繋がる輪
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「コウ、あんた今のままで良いの?」
大学の帰り道。
高校から友達になったナミに問われた。
「良いって……何が?」
「あんた、付き合ってる男いたわよね!?」
おそらく、ナミの言う男は……二つ上の幼馴染。
ナミが何でそう思うのか分からないが、首を振って否定した。
だって……私はフラれているのだから。
私が中学三年の時に、思いきって告白し……その時の返事はたった一言。
あぁ……で終わってしまった。
その「あぁ……」の意味がよく分からなくて、私もこれ以上何か言うのも勇気がいり……何も聞けなかった。
それ以降は、どういう訳か幼馴染の時と変わらず、たまに連絡を取り合って……何となく街をぶらつくだけ。
以前と何も変わる事はなかった。
「告白はしたんだけどね……」
「……は?」
「…………明確な返事を貰えなかった……」
コウは、これ以上話すのは止めだとばかりに、近くにあった喫茶店に入ろうと言うのだった。
ナミは何とも言えない顔をしながらも、頷くしかなかった。
席に座った二人は飲み物を頼み、他愛もない話しをしていれば、急にナミが黙った。
どうしたのかと思い、ナミの視線を辿ってみれば、ちょうど話題に出ていた男が女と手を組んで喫茶店に入ってきた。
向こうは気が付いてないようだった。
「……やっぱり、彼女がいたんだね」
あの「あぁ……」は、気持ちは分かったというだけの返事だったのだろう。
私の気持ちを受け入れた返事ではない。
「はぁー……恋人見付けようかな!」
コウがそう言えば、ナミは溜め息を吐いた。
「強がり!」
「強がってないよ!ただ、ようやく納得出来たって感じ。あれだけ美人な彼女を見ちゃえばね……」
「メールは?」
「してたよ。月に一度あれば良い方じゃない?」
「……告白したんでしょ?それで、ちゃんとした返事を貰えなくて……辛くないの?」
「もう良いんだ!初恋は実らない!よく言うでしょ」
「……なら、今度合コンでも行く?」
「そうだね……行った事ないし、行ってみようかな!」
いつまでも、あいつへの恋心を引き摺ってちゃ駄目。
新しい恋を見付けよう。
そう思ったコウは気が付いてなかった。
遠くの席から、男が見てる事を……。
「コウ!早速合コンやるわよ!」
「もう!?」
その話しをしたのは、つい二日前のような気がするけど……。
そんな雰囲気を感じ取ったナミが笑った。
「こういうのは、思い立ったが吉日!って言うでしょ!」
「……で、いつ?」
「乗り気ね!」
「予定を空けとかないとでしょ!」
「今日だから、大丈夫でしょ!?」
「今日!?また急な……」
「何か、予定あった?」
ない……そう答えようとした時、タイミング良くメールの着信音が鳴った。
コウはメールを開いてみれば、それは幼馴染の男からだった。
“メシ食いに行くぞ”
……たった一言のメールだった。
ご飯ぐらい、彼女と行けば良いのに……。
そう思ったコウは、返信をした。
“今日は予定があるから、彼女と行ってきなよ”
コウはメールの返信をした後、携帯を鞄に仕舞い、ナミに行く事を告げるのだった。
その後直ぐに、男からの返信が来てる事にも気付かずに……。
「ナミ……」
「何?」
「……合コンだよね?」
「そうよ」
……ハッキリ言おう。
眼の前にいる人達の眼付きが怖い。
幼馴染のあいつも怖いと思うが……それ以上に、突き刺すような視線を向ける男の人達の視線が怖い!!
絶対に堅気の人じゃないでしょ!?
「ちょっと、キッド!!コウが怯えてるじゃない!」
「あぁ!?オレが何したってんだ!!」
「眼付きが悪い!」
「生まれつきだ!!」
「……もう少し、穏やかな眼付きにしたらどうだ?」
「キラー……てめぇ……」
キッドと呼ばれた人の眼は、絶対に闇の世界の住民でしょ!!
キラーって人も前髪で表情が見え難いが、雰囲気が堅気じゃない!!
