シーズンイベント(節分)
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1月某日
私は柱の人達に呼ばれて本部に来ていた。
『節分祭り?ですか・・・?』
悲「そうだ。鬼殺隊の毎年恒例行事だ」
宇「俺たちは鬼退治が本職だからな!節分行事には特に伝統を重んじてんだよ」
『へぇ〜そうなんですね!』
なんだろ
皆で恵方巻き食べたり?
あ、お館様たちが豆を投げてくれたりするのかな?
『どんな事をするんですか?』
煉「うむ!大規模な鬼ごっこだ!!」
『・・・はい?』
ん?聞き間違いかな?
煉「大規模な鬼ごっこだ!!!」
2回目!
聞き間違いじゃないわ、コレ。
『鬼ごっこって・・・鬼ごっこ、ですか?あの?』
煉「そうだ!」
し「毎年結構盛り上がるんですよ〜」
いい大人が鬼ごっこで盛り上がるって・・・
全然想像つかないけど?
冨「山の中で行う。鬼役は1人だ」
不「鬼役は選別された柱達に捕まらないよう制限時間内に逃げ切れれば勝ちだァ」
『・・・鬼が勝っちゃってもいいんですか??』
鬼殺隊的にね?
煉「うむ!問題はないぞ!鬼役も捕獲役も真剣で無ければつまらないからな!!」
『ん?ちょっと待ってください。鬼役が逃げるんですか??』
さっきからちょいちょい引っかかってたけど、、、普通逆だよね??
煉「そうだ!俺たちは鬼殺隊だからな!鬼を追うのは我々の責務だ!!」
そのまま鬼役を斬っちゃいそうなテンションで言ってますけど・・・
・・・要は特別ルールって事ね??
悲「鬼役は捕まったら、捕獲役の言う事を一つだけ聞かなければならない決まりだ」
し「逆に捕獲役を棄権に追い込めば、その方は鬼役の言う事を一つ聞かなければなりません」
ちなみに、昨年の鬼役は義勇さんで、捕獲したのはしのぶさんだったとか。
『・・・・・・』
結構ガチじゃんよ・・・
下手したら流血ものじゃない??
『・・・でも、鬼殺隊同士の喧嘩はご法度ですよね・・・』
宇「それはお互いに罠を仕掛けあったりだなぁ・・・まぁ、要は殴ったり蹴ったり斬ったりは禁止。それ以外は何でも有りだ」
悲「内容は理解したか?」
『は・・はい。でも、これって柱の方達の恒例行事ですよね??』
私には関係無さそうだけど・・・
冨「人数合わせだ」
『・・・はい?』
鬼役は1名、
捕獲者は最低でも4名
不正が無いようにジャッジする役が2名必要なのだとか。
今の柱メンバーは悲鳴嶼さん、実弥さん、義勇さん、宇髄さん、しのぶさん、煉獄さん・・・。
確かに、1人足りない。
足りない時は隊士や隠の人が代役を務めるらしいけど今年は誰もやりたがらなかったと。
『成る程、分かりました』
まぁ、私でもジャッジ役くらいなら出来るかな??
宇「よっしゃ!んじゃあ早速籤で役を決めるぞ!!」
『えっ?籤引きで決めるんですか!?』
し「ええ。その方が公平でしょう?」
なんだか、嫌な予感がするぞ・・・・・・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
籤引きの結果。
ジャッジ役は悲鳴嶼さんとしのぶさん。
捕獲役は、宇髄さん・煉獄さん・実弥さん・義勇さん。。。
私は・・・嫌な予感が当たってしまった・・・
し「今年の鬼役は美桜さんですね!」
『ちょっ・・・これ、やり直ししません?私が鬼じゃ秒で終わっちゃいますよ!?』
実「馬鹿野郎!一度決まったら覆る事はねぇんだ。腹を括れェ」
ちょ実弥さん、これ遊びみたいな物だよね?
何でこんなガチガチのルールなの??
