あなたの隣にいたかっただけ
カジュアルな格好に着替え、開いていた窓を閉じる。その時、数回のノック音が聞こえた。
「失礼します、レイヴィアさん。スモーカーさんいます?」
そっと私の自室でもある医務室の扉が開き、その影からたしぎが顔を覗かせた。
『たしぎ、おはよ。スモーカーのバカならいるけど、どうした?』
「おはようございます。いえ、大した用事じゃないんですけどね」
「何かあったか」
「スモーカーさんの事だから、休暇と言いつつ、どうせ早く戻って仕事するんだろうと思って。なので明日まで休暇伸ばしてきました」
「余計な世話してんじゃねぇ」
『いい部下じゃないか。けど、副官のたしぎにまで性格把握されてちゃ世話ないね』
「たまに…しかも、レイヴィアさんと出かける時しかまともな休暇取らないんですから、しっかり休んでくださいね」
釘を刺すようにそう告げ、たしぎはさっさと部屋を出ていった。何か、面白い話を聞いたような気がする。
『私と出かける時しか、まともな休暇取らないんだって?』
「余計な事を…」
『へぇ?そっかぁ?』
「笑うな!!ったく……てめぇがいねぇなら仕事してる方がマシなだけだ」
『随分と立派な口説き文句だこと』
あまり言いすぎると本気でキレられることは分かっている。このくらいで止めておくのが正しいだろう。
『スモーカー、先行ってて。重要な仕事日程だけ確認しておきたいから』
「軍医に休暇はねぇってことか。早くしろよ」
『ハイハイ。仕事の合間が休みみたいなモンだからね』
スモーカーの背中を押して部屋から追い出す。彼には悪いが、仕事の確認なんて嘘なのだ。
『……ヒナ嬢、盗み聞きはよくないな』
「あら、気づいてたのね。ヒナ驚き」
医務室の扉は二重構造。その扉の隙間はヒナ嬢のような女性1人くらいなら収まる幅。光も入りにくい隙間ということもあり、息を殺していると人がいるなんて気づきやしない。
『ヒナ嬢もスモーカーに用事?』
「いいえ、あなたによ、レイヴィア。まだ言わないつもりなの?"寿命"のこと」
『言えないって、前に話したよね』
「えぇ、聞いたわ」
『あいつにバレるくらいなら、私は海賊にでもなるよ』
「それで嫌われて、本当にいいの?」
いいかどうかを問われれば、いいわけない。それでも、私の答えは変わらない。
『傷は、消えるモンの方がいい。嫌ってくれた方が、傷の残り方が違う』
ヒナ嬢に施錠しろという意味を込めて医務室の扉の鍵を渡した。外側の鍵を。
「………スモーカー君に残るのは、どちらにせよ同じ傷よ」
「失礼します、レイヴィアさん。スモーカーさんいます?」
そっと私の自室でもある医務室の扉が開き、その影からたしぎが顔を覗かせた。
『たしぎ、おはよ。スモーカーのバカならいるけど、どうした?』
「おはようございます。いえ、大した用事じゃないんですけどね」
「何かあったか」
「スモーカーさんの事だから、休暇と言いつつ、どうせ早く戻って仕事するんだろうと思って。なので明日まで休暇伸ばしてきました」
「余計な世話してんじゃねぇ」
『いい部下じゃないか。けど、副官のたしぎにまで性格把握されてちゃ世話ないね』
「たまに…しかも、レイヴィアさんと出かける時しかまともな休暇取らないんですから、しっかり休んでくださいね」
釘を刺すようにそう告げ、たしぎはさっさと部屋を出ていった。何か、面白い話を聞いたような気がする。
『私と出かける時しか、まともな休暇取らないんだって?』
「余計な事を…」
『へぇ?そっかぁ?』
「笑うな!!ったく……てめぇがいねぇなら仕事してる方がマシなだけだ」
『随分と立派な口説き文句だこと』
あまり言いすぎると本気でキレられることは分かっている。このくらいで止めておくのが正しいだろう。
『スモーカー、先行ってて。重要な仕事日程だけ確認しておきたいから』
「軍医に休暇はねぇってことか。早くしろよ」
『ハイハイ。仕事の合間が休みみたいなモンだからね』
スモーカーの背中を押して部屋から追い出す。彼には悪いが、仕事の確認なんて嘘なのだ。
『……ヒナ嬢、盗み聞きはよくないな』
「あら、気づいてたのね。ヒナ驚き」
医務室の扉は二重構造。その扉の隙間はヒナ嬢のような女性1人くらいなら収まる幅。光も入りにくい隙間ということもあり、息を殺していると人がいるなんて気づきやしない。
『ヒナ嬢もスモーカーに用事?』
「いいえ、あなたによ、レイヴィア。まだ言わないつもりなの?"寿命"のこと」
『言えないって、前に話したよね』
「えぇ、聞いたわ」
『あいつにバレるくらいなら、私は海賊にでもなるよ』
「それで嫌われて、本当にいいの?」
いいかどうかを問われれば、いいわけない。それでも、私の答えは変わらない。
『傷は、消えるモンの方がいい。嫌ってくれた方が、傷の残り方が違う』
ヒナ嬢に施錠しろという意味を込めて医務室の扉の鍵を渡した。外側の鍵を。
「………スモーカー君に残るのは、どちらにせよ同じ傷よ」
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