ナミ……あなたの交友関係は、いったいどうなってるのよ……。
「それより、オレは腹が減ったぞ!」
「ルフィ!あんたは、それ目当てでしょ!!」
「肉ーーーー!!!」
……ルフィって人は……肉目当てなのね……。
「ふふ……久し振りね。こんなに賑やかなのは」
「ロビンも何か言ってやってよ!もう!」
「ルフィさん、焦らなくてもお肉は逃げませんよ」
「ビビ!肉って逃げるのか!?」
ルフィ、ビビと呼ばれた二人は、何ともトンチンカンな事を話しているが……。
何だ……この個性溢れたメンツは……。
それに、ナミとはまた違う、謎めいた超絶美人……ロビンさん。
……この人が何故だが、一番不思議だ……。
「そういえば、ドレークはどうしたの?」
「あいつなら遅れるってよ!」
……個性ある人が、まだ来るのか……。
そう思ったコウは、何とも言えない表情で笑うしかなかった。
「コウ、改めて紹介するわ!」
そう言って、ナミが端から紹介してくれた。
キッド。
工学技術者。
そう聞いた瞬間、拳銃と呼ばれるものでも作ってるのかと思ってしまった。
キラー。
キッドの助手。
…………やはり、二人は闇の世界の人なんではと思ってしまう。
ルフィ。
船乗りの船長。
……船乗り?
この辺に海はないし、地方からわざわざ来たのか……肉の為に……。
ロビン。
考古学者。
私にとっては別世界の仕事だと思うと……。
才色兼備という言葉、そのまんまの人を初めてみたよ……。
ビビ。
何処かのお嬢様……お姫様?
何処かって……何処だよ。
曖昧な紹介だな……ナミ。
そして、これから来るドレークという人は、何と海軍!
おい……この日本に海軍はないぞ……。
わざわざ、海外から来るのか……?
ナミ……私と同じ大学生なのに、この交友関係は異常だぞ。
あんた何者やねん!!
紹介の時点で、精神的に疲れたコウは、ナミが別世界の住民に見えてくるのだった。
「みんな、この子はコウと言って、私と同じ大学の子なのよ!」
「よ……よろしく……」
いや!!
よろしくしたくないと思うのは何でだろう……。
何か……合コンというよりは、馴染みの者達の飲み会じゃないか……これ。
「んじゃ、紹介も終わった事だし……乾杯しましょう!」
ナミの声で、仕方ねぇなという風にグラスを持つ者や、やっとか!と言いながらグラスを持つ者、笑顔を崩さずにグラスを持つ者……それぞれがグラスを持てば、懐かしい顔ぶれに乾杯と言って、ナミが豪快に飲み物を飲みほした。
……懐かしい顔ぶれに乾杯?
ナミ……結局、これはどんな集まりなのよ……。
もうどうでも良いと思いながらグラスに口を付ければ、個室の襖が開いた。
「……遅れた」
「ドレーク!遅いわよ!!」
「飛行機が遅れた」
「まぁ良いわ!コウ、さっき話したドレーク!」
簡単に紹介したナミは、またも豪快にグラスを空にしていくのだった。
…………私は、どうすれば良いのだろう……。
「あんた、さっきからどうしたのよ!全然飲んでないじゃない!」
……この個性溢れる人達に囲まれて、ゆっくり出来ると思ってるのか?
私には無理だ。
「あんたの為に開いた飲み会よ!」
その為に地方だけでなく、海外からも人を呼んだのかい!!
どんだけだよ!!
……どうしよう。
私、何でこんな突っ込みキャラに……。
しかも、ナミはロビン美女とビビお嬢様と話してばかり……。
人見知りと言う訳ではないけど、話し掛けられそうな人がいないんだけど……。
キッド、キラーは派手に飲んでは騒ぎ、ルフィは肉を頬張り、ドレーク……寡黙。
コウは黙々とグラスを傾けては、何となく携帯を覗き見れば、着信を知らせる点滅があった。
直ぐにメールだと分かったコウは、中を確認し、幼馴染からのメールだと分かった。
“訳の分からない事を言う暇があるなら、直ぐにオレの家に来い!”
着信の時間を見れば、あの後直ぐに来たようだった。
他にも、メールが二通来てたので確認した。
“テメェ……来いって言っただろ!何やってんだ!!”
“何処にいる?五分以内に電話しろ!”
二通目のメールは、丁度二分前に来たようだった。
どうするべきか迷っていれば、電話が掛かってきた。
画面には、幼馴染の名前が出ていた。
「何で……」
何で、彼女と行かないのかな?
彼女に用事があるとか?