冨「まだ当日まで日がある。対策を立てておけば良い」
『たっ対策って言われても、罠とか作った事ないし無理ですよ・・・?』
宇「罠の張り方位は教えてやるって!!」
心配すんな!と言われる。
宇「それよりも、俺が美桜を捕まえたら何をお願いしてもいいんだよなぁ?煉獄よぉ?」
煉「むぅ!!美桜、宇髄にだけは捕まらぬ様死に物狂いで逃げるのだぞ!!」
『えっ・・・』
捕獲役が今からバチバチしてるけど・・・
そして宇髄さんから逃げ切れる自信なんてないよ。
ていうかこの人達から見つからない様にする事って出来るの??
まぁ無理だね!!
でも、毎年の恒例で皆結構楽しみにしてるっぽいし・・・
私もすぐに捕まらないように頑張らないといけないな・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして節分当日がやってきたーーーー
私は悲鳴嶼さんとしのぶさんに連れられて、山小屋にやってきた。
し「さぁ、美桜さんはここで着替えてください。」
『えっ、衣装があるんですか!?』
し「はい!雰囲気を出す為に虎の皮から作った衣装を着て逃げてもらいます」
悲「着替えが済んだら、裏口からこっそり逃げろ。捕獲者は1刻後に山に入る。それまでに身を潜める場所を見つけるのだ」
し「あ、この山に本物の鬼がいない事は確認済ですから心配はご無用ですよ」
悲「日没までに逃げ切れる事が出来れば美桜の勝ちだ・・・武運を祈る」
『・・・はい』
そう言って2人は小屋から出て行く。
机の上に、衣装らしきものが入った袋が置いてある。
ここまで来たら、もう全て受け入れますよ・・・
『いや、これは・・・マズイでしょ・・・』
用意された衣装を着てみたけど・・・
そこには、
虎柄のビキニの上に超ミニの虎柄ワンピースを着て、さらに虎柄のショートブーツ姿の痴女が立っていた・・・。
これ、鬼殺隊の前にお巡りさんに捕まるやつ!!
この衣装作ったの絶対前田さんだ!!!
『うぅ・・・棄権したい・・・』
でも、鬼役は私1人。
ここでリタイアしたら皆の楽しみを私が奪ってしまう事になる・・・
こんな姿・・男の人に見られたら死んでしまう。。。
特に煉獄さんだけにはこんな破廉恥な姿を見られたくない!!
そうだ!こうなったら日没まで逃げ切って、最後しのぶさんに保護してもらうしかない!!
私は違うベクトルで任務遂行の決意を固め、裏口から急いで山の中へと逃げていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
し「皆さん、揃いましたね?」
悲「では・・・これより、鬼殺隊恒例、鬼ごっこを開始する!」
実「開始するって、肝心の鬼がいねぇじゃねぇか」
不死川さんが辺りを見回す。
そう、本来ならば鬼役もここからスタートする。
悲「美桜は既に山中に逃げている」
煉「!!」
し「美桜さんは柱でもなければ隊士でもありませんからね。それぐらいの手加減は必要でしょう?」
宇「まぁ、それぐらいやんなきゃすぐ終わっちまいそうだしな!」
し「規定通り、美桜さんの身につけている〈虎柄の羽織〉を最後に持っていた方が勝者ですからね?」
冨「ああ、わかっている。」
悲「よし、ではこれより捕獲役も出発しろ」
悲鳴嶼さんの合図で捕獲役の4名は散り散りに山の中へ入っていった。
し「・・・さて、美桜さんはどこまで逃げ切れるでしょうね?」
悲「南無・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あれからどの位経ったのかな・・・
とりあえず、色んな所に宇髄さんから教えてもらった罠を仕掛けながら逃げているけど・・・
正直、柱の皆がこんな罠にかかると思えない。。。
寧ろ、私のいる場所を教えている様な物では・・・?
と、すぐ横の茂みからガサガサ音がする。
『っ!?』
身を固くして、茂みを凝視していると野ウサギが顔を出す。
『・・・はぁあ・・・吃驚させないでよ・・・』
野ウサギは私の声に反応して慌てて逃げていった。
そっか・・・山の中だもんね。野生動物位いるかぁ。
そこでハッとする。
そう、今の今まで羞恥心が勝っていたからそれどころではなかったけれどここは山の中だ。
鬼はいなくても獰猛な野生動物がいるかもしれない・・・
こんな所で、こんな格好で一人ぼっちとか・・・
『やだ!怖すぎる!!』
誰か来てー!
