月明かりの君
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綺麗な月夜だ……なんて、いつもは思わない事を考えてしまった。
「キラー」
キラーと呼ばれた男は、声のする方へと振り向いた。
「キッド……また何かやらかしたのか?」
キッドと呼ばれた赤髪の男は、顔に青筋を立てた。
「テメェ……」
「何だ。違うのか」
仮面を被るキラーは、表情は見えないが、その下でクスリと笑うのが分かった。
「それで?本当の用件はなんだ?」
「次の島……絶対に暴れるな」
どう言う事だと聞けば、キッドは大将がいるという情報が入ったと言った。
「此処で、大将とぶつかって先に進めなくなるのは避けたい」
「……違いない」
「他の奴らにも言っとけ」
承知したと返事をすれば、キッドは船内に入って行った。
それを見送ったキラーは、そのまま暫く、甲板から空を眺めてから、キッドからの命令を遂行する為、船内へと足を進めた。
翌日の夕方。
予定通りに島へと辿り着いた。
「全員、キラーから話は聞いてるな?絶対に暴れんじゃねぇぞ!」
キッドの言葉に、返事をするクルー達。
「先遣の奴らの話を聞いて、船で待機かどうか決める。それまでは、船を降りるな」
キラーが続けて言えばタイミング良く、先遣の者達が戻ってきた。
「戻りました」
「どうだった?」
キラーが聞けば、安心したような顔付きのクルー。
「どうやら、大将は今日中には……日が暮れる前には、この島を出るそうで。ログは一ヶ月と聞きました」
「海軍基地も見てきましたが、そんなに大きい所ではなかったので、大将さえいなくなれば、大した事はないですよ!」
それを聞いたキッドとキラーは、溜め息を吐いた。
「一ヶ月もかかるのか……」
「まぁ、大将がいなくなれば、過ごし易いだろ。だからと言って、派手に暴れてくれるなよ、キッド」
それはキラーにも言えるんじゃ……なんて、ワイヤーにボソリと言われたキラーは、無言の圧力をかけた。
「頭も十分お気を付けて」
誤魔化しにそう言えば、圧力が和らいだ。
「……今日は用心の為、船で待機。明日から行動する」
キラーの言葉で、その場は解散となった。
キッドも、今日はやる事がねぇと、部屋へと戻って行った。
キラーは溜め息を吐いて、航海士に目立たない所に船をまわせと指示した。
今日さえ凌げば、何とかなると。
行動を始めるクルー達を確認した後、空を見上げた。
「……此処の月夜は、どんなだろうか」
らしくない言葉を呟く自分に、フッと微笑を浮かべた。
誰にも届く事なく、波の音にかき消された事に、安心するキラーだった。
キラーの指示通りに、岩壁の影にひっそりと船をつけた。
未だに甲板にいるキラーは、船の場所を確認し、航海士に此処で良いとOKを出した。
休むよう航海士に言えば、船内へと入って行った。
そして、一息吐いたキラーは、またも空を見上げた。
「最近のオレは、どうかしてるな……」
そう呟いた時だった。
岩壁の上に人影が見えた。
(海兵……?)
既に日が落ちかけていた為、見え辛かったが眼を凝らすように見れば……女だった。
月明かりに照らされた女が……月夜が良く似合うと思った。
顔は見えないが、纏う雰囲気に魅了されてしまった。
眼が離せなかった。
眼を逸らしてしまえば、もう二度と見る事が出来ないと思うほどに……綺麗だった。
女を綺麗と思った事はなかった。
不意に突風が駆け巡り、船が大きく揺れた。
一瞬、眼を離した時には女はいなかった。
岩壁から落ちたのかとも思ったが、落ちた水音がしなかったので、それはないだろうと思っていれば、船内からキッドやクルー達が出てきた。
「今のは何だ!?」
「落ち付け、キッド。ただの突風だ」
なんだ突風か、などとクルー達が言う中、キラーの微かな雰囲気の違いに気が付いたキッドは不可解な顔をした。
「……何か変わった事でもあったか?」
「いや……」
それ以上、何も言わないキラーにそうかとだけ答え、またも船内へと入っていった。
クルー達も自分の持ち場だったり、部屋だったりと散らばる中、キラーだけは女のいた岩壁の上を見ていた。
翌日、またも先遣の者達に状況確認をさせに街へ行かせた。
キッドやキラーは甲板でクルーの帰りを待ってる時、不意にキッドが話しかけてきた。
「……お前、昨日何かあったろ?少し、様子が変だぞ?」
鋭いと思ったが、長い付き合いだ。
キッドに気が付かれるのは仕方ない。
気になる事でもあったか?なんて、更に言われてしまえば無言になる。
「……分かりやすいな、お前」
キッドが呆れたように言う。
「……まぁ、言わねぇなら、それでも良いがな」
変なところで鋭いこの男から、思わず顔を背けた。
これ以上、気付かれるのは気まずい。
そもそも、あの女に抱いた感情は一時の気の迷いだ。
珍しく月夜が綺麗なんて思った……それと同じように、気紛れ的なものだ。
思考に耽っていれば、偵察に出ていたクルーが戻ってきた。
「既に、大将は島を出たようです」
クルーの報告で、ようやく一息ついた。