だとしたら、今まで彼女が用事か何かで暇になった時、私を呼び出してた……そう考えれば、月に一度とか、気紛れに呼び出していたのだろうと思った。
考えれば考える程、苛立ちが込み上げてきた。
彼女がいるのに、他の女とご飯とかあり得ない。
私の一世一代の告白を「あぁ……」の一言で終わらせた男なんて……もう知るか!!
コウは、電話のコールに出る事なく、そのままコールが切れるのと当時に、電源を落とした。
もう……全部忘れよう!
コウは店員を呼ぶと、度数の強いお酒を頼んだ。
今日は、やけ酒だ!!
「ちょっと、コウ。そんな度数が高いの大丈夫?」
「今日は、いっぱい飲みたい気分なのよ!!ナミ、付き合いなさい!」
「……珍しい」
「私だって、そういう時ぐらいあるの!」
「吹っ切れようと?」
「ナミ……あいつの事なんて、どうでも良いのよ!!」
「あらら……荒れてるわね」
ナミが呆れる中、店員が大量の酒を運んできた。
「ちょっと!何で、こんなに頼んでるのよ!?」
「そういう気分なのよ!それに、あればみんな飲むでしょ!?」
此処には、酒に強そうな人が多そうだし。
ナミとかナミとかナミとかキッドさんとかキラーさんとかドレークさんとか美女ロビンさんとか!!
「どうせ、懐かしい顔ぶれの集まりで、朝まで飲む気でしょ!?」
そう言って、豪快に飲み始めた。
コウの飲みっぷりを見たキッドは、口の端を上げた。
「へぇ……結構いける口か!」
「今日は、どんどんいける気がする!」
「ははは!気がするだけだろ!」
「キッドさんと言いましたね!?気がするだけだろうけど、つぶれるまで飲みます!」
「へっ!良いんじゃねぇのか?」
そう言って、キッドもグラスの中身を空にした。
「そういやぁ、他の連中はどうした?」
キッドの言葉に、ナミは酒を飲んで上機嫌なまま、口を開いた。
「他は数時間遅れるって!」
……ちょっと待って?
もしかして、まだ全員揃ってなかったの!?
コウはナミの方を見て、どういう事だというように眼で語りかければ、ナミは笑った。
「男の数だけ選び放題!!」
何ですか……その名言を言った!!みたいな顔は!!!!
「あぁ?お前、男を見付けに来たのか?」
キッドの言葉に、コウは勢い良く首を振った。
「ナミに誘われて、此処に来ただけです!!酔っ払いの戯言は聞かないで下さい!!」
「酔っ払い……?言うわね!」
「わっ!ちょっと、ナミ!!」
ナミに無理矢理酒を飲まされた。
それを見たドレークが苦笑いをした。
「そこまでにしてやれ」
「大丈夫よ!この子も、結構飲むタイプだから!」
「う……ワインの一気飲みは死ぬ……」
項垂れたコウを見ては、ドレークが水を差し出した。
「大丈夫か?」
「ありがとう……ございます」
既に、ナミはロビンやルフィ達と騒いでいた。
それを横目で恨めしそうに見ては、水を受け取り飲んだ。
「コウ……だったな。どうして、この飲み会に?」
「えっと……多分、ナミなりの気遣いかと……」
「気遣い?」
苦笑いをしながら、幼馴染の男の事を話せば、何やら顎に手を当てて考え込むドレーク。
そして、ちゃっかり聞いてたキッドとキラーは顔を見合わせた。
「お前……キープされてたんじゃねぇのか?」
「キッド……もう少し、ソフトな言い方をしてやれ」
「あぁ……の一言だけの返事なんて、男らしくないな」
それぞれが聞いた話しの感想を言えば、ドレークにジッと見られた。
「つまり、お前を元気づけようとして、ナミが此処に連れてきた訳か」
「……多分」
「だから、珍しく飲み会をしようなんて声を掛けてきた訳か」
「……よく分からないけど……ごめんなさい?」
「何で、疑問なんだ?」
「何というか……私のせいで、忙しいのに……」
「まぁ、どんな事にせよ、こうやって集まる事は殆どないんだ。理由を付けて集まりたいと思ってる連中ばかりだし、良いんじゃないのか?」
ドレークの言葉に、コウは感動してしまった。
