#明け星学園活動日誌
「ちょっと、そこの貴方! 止まってくださいまし!」
突然背後から、怒声とも取れる鋭い声が飛んできた。反射的に肩を震わせ、私は振り返る。
……するとそこには、ライトブラウンの髪を持つ女子生徒が、こちらを睨みつけるように見つめていた。私と彼女は、間違いなく初対面。だからそのような視線を向けられる意味が分からず、私は戸惑ってしまった。
「……何でしょうか」
私が冷静に問いかけると、彼女はつかつかといった効果音が付きそうな勢いで私に近づいてくる。……そして。
「これ、落としましたわよ」
「……え」
そんな言葉と共に差し出されたのは、シンプルな柄のハンカチ。自分のスカートのポケットを探ると……無い。いや、今目の前にあるのは間違いなく私のハンカチなのだが。
どうやらこの人は、落し物を拾ってくれただけらしい。
「……ありがとうございます」
相変わらず睨まれていることにどう反応すればいいか分からないまま、とりあえずお礼を言いつつハンカチを受け取る。だが彼女は満足そうに笑って頷いたので、恐らくこの対応で正解だったのだろう。
「落としたところを私 が見ていたから良かったものの……。今後、気を付けるのよ」
「……はい、そうします」
なんだか偉そうな人だな、と思わず目の前の人をジロジロと見てしまう。……しゃんと伸びた背筋。高そうな制服ワンピース。……この人、お金持ちとかなのだろうか。
「あれっ、珍しい組み合わせだ。どーしたの?」
と、考えていたら、聞き慣れた声がした。気づけばその声の主は、私と女子生徒の間に割り込むように立っている。……本当にこの人は、存在感があるのに神出鬼没なんだよな……。
「あら、生徒会長ではないですか」
「言葉 ちゃん……」
「そう! 僕は皆の頼れる生徒会長☆小鳥遊 言葉 だよぉ~っ……じゃなくて、灯子 ちゃんと文那 ちゃん、知り合いだったの?」
言葉ちゃんが私と女子生徒を見比べながらそう告げる。……どうやらこの女子生徒は、文那さんと言うらしい。
「いえ、違いますわ。この方がハンカチを落としていましたから、私 が拾って差し上げましたの」
「へぇ~、灯子ちゃん、うっかりさんだ」
ニヤニヤと言葉ちゃんに笑われながら見られたので、とりあえずそちらは無視。私は文那さんの方を見ると、頭を下げた。
「……私は一年の、伊勢美 灯子 と申します。拾ってくださってありがとうございました」
「あら、貴方が例の転校生……私 は、氷室 文那 。二年生よ。礼には及びませんわ」
「ちょ、僕のこと無視!?」
言葉ちゃんの存在もそこそこに自己紹介を済ますと、氷室文那先輩、と心の中で彼女の名を繰り返す。
……そして気づいた。氷室って確か、明け星学園に多額の支援金を出しているとかで式典とかで呼ばれるタイプの家だったような、と。やはりお金持ちなのか……。
まあ私には関係のない話だな、と挨拶をして去ろうとしたら……言葉ちゃんに、肩を組まれた。前を見ると、文那先輩も肩を組まれている。
「ここで会ったのも何かの縁!! 女子会しようよ女子会ー」
「えっ……嫌ですが……」
「なっ……貴方は本当にいつも強引ですわね……!!」
私と文那先輩の声が重なる。だから顔を合わせて……この人も言葉ちゃんの無茶ぶりに振り回されているのかと、そう思った。だったら、多少は気が合いそうだ。
そして抵抗も虚しく、私たちは言葉ちゃんに引きずられるように歩く。この後の予定に、女子会が追加されてしまったらしい。なんとも勝手な話だ。
【終】
突然背後から、怒声とも取れる鋭い声が飛んできた。反射的に肩を震わせ、私は振り返る。
……するとそこには、ライトブラウンの髪を持つ女子生徒が、こちらを睨みつけるように見つめていた。私と彼女は、間違いなく初対面。だからそのような視線を向けられる意味が分からず、私は戸惑ってしまった。
「……何でしょうか」
私が冷静に問いかけると、彼女はつかつかといった効果音が付きそうな勢いで私に近づいてくる。……そして。
「これ、落としましたわよ」
「……え」
そんな言葉と共に差し出されたのは、シンプルな柄のハンカチ。自分のスカートのポケットを探ると……無い。いや、今目の前にあるのは間違いなく私のハンカチなのだが。
どうやらこの人は、落し物を拾ってくれただけらしい。
「……ありがとうございます」
相変わらず睨まれていることにどう反応すればいいか分からないまま、とりあえずお礼を言いつつハンカチを受け取る。だが彼女は満足そうに笑って頷いたので、恐らくこの対応で正解だったのだろう。
「落としたところを
「……はい、そうします」
なんだか偉そうな人だな、と思わず目の前の人をジロジロと見てしまう。……しゃんと伸びた背筋。高そうな制服ワンピース。……この人、お金持ちとかなのだろうか。
「あれっ、珍しい組み合わせだ。どーしたの?」
と、考えていたら、聞き慣れた声がした。気づけばその声の主は、私と女子生徒の間に割り込むように立っている。……本当にこの人は、存在感があるのに神出鬼没なんだよな……。
「あら、生徒会長ではないですか」
「
「そう! 僕は皆の頼れる生徒会長☆
言葉ちゃんが私と女子生徒を見比べながらそう告げる。……どうやらこの女子生徒は、文那さんと言うらしい。
「いえ、違いますわ。この方がハンカチを落としていましたから、
「へぇ~、灯子ちゃん、うっかりさんだ」
ニヤニヤと言葉ちゃんに笑われながら見られたので、とりあえずそちらは無視。私は文那さんの方を見ると、頭を下げた。
「……私は一年の、
「あら、貴方が例の転校生……
「ちょ、僕のこと無視!?」
言葉ちゃんの存在もそこそこに自己紹介を済ますと、氷室文那先輩、と心の中で彼女の名を繰り返す。
……そして気づいた。氷室って確か、明け星学園に多額の支援金を出しているとかで式典とかで呼ばれるタイプの家だったような、と。やはりお金持ちなのか……。
まあ私には関係のない話だな、と挨拶をして去ろうとしたら……言葉ちゃんに、肩を組まれた。前を見ると、文那先輩も肩を組まれている。
「ここで会ったのも何かの縁!! 女子会しようよ女子会ー」
「えっ……嫌ですが……」
「なっ……貴方は本当にいつも強引ですわね……!!」
私と文那先輩の声が重なる。だから顔を合わせて……この人も言葉ちゃんの無茶ぶりに振り回されているのかと、そう思った。だったら、多少は気が合いそうだ。
そして抵抗も虚しく、私たちは言葉ちゃんに引きずられるように歩く。この後の予定に、女子会が追加されてしまったらしい。なんとも勝手な話だ。
【終】