「見張り以外は各自、自由にして構わない。羽目を外し過ぎないように」
キラーがそう言えば、それぞれが持ち場に着くなり、街へ行くなり、船でゆっくりする者もいる中、キラーはフッと昨日女のいた岩壁の上を見た。
その瞬間、何をしてるんだとハッとし、視線を戻せばキッドと眼があった。
「……そんなに気になんなら、行ってくりゃあ良いじゃねぇか」
「……気になってなどいない」
「無意識だろ。あの上に誰かいたか?」
答えに詰まり黙ってしまえば、キッドが笑い始めた。
「……何を笑ってる?」
「珍しいモンが見れた」
そのまま笑いながら船を降りて、街へと去って行った。
思わず固まって、立ち竦むキラーがいた。
そんなキラーを船にいた者達は不思議そうな眼で見てたとか。
酒を飲む気になれないキラーは、そのまま船に残るのだった。
日も落ちて空が暗くなった時、キラーは無意識に甲板へと出た。
別にあの女を気にしてる訳ではないと自分に言い聞かせながらも、岩壁の上を見た。
(……今日もいた)
見つけた事に頬が緩んだ。
そんな自分に気が付いてなかった。
自然と、どんな女だろうと、女のいる所へと向かっていた。
女の背後まで来た……。
後ろ姿では船から見えた印象と同じだった。
……綺麗の一言だった。
月明かりに照らされた女が……消えそうな程に儚く感じた。
その時、迂闊にもジャリッと石を踏んでしまい、音を立ててしまった。
それに気が付いた女が振り返った。
「……あなたは?」
「……驚かすつもりはなかった」
背後に人がいるとは思ってなかったのだろう。
未だに驚いた顔をしていた。
「……いつから其処に?」
「たった今だ」
「そう……」
女は一言呟けば、その場を立ち去ろうとした。
思わず手を掴んだ。
「な……何?」
「あ……すまない」
直ぐに手を離したが、どうして自分がこういった行動に出たのか分からず、困惑してしまった。
すると、女がクスクス笑い始めた。
訳が分からずにいると、女が口を開いた。
「何故、あなたが困った顔するの?」
「……顔なんて見えないだろ」
「分かるわよ」
だって分かりやすい、と言われた事に驚いた。
今まで、長い付き合いの奴になら言われた事はあるが、初対面の奴に言われた事などなかったから。
驚きで黙っていれば、女は月明かりに照らされながら綺麗な笑みを浮かべた。
「あなた……とても綺麗ね」
「……それは褒め言葉なのか?」
「フフ、ごめんなさい。男の人に綺麗は違ったかしら?」
「……何処が綺麗なのか、理解に苦しむ」
「だって、あなたお月様みたいなんだもの」
月?
それこそ理解出来ないな、と思っていれば、それが分かったのだろう。
あなたのイメージがお月様なのよ、と微笑まれた。
そんな風に思われて、正直嫌な気分はしない。
不思議と心地良いとさえ思ってしまう。
むしろ、女の方が……月が似合うとさえ思った。
「……私、本当に行かなくちゃ」
それでは失礼しますと、その場を去って行った。
ずっと姿が見えなくなっても、見送っていたキラーは深い溜め息を吐いた。
街に行けば会えるだろうか?
また明日、此処に来れば会えるだろうか?
そんな事を考えながら、船へと戻って行った。
船へと戻ったキラーに、見張りの者や街に行かなかったクルー達は驚きが隠せなかった。
やけに機嫌の良さそうなキラーに、何処かで鬱憤を晴らしてきたのかと顔が引きつっていたのだった。
明日には街で騒ぎになってるのではと……心配の眼差しで見られていた事に、キラーは気付かず部屋へと戻ってベッドに横になるのだった。
ウトウトしかけた時、バンと大きな音を立ててドアが開いた事に飛び起きて身構えたキラーだったが、入ってきた人物を見て構えを解いたのだった。
「……ノックぐらいしろ、キッド」
「テメェ……何やらかした?」
「何の事だ?」
「知らねぇとは言わせねぇぞ」
……本当に何の事だか分らなかった。
実際、オレは何もやってはいない。
何がどうなって、そんな話になってるんだ……。
そんな風に考えていれば、キッドは眉間の皺を増やした。
「クルー共がオレの所に駆け込んで来たんだよ!」
「何故だ?」
「知るか!!せっかく酒を飲んでたのに、シラけさせやがって!!」
「よく分からない事で怒鳴られても困るんだが……」
「オレだって知るか!!」
このままでは本当に良く分からないので、何故こうなったのか、ちゃんと説明してもらおうと思い、キッドを諫めた。
「そもそも、クルー達は何て言ってたんだ?」
「キラーが鬱憤晴らしに人を殺めてきた」
「誰だ?そんな事を言ったのは……オレは何もしてないぞ」
「やけに機嫌が良くて、怖いとも言ってたぞ……」
「……それこそ知らん」
脱力感を感じたキラー。
機嫌が良いと怖いって……何だそれは。
普通は逆だろ……。
「……昨日から気になってる事と、関係があるのか?」
……本当に変なところで鋭いな。
このまま、ずっと聞かれ続けるのも疲れるだけだと思い、キラーは女の話しをする事にした。
「……」
「……」
話し終えれば、何故かキッドは無言になった。
何か其処まで変な話をしただろうか?