「男の人から、そんな優しい言葉をかけてもらったの初めてで嬉しい……」
これには、キッドも呆れた。
「……優しい?今のが?」
「…………本人が、そう思ってるなら良いんじゃないのか」
キラーも同じ事を思ったが、敢えて声に出さなかったのに、キッドが言ってしまったとばかりに溜め息を吐いた。
そして、ドレークもドレークで、今までどんな扱いをその男にされてきたんだと思うのだった。
そんな時、ナミが大声を上げた。
「コウ!あんたのお母さんから電話!何で、電源切ってるのよって怒ってるわよ!」
「何でナミが、うちの母親と番号交換してんのよ!!」
「とにかく、連絡してあげなさいよ!!」
「まったく……」
複雑な思いのまま携帯を取り出し、電源を入れた。
そして、自分の母親にかけるとコール音が鳴った。
コール一回で出た母親が発した第一声。
『このバカ娘!!何で電源切ってるのよ!!やましい事がないなら切るな!!』
電話から聞こえる声がやたら大きくて、周りにも聞こえたのだろう。
瞬間的にシン……と静まり返った。
『だいたいにして、直ぐに連絡取れないなんて……ナミちゃんが一緒じゃなかったら、連絡が取れなかったじゃない!!!』
「…………それで?何の用?」
『旅行に行ってくるから、一週間は一人で過ごしてね』
「ちょっと待って!私、鍵持ってないよ!?」
『持ち歩かない方が悪い!一週間、何処かに泊まってなさい!』
「はぁ!?なら、今から取りに……」
『もう搭乗の時間だから行くわね!』
「搭乗って……既に空港なの!?」
『男のところにでも転がりこんでな!』
そう言って、無情にも通話が切れた。
これには、コウの方も切れた。
「それが親の言う事か!!!!どれだけ自由人なの!!」
「相変わらずね~、あんたの母親と父親は!」
お腹を抱えて笑うナミに、結構日常的な事なんだと分かった一同。
「……結構、苦労人なんだな……」
「ドレークさん、しみじみと言わないで下さい」
「どうするんだ?」
「……ナミ……」
泊めてというような眼で見れば、ナミはニッと笑った。
「なら、ビビの家で一週間騒ぎまくるわよ!!」
「えぇ!?それは、ビビさんの家に迷惑……」
「ふふ。構わないですよ。パパもみんなが来れば喜ぶと思うわ」
「……ビビさん、寛大な人ですね」
「そんな訳で、みんな今日から一週間はビビの家に泊まり込みよ!!」
「ナミ!!みんな、仕事があるでしょう!!」
その言葉に、それぞれは言葉を紡いだ。
「元々、二週間の休みは取ってたしな」
「同じく」
と言うのは、キッドとキラー。
「ずっと船の上だったから、休みを取れって怒られたぞ!!」
そう言ったのはルフィ。
「仕事の関係で日本に来たから、一週間は滞在予定だ。その間、出かける事もあるが、遊ぶ時間ぐらいはある」
手帳を見ながら言うのはドレーク。
「大きな仕事を終えたばかりだから、私も休みよ」
ニッコリ笑って言ったロビン。
…………どんだけ、タイミングの良い休みなんだ?
全員が、同じ時期に休み……どんな偶然ですか?
そんな風に思っていれば、ナミはニンマリと笑った。
「決まりね!」
そうと決まったら、どんどん飲むわよ!!と、グラスを手にして飲み始めた。
そんな時、またも携帯が鳴った。
何だと思い、画面を見れば幼馴染の男からだった。
……電源を切った後も、ずっと掛けていたのかと思いたくなった。
「……それが、さっき話してた幼馴染か」
ドレークが、画面の覗き見るように見れば、コウは苦笑いをした。
「……貸してみろ」
何故かドレークに携帯を貸せと言われ、首を傾げれば、そのままやんわりと携帯を取られた。
何をするのかと思えば、通話ボタンを押して、電話に出てしまった。
『テメェ!!何で電源切ってんだよ!!このオレが、わざわざ電話してやってんのによ!!』
ドレークが声を発する前に、男の方からギャンギャン騒ぎ出した。
