好きだよい
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ふぅ……さっぱりした」
スウは戦闘後、お風呂へと来ていた。
「香水の匂いも落ちたわね」
お風呂から出て脱衣所で着替えていれば、フッと先程の事を思い出した。
さっきのサッチは、いったい何がしたいのだろうと悩んでしまった。
「……からかわれた……んだよね……」
そう思うと、あの格好をしたのは失敗だったと後悔するのだった。
きっと呆れられてしまったのだろうし、嘘を言った事への報復なのかも……そう思うと、からかいも大人しく受けようと思った。
「……暫くは、笑いの種にされるんだろうな」
俯いては溜め息を吐いた。
着替え終わったスウは、さっそく雑務をしようと脱衣所を出て、タオルなどを部屋に置きに行った。
「あ、スウ!!ちょうど良かった!!」
クルー達の服がそろそろ渇いてるだろうと思い、取り込む為に甲板へと向かってる中、サッチが話し掛けてきた。
先程の事もあり、気まずいと思うスウだったが、何か仕事でもあるのだろうと思い、平常心を装って返事した。
「サッチ隊長……何か仕事でも?」
「あぁ!これ、エースから頼まれたんだ」
そう言って差し出したのは、二番隊の予算報告書だった。
「……エース隊長は?」
「バカやらかして、イゾウのお説教受けてんだ。でも、この書類を今日中にマルコに渡さないといけなくてな……」
「もっと早くに出せば良いのに……」
「いつもギリギリに出すんだよなぁ。オレも、これから夕飯の仕込みがあるからさ……変わりに頼まれてくれないか?」
「……分かりました。マルコ隊長に持っていけば良いんですよね?」
「あぁ、頼む!」
そう言って、サッチは食堂へと向かうのだった。
サッチを見送ったスウは甲板へと向けていた足をマルコの部屋の方へと変えた。
「マルコ隊長。二番隊のスウです」
マルコの部屋の前に着いたスウはドアをノックした。
だが、返事が返って来なかった。
もう一度ノックするが、それでも何の返答もなかった。
「これ……今日中って言ってたよな……」
何か別の用でもあって部屋にいないなら、とりあえず机の上にでも置いておけば良いかなと思い、恐る恐るドアノブを回しドアを開けた。
「すいません……失礼します」
とりあえず、いなくとも声をかけて部屋に入った。
入って直ぐに机が視界に入ったので、机に書類を置いた。
「此処なら、眼に入るよね」
目立つところに置いて部屋を後にしようとすれば、ちょうど良く部屋の主が戻ってきた。
……ナース長と一緒に。
「あら?あなたは二番隊の……」
ナース長の声に、スウは慌てて声を発した。
「ッスウです。勝手に入ってしまい、すみません。頼まれた書類を持って来たのですが、ご不在だったようなので、机に置いておこうかと……」
「そうかよい」
マルコはその書類を確認しようと机に近付き、書類を手にした途端、眉を顰めた。
「エースは?」
「あの……イゾウ隊長と一緒らしくて……」
「らしくて?エースに頼まれたんじゃないのか?」
「サッチ隊長に頼まれまして……」
「はぁ……分かった。悪かったな」
「いえ……失礼します」
部屋を出てドアを閉めた瞬間、ナース長の声が聞こえた。
「ようやく、二人きりになれたわね」
「……そうだな」
「ふふ……その顔、そそるわね」
中から聞こえた会話は、まるで恋人同士のような会話。
これ以上聞く訳にもいかず、直ぐに部屋の前から去った。
聞く訳にもいかない……言い訳だ。
聞きたくないだけ。
……確かに、マルコ隊長とナース長はお似合いだと思う。
この恋心は海に沈めてしまおうと、スウは甲板に向かった。
甲板へと出たスウは、人気のない場所へと移動し、海に向かって囁くように言った。
「……マルコ隊長、好きでした」
これからは、ただのクルーとして頑張ります。
海を漂う波を見て、気持ちを落ち着かせた。
全ての思いを海へと吐きだしたスウは、深呼吸をして意気込んだ。