しのぶさーん!!
ガサッ!
また茂みから物音がする。
さっきの野ウサギがまた来たみたい・・・
『もう、今キミに構っている場合じゃ・・・』
と、振り返った所で固まる。
野ウサギじゃない
義勇さんが目を丸くして立っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
野ウサギが逃げて来た方向に進んで行くと美桜の気配がする。
まだ山の中腹に差し掛かってもいない場所だ。やはり鬼殺隊ではない美桜に鬼役は難しかったのだろうな・・・
早々に決着がつくが仕方ないだろう。
そう思い、美桜のいる元に足を進めた。
美桜の着ている羽織を脱がせれば終わりだーーーーー
『ぎっ義勇さん・・・』
冨「・・・何だ、その格好は・・・?」
何故羽織を着ていないのだ??
なんだその短い丈の服は・・・
『えっ!?これが、衣装だって言われて・・・あ、あんまり見ないでください!!』
美桜が後ろを向いてしまう。
冨「・・・・・・」
俺は混乱する。
虎柄の羽織を脱がせるのが規定だ。
だが目の前の美桜はそれを着ていない。
この場合はどうするのが正解だ・・・?
冨「・・・とりあえず、脱がせるか?」
『はっはああっ!?何を言ってるんですか!?』
危険を察知したのか美桜は逃げようとする。
冨「待て・・・っ」
逃がすまいと、美桜の服の端を掴んだ瞬間・・・・・
ビリィッ
美桜の服がいとも簡単に裂けた
冨「・・・・・???」
『・・・・・・・』
冨「これは、どういう・・・」
『ぎっ!義勇さんの馬鹿ァ!!もう嫌いですっ!』
こっちに来ないで!!と走って逃げていく。
ガーン!!!!
どんな時も、美桜だけは俺を避けなかった
・・・美桜に嫌いだと言われた・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
鴉「カアァッ!冨岡義勇!棄権!!心ガ折レタ為棄権スルゥッ!!」
各柱に鴉から情報が入る。
不「何だぁ?その理由は!アイツやる気あんのかぁ!!」
煉「・・・冨岡が棄権?一体何が起こったのだ・・・」
宇「て事は残る好敵手は2人か・・・美桜も中々やるじゃねぇか」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は先程までワンピースだった布きれで身体を隠しながら山道を進む。
『うぅっ・・・義勇さん、ひどい・・・』
とにかくまた何処かに身を潜めないと・・・
その前に、この辺に罠を仕掛けよう。
掛からないとしても、足止めくらいにはなるだろう。
『・・・これで、よし。と・・・』
さぁ、移動しよう。
と、立ち上がって行こうとした時
ガサッ!
『っ!あっ!!?』
不「見つけたぜぇ!」
私の真後ろの茂みから手が伸びてきて身体ごと捕まってしまった・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さっき冨岡が棄権した場所から少し登って行くといくつかの雑な罠が仕掛けられていた。
こんなもん、通った道を教えているようなもんじゃねぇか・・・
しばらくすると、美桜の気配が。
どうやら、また罠を仕掛けているらしい・・・
警戒心ゼロじゃねぇか。
いや、姿を現すと逃げられちまうかもしれねぇな。
ここは後ろから行くか。
茂みに潜んで気配を探る。
どうやら仕掛け終わったらしい。
『・・・これで、よし。と』
立ち上がったタイミングで勢いよく飛び出す。
不「見つけたぜぇっ!」
後ろから羽交い締めにする。
『っきゃあっ!!』
美桜が慌てた様子で悲鳴を上げる。
不「お前にしちゃ粘った方だが、これで終わりだなぁ。さぁ、羽織を脱いで寄越せ・・・!?」
と言って美桜の姿を確認して固まる。
美桜は虎柄の乳当てと下着姿だった。
地面には、俺が捕まえた時に落としたと思われる虎柄の布切れが落ちている。
動揺して手を離してしまうと、美桜が素早く距離を取る。
不「・・・何だァ、お前のその格好は・・!?羽織はどうしたァ??」
『はっ羽織!??そんなもの、最初からなかったですよっ!!』
美桜は涙目で屈んでいる。
羽織がなかった?
どういう事だぁ・・・?