そんな風に思っていれば、キッドの身体が小刻みに震え始めた。
笑いを堪えてるようだ。
「お前、その女に惚れたか?」
その瞬間、顔に熱が集まるのを感じた。
……仮面があって良かった。
こんな顔を見せたら、余計にキッドがからかってくるだろう。
「今まで女に興味を持ってなかったお前が……珍しいじゃねぇか」
「興味がなかった訳じゃない。好みがいなかっただけだ」
「お前……変な所でこだわりがあるな……」
「そうか?」
天然男が……などと、キッドに思われてるのを知らないキラーは、本当によく分からないといったように首を傾げていた。
「この島のログは一ヶ月。探してみりゃあ良いじゃねぇか」
「……そこまでする程じゃないだろ」
「惚れてんだろ?」
黙ったキラーに、分かりやすいと、またも笑われたキラーだった。
どうやら、いつの間にかキッドの機嫌も良くなってたらしく、食堂で酒に付き合えと言われ、ヤレヤレと思いながらも酒に付き合うのだった。
次の日、何故かクルー達にニヤニヤして見られているキラー。
訳が分からずいれば、ワイヤーから衝撃の一言を貰った。
「月明かりの君に会いに行かないのか?」
「…………おい」
「ん?」
「何だ……その月明かりの君とは……」
「何って、キッドの頭から聞いたぜ。月明かりの君に恋したんだって?」
それを聞いたキラーは、拳を握りしめ、震わせた。
「……キラー?」
「っっっっキッド!!!!」
船中に響き渡る程、大きな怒鳴り声を上げたキラーに、眼の前にいたワイヤーはもちろん、クルー達が驚いた。
キラーはキッドの部屋へと走って行った。
残されたワイヤーやクルー達は、ニヤリと笑った。
「頭の言うとおり、今のキラーは分かりやすい」
「おい!今日も会いに行くと思うか?」
「行く方に五百ベリー」
「ショボ!だけど、オレも行く方に二千ベリー」
いつの間にか賭け事にまでされてる事に、キッドに怒鳴っているキラーは知る由もなかった。
余談だが、誰一人として行かない方に賭ける者が居らず、賭けにならなかったとか……。
結局夕方になるまで、クルー達にからかわれたキラーは疲れ切っていた。
「……キッドに話すんじゃなかった」
後悔先に立たず……。
項垂れたキラーに、ヒートは苦笑いだった。
「月明かりの君に癒してもらえば?」
その言葉に、無言の圧力をかけ黙らせた。
「いや……でも、滅多にないチャンスじゃないか?」
冷や汗をかきながらも、めげずに言葉を続けるヒート。
「今しかないんだぞ?」
「……」
「後悔だけはしないようにな、キラー」
そう言って、その場を立ち去った。
ヒートの言葉を受けて、もう一度だけ会いに行ってみようと立ち上がったキラーは、そのまま船を降りた。
それを見てたクルー達は、よし!と言わんばかりに、コッソリと船を降りようとしたところでヒートに声をかけられた。
「何処に行くんだ、お前等」
「気になるじゃねぇか」
「お前は良い仕事したよ!」
その言葉を聞いたヒートは慌てた。
「ちょっと待て!オレはキラーの為に話をしたんであって、お前等の楽しみの為に話したんじゃねぇぞ!」
「知ってるよ!でも気になるだろ?キラーが惚れる女ってのが」
「駄目だ!!」
その時、横をキッドが通りすぎた。
「頭、酒場にでも?」
「……何言ってんだ?キラーの後を追うに決まってんだろ」
「頭ぁ!?」
流石、キッドの頭!とクルー達から言われてる中、ヒートだけは、オレは知らねぇぞと溜め息を吐きながらキッドの後を着いて行くのだった。
結局は同じく、気になっていたヒートなのだった。
昨日の場所に来れば女はいなかった。
まだ日が落ちてないからだろうか?