「さて、洗濯物が乾いてるか見てこないと!」
無理矢理気持ちを切り替えたスウは洗濯物を回収し、畳んだ後にクルー達に届けに行くのだった。
「よし、後は自分の服だけね」
全ての洗濯物を配り終えれば、自分の部屋に洗濯物を置きに行った。
その途中で、エースに声を掛けられた。
「スウ、書類は!?」
「……エース隊長、今度は何をやらかしたんですか?」
「色々とあるんだよ!」
「……そうですか。書類はちゃんとマルコ隊長に渡しましたよ」
「そうか!助かった!オレが渡しに行けば、絶対に怒られるんだよなぁ」
「ちゃんと前以って提出すれば良いじゃないですか」
「……色々とあるんだよ」
流石に苦笑いしか出なかった。
「この後、何か仕事でも?」
「いや、ないよ。食堂で飯でも食おうぜ!」
「分かりました。では、私は洗濯物を部屋に置いた後、食堂に行きます」
「おう!早く来いよ!」
そう言って、お互いに別の方向に向かおうとすれば、スウは服が引っ張られ、思わず体勢を崩して転びそうになった。
体勢を立て直したスウは、未だに引っ張られる服の先を辿れば、どうやらエース持っていた短刀の柄に服が引っ掛かってしまったようだった。
「わ、悪ぃ!!」
エースも直ぐに気が付いて、外しに掛かった。
が、不器用なのか大雑把なのか、中々解けないようだったので、スウが代わりにやりますと、服を床に置こうとして、エースに遮られた。
「せっかく洗ったのに、置いたら汚れるぞ」
「ですが、このままでは……」
服を見れば、真剣に服を外そうとしてるせいか、少し服が焦げてきているような気がした。
自分が火である事を忘れているのでは……そう思った。
……何でだろう、さっきよりも服が絡まってる。
どうやったら、こうなるのだろうと溜め息すら出なかった。
「……エース隊長」
「もう少し待て!」
「…………」
今の状態では、しゃがんで服を置く事も出来ないと思い、持ってた服を床に放り投げた。
「スウ、何やってんだ!!また洗濯のし直し……」
「エース隊長!!」
エースの言葉を遮ったスウは、エースをジッと見た。
そして、もそもそと絡んでる服を脱いだ。
「こっちの方が早いです」
「バカ!!女がなんちゅう格好を!!」
慌てて後ろを向いたエース。
どうやら、絡んでしまった服しか着てなかったようで、今のスウは上半身下着姿だった。
「大丈夫ですよ」
そう言って、床に放り投げた服を取り、着替えようとして廊下に声が響いた。
「何やってんだよい」
「マルコ隊長?」
上を見れば、自分を見てるマルコと眼が合った。
「エース……」
「いや……これは事故でな!!」
「……何でスウが下着姿なんだ?お前の手にある服は?」
「言っとくけど、オレが脱がせたんじゃねぇからな!!」
後ろを向いたまま慌てるエースに、マルコは自分の着ていた上着をスウの肩に掛けた。
「エース……オレの部屋に来い」
「……マ、マルコ……何か声が怖い……」
「スウは早く部屋に戻って服を着てこい」
「は……はい」
直ぐに床に置いた服を拾い、その場を去った。
残されたエースはマルコに引き摺られるように、マルコの部屋へと連行された。
バタンッと音を立ててドアを閉めたスウはドアに寄りかかって、その場に崩れ落ちた。
「……マルコ隊長の声……怖かったぁ」
そして、自分の肩に掛けてくれた上着を見ては、顔を真っ赤にさせた。
こんな風に女扱いをされるとは……。
流石に下着姿だったのもあるだろうけど……部屋に戻れと言った時の声は、エースに声を掛けてた時みたいに低い声ではなく、優しさの混じった声だった事に、スウは自分の顔を手で覆った。
「……忘れようとしてるのに……あんな優しい声……反則だぁ……」
そして、フワリと上着から香るコロンの匂いに、思わずマルコに抱き締められてるみたいだと錯覚を起こしたスウは、周りに誰もいないのに何故か慌てた。
「そんな事を考えるより先に、早くマルコ隊長に服を返さないと!!」
慌てて立ち上がり、クローゼットから服を取り出し着ようとすれば、突然部屋のドアが開いた。