『テメェはオレの言う事を聞いてれば良いんだよ!!さっさと来いよ!!!』
携帯から漏れる声に、その場にいる者達は眉を顰めた。
『おい!!聞いてんのか!?』
「……耳障りだな」
男はコウではないと分かった瞬間、更に声が低くなった。
『誰だ?テメェ……』
「コウの知り合いだ」
『どうでも良いが、何でその知り合いが携帯に出るんだよ』
「……彼女を随分な扱いをしてるようだな」
『関係ねぇだろ!あいつがオレを好きだと言うんだ!どんな扱いを受けようが、それであいつは喜んでるんだよ!!』
「自惚れ過ぎだ。少しは自分がくだらない男なんだと認識したらどうだ?」
『んだと……?誰だが知らねぇが、どうせあいつの股に顔を突っ込んで、喜んでるバカな男なんだろ!?あいつも、どうしようもない尻軽だな!!』
これには周りで聞いてた者達も黙ってはいなかった。
キッドは、ドレークから携帯を取り上げれば怒鳴った。
「ゴチャゴチャとうるせぇ野郎だな!!」
『別の男か……あいつをマワして楽しんでるのか?』
「テメェの頭は、それしかねぇのか!!??」
『あんなガキくさい奴……一緒にいても楽しくないだろ』
「あぁ!?」
『あいつはオレのもの……どう扱おうが、勝手だろ!さっさと、そいつに代われ!!』
すると、今度はルフィが携帯を手にした。
「お前はバカなんだなぁ」
『あぁ!?今度は誰だ!?』
「オレはルっぅが!」
「いちいち名乗るな!!」
ナミに遮られたルフィの手から、今度はナミへと携帯が渡った。
「あんたにコウは勿体ない!!二度とコウに近付かないでくれる!?」
『その声……聞き覚えがあるな』
「二度と電話しないで!!」
『乱交か?』
「っあんた、最低!!」
『オレみたいな優秀な奴が、あいつを構ってやってるだけ有難いってもんだろうが!!』
「優秀?大手企業に入社出来たぐらいで、ほざいてんじゃないわよ!!どんなに優秀でも、人としては最低なのよ!!」
『あの会社に入ってしまえば、こっちのもんだろうが!!赤髪社を舐めるなよ!!』
そんな時、ナミの手から携帯が別の人物に渡った。
「話しは聞いてたよ。君はうちの社員だったのか」
『…………は?』
「赤髪社のシャンクスだ」
『シャンクス……社長!!??』
「人事も見る眼がなかったようだな」
『しゃ、社長!?』
「君は、今日でクビだ!人との交流を大切にしない君には、うちの会社にはいらないよ」
『ちょっと待って下さい!!』
「明日から、来ないで良いからな」
そう言って、一方的に通話を切った。
「いやぁ、遅れて悪いな。会議が長引いちゃって……」
柔らかく笑う人物に、コウはポカンとしていた。
「コウ、さっきの会話で分かったと思うけど、赤髪社の社長やってるシャンクスね!」
「よろしく、コウちゃん!」
「よ、よろしく……お願いします」
「固いなぁ!もっと、フレンドリーに話してくれて構わないよ!」
「……はい」
…………ナミ。
どんだけ凄い人達と知り合いなの?
あり得ないでしょう……。
「シャンクス!遅ぇぞ!!」
「お前は相変わらず、肉があればそれで良いんだな」
「にしし」
……あの大企業の社長と、タメ口で話すルフィさんも、何処かの大物なんでしょうか……そう思わずにはいられなかった。
「なぁ、ナミ!他には誰が来るんだ?」
「トラ男君も来るわよ!」
とらお?
その人も大物なんですか?
……とは、怖くて聞けないコウ。
そんな時、まるで見計らったかのように一人の人物がやってきた。
「トラファルガー、遅せぇぞ!!」
「頭が金属で出来てる奴とは違って、こっちは忙しかったんだよ」
「んだと!?」
…………この人も眼付きが……。
裏の住民の方ですか?なんて思っていれば、ナミが紹介してきた。
「名前はロー。通称トラ男!これでも医者なんだよ!」
あれですか!?
ブラック何とかみたいな医者ですか!?
闇医者ですよね!?
むしろ、患者を解剖してませんか!?