昨日も、その前も、日が落ちた時に見たのだから。
そう思ったキラーはその場に座り込み、暫く待ってみる事にしたのだった。
(……此処から見る海は……悪くないな)
ジッと海を見てるキラーの背後では、キッド海賊団の面々が隠れていた。
「まだ、来てないみたいですね」
「それとも振られたか?」
小声でクルー達が話していれば、キッドが静かにしろと睨むのだった。
その眼光によって黙ったクルー達。
その時、微かに人の気配がするのを感じたキッド達は更に気配を消した。
「あれ……?また来てたんだ」
女の声に振り向いたキラー。
「……此処が気に入った」
「そう?良かった。此処は私のお気に入りの場所だから、そう言ってくれて嬉しいな」
キラーの横に座り込む女は、キラーを見て微笑んだ。
「此処は嫌な事を忘れさせてくれる」
「……何かあったのか?」
苦しそうな笑みを浮かべる女に、キラーはマズイ事を聞いたかと焦ってしまった。
悪かった……そう言おうとする前に、女が口を開いた。
「私は……既に死んでる人間だから」
突拍子もない事を言った女に、不可解な顔をした。
「じゃあ、オレは幽霊と話してる事になるな」
「まさに、その通りよ……私は存在しないから」
訳のわからない事を言う女に、どう言って良いのか分からなくなった。
「何処にも、私という人間が存在する証がない……」
遠くを見つめる眼は、最初に感じた感情と同じだった。
儚げで消えてしまいそうだった。
「……それなら、オレ達海賊も似たようなもんだ」
「海賊なの?」
「見えないか?」
「世の中には色んな人がいるから、見た目で判断してない」
「そうか……」
続く言葉が見つからなかった。
この時程、言葉が出てこない事に腹が立った。
「……そういえば、名前を聞いてなかったわね。私はナツメ。存在しない人間の名前だから、余所では言わないでね」
「……キラーだ」
「キラー……良い名前ね」
「……そう言われるのは初めてだ」
フフと笑うナツメにつられて、キラーもフッと笑った。
それを見たナツメは嬉しそうにした。
「やっと笑った。ずっと困った顔しか見てなかったから」
「……見えないだろ」
「分かりやすいのよ」
どの辺が分かりやすいのか聞いてみたいが、この笑顔に黙らされてしまった。
この笑顔に弱いらしい。
「……今の私と話してくれる人がいないから……キラーがいて良かった」
「オレで良ければ話を聞くが?」
眼を見開いたナツメは困ったような嬉しそうな顔をして首を振った。
「巻き込む訳にはいかない」
「……何にだ?」
「私という人間の存在意義」
「……よく分からない事ばかり言うな」
俯いてしまったナツメにハッキリと言った。
「オレは海賊だから、今更何かをしたって何も変わる事はない」
「変わるわ」
「どうして、そう言える?」
「世界政府を……海軍を敵に回すわよ」
「元より敵だ」
「……大将が来るわよ」
この時、キラーはある事が浮かんだ。
「……此処に大将がいたのは、お前を狙ってたのか?」
「……大将が来てたの知ってたの?」
「この島に着いた時にな……」
なら分かるでしょ……なんて言われてしまった。
確かに、大将と遭遇するのは避けたい。
だけど、そんな危険を冒してまで、この眼の前の女を助けたいと思う気持ちがあるのも確かだった。
仲間を危険に晒す事に躊躇いはある。
矛盾だらけの自分の気持ちに嫌気がさしていた。
「もう……行かなくちゃ……」
そう言って立ち上がった。
「話してくれて……ありがとう」
辛そうな顔で笑ったナツメは、その場からいなくなった。
ナツメが去った後も、その場から動けなかったキラーはまたも海を眺めた。
(……あいつは、いったい何に縛られているんだ?)
