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茂一のバレンタイン
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今日はバレンタインデー。
今朝も田岡はいつも通りに陵南高校へ出勤してきた。
「あっ、田岡先生ー!」
「ん?」
「はいっ!いつもお世話になってるからこれどーぞ」
「おお、ありがとう」
女生徒から差し出された義理と分かりやすい小さなチョコレート。それを笑みをたたえて受け取る田岡。
私立である陵南高校はそういったイベント事には寛容であるので毎年教員にもチョコレートを渡す女子生徒は少なくない。田岡は監督としては厳しいことで有名だが、人当たりは決して悪くないのでバレンタインデーに手元にやってくるチョコの数もそれなりである。
放課後、バスケ部の練習のため体育館へ向かう田岡はいつもより騒がしいことに気が付いた。
陵南高校バスケット部は県内でも有数の強豪校、バスケ部の部員目当てで体育館を訪れる女子だって少なくはない。特に仙道にチョコを渡したくて出待ちする少女の群れは明らかに昨年より増加している。
「仙道さーん!」
「キャーッ!カッコいい!」
「越野くーん!」
浮き足立って騒いでいる女子達を横目に呆れたような表情を浮かべて田岡は体育館に入る。ギャラリーが多いとはいえ練習は普段通りに行われる。
「さーお前ら!打倒湘北だ!声出していけよ!」
「はい!!」
いつものようにバスケット部の練習が終わった後、家路につく田岡。
帰宅すると19時。リビングに顔を出すと娘の千夏 が近づいてきた。
「お父さんお帰りー」
「ただいま」
「はい、ハッピーバレンタイン!」
千夏が差し出してきたのは可愛らしい小さな袋。ピンク色で彩られた包みの中にバスケットボールを模したチョコレートが入っているのが見える。
「ありがとう」
渡すだけ渡すと、照れ臭いのかすぐにそそくさと田岡の側から離れていく千夏。今年も用意してくれていたのか。父親というもの、娘からも貰えるというのはやはり喜ばしいものだ。しかも田岡の愛するバスケットボールの形のチョイスが尚更だ。手のひらのピンクを見つめて田岡はふっと口元を緩ませる。
「お父さん帰ってたのー?」
千夏と会話している田岡の声が聞こえたのか2階から降りてきた次女の美千留 。
「ちょっと待ってて」
何やらいそいそとキッチンの方へ向かっていく美千留は何だかニヤニヤと楽しそうだ。すぐに彼女は大切そうにお菓子らしきものを手にして戻って来た。
「これ、お父さんに」
美千留が持ってきたのはブラウニー。丁寧に切り分けられ、簡素ながら自ら施したと思われるラッピングもされている。
「おお、すごいな。手作りか?ありがとうな」
「彼氏にあげるやつのついでだからね!」
それでも田岡に褒められて嬉しかったのか、美千留はニコニコと満足そうな顔をしている。
「お父さんにもあげるんだって張り切って作ってたのよ」
「ちょっ!お母さん!」
「いいじゃない。私もさっき味見したんだけど、美味しく出来たからお父さんも喜んでくれるねって言ってたの」
「……もー」
「美味そうだな。後で頂くとするか」
家に帰ってからもチョコレートが2つ。甘いものが特別好きというわけではないが田岡は思わず目を細める。男の子だったらバスケをやらせて陵南に入れたのにと何度思ったか分からないが、女の子も悪くない。
娘達が2階の自分の部屋へ行った後二人でテレビを観ながら談笑していると、おもむろに立ち上がり見るからに高級そうな包み紙の箱を取り出す田岡の妻。
「はい。私からも」
妻から手渡されたのは有名ブランドの洋酒が入ったチョコレート。こちらは毎年同じものだが酒飲みの田岡が密かに楽しみにしている一品だ。
「……ありがとう」
学校でも貰い娘二人からも渡され数だけなら幾つもあるチョコレート。しかし誰よりも愛する妻からのウイスキーショコラが一番嬉しい田岡であった。