「……おい」
「はいー!!!」
「……疑ってるだろ?」
「滅相もございません!きっと素晴らしいお医者様なんでしょうね!!!」
これには、全員が笑った。
「コウ!!顔が引き攣ってるわよ!!」
「ナ、ナミ!」
「医者には見えないもの。当然の反応よね」
「ロビンさん……(追い打ち掛けないで!!)」
「そのツラじゃ、そう思われて当然だな!!」
「……キッドさん……」
どうしよう……この場の雰囲気に慣れてきてる自分がいる。
こんな個性が強い人達がいる場所だと、本当に自分が平凡な人間なんだと思わされる。
「もう十一時か……そろそろ、ビビの家に移動でもする?」
「あれ?朝まで飲むんじゃ……」
「バカねぇ、コウ。これ以上人数が増えたら、入りきらないでしょ」
「…………まだ、人が集まってなかったの?」
「当然!残りは、ビビの家に集合させれば良いでしょ」
そう言って、メールを打ち始めた。
「ほら、さっさと行くぞ!」
「え?まだ、支払いが終わって……」
「もう払ったぞ!」
シャンクスの言葉に、コウは慌てた。
「あの、いくらでした?自分の分は自分で……」
「あぁ、それなら気にしないで良いよ!さっきは、元社員が迷惑をかけたんだ。お詫びとして、奢られてよ!」
気を使わせない言い方……大人だなぁと思っていれば、周りは慣れているように、ごちそうさまと言っては店を出始めた。
「コウちゃんも、あれぐらい図太くならなきゃ」
「…………」
……うん。
気にしたら、何となくいけないような気がしたぞ。
「とりあえず、店を出よう」
「はい。……あの、ごちそうさまです。ありがとうございます」
お金を出してもらったので、ちゃんとお礼を言えば、何故かシャンクスに頭を撫でられた。
「礼儀正しいな!他の奴らは、そんな事言わないから新鮮だ」
「え!?」
「もう、オレが奢るって定番になっちゃったからな」
そう言って豪快に笑うシャンクスに、みんな本当に図太いなと思うのだった。
そして、お店を出れば二人を待ってた一同が、早く行こうぜ!なんて言って、歩き出そうとすれば、聞きなれた怒鳴り声が聞こえた。
「テメェのせいで、職を失ったじゃねぇか!!」
幼馴染の男が、コウに逆恨みし、暴力団らしき人達を引き連れてやってきた。
「どうして此処が……」
「さっきの電話で、この店の名前が聞こえたからな」
あぁ……この店のBGМは、この店のオリジナルだから、分かりやすいんだったと思っていれば、男は怒鳴った。
「くそ女が……全部、お前のせいだ!!」
そう言って持っていた木刀をコウに向かって振りかざそうとすれば、ドレークに手を掴まれた。
「女に振り回すような物じゃないだろ」
「テメェ!!手を離せ!!」
「なら、木刀から手を離すんだな」
「っこの!!」
男がドレークに向かって蹴りを入れようとすれば、それより早く男を地面へと叩き付けた。
それを見てた、周りの男達は一斉に攻撃体勢に入った。
「おいおい……あんちゃん。やってくれたねぇ」
「オレ達に逆らうとどうなるのか、教えてやるぜ」
そんな時、コウの後ろから、不敵な笑い声が聞こえた。
「喧嘩上等!良いねぇ……久し振りに遊ぶか!?」
そう言ったのはキッドだった。
遊ぶという言い方をしたキッドに、コウは絶句した。
「キッド、程々にしろよ」
……キラーさん。
其処は普通、止めるべき言葉が出るのでは……なんて思っていれば、ルフィやローまでも笑っていた。
この二人もまた、遊べるぞ的な笑みを浮かべてるのは何でだろうか……。
しかも、一番マトモそうなシャンクスまでも笑ってる……。
この状況で笑えるこの人達は、本当に何者なんだろうか……。
そんな時、男の一人が声を上げた。
「なぁ……あの男……キッドって呼ばれてなかったか?」
「あぁ!?それがどうした?」
「キッドと言えば……あのワンピースの……」
一人の男の言葉に、仲間達はギョッとした。
「あの伝説の暴走族……ワンピース……」
……暴走族。
つまり、ワンピースとはチーム名と言う事か?
………………っっじゃなくて!!
暴走族!!??
……妙に納得してしまう自分がいる!!
「しかも、あそこにいるのってワンピースのルフィとローじゃないか!?」
「ナミやロビンまでいるぞ!!」
「こっちはビビだろ!!」
「ちょっと待て!!そうなれば、そこの男は……ドレーク!!??」
「じゃあ、其処の赤髪は幹部の……っ!!」
…………えっと……。
どう言ったら良いのでしょうか……。
つまり、此処にいるナミの知り合いは……昔の暴走族仲間かい!!??
平凡に生きてきた私には、本当に別世界の住人じゃないですかぁ!!!!!