よく分からねぇが、こいつを連れて帰れば終わるだろう。
不「・・・まぁいい。山小屋まで戻んぞぉ」
美桜の姿を見ないように近づこうとするが、
『いっ嫌です!!こんな格好で戻りたくありませんっ!!』
不「・・・チッ」
俺は自分の上着を掛けてやろうと脱ぎながら美桜に近づく。
美桜から視線を外していた事で、足元に落ちていた布切れに気がつかず踏んでしまい、それに足を取られる。
そのまま前に倒れる形で転んでしまう。
『っ!?』
不「・・チィッ、クソが・・・」
起きあがろうと地面に手をかけると妙に感触が柔らかい。
不「??・・・!?」
俺の目の前には真っ赤になった美桜の顔
そして、地面をついた筈の俺の右手は美桜の胸を鷲掴みしていたーーーーー
つまり、押し倒すような形で倒れた拍子に乳当てがずれてそこに俺の手が入り込んだ形になっているーーー
不「っ!!悪ィッ・・・」
慌てて立ち上がり後ずさる。
と、さっきの布をまたしても踏んづけてしまい今度は後ろに重心が行く。
不「!!」
今度は転ばない様、左足を更に後ろに下げて踏ん張る。
カタッ
不「んなっ!?うおおおおお!??」
足をついた所は運悪く先程美桜が仕掛けた罠があった。
罠が作動し俺は宙吊りになる。
『・・・見られた上に触られた・・・男の人に・・・うわぁーん!!』
美桜は暫く固まっていたが、俺の存在を忘れて更に山奥へと逃げてしまった
不「・・・・・クソ・・・何なんだ一体・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
鴉「カアァッ!不死川実弥ィ!棄権!!美桜ノ罠ニカカリ身動キ取レズ棄権スルゥ!!」
煉「なっ!?不死川もか!!美桜に鬼ごっこの素質があったとは!よもやよもやだ!!」
宇「・・・マジかよ。素人の罠にかかるかよ普通・・・何かおかしいな」
し「・・・冨岡さんに続き不死川さんもですか・・・何だか様子がおかしいですね」
悲「うむ・・例年棄権するものは滅多におらんからな・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ヒック、ヒック・・・ぐすん』
私は泣きじゃくりながら山道を更に進む。
何で鬼ごっこでこんな目に遭わなきゃいけないの・・・
もう無理・・・皆には悪いけど棄権しよう・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
美桜の捜索を一時中断し、罠にかかった不死川の救出に向かう。
到着すると既に宇髄の姿があった。
だが宇髄は助けるどころか指を差して笑っていた。
宇「ギャハハハハッ!!はっ腹痛ぇっ!!泣く子も泣かす天下の風柱様が宙吊りとはな!!」
不「テメェ・・・殺す・・・」
煉「大丈夫か不死川!!今降ろしてやるぞ!」
不「煉獄!・・あァ・・悪ィな・・・」
俺を見た不死川は一瞬気まずそうな顔をする。
まぁ、この様な姿はあまり見られたくないだろうな!
煉「しかし、この様な罠に掛かるとは不死川らしくないな!」
不「・・・それなんだけどよ・・・アイツをさっさと捕まえねぇと取り返しがつかなくなるぞ」
煉「?どういう事だ??」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
宇「はぁ!?下着姿?」
不「最初は服を着ていただろうが、破けた様だなァ」
と言って、不死川の目線を辿るとボロボロになった虎柄の布切れが落ちている。
宇「おい、美桜は羽織なんか知らないって言ったんだよな?」
不「あァ。いつも使うのとは別の物が用意されてたって事だ」
煉「なっ・・一体誰が・・・」
不宇「「ゲスメガネに決まってんだろ!!」」
宇「とりあえず、美桜が自棄になる前に捕獲しに行くぞ、煉獄!」
煉「うむ!いや、駄目だ!!」
宇「あ?」
煉「宇髄は駄目だ!!そんな姿の美桜を君には見せられん!!」
宇「そんな事言ってる場合かよ!もうすぐ日没だ。暗くなると野犬や狼も出てくるだろうが!」
煉「むぅ!」
不「俺は小屋まで戻って悲鳴嶼さん達に説明してくるわ」
宇「おうよ!ほれ、行くぞ煉獄!!」
煉「むぅ・・・!!」
宇髄に急かされるがまま後に続く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は棄権しようと山小屋に向かっている。
が、歩けど歩けど辿り着かない・・・。
『な、なんで・・・あの大きい木を左に降りて行けば山小屋に着く筈なのに・・・』
日が傾き始めている。
周りの景色も少しずつ暗くなって心細さが増して行く。
こんな格好じゃなかったら、大声で煉獄さんを呼んで助けを求めるのに・・・
鴉「カアァッ!美桜ヲ発見ッ!!」
急に頭上で鴉の声がしてビクッとする。
あ、あれは・・・
『要!!』
煉獄さんの鴉だ!!