「スウ、何やってるんだ?飯が冷める……」
「……サッチ隊長……」
「…………その下着、シンプル過ぎない?もっと色気のある方が良いと思うけど……」
謝るどころか、駄目だしされたスウは固まった。
「せっかく出てるところは出てるのに……勿体ない」
「…………サッチ隊長……こんな私でも、恥じらいというものがあります」
「ん?」
「ドアを閉めてほしいのですが……」
サッチがあははと笑った瞬間、サッチは背後から強烈な衝撃を感じ、床に倒れ込んだ。
「……スウがドアを閉めろと言ってたろうが」
「マルコ……もう少し……手加減を……」
「マルコ隊長……何で此処に……」
「エースに謝らせる為に来たんだよい……余計なものまでいたがな」
「オレ……無視?」
サッチは痛みから起き上がれず、床に伏したままだった。
「早く着替えろよい」
「…………ドアを閉めて下さると有難いのですが……」
そう言われたマルコは、下着姿のままでいるスウを見ては固まり、そのまま無言でサッチを連れて部屋を出た。
「……サッチ隊長の言う、色気のない下着姿を見られた……」
もっと可愛い下着を身に付けておくべきだったと後悔したスウ。
一方で廊下に出たマルコ達は、誰も口を開かず沈黙していた。
そんな中、最初に声を発したのはサッチだった。
「……何で、あんなシンプルな下着しか持ってないんだ?」
「……何の事だよい」
「スウの下着」
この瞬間、まだ床に伏していたサッチを踏み付けたマルコ。
「……何でお前がスウの下着を把握してるような口振りなんだよい」
「あの子の事だから……似たようなものしか持ってないんじゃないかと思って……」
「……変態だな」
その場で成り行きを見てたエースが言えば、サッチは眼を見開いた。
「変態の何が悪い!女の身体は神秘だぞ!想像しただけで下半身がゾクゾク……」
マルコはサッチの頭を床にめり込ませた。
「スウで厭らしい想像をするな!」
「……何でスウは駄目なんだ?」
エースが聞けば、マルコはエースを見た。
「妹をそういう眼で見るなと言ってるだけだ」
「……マルコ、それって言い訳じゃなくてか?」
「は?」
「いや……何となくだけど、独占欲的な言い方にも聞こえたから……」
これにはマルコは口を閉ざした。
そして、床から這い上がったサッチが口の端を上げて言った。
「アオイちゃんの姿を見た時、マルコ見惚れてただろ!その後にアオイちゃんの正体がスウだって知って、少し扱いが変わっただろ!」
「……変わってねぇよい」
「いや、優しくなった」
「いつもと変わらない」
「スウを見る眼が、妹から女に変わってるぞ」
「気のせいだよい」
「そうか……なら、本当にオレが貰うぞ」
「あいつは物じゃない」
「……年齢の差を気にしてるのか?」
確信を突かれたとばかりに、マルコは黙った。
「それに、今まで女として見てなかったのに、あの姿を見て惚れたとか……今更に思ってるってか?」
気持ちを知ってても見て見ぬフリ。
どうしても、妹ぐらいにしか思えなかった。
それが、あの姿を見て惹かれ……前まで何とも思ってなかったスウに罪悪感を感じて……。
いい年したオッサンが外見だけで……なんて思ってしまう。
サッチには全て見透かされているようで、言い当てられたと表情に出たマルコを見て、サッチは溜め息を吐いた。
「別に、外見から好きになっても良いんじゃないのか?それまで知らなかった一面を見て惚れるとか……よくある話しだろ」
「…………」
「今までの事を思うんなら、今度はお前が追いかければ良いんじゃねぇ?」
「サッチの言う通りだと思うぞ!今までスウが眼で好きだと語り掛けてたなら、今度はマルコが好きだって言えば良いと思うぞ!!」
エースの言葉に、マルコは頭をガシガシと掻いた。
何も言わないマルコにサッチは項垂れた。
「お前……そこまで繊細だったか?」
「……んな訳あるかよい」
「これ以上、言い訳がましい事を言うのは、それこそスウに失礼ってもんだろ!」