「あれ~?どうしたんですか?お祭りっすか?」
声のした方へと顔を向ければ、四人の男がいた。
「ちょっと、あんた達!!ビビの家に集合ってメールしたでしょ!!」
ナミが、新たに現れた男四人に向かって怒鳴っているという事は……この人達も仲間ですか!?
「あ、コウ。ちょうど良いから紹介しとく!右から、ペンギン、シャチ、ヒート、ワイヤーね!」
「…………ナミ」
「何?」
「人が多過ぎて、名前を覚えるのに必死です」
……今日一日で、かなりビックリな人生経験をしてるような気がするのは……絶対に気のせいじゃない。
このまま、ナミ達の雰囲気に呑まれていきそうで……良いのか、悪いのか……分からないぞ。
ナミから紹介を受けてたコウに、幼馴染の男が声を張り上げた。
「オレを無視して、話してるんじゃねぇよ!!お前は、オレの言う事だけ聞いてれば良いって言っただろうが!!早く来いよ!!」
そんな言葉に、周りにいた男達は慌てた。
「お前!!此処にいる奴らの事を知らないのか!?」
「お前が痛い目に合わせたいと言ってた女も、ワンピースの奴なんだろ!!??マズイだろ!!」
「そうだ!!奴らと一緒にいるのが、何よりの証拠だろ!!」
「何言ってるんですか!?あいつは、オレに従うしか能のないバカ女ですよ!!!」
これには、ナミが眉間に皺を寄せた。
「本当に、あんたって最低!!コウは私達の仲間よ!!仲間をバカにするなんて……絶対に許さない!!」
「ふふ、ナミの言う通りね。どうお仕置きしましょうか?」
ロビンさん……その笑顔……何となく怖いです。
「仲間?この女は、オレがいなきゃ何にも出来ない能無しだぞ!!良いから、さっさとそいつを寄こせ!!」
幼馴染の男が言った瞬間、周りにいた男達は溜め息を吐いた。
「相手がこいつらなら、オレ達は手を引く」
「どうしてもって言うなら、お前一人で頑張るんだな」
「こいつらの事を知ってる奴は、絶対に手を出そうとはしないぜ」
「ちょっと待って下さいよ!」
幼馴染の男が慌てて引き留めようとするも、男達は直ぐにその場を去って、一人残されてしまった。
「……で?あんたはどうするの?どうしてもコウを連れて行きたいというなら、此処にいる全員を倒してから連れて行く事ね!」
ナミの言葉に、男はコウを睨んだ。
「その尻軽で、そいつらを味方にしたのかよ!!流石、能無し!!身体を使うしか考えられないのか!!」
これには、全員が殺気立った。
「そうやって、媚を売ってきたのかよ!!」
男が言い終わるのと同時に、男は誰かによって殴られ、吹っ飛んだのだった。
「さっきから聞いてれば……オレは、お前みたいな奴は嫌いだ!!」
「ルフィ……さん?」
「コウ!!こんな奴、気にする事ねぇぞ!!」
「流石ルフィ!一番最初に暴れると思ったわ!」
「ナミ!暴力は……」
流石にマズイだろうと思っていれば、何処からか派手に笑う人が現れた。
「流石は、ワシの孫だ!!」
「じいちゃん!」
「ずっと見ておったぞ!」
「ガープさん!今回は喧嘩じゃないからね!仲間を守る為よ!!」
ナミがすかさず言えば、ガープと呼ばれた人は笑った。
「分かっとるわい!こいつは連行していく!お前達の喧嘩は……今回は見逃してやる!じゃあのぉ!」
そう言って男を引き摺り、嵐のように去って行った。
呆然としてたコウはポツリと言った。
「……嵐のような人だね」
「あの人はルフィのおじいちゃんで、警察官なのよ!」
「へぇ……ナミが遠い人物に見えてきたわ……」
「昔は、よく追い掛けられたものよ」
サラリと言うロビンに、その場にいた全員が懐かしいなとばかりに笑った。
「とにかく、さっきのは忘れて、ビビの家で飲み直すわよ!!」
ナミの言葉に、全員が歩き始めた。
「ほら、コウも!」
「……一般人の私には、この世界に入っていけない……」
「何をブツブツ言ってるのよ!置いてくわよ!!」
「……久し振りにみんなで会うんでしょ?私は遠慮しておくよ!みんなで楽しんで!」
「何言ってんの?あんたも、既にワンピースの一員だから!」
「はぁ!?」
「此処にいるみんな、結構あんたの事を気に入ってるわよ!既に一員だと思ってるから!」
何ぃ!!??