助けてやりたい。
でも、仲間を巻き込む訳にはいかない。
そんな事をグルグルと考えていれば、背後に気配を感じた。
咄嗟に身構えたが、見慣れた者達だった事に溜め息が出た。
「……後を着けて来たのか?」
若干、声を低くして言えば、クルー達どころかキッドも渋い顔をしていた。
「少し調べてみろよ。暴れるのは、それからでも出来る」
「……話を聞いてたのか」
「……聞こえてたんだよ」
「……大将だぞ?」
「そんなモンが怖くて海賊が出来るか!大将とは出来るだけ遭遇したくねぇだけだ」
珍しいキッドの言葉に不信感を抱いた。
「……お前、本当にキッドか?優しいとかって……怖いぞ」
「テメェ!!」
「……これはオレの問題だ」
「……テメェの問題は海賊団の問題だ」
「……やはり偽物か?」
「テメェ……ブッ飛ばされてぇか!!」
素直に嬉しかったが、これを表現するのは難しい。
そして、周りのクルー達も協力すると申し出てくれた。
オレは本当に恵まれた海賊団にいるなと……嬉しそうにしたが、その表情は仮面によって誰にも知られる事はなかった。
だが、この時のキッドやクルー達は、単純にキラーの恋を実らせようと面白がってる事に……本人は気が付いていない。
キッド達は危険な事より、眼の前の面白さを取ったようだった。
そのまま全員で船へと戻った。
そして、その日のうちにクルー達全員にキラーの恋の事が知れ渡り、またもキラーの怒鳴り声が木霊するのだった。
協力は有り難いが言いふらすな。
精神的に疲れたキラーはご飯を食べた後、直ぐにベッドに横になるのだった。
翌日、ワイヤーによって起こされた。
「キラー、行くぞ」
「……開口一番がそれか?それよりも、何処に行くつもりだ?」
「何処って……月明かりの君の情報収集」
「……その呼び方止めろ」
「だってオレ、名前知らないし」
この時、ナツメの名前を言いそうになったが、ナツメは誰にも言うなと言っていた事を思い出した。
だが、信頼出来る仲間なら大丈夫だろうと、事情を話した上で名前を教えた。
「……余所で名前を言うなって……どんだけの事に巻き込まれてんだ?そのナツメって子は……」
「それが分からないから調べるんだろ」
「それもそうだ」
ともかく、先に甲板に言ってるぞと部屋を出て行ったワイヤーだった。
出たのを確認したキラーはベッドから降り、身支度を整えれば部屋を後にした。
そして甲板に着けば、キッド、ワイヤー、ヒートがいた。
「……全員で行くのか?」
「見張りの奴ら以外はもう街で情報収集に出てるぞ」
「何だと!?」
ワイヤーの言葉に驚いたキラーは声を上げてしまった。
「それだけ、みんなキラーの恋を応援したいんだよ」
ヒートの言葉で既に何も言えなくなった。
だがキラーはその瞬間、名前の事が気になった。
「……ナツメの名前は出してないだろうな?」
事情を知ってるキッドとヒートは大丈夫だと言う。
「其処ら辺は知らないクルーにちゃんと説明しといたさ」
「そこまでバカじゃねぇよ」
あの子があんな顔をしてまで、名前は余所では言うなと言ってたんだからとヒートが言えば、安心したキラーだった。
『私はナツメ。存在しない人間の名前だから、余所では言わないでね』
この時のナツメの顔は……泣いてるように見える笑顔だった。
それだけで、どれだけその名前を名乗るのが重いものなのかが窺える。
あの場にいた者なら、全員が思う事だった。
それ程に苦しめられてると言う事が……。
「オレ達も街へ行くぞ」
キッドの言葉で街へと足を進めた。
街に着いた一行は周りを見渡していた。
「先に来た奴らは何か得たかな?」
ヒートが言えば、ワイヤーが口を開いた。
「何人かは得られたかもな」
「どうして、そう思う?」
「あれ」
そう言って、ある一点を指した。
其処には何人かのクルーが待機していた。
「前もって何か情報を得たら、あの大きな木の下で待つように言っといたんだ」
「……全員、行動が早いな」
感心したキラーだったが、そこでボソリと付け加えられた言葉があった。
「普段の雑用もこれだけしっかり動いてくれれば、仕事が減るんだが……」
これには、その場にいた者は黙った。
「……今は情報だ」
誤魔化しにヒートが言えば、キラーは溜め息を吐いた。
そして、待機していたクルー達の元へ行けば、情報発見!と嬉しそうに話しかけてきた。
「どうやら、あの月明か……威圧感が……」
「キラー……名前が呼べねぇなら、仕方ねぇだろうが……」
月明かりの君という言葉に反応するキラーを、キッドが諫めた。
そして、キッドが続きをと言えば、クルーは話し始めた。
「……本当にこの街には存在してないようでして」
「その存在してないってのは?」
「誰も彼女の事を知らない」
ナツメの特徴を話しても、この島では見た事がないと住人達に言われたとか。
他のクルーも似たような情報だった。
だが、気になる事があった。
一人のクルーが幽霊話を持ってきた。
夜になると女の幽霊が出るという話し。
五年前から、それは現れるようになり、丁度その時に亡くなった一人の娘がいた……らしいとの事。
「その死んだ娘ってのが、あの女なら……」
キッドの言葉にキラーは幽霊と会っていた事になるなと答える。
その時、遠くから銃声の音がした。
キラー達は自分達のクルーの誰かが騒動を起こしたのかと思いきや、それは違ったようだ。
「貴様!まだ立場を弁えないか!!」
「オレは何もしてない」
「じゃあ、この騒ぎは何だ!?」
「知らねぇ!」
一人の中年の男が一人の若い男に銃を向けていた。
どうやら親子のようだった。
「お前が余計な事をしたから大将が来たのではないのか!?オレの留守中に問題を起こしやがって!」
中年の男がそれを言うまでは自分達には関係のない事だと思っていたが、どうやらそうでもなかったらしい。
「テメェはまだ跡取りという自覚がないらしいな……」
「仕事はきっちりこなしてる!問題は起こしてない筈だ!」
この二人はナツメと関係があるのだろうか?