って事は煉獄さんに居場所が知られてしまう!!
煉獄さんにだけは見られたくないのに!!!
ていうか鴉使うの反則じゃない!?
はっ!
そこで私はある作戦を思いつく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺の鴉が美桜を発見した。
俺と宇髄は現場へ急ぐ。
煉「宇髄!君は現場に到着したら目隠しだ!良いな!!」
宇「なんでだよ!!冨岡も不死川も見たんだろ?こんな時に言ってる場合か!」
煉「俺だってまだ見たことない!!」
宇「・・・マジかよ・・・」
冨岡と不死川は不可抗力だとしても宇髄は駄目だ!!
頭上で鴉が旋回している。
現場は近いな。
煉「美桜!!聞こえるか?鬼ごっこは終わりだ!!一緒に戻るぞ!!」
大声で呼びかける。
『れっ煉獄さんだけは来ちゃ駄目です!!』
美桜の声が返ってくる。
俺だけは?何故だ!?
そうこうしている内に茂みの向こうで美桜の気配がする。
煉「・・・美桜。今の君の状態は不死川から聞いている」
美桜の身体を隠す為に俺は自身の羽織を脱ぐ。
『っ!!?』
煉「小屋に戻るぞ。出て来なさい」
『いっ!嫌です!煉獄さんがいるなら行きませんっ!』
煉「む!何故だ!?」
俺はカチンとする。
まるで冨岡や不死川は良くて婚約者の俺は駄目みたいではないか!
『何ででも、嫌なものは嫌ですっ!!』
煉「・・・・・・」
宇「・・・なぁ、美桜。わかった。俺たちは2人とも目を瞑ってるから!気にしないで出てこいよ!」
『うっ宇髄さんまでいるんですか!?』
尚更嫌です!
と返事が返ってくる。
それはそうだろう。
今の美桜の姿を考えれば至極当然だ。
煉「わかった!俺の羽織をそちらへ投げるから、それで身体を隠して出て来なさい」
そう言って羽織を投げる。
『っ!!』
煉「美桜、出てきてくれるか?」
『・・・はい・・・』
煉「良かった。さぁ、おいで」
美桜がこちらへ向かってくる気配がする。
そこで宇髄と俺はようやく安心する。
カタッ
『っ!きゃあああああ!?』
煉宇「「美桜!?」」
美桜の悲鳴に反応し、俺と宇髄は同時に美桜の元へ進む。
カタッ
カタッ
宇「うおおっ!?」
煉「ぬうっ!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
茂みを挟んでの攻防の末、煉獄さんの羽織が飛んできた。
『っ!』
羽織を掴んで身体に巻きつける様に着て、前を押さえる。
煉獄さんの匂いだ・・・
身体を隠せた事と煉獄さんの匂いで落ち着きを取り戻していく。
煉「美桜、出てきてくれるか?」
煉獄さんの優しい声がする。
『・・・はい・・・』
煉「良かった。さぁ、おいで」
きっと両手を広げて待ってくれているんだろうな・・・
煉獄さんの元に駆け寄りたい気持ちで足を前に出す。
カタッ
ハッ!
しまった!!
『っ!?きゃあああああ!!』
自分で仕掛けた罠の事をすっかり忘れていた!