既に、仲間入り!?
…………気が付けば、私も闇の住民に仲間入りですか!?
無理でしょ!!!!
「ほら!!みんな、あんたの事を待ってるわよ!!」
言われた通り、みんなの方を見れば、こちらを向いて待ってくれていた。
「……どうして、私を……」
「それは、みんなに聞いてみると良いんじゃない?」
そう言って、背中を押されたコウは、みんなの前まで行った。
「えっと……」
いざ前に立つと、何を言って良いのかが分からない。
俯いてしまえば、キッドが頭を荒っぽく撫でてきた。
「ゴチャゴチャ言ってねぇで、さっさと行くぞ!」
そう言って、スタスタと歩き出せば、キラーはフッと笑って、キッドなりの歓迎の仕方だ……と言って、キッドの後ろを歩き始めた。
驚いて、眼を見開いていれば、ローが何故かコウをジッと見ては、無言で歩き始めてしまった。
それを見てたロビンがクスクス笑った。
「ローは、歓迎してない人には非情だから。何も言わなかったのは、歓迎してるって事だと思うわ。もちろん、私も歓迎よ」
優しく笑うロビンの後、ビビもやってきた。
「早く、お家に行きましょう!」
「コウ!早く来いよ!!」
「ルフィさん……さっきは、ありがとう」
「オレは、あいつが嫌いだから殴っただけだ!気にすんな!!」
にししと笑うルフィ。
「お前は中々個性が強く、面白い。酒を飲みながら、もっと話しをしてみたいもんだ」
そう言ったドレークも、歩を進めた。
……個性が強いとか言われたけど……。
初めて言われましたよ……はい。
「女が遠慮なんて、逆に駄目だぞ!」
「シャンクスさん……」
「楽しく行こうぜ!!」
みんなから声を掛けられたコウは、ナミを見た。
「ね!もう仲間なのよ!」
そう言って手を引かれたコウは、自然と軽い足取りで、みんなの後ろを歩いた。
こんな個性の強い人達に馴染むのは無理だと思ってたけど、慣れてしまえば面白いかもしれない。
仲間と言って迎えられるのも、むず痒いけど悪くない。
恋人を見付けるより、この人達と遊んだ方が、今は楽しいかもしれない。
今日のこの数時間だけで、人生が大きく変わったような気がするけど、こんな人生の変わり方なら良いかもしれない。
こういうのは、些細な事がきっかけなのかもしれない。
仲間……。
友達……。
悪くない響きだ。
コウは、久し振りに曇りのない笑顔を浮かべたと、自分で思った。
闇の住民になるつもりはないけど、楽しんでやる!!
知らない世界の話しが聞けるかもしれない。
新しい発見があるかもしれない。
少しは、自分というものを出すのは良いのかもしれない。
ビビさんの家に着いたら、少しは自分というのを出して話してみよう。
この人達なら、私という人間を受け止めてくれるだろう。
もしかしたら、ナミは自分を抑え込んでる私に気が付いてたんだろう。
今日、此処に連れてきてくれたナミに感謝!
「あ……コウ!言い忘れてたけど、まだ集まってない連中なんだけど……」
「ナミ……今は名前を言わないで良いや。きっと覚えきれない……」
「じゃあ、注意すべき人物だけ言っとく!サンジ君でしょ!ブルックでしょ!フランキーも変態だから要注意人物に入れておこう。それから……」
「ナミ……本当に、今は良いや」
今日一日で、どれだけの人物達とご対面なんだろうか……。
これから行く場所での不安が増えたけど……退屈しない日常になっていくのだろうという事だけは分かった。
今は、それで良いや!!
あとがき
……ごめんなさい。
結局、何が書きたかったのかが分からない内容でしたね。
まとめると、仲間や友達は良いもんだぞ!という事です。
…………スミマセン。
しかも、現パロ……。
どうにも、私には書けない世界観でした。
もう、無謀な事はしない。
最初で最後の現パロにしようと思います。
他にも、様々なキャラを出したかったのですが……かなりの勢いで長くなりそうだったので、止めました。
シャンクスが出た辺りで、白ひげメンバーも書こうかと思いましたが……挫折。
エースだけでも出せば良かったかなと、微妙な心残り……。
グチャグチャなこの作品を読んで下さった方、本当にありがとうございます。
皆様が素敵な夢に出会えますように☆