大将の話しが出た事にそのまま耳を傾けていれば、思いがけない言葉が聞こえて来た。
「お前の姉さんもガッカリだろうな……」
「っナツメはあんたが殺したんだろ!!」
「……殺したって、どういう事だ?」
話に割り込むようにキラーが話しかければ、中年の男は訝しげな顔で見てきており、若い男は眼を見開いてキラーを凝視していた。
「……誰だ?何か用か?」
「誰でも良い。その話を詳しく聞きたい」
中年の男は急に笑い始めた。
「もしかして噂の幽霊にでも会ったか!?」
「そうだ」
「そんなモン知ってどうする!?」
「知りたい……それだけだ」
物好きだな……と言えば、眼の前の男はその幽霊は自分の娘だと言った。
そして、若い男は息子だと言った。
それだけだと言えば、息子だと言った男の足を銃で撃ち抜き、そのまま去って行った。
撃たれた男は足を抑えて、呻き声を上げていた。
「……正気か?自分の子供を撃つなんて……」
ヒートが言えば、キラーはその男を背負った。
「キラー?」
「手当てする」
そう言って船へと歩いて行くのだった。
キッドは舌打ちしながらも、同じく船へと戻る。
残されたヒートとワイヤーは顔を見合せていた。
「なぁワイヤー。キラーの奴、どうしても彼女の事、聞きたいんだろうな」
「そりゃあ……弟と名乗る奴だし、誰よりも情報は持ってるだろ」
二人も溜め息を吐きながら、船へと足を向けるのだった。
男を医務室へと連れて行き、船医に治療させたキラーは、ずっと男の後ろ姿を見ていた。
この時キラーは、男とナツメが同じように見えた事に驚いたが、姉弟ならば似ていてもおかしくはないと気にしなかった。
「……怪我はもう大丈夫だろ?」
治療が終わったのを見計らって話しかけたキラーは、早速とばかりに問いかけた。
「ナツメの事……聞かせろ」
「何故?もう死んだ人間だぞ……」
「知りたいからだ」
「……何処で知ったのか知らないが、オレを脅そうとしても無駄だぞ」
「脅す?」
「……武器や金が目当てじゃないのか?」
眉間に皺を寄せた男はキラーを見た。
その言葉に溜め息が出た。
「ただ、ナツメの事が知りたいだけだ」
「……見知らぬ奴に話す道理はない」
「いったい何に巻き込まれているんだ?」
「くどい!!」
今まで黙ってた船医が言葉を発した。
「君は女の子だろう?何故、男に扮しているんだ?」
「女だと?」
「……女じゃない、男だ」
頑なに認めようとしない男……に扮した女は、眼付きを鋭くさせた。
そんなのに怯むキラーではなく、そのまま言葉を続けた。
「事情があるなら話してみろ」
「関係ないだろ!」
「……ナツメの二の舞になるぞ?」
「何も知らないくせに、分かったような口を訊くな!!」
女は悟ったように言った。
「ナツメとオレは……違う」
語る女に根は深そうだと、キラーと船医は思った。
女の眼は……冷めていた。
全てを諦め、生きる屍のようだった。
この時キラーは、この眼がどうしてもナツメに見えて仕方なかった。
だが、ナツメのように髪の毛が長い訳でも、まして顔付きも違う。
ナツメはもっと柔らかく笑う。
ナツメが月なら、眼の前の女は夜だと思った。
「ナツメは大将絡みの……家の商売か何かによって、巻き込まれて死んだのか?」
「……まったく関係ない。事故だ」
これで満足か?そう眼で語る女は、これ以上聞くなと言っていた。
「手当ては感謝する」
そう言って女は治療室を出ようと、椅子から立ち上がるのと同時にキッドが入ってきた。
「まだ話は終わってねぇぜ?」
「……また盗み聞きか、キッド?」
「……聞こえてきたんだよ」
「……そうか」
今はこんな事で口論してる暇はないと、キラーは女の方を見た。
すると、キッドが思いがけない事を言った。
「お前がナツメじゃないのか?」
それには全員が驚いた。
「キラー。お前も薄々気が付いてんじゃねぇのか?」
キッドの言う通りだった。
微かに話し方を変えてるようだし、声色も変えてる。
仕草も……眼の感じも……所々でナツメだと思わせる節があったが確証がなかった。
「……どうして、其処までナツメに拘る?」
「お前がナツメだと認めるなら話してやる」
「だから、違うと言ってるだろ!!」
「じゃあ、こっちも話す事はないな」
キッドがニヤリとすれば、女の眼付きに鋭さが増した。
女は無言で立ち上がれば、その背後に投げかけるようにキッドが口を開いた。
「五年前……本当に死んだのは、今お前が扮してる男の方だったんじゃないのか?」
「……キッド?」
キッドの言葉に立ち止まった女。
「海賊専門……裏の武器商売。これが世界政府を敵に回してる……って事じゃないのか?」