煉宇「「美桜!?」」
と、2人が同時に飛び出してくる。
カタッ
カタッ
宇「うおおっ!?」
煉「ぬぅっ!?」
2人とも慌てて飛び出して来た事で別々の罠に掛かってしまい、
私たちは3人仲良く宙吊り状態になった。
そう、追い込まれた私が咄嗟に取った作戦とは、私を囲う形で罠を張り巡らせる事だった。
これで簡単に近づかせない作戦だったのだけど・・・
宇「・・・・・・」
煉「美桜・・・!」
『うっ、2人ともごめんなさい・・・せっかく助けに来てくれたのに・・・』
煉「宇髄!目を閉じろ!!美桜を見るな!!」
宇「いや、もう遅ぇだろ・・・」
『・・・は?』
煉獄さんの羽織のお陰で身体は隠れている筈・・・と自分の状態を確認する。
『!!?』
身体に羽織を巻いているものの、ロープが胸下で食い込んだ状態で吊られているため胸元の部分ははだけてしまっている・・・
下も、なんというか見えそうで見えない逆に嫌らしい感じになっていた。
『きゃああ!!煉獄さんも見ないでくださいっ!!・・・ぐすん・・・皆に色々見られた・・もうお嫁に行けない・・・』
煉「それは問題ないぞ!美桜は俺の婚約者なのだから、俺の所に嫁にくれば安心だ!!」
『そういう問題じゃなーい!!!』
私の叫びが暗くなった山に木霊する。
私たちは実弥さん達に救助されるまで宙吊り状態だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
悲「・・・今年の鬼ごっこは、捕獲役も鬼役も全員棄権という結果になった・・・」
し「前代未聞ですねぇ」
『・・・・・・』
宇「おい美桜、機嫌直せよ」
『・・・・・・』
救助された私達はスタート地点に戻ってきた。
私は無事に着替える事が出来たが皆と顔を合わせられず煉獄さんの羽織を頭から被り貝のように心を閉ざしていた。
冨「美桜、服を裂いてしまいすまなかった」
『・・・・・・』
不「・・・俺も、色々とアレだ・・・悪かったなァ」
『・・・・・・』
煉「美桜、過ぎてしまった事は仕方がない!元気を出せ!!」
『・・・・・・』
し「まぁまぁ、また来年頑張りましょう!元気を出してください美桜さん。」
『もう鬼ごっこなんて二度とやりませんっ!!』
その後、柱の人達は私の機嫌を直そうと四苦八苦するのだけれど、それはまた別のお話。
ちなみに、今回の事件の元凶であるゲスメガネこと前田さんは柱全員にシメられ美桜接触禁止令が出たとか出ないとか。
そして、今回の鬼ごっこは柱達を棄権に追い込んだ者として鬼殺隊の中でもちょっとした事件扱いになったとかならないとか・・・
ー完ー
私は柱の人達に呼ばれて本部に来ていた。
『節分祭り?ですか・・・?』
悲「そうだ。鬼殺隊の毎年恒例行事だ」
宇「俺たちは鬼退治が本職だからな!節分行事には特に伝統を重んじてんだよ」
『へぇ〜そうなんですね!』
なんだろ
皆で恵方巻き食べたり?
あ、お館様たちが豆を投げてくれたりするのかな?
『どんな事をするんですか?』
煉「うむ!大規模な鬼ごっこだ!!」
『・・・はい?』
ん?聞き間違いかな?
煉「大規模な鬼ごっこだ!!!」
2回目!
聞き間違いじゃないわ、コレ。
『鬼ごっこって・・・鬼ごっこ、ですか?あの?』
煉「そうだ!」
し「毎年結構盛り上がるんですよ〜」
いい大人が鬼ごっこで盛り上がるって・・・
全然想像つかないけど?
冨「山の中で行う。鬼役は1人だ」
不「鬼役は選別された柱達に捕まらないよう制限時間内に逃げ切れれば勝ちだァ」
『・・・鬼が勝っちゃってもいいんですか??』
鬼殺隊的にね?
煉「うむ!問題はないぞ!鬼役も捕獲役も真剣で無ければつまらないからな!!」
『ん?ちょっと待ってください。鬼役が逃げるんですか??』
さっきからちょいちょい引っかかってたけど、、、普通逆だよね??
煉「そうだ!俺たちは鬼殺隊だからな!鬼を追うのは我々の責務だ!!」
そのまま鬼役を斬っちゃいそうなテンションで言ってますけど・・・
・・・要は特別ルールって事ね??
悲「鬼役は捕まったら、捕獲役の言う事を一つだけ聞かなければならない決まりだ」
し「逆に捕獲役を棄権に追い込めば、その方は鬼役の言う事を一つ聞かなければなりません」
ちなみに、昨年の鬼役は義勇さんで、捕獲したのはしのぶさんだったとか。
『・・・・・・』
結構ガチじゃんよ・・・
下手したら流血ものじゃない??
『・・・でも、鬼殺隊同士の喧嘩はご法度ですよね・・・』
宇「それはお互いに罠を仕掛けあったりだなぁ・・・まぁ、要は殴ったり蹴ったり斬ったりは禁止。それ以外は何でも有りだ」
悲「内容は理解したか?」
『は・・はい。でも、これって柱の方達の恒例行事ですよね??』
私には関係無さそうだけど・・・
冨「人数合わせだ」
『・・・はい?』
鬼役は1名、
捕獲者は最低でも4名
不正が無いようにジャッジする役が2名必要なのだとか。
今の柱メンバーは悲鳴嶼さん、実弥さん、義勇さん、宇髄さん、しのぶさん、煉獄さん・・・。
確かに、1人足りない。
足りない時は隊士や隠の人が代役を務めるらしいけど今年は誰もやりたがらなかったと。
『成る程、分かりました』
まぁ、私でもジャッジ役くらいなら出来るかな??
宇「よっしゃ!んじゃあ早速籤で役を決めるぞ!!」
『えっ?籤引きで決めるんですか!?』
し「ええ。その方が公平でしょう?」
なんだか、嫌な予感がするぞ・・・・・・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
籤引きの結果。
ジャッジ役は悲鳴嶼さんとしのぶさん。
捕獲役は、宇髄さん・煉獄さん・実弥さん・義勇さん。。。
私は・・・嫌な予感が当たってしまった・・・
し「今年の鬼役は美桜さんですね!」
『ちょっ・・・これ、やり直ししません?私が鬼じゃ秒で終わっちゃいますよ!?』
実「馬鹿野郎!一度決まったら覆る事はねぇんだ。腹を括れェ」
ちょ実弥さん、これ遊びみたいな物だよね?
何でこんなガチガチのルールなの??
冨「まだ当日まで日がある。対策を立てておけば良い」
『たっ対策って言われても、罠とか作った事ないし無理ですよ・・・?』
宇「罠の張り方位は教えてやるって!!」
心配すんな!と言われる。
宇「それよりも、俺が美桜を捕まえたら何をお願いしてもいいんだよなぁ?煉獄よぉ?」
煉「むぅ!!美桜、宇髄にだけは捕まらぬ様死に物狂いで逃げるのだぞ!!」
『えっ・・・』
捕獲役が今からバチバチしてるけど・・・
そして宇髄さんから逃げ切れる自信なんてないよ。
ていうかこの人達から見つからない様にする事って出来るの??
まぁ無理だね!!
でも、毎年の恒例で皆結構楽しみにしてるっぽいし・・・
私もすぐに捕まらないように頑張らないといけないな・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして節分当日がやってきたーーーー
私は悲鳴嶼さんとしのぶさんに連れられて、山小屋にやってきた。
し「さぁ、美桜さんはここで着替えてください。」
『えっ、衣装があるんですか!?』
し「はい!雰囲気を出す為に虎の皮から作った衣装を着て逃げてもらいます」
悲「着替えが済んだら、裏口からこっそり逃げろ。捕獲者は1刻後に山に入る。それまでに身を潜める場所を見つけるのだ」
し「あ、この山に本物の鬼がいない事は確認済ですから心配はご無用ですよ」
悲「日没までに逃げ切れる事が出来れば美桜の勝ちだ・・・武運を祈る」
『・・・はい』
そう言って2人は小屋から出て行く。
机の上に、衣装らしきものが入った袋が置いてある。
ここまで来たら、もう全て受け入れますよ・・・
『いや、これは・・・マズイでしょ・・・』
用意された衣装を着てみたけど・・・
そこには、
虎柄のビキニの上に超ミニの虎柄ワンピースを着て、さらに虎柄のショートブーツ姿の痴女が立っていた・・・。
これ、鬼殺隊の前にお巡りさんに捕まるやつ!!
この衣装作ったの絶対前田さんだ!!!
『うぅ・・・棄権したい・・・』
でも、鬼役は私1人。
ここでリタイアしたら皆の楽しみを私が奪ってしまう事になる・・・
こんな姿・・男の人に見られたら死んでしまう。。。
特に煉獄さんだけにはこんな破廉恥な姿を見られたくない!!
そうだ!こうなったら日没まで逃げ切って、最後しのぶさんに保護してもらうしかない!!
私は違うベクトルで任務遂行の決意を固め、裏口から急いで山の中へと逃げていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
し「皆さん、揃いましたね?」
悲「では・・・これより、鬼殺隊恒例、鬼ごっこを開始する!」
実「開始するって、肝心の鬼がいねぇじゃねぇか」
不死川さんが辺りを見回す。
そう、本来ならば鬼役もここからスタートする。
悲「美桜は既に山中に逃げている」
煉「!!」
し「美桜さんは柱でもなければ隊士でもありませんからね。それぐらいの手加減は必要でしょう?」
宇「まぁ、それぐらいやんなきゃすぐ終わっちまいそうだしな!」
し「規定通り、美桜さんの身につけている〈虎柄の羽織〉を最後に持っていた方が勝者ですからね?」
冨「ああ、わかっている。」
悲「よし、ではこれより捕獲役も出発しろ」
悲鳴嶼さんの合図で捕獲役の4名は散り散りに山の中へ入っていった。
し「・・・さて、美桜さんはどこまで逃げ切れるでしょうね?」
悲「南無・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あれからどの位経ったのかな・・・
とりあえず、色んな所に宇髄さんから教えてもらった罠を仕掛けながら逃げているけど・・・
正直、柱の皆がこんな罠にかかると思えない。。。
寧ろ、私のいる場所を教えている様な物では・・・?
と、すぐ横の茂みからガサガサ音がする。
『っ!?』
身を固くして、茂みを凝視していると野ウサギが顔を出す。
『・・・はぁあ・・・吃驚させないでよ・・・』
野ウサギは私の声に反応して慌てて逃げていった。
そっか・・・山の中だもんね。野生動物位いるかぁ。
そこでハッとする。
そう、今の今まで羞恥心が勝っていたからそれどころではなかったけれどここは山の中だ。
鬼はいなくても獰猛な野生動物がいるかもしれない・・・
こんな所で、こんな格好で一人ぼっちとか・・・
『やだ!怖すぎる!!』
誰か来てー!
しのぶさーん!!
ガサッ!
また茂みから物音がする。
さっきの野ウサギがまた来たみたい・・・
『もう、今キミに構っている場合じゃ・・・』
と、振り返った所で固まる。
野ウサギじゃない
義勇さんが目を丸くして立っていた。
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野ウサギが逃げて来た方向に進んで行くと美桜の気配がする。
まだ山の中腹に差し掛かってもいない場所だ。やはり鬼殺隊ではない美桜に鬼役は難しかったのだろうな・・・
早々に決着がつくが仕方ないだろう。
そう思い、美桜のいる元に足を進めた。
美桜の着ている羽織を脱がせれば終わりだーーーーー
『ぎっ義勇さん・・・』
冨「・・・何だ、その格好は・・・?」
何故羽織を着ていないのだ??
なんだその短い丈の服は・・・
『えっ!?これが、衣装だって言われて・・・あ、あんまり見ないでください!!』
美桜が後ろを向いてしまう。
冨「・・・・・・」
俺は混乱する。
虎柄の羽織を脱がせるのが規定だ。
だが目の前の美桜はそれを着ていない。
この場合はどうするのが正解だ・・・?
冨「・・・とりあえず、脱がせるか?」
『はっはああっ!?何を言ってるんですか!?』
危険を察知したのか美桜は逃げようとする。
冨「待て・・・っ」
逃がすまいと、美桜の服の端を掴んだ瞬間・・・・・
ビリィッ
美桜の服がいとも簡単に裂けた
冨「・・・・・???」
『・・・・・・・』
冨「これは、どういう・・・」
『ぎっ!義勇さんの馬鹿ァ!!もう嫌いですっ!』
こっちに来ないで!!と走って逃げていく。
ガーン!!!!
どんