心躍るアンラッキー

「まーたお前かよ」

心底呆れたような声色で駅前の花壇に腰掛ける男の前に立った。
綺麗に咲く花とは本当に不釣り合いなやつだ、と軍司はため息を吐いた。
鉄生は無言で見上げた。

「今度はなんだ?」

ポケットに手を入れたまま見下ろしている。

「お前、今大事な時期だろ。考えろよ。」

そう言って隣に座った。
こんなとこに武装の幹部になるやつが1人で立つな、と言いたいのだ。
理由があってやってんだ、と睨みをきかせられ、軍司はため息を漏らす。

「用があるならさっさと済ませろ。うちのことならある程度協力してやる」

このまま人が集まると以前の様に余計な火種が生まれる。うちと構えてる場合じゃない。

「…金髪メガネを探してる」

誰が世話になるか、と言いたいところだが鈴蘭全校生徒の中から名前も分からない1人を探すのだ。手を借りた方が早いと判断して鉄生が口を開いた。

「んな奴ぁ山ほどいる」

ぼそぼそと話す聞き取り辛い声に突っ込むことはせず返す。
そしてとりあえず自分のクラスだけでも数人はいるな、と街頭人物を思い浮かべた。
そんだけの情報で絞れる訳がない。

「2日前に駅前のカラオケに来たやつだ」
「そいつがどーかしたのか」

揉め事なら一応把握しておくか、と詳細を尋ねる。
それに更に小声でモニョモニョと口を動かす。

「なんだその声。聞こえねーよ。」


そして…

「え、お前ねーちゃんいんのかよ」

吸おうとした煙草を口から離して尋ねる。

「なんだよ」
「妹も居るって聞いたぞ」

「それがどーした」
「…いや、なんでもねー」
「なんか言いたいことあんだろ!」

顔に出てたらしい。そりゃ出るわ。
女兄弟がいる顔してねーんだもんよ。

「いや、本題はそこじゃねーよな。悪い。で?ねーちゃんがどうしたって?」

ぼそぼそ
は?どうもこの件になると声が小さくなるな。

「ねーちゃんが探せって言ってんだ!」
「…なんで」

急に大きな声を出されて軍司が思わず耳をふさぐ。

「なんか、絡まれてるところを助けられたんだとよ。それで、気になったとかで…」
「…」

軍司が鉄生を殴る

「いっってぇな!
「悪ぃ、なんかムカついて

軍司が立ち上がり鉄生から離れる

「おい!どこいくんだ!
「手伝う気が失せたから戻るわ
「待て待て!今更ソレはねーべ!

軍司の腰に抱きつき動きを止める

離せ!離さん!離せ!離さん!
と繰り返していると

「こらテメー河内!軍司さんに何してやがんた!」

トキオ登場
あん?
眉間にシワを寄せて鉄生が睨みあげる
何だテメーやんのか?
トキオも戦闘モードで威嚇する
今にも殴り掛かるかという様子のトキオ
それに反して目をパチパチとさせ見開く鉄生
「いや待て!原田オメーイメチェンしたのか!」
「はぁ?テメーに関係ねーだろ」
顔ちけーよ!
お前2日前駅前のカラオケ行ってねーよな?
それがどーした
行ったのか行ってねーのか
…行ったよ
軍司と鉄生が目を合わせる


軍司とトキオ2人で学校に戻る
「まさかトキオだったとはな」
鉄生の姉が恋に落ちた男トキオ
「笑ってます?」
「いや、なんかすげー展開で」
笑いが止まらず涙を拭う軍司
何がそんなに面白いんだか、とトキオは不満顔
「…俺に彼女できたら軍司さんどー思います?」
少し緊張気味に聞いてみる
「え?付き合うのか?!」
「んなわけないでしょ」
なんだよ、と言ってまた笑っている。
「嬉しいよ。彼女できたら。」
唐突に返事。
トキオ落ち込む
脈無しか。知ってたけどツラ
トキオの背に手を回して
「そーなっても、俺の相手もしてくれよな」
あ、気分上がった。
軍司さんこそ、と小さく返す。
俺も彼女欲しーと呟きながら先を歩く
また肩を震わせている背中に向けてため息を吐いた。





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