「……」
「だから、大将自ら此処に乗り込んできたんじゃないのか?武器を売ってるのが大物と呼ばれる海賊ばかりだから」
「……何が言いたい?」
クク……と笑うキッドは、敵を前にしたように不敵な笑みを女に向けた。
「お前、身代わりにさせられただろ?」
女は身体を強張らせた。
「姉弟は二人。後継ぎだった弟の方が死んで、女を捨てろと言われたんじゃないのか?」
クルーが情報を持ってきたぜと笑った。
そして、キラーは思い出した。
『何処にも、私という人間が存在する証がない……』
そう言ったナツメの言葉の本当の意味が分かった気がした。
「もしかして、住民登録での書類に……弟ではなく、お前が死んだとされたのか?」
「親に女の全てを捨てられたのか?」
船医が言えば、ドアを無造作に開けて女はその場を去ってしまった。
「どうやら、そのようだったな」
キッドの言葉にキラーは悔しそうにした。
「もう少し言い方があったんじゃないのか?」
「周りくどいのは嫌いだ」
キラーはそれ以上何も言わず、ナツメと思わしき人物を追いかけた。
ナツメと思わしき人物を追いかければ、街の真ん中で先程の父親と思わしき人物と話してるようだった。
キラーは影に隠れ、会話を耳にした。
「もう、お前はいらん」
「は!?どういう事だよ!?」
「先程、妾が男を産んだ」
「妾!?おい、母さんは!?」
「そんな事でグチグチ言う女じゃないだろ」
「少しは母さんの気持ちも……」
言い終わる前に、頬を殴られた。
「後継ぎが生まれれば、お前に用などない。まともに仕事も出来ないような奴など……うちにはいらん。何処へなりとも行け」
眼を見開く女に、容赦ない言葉が続いた。
「女を捨てきれない奴など……最初から期待などしてなかった。次の跡取りが生まれるまでの繋ぎしか出来ない役立たずが」
二度とうちへは帰ってくるな、その面を見せるな……男が言えば、怒りに燃える眼をした女が声を荒げた。
「オレやあいつは、あんたの道具じゃないんだぞ!!あいつが死んだのも、あんたのせいじゃないか!!」
「あの程度で死ぬ息子など、元よりいらん!!」
悔しそうにする女は蔑む眼を向けた。
「その新しい後継ぎとやらも、直ぐにあんたの道具として死ぬな」
「……何だと?言わせておけば……調子に乗りおって」
「結局は人を道具にしか見てないあんたには、何も得る事など出来ない!」
青筋を立てた男は、女に銃を向けた。
そして発砲する瞬間、何かによって腕を斬られた。
男は突然の事に時が止まったかのように、切られた自分の腕を見たが、直ぐに理解すると悲鳴を上げた。
眼の前にいた女は、何が起きたのか分かってなかった。
「……お前は海賊以下の人間だな」
男の腕を斬ったのはキラーだった。
「流石の海賊も、仲間や大切な者達を道具として見る事はない」
「……キラー?」
女の声に振り向いたキラーはフッと笑った。
「やはりナツメだったな」
思わずキラーの名前を言ってしまった事に、ようやく気が付いた。
「もう……隠す必要はないんだ」
「え?」
「今、お前を解放してやる。此処にいては……弟の二の舞になってしまうぞ」
キラーは腕に着いてる刃物を男に向け身構えた。
「親殺しの罪は……オレが背負ってやる。眼を伏せていろ」
その時、赤い何かに遮られたナツメは、何が起きてるのか分からなかった。
「キッド……」
「早く殺れ」
どうやらナツメの視界を奪ったのは、キッドの赤いコートのようだ。
安心したキラーは、ナツメの親に視線を戻した。
「な……なんだって、こんな奴の為に……」
「こんな奴?」
「男にもなりきれん、何の役にも立たない奴を!!」
キラーはおかしそうに笑った。
「何がおかしい!?」
仮面の下から、憎悪が剥き出しになったのが分かった。
「オレの愛した女の侮辱は許さん!例え、それがナツメの父親でもだ」
それを聞いてたナツメの眼からは涙が溢れた。
そこからは耳を塞ぎたくなるような、人を斬る音、断末魔の絶叫……そして血の匂い……。
見えてなくとも、残酷な殺し方をしてるのが分かる。
恐らく、最初は死なない程度にいたぶって恐怖を与える。
徐々に追い詰めていく……耳から聞こえてくる全てのモノが……恐怖だった。
ナツメの親から聞こえてくる息遣いは……既に死にかけてる。
この時のナツメは、どうして良いのか分からなかった。
父親の死……このままにするべきか止めるべきか。
止めない時点で何となく答えは出てるのだろうが……何も考えられなくなっていた。
精神が追いつかなかったのだろう。
意識を放棄するのが、自分で分かったのだった。
あれは夢だったのだろうか?
