トラファルガー・ロー
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『愛しき子』
「船長ってあれでよく女性を口説き落とせるね。」
たまたま聞いた話だった。
「はァ?ルックスよし、今巷で話題の人物で、声もイケメンな船長のどこに落ち度があるんだよ?」
「え~?だって、船長の言葉、薄いっていうか、なんか乾燥してんじゃん?」
心臓が一瞬、嫌な感じで跳ねた。何故かって?…心当たりがあったからだ。
「まだシャチのほうが愛を感じるよ。」
「ほォ…そんじゃあおれはどうしてこの間フラレたのでショーカ。」
「それはぁ………相手の好みじゃなかったとか?」
「結局そこかよ!!」
泣いて逃亡するシャチを追いかけるナナシの背中を見送りながら、ローは先程の言葉を思い返していた。
『船長の言葉、薄いっていうか、なんか乾燥してんじゃん?』…か。
夜の街へと少し繰り出せば、必ずと言っていい程に女が寄ってくる。そんな『女』という生き物は、少し愛を囁くだけで簡単に、ベッドの上で鳴く生き物だ。情報を引き出す為だったり、自身を満たす為だったり。使い捨ての道具よろしく利用してきたツケがまわってきたのだろう。自分でもどことなく思う程に、おれの言葉は乾いてしまったらしい。
(変なところでアイツは勘がいい。)
船長室に戻ったローは、ベッドを背もたれに腰をおろす。そのすぐ傍らに、乱雑に置いてあった本を手にとり開いた。内容は頭に入らず、ただ文字の羅列を眺めるだけで考えるのはナナシの事。
普段のナナシは緊張の場面でくしゃみを連発するような、少し気の抜けた奴だ。なのに、相手の隠している事や本音なんかをズバッと言ってのけたりする、鋭さがある。気が抜けているだけで空気は一応読めるし。恋愛面においたって、全く興味が無いという訳でもない。船員同士で恋バナもするし。島に降りりゃあイケメンがいた!美女がいた!とシャチと一緒に騒いでいたりする。そんな奴だ。
突如控え目のノック音が聞こえ、思考が途切れた。視線をドアに向ければそこから出てきたのは今しがた考えていたナナシ本人。
「船長、私の買った雑誌知りません?最新号なんですけど。」
「…あァ?…そこにあるヤツは違うか?」
「あ!それですそれ!」
両腕で抱えるように雑誌を一度持ってから中身を開く。パラリパラリと早くめくっている様子を見る限り、読み途中だったページを探しているようだ。
「ナナシ。」
「はい?何ですか船長。」
「…こっちこい。」
そう言っておれは自分の目の前の、床を叩く。ナナシは特に躊躇う事なくその叩かれた床へと腰をおろし、おれに背を向ける形で雑誌を再び開いた。自分より頭一つ分小さな背中に体重をかけ、頭に顎をのせてみせてもナナシは文句言わず雑誌に集中している。ナナシはこのおれの行動に他意はないと知っているから、照れもせずされるがままなのだろうか。
本当は他意ありまくりの、自分の欲に忠実な行動なのに。
ナナシには悟られる事はない、と自分で思ってしまうこの感情の正体がわからないんだ。おれが今しているこの行動すら虚空のようで、現実味がない。…それがおれには酷く、虚しいモノに思えた。何と表したらいいのか。開けたくても開けられない宝箱?欲しいと思うのにそれの入手方法がわからないとでも言えばいいのか。いや、方法はわかってはいるんだ。素直に伝えればいい。シンプルに、ただそれだけの事。しかし、おれの口から出る言葉は乾いているから。伝えようにも本当の意味では決して伝わらないんだろう。そもそもこれの名前がわからないのに何と伝えるつもりなんだ?
「船長ー。何か小難しい事でも考えてるんですか?顔が険しいですよ。」
「…お前の後ろにいるのに顔がわかるのか?」
「んー。雰囲気で?」
「…適当言うな。」
頭にのせていた顎をグリグリと左右に動かす。ナナシは痛いー。と至極辛そうな声を出した。
「適当じゃないですよー。…考え事ってのは変に考え込むと余計に凝り固まってしまうんですよ、知ってます?」
相変わらず視線は雑誌のまま。此方の悩みなど欠片も知らぬと言った様子でナナシはそんな事を宣う。おれが何か悩んでいる事は察していてもそれがナナシの事だと知らないからこんな態度が取れるのだろう。…今ここで考え事がお前の事だと言えたら、おれは何か変われるだろうか。
パラリ、とページを捲る音だけが室内に響く。
顎をのせるのをやめて、ベッドへと重心を戻す。そこから見えるのはナナシの小さな背中。華奢で、触れると壊れてしまいそうで、でも抱き締めてみたくて。あぁ、そうか。
「これが”愛しい”っていうのか?」
「…へ?」
勢いよく振り向いたナナシはおれと目が合うなりみるみる赤く頬を染めて、その光景さえも愛しく思えた。
乾いた言葉が潤いを帯び始めた、そんな瞬間。
「船長ってあれでよく女性を口説き落とせるね。」
たまたま聞いた話だった。
「はァ?ルックスよし、今巷で話題の人物で、声もイケメンな船長のどこに落ち度があるんだよ?」
「え~?だって、船長の言葉、薄いっていうか、なんか乾燥してんじゃん?」
心臓が一瞬、嫌な感じで跳ねた。何故かって?…心当たりがあったからだ。
「まだシャチのほうが愛を感じるよ。」
「ほォ…そんじゃあおれはどうしてこの間フラレたのでショーカ。」
「それはぁ………相手の好みじゃなかったとか?」
「結局そこかよ!!」
泣いて逃亡するシャチを追いかけるナナシの背中を見送りながら、ローは先程の言葉を思い返していた。
『船長の言葉、薄いっていうか、なんか乾燥してんじゃん?』…か。
夜の街へと少し繰り出せば、必ずと言っていい程に女が寄ってくる。そんな『女』という生き物は、少し愛を囁くだけで簡単に、ベッドの上で鳴く生き物だ。情報を引き出す為だったり、自身を満たす為だったり。使い捨ての道具よろしく利用してきたツケがまわってきたのだろう。自分でもどことなく思う程に、おれの言葉は乾いてしまったらしい。
(変なところでアイツは勘がいい。)
船長室に戻ったローは、ベッドを背もたれに腰をおろす。そのすぐ傍らに、乱雑に置いてあった本を手にとり開いた。内容は頭に入らず、ただ文字の羅列を眺めるだけで考えるのはナナシの事。
普段のナナシは緊張の場面でくしゃみを連発するような、少し気の抜けた奴だ。なのに、相手の隠している事や本音なんかをズバッと言ってのけたりする、鋭さがある。気が抜けているだけで空気は一応読めるし。恋愛面においたって、全く興味が無いという訳でもない。船員同士で恋バナもするし。島に降りりゃあイケメンがいた!美女がいた!とシャチと一緒に騒いでいたりする。そんな奴だ。
突如控え目のノック音が聞こえ、思考が途切れた。視線をドアに向ければそこから出てきたのは今しがた考えていたナナシ本人。
「船長、私の買った雑誌知りません?最新号なんですけど。」
「…あァ?…そこにあるヤツは違うか?」
「あ!それですそれ!」
両腕で抱えるように雑誌を一度持ってから中身を開く。パラリパラリと早くめくっている様子を見る限り、読み途中だったページを探しているようだ。
「ナナシ。」
「はい?何ですか船長。」
「…こっちこい。」
そう言っておれは自分の目の前の、床を叩く。ナナシは特に躊躇う事なくその叩かれた床へと腰をおろし、おれに背を向ける形で雑誌を再び開いた。自分より頭一つ分小さな背中に体重をかけ、頭に顎をのせてみせてもナナシは文句言わず雑誌に集中している。ナナシはこのおれの行動に他意はないと知っているから、照れもせずされるがままなのだろうか。
本当は他意ありまくりの、自分の欲に忠実な行動なのに。
ナナシには悟られる事はない、と自分で思ってしまうこの感情の正体がわからないんだ。おれが今しているこの行動すら虚空のようで、現実味がない。…それがおれには酷く、虚しいモノに思えた。何と表したらいいのか。開けたくても開けられない宝箱?欲しいと思うのにそれの入手方法がわからないとでも言えばいいのか。いや、方法はわかってはいるんだ。素直に伝えればいい。シンプルに、ただそれだけの事。しかし、おれの口から出る言葉は乾いているから。伝えようにも本当の意味では決して伝わらないんだろう。そもそもこれの名前がわからないのに何と伝えるつもりなんだ?
「船長ー。何か小難しい事でも考えてるんですか?顔が険しいですよ。」
「…お前の後ろにいるのに顔がわかるのか?」
「んー。雰囲気で?」
「…適当言うな。」
頭にのせていた顎をグリグリと左右に動かす。ナナシは痛いー。と至極辛そうな声を出した。
「適当じゃないですよー。…考え事ってのは変に考え込むと余計に凝り固まってしまうんですよ、知ってます?」
相変わらず視線は雑誌のまま。此方の悩みなど欠片も知らぬと言った様子でナナシはそんな事を宣う。おれが何か悩んでいる事は察していてもそれがナナシの事だと知らないからこんな態度が取れるのだろう。…今ここで考え事がお前の事だと言えたら、おれは何か変われるだろうか。
パラリ、とページを捲る音だけが室内に響く。
顎をのせるのをやめて、ベッドへと重心を戻す。そこから見えるのはナナシの小さな背中。華奢で、触れると壊れてしまいそうで、でも抱き締めてみたくて。あぁ、そうか。
「これが”愛しい”っていうのか?」
「…へ?」
勢いよく振り向いたナナシはおれと目が合うなりみるみる赤く頬を染めて、その光景さえも愛しく思えた。
乾いた言葉が潤いを帯び始めた、そんな瞬間。
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