2月の半ば、寒さは厳しい季節だが田岡にとってバレンタインデーは家族の愛が実感できる温かい日なのだった。
今朝も田岡はいつも通りに陵南高校へ出勤してきた。
「あっ、田岡先生ー!」
「ん?」
「はいっ!いつもお世話になってるからこれどーぞ」
「おお、ありがとう」
女生徒から差し出された義理と分かりやすい小さなチョコレート。それを笑みをたたえて受け取る田岡。
私立である陵南高校はそういったイベント事には寛容であるので毎年教員にもチョコレートを渡す女子生徒は少なくない。田岡は監督としては厳しいことで有名だが、人当たりは決して悪くないのでバレンタインデーに手元にやってくるチョコの数もそれなりである。
放課後、バスケ部の練習のため体育館へ向かう田岡はいつもより騒がしいことに気が付いた。
陵南高校バスケット部は県内でも有数の強豪校、バスケ部の部員目当てで体育館を訪れる女子だって少なくはない。特に仙道にチョコを渡したくて出待ちする少女の群れは明らかに昨年より増加している。
「仙道さーん!」
「キャーッ!カッコいい!」
「越野くーん!」
浮き足立って騒いでいる女子達を横目に呆れたような表情を浮かべて田岡は体育館に入る。ギャラリーが多いとはいえ練習は普段通りに行われる。
「さーお前ら!打倒湘北だ!声出していけよ!」
「はい!!」
いつものようにバスケット部の練習が終わった後、家路につく田岡。
帰宅すると19時。リビングに顔を出すと娘の
「お父さんお帰りー」
「ただいま」
「はい、ハッピーバレンタイン!」
千夏が差し出してきたのは可愛らしい小さな袋。ピンク色で彩られた包みの中にバスケットボールを模したチョコレートが入っているのが見える。
「ありがとう」
渡すだけ渡すと、照れ臭いのかすぐにそそくさと田岡の側から離れていく千夏。今年も用意してくれていたのか。父親というもの、娘からも貰えるというのはやはり喜ばしいものだ。しかも田岡の愛するバスケットボールの形のチョイスが尚更だ。手のひらのピンクを見つめて田岡はふっと口元を緩ませる。
「お父さん帰ってたのー?」
千夏と会話している田岡の声が聞こえたのか2階から降りてきた次女の
「ちょっと待ってて」
何やらいそいそとキッチンの方へ向かっていく美千留は何だかニヤニヤと楽しそうだ。すぐに彼女は大切そうにお菓子らしきものを手にして戻って来た。
「これ、お父さんに」
美千留が持ってきたのはブラウニー。丁寧に切り分けられ、簡素ながら自ら施したと思われるラッピングもされている。
「おお、すごいな。手作りか?ありがとうな」
「彼氏にあげるやつのついでだからね!」
それでも田岡に褒められて嬉しかったのか、美千留はニコニコと満足そうな顔をしている。
「お父さんにもあげるんだって張り切って作ってたのよ」
「ちょっ!お母さん!」
「いいじゃない。私もさっき味見したんだけど、美味しく出来たからお父さんも喜んでくれるねって言ってたの」
「……もー」
「美味そうだな。後で頂くとするか」
家に帰ってからもチョコレートが2つ。甘いものが特別好きというわけではないが田岡は思わず目を細める。男の子だったらバスケをやらせて陵南に入れたのにと何度思ったか分からないが、女の子も悪くない。
娘達が2階の自分の部屋へ行った後二人でテレビを観ながら談笑していると、おもむろに立ち上がり見るからに高級そうな包み紙の箱を取り出す田岡の妻。
「はい。私からも」
妻から手渡されたのは有名ブランドの洋酒が入ったチョコレート。こちらは毎年同じものだが酒飲みの田岡が密かに楽しみにしている一品だ。
「……ありがとう」
学校でも貰い娘二人からも渡され数だけなら幾つもあるチョコレート。しかし誰よりも愛する妻からのウイスキーショコラが一番嬉しい田岡であった。
2月の半ば、寒さは厳しい季節だが田岡にとってバレンタインデーは家族の愛が実感できる温かい日なのだった。
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