自分なりに必死で頑張ってきたのに……一度で良いから、良くやったの一言が欲しくて。
でも、いらないと言われ……二度と戻ってくるなと言われた。
その時、キラーが助けてくれた。
解放してやると言ってくれた。
……お月様のような、あの人に……愛した女と言ってもらえた事……。
全部、夢だったのだろうか?
次第に視界が開けてきたナツメは、見覚えのない天井を見た。
「……此処は?」
「オレの部屋だ」
「……キラー?」
隣を見れば、椅子に座るキラーがいた。
「ただ気を失っただけと船医が言ってたんでな。此処に寝かせた」
「あ……ごめん、迷惑かけて。直ぐ出て行くから」
「何処に行くつもりだ?」
「何処って、家に……」
言いかけて止めた。
あれが夢じゃないなら帰る場所なんてない。
黙ってしまえばキラーが頭を撫でてきた。
「キッドも此処にいて良いと言ってる」
「え……?」
「クルーとして、此処に居れば良い」
「……海賊になれと?」
いきなりの話しに、ナツメは眼が点になった。
そんなのはお構いなしにキラーは続けた。
「帰る場所がないんだろ?」
「オレは札付きだぞ!?」
「男のお前はな。でも、女として生きれば良い。男は捨てろ」
「生き方をコロコロと変えられるか!!」
「オレが女にしてやる」
キラーの言葉に言葉が出なかった。
言い方が……別の意味に聞こえたのは、気のせいだよね?
ポカンとしたナツメに、キラーは首を傾げた。
その時、キッドがバンッと大きな音を立て部屋に入ってきた。
「キラー……それはいきなり過ぎるだろうが!!」
「何の話だ?」
本当に分かってない男だった。
キッドは舌打ちしながら、分かりやすく解説してくれた。
「女に戻るのを手伝うって言ってんだよ、こいつは」
「だから、そう言ってるだろ。何をそんなに……」
「テメェの言い方は紛らわしいんだよ!」
「それよりも、また盗み聞きか?キッド」
「……聞こえてきたんだよ」
そんな二人のやり取りに、我慢出来なくなったナツメはクスクスと笑い始めた。
「……何だかんだ言って、お前はやっぱり女だ」
キラーが言えば、顔を真っ赤にさせた。
「普段通りに生活してれば、問題ないだろ」
「……でも、迷惑かけて……」
「さっきも言った。男のお前は死んだ。それで良いだろ」
また女としての生活を取り戻せば良い。
あの月明かりの下にいたお前は……ただの女だったのだから。
もう、お前を縛り付ける者はいない。
そう言えば、複雑そうな顔をした。
「父親は……」
何だかんだと、気になってはいるようだった。
「……全てはオレが背負う」
「何で……其処まで……」
「あの時、聞こえなかったか?オレの愛した女……そう言ったが?」
「何で!?たった一度や二度会っただけの人間に……」
気が付いたら心が奪われてた。
それじゃあ不満か?
そんな風に恥ずかしげもなく言ったキラーに、降参だと言うように笑った。
「そこまで言われたら……何も言えないじゃない」
「少しづつで良い。互いを知っていけば良い」
ナツメはキラーの方を見て言った。
私だって、あなたがお月様みたいで眼が離せなかったのよ、なんて言えば、今度はキラーが赤くなった。
仮面で見えないが、ナツメには分かったようだ。
「……おい、お前等……。オレがいるの忘れてねぇか?」
二人してキッドを見れば固まった。
そんな二人にキッドは溜め息を吐いて、勝手にしろと部屋を出ていった。
二人して笑い合った。
新しく人生を歩むのも悪くない……。
ナツメは、ただ笑うのだった。
気紛れに空を見上げるのも悪くはない……月明かりがナツメを照らしてくれたお陰で……こうして隣にいるのだから……。
今日も、明日も……ずっと月明かりは二人を照らし続ける。
オマケ
「キラー!公開告白したんだって?」
ワイヤーの言葉に固まるキラー。
「もうクルーのみんなが知ってるぜ」
「……何だ?その公開告白ってのは……」
「頭が言ってたぜ。オレの前で堂々と告白してたって。男らしいなキラー」
笑いながら言うワイヤーに、キラーは拳を震わせた。
「……キラー?」
「ッッッッまたか、キッド!!!!」
怒鳴りながら、またもキッドの部屋に向かうキラーがいた。
「変わらないな……いや、変わったか?」
ワイヤーは、キラーを諫めるナツメを見て微笑んでいた。
これからは、これが日常になるのかぁ。
あとがき
ご拝読ありがとうございます。
はぁ……やっと書き終えた。
実は、二回も書いたモノを間違って消してしまい、泣きそうになりながら、書き直してました。
一度目なら仕方ないと溜め息を吐きながら書き直しましたが、二度目は流石に挫折しそうになりました。
でも、書き終える事が出来て安心しました。
でも、お陰で内容はグダグダ……ごめんなさい。
皆様に、素敵な夢が訪れますように☆