなんねー」
「じゃあ放課後だな」

放課後ホテルに向かうことを取り決めた。再び秀吉が口付ける。手をズボンのポケットに入れたまま軍司もそれに応える。

しばらくキスを繰り返した。
そしてある時秀吉が唇を離して口角を上げた。

「心配無さそうだな」

お互いの反応を見ての言葉と判断して軍司も同意した。





放課後。
適当に選んだ部屋に入った瞬間、秀吉が噛み付くようにキスをした。そしてシャワー浴びてくる、と足早にバスルームへ向かった。
手持ち無沙汰な軍司はソファに腰掛けて煙草を取り出した。体を洗うだけにしては時間がかかっている。準備してんのかな、と思考した。秀吉が腰にタオルを巻いただけの姿で出てきたのに少し笑う。

「俺が上でいいんだよな?」

確認してバスルームへ入った。
バスローブを羽織って部屋に戻る。ベッドに座っていた秀吉に近づくと手を引かれてベッドに倒れこんだ。
何度も深くキスをする。秀吉が軍司のバスローブに手をかけて脱がせた。

「初めてだから痛かったら言えよ」

軍司が秀吉に言う。

「あ?童貞だったのか?」
「男に入れるのが、初めてなんだよ」
「経験ありそうな素振りだったじゃねぇか」

自分の誘いに動揺せず今に至るのだ。経験はあるはず。
軍司が目を細めて薄く笑った。
問いには答えず、身体を擦る。

「痛くねぇ?」

ゴムを嵌めた指をゆっくりと埋めながら軍司が秀吉の顔を見た。

「うるせぇ。いいから来いよ」

急かす秀吉に軍司がふ、と笑う。



軍司の指で昂ぶる秀吉は目元を腕で隠して喘いでいる。丁寧に内壁を動くそれにやっぱり初めてじゃねーじゃねぇか、と秀吉が内心で悪態をついた。悶えて腰が浮く。ローションと自分の先走りでグチグチと音をたてている。粘着質な音が脳を刺激した。

「軍司、、も、挿れろ」

名前を呼び、秀吉が訴える様に軍司を見つめた。軍司が秀吉の体の向きを変えさせる。秀吉は枕に顔を埋めた。
軍司が動く度に秀吉から絞られるような声が漏れる。










「なぁ、」
「……」

行為を終えて、後始末をしながら軍司が話しかけた。

「十希夫と何話してたんだ?」
「なんで」
「様子が変だったからよ。お前まさか十希夫誘ったんじゃねぇだろうな」

的外れな内容に秀吉が笑う。

「あいつ、こんな経験なんかねぇんだからよ。変な事吹き込むなよ」
「ふーん…だから俺の誘いに乗ったのか」

可愛い弟分に手を出されると思ったのか。

「それもあるけど、最近のテメェの様子も大概おかしかったぞ」
「、」

軍司が煙草に火をつける。

「なんつー顔してんだ。事情は聞かねぇけどよ。これでも心配してたんだぜ」

実は1ヶ月程前いつもの相手とは終わったばかり。この性欲を持て余していた。

「お前、後ろいけんの?」

秀吉が軍司に問う。

「え…お前俺に入れてぇの?」

軍司が秀吉に目を向ける。その顔は若干引き気味だ。

「色々してぇんだけど、」

少しの沈黙の後、軍司が笑った。

「嫌だね」
「なぁ、誰とやってんだよ」

初めてと言ったが、確実に知っている手つきだった。

「それ聞いてどうすんだよ、」
「やってんのは否定しねぇのか」

それに無言で笑って返す。
いいから答えろと秀吉がしつこく迫る。

「村田さんにな、時々呼び出されんだよ」
「村田?」

誰だ?と眉間に皺をよせ秀吉が聞き返した。

「村田十三。知ってんだろ」
「武装か?!」

目を丸くして驚く秀吉を笑う。その村田さんだよ、と答えると秀吉が再び眉間に皺をよせた。

「…道理で慣れてるわけだな」

何故そこと繋がりがあるのか。いつから関係があったのか。疑問を言葉にしかけて秀吉は口を閉じた。事情も聞かず付き合ってくれた男に聞くタイミングではない気がした。まぁ、いずれ聞き出す。

秀吉が起き上がって軍司の箱から煙草を取り出す。それを見て軍司がライターを翳す。

「慣れてなんかねぇよ」
「村田の下でヨがってんだろ」

秀吉が毒を吐く。

「否定はしねぇけどな」
「マジかよ」

お前がアンアン言ってんの想像出来ねー、と続けた秀吉に、想像すんなと軍司が返した。
しばらく無言が続く。







秀吉の着信音が鳴った。
画面にはマサ、の文字。

「出ねーのか」

軍司が携帯を指す。

「ほっとけ」
「いいのかよ」

話しながら服を着る。余韻に浸るような関係でもない、さっさと出るつもりだ。秀吉も若干遅れて服に手をかけた。

「軍司、あいつは、」
「…?」

十希夫は知ってんのか、そう言おうとして止めた。十希夫は多分地雷だ。

「いや、今度はやらせろよ。村田よりヨがらせてやる」

軍司が一瞬呆気にとられる。

「無理だと思うぜ」

不敵とも妖艶とも見える笑みを浮かべた軍司。
秀吉はどうやって口説き落とすか思考した。























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