「…………お前らに諭される日が来るとは……オレも落ちたもんだよい」
「恋愛マスターのオレにかかれば、こんなもんだよ!後は当人同士で!」
サッチはエースを連れてその場を後にすれば、マルコは首を傾げた。
当人同士で……?なんて思っていれば、おそるおそるといったようにドアがゆっくりと開き、隙間からスウが顔を覗かせて、こちらを見てきた。
「……聞いてたのかよい」
「……聞こえたんです」
「…………」
「…………」
「…………今更だと思うか?」
「へ……?」
「お前に惹かれるオレは……今更だと思うか?」
「その……え?」
突然の言葉に、頭が真っ白になったスウ。
「エースの言う通りだな……」
「……マルコ隊長?」
「お前の態度が言葉に出さなくても……いつも好きだとオレに語りかけていた」
「そそそそ、それはっ!!」
「だから、今度はオレが言うよい」
マルコはスウの眼を見据えた。
「好きだよい」
叶うとは思ってなかった。
両想いになれるとは思わなかった。
あまりの事に言葉に出来ず、顔を真っ赤にさせて俯いたスウに、マルコは可愛い女だと思った。
そんな反応が見たくて、半分本気で半分からかいで好きだと囁き続ければ、次第に眼を潤ませたスウだった。
「手の掛かる二人だよなぁ」
食堂へとやってきたサッチとエース。
「上手く行くと良いな」
「ビスタ!!上手く行くと良いなじゃなくて、上手く行ったんだよ!」
「それにしても、部屋に連行された時、マジでマルコの視線だけで殺されるかと思った……」
ぐったりと机に額を乗せたエースが言えば、サッチは笑った。
「服を脱ぐとは予想外だったけどな」
「さり気なく、短刀に服を引っ掛けるのも楽じゃない」
「私だって、危うくマルコと恋人同士だと思われそうだったじゃない」
「ナース長!その色気でよくぞスウの恋心を引っ掻きまわしてくれた!!」
「意味はなかったような気がするけど」
「だいたいにして、あの書類だって明日までの筈だよな?それなのにイゾウに説教って……」
エースが恨めしそうにサッチを見れば、またも笑顔で返された。
「別に本当に説教された訳じゃないんだ!」
「イメージの問題だ!部下に説教ばかりされてる隊長だと思われたらサッチのせいだかんな!!」
「スウはそんな風には考えないだろ」
「あのマルコが戸惑う程の恋……か」
ハルタの言葉に全員が苦笑いだった。
「まぁ、それでも妹の恋は叶った!オッサンの気持ちなんてどうでも良い!全ては可愛い妹の為!!」
「……お前もスウが美人だと分かった瞬間、切り替えが早いな……」
イゾウが言えば、サッチは熱く語った。
「良い女っていうのは、無条件で優しくされるってもんだろ!!」
「…………女を敵に回すような言い方だな」
「……だから逃げられてばかりなんだよ」
イゾウ、ハルタの言葉は聞こえてませんとばかりに、オレは恋のキューピットだぜ!!と叫んでいるのだった。
「マルコ隊長……もう勘弁して下さい……」
「今までの分も言うって言ったろ」
「だからって……」
「好きだよい」
「わ、分かりましたから!これ以上は私の心臓が!!」
「可愛いよい」
「マルコ隊長ぉ……」
顔をゆでダコのように真っ赤にさせたスウに愛を囁き続けるマルコ。
「あの青のドレスはオレの前だけにしろよい」
「はい……」
マルコはスウを抱き締めては、耳元で囁いた。
好きだよい
眼で語らない分、言葉で語ってやる
今までの分も
ずっと
好きだよい
あとがき
久し振りの短編でした。
しかもマルコ夢っていうね。
マルコ夢と言っても、殆どマルコとの会話がなかったような気もしますが……。
おそらく今年最後の作品かと思われます。
2013年の締め括りがマルコ。
本当はローにしようと思ってたが、気紛れな私らしいって事で。
別のキャラを書くのは中々新鮮でした。
またいつかマルコ夢を書けたら言いなぁと思います。
もしマルコのキャラとイメージが違う!!なんて思っても、ご愛嬌でよろしくお願いします。
皆様の元に、素敵な夢が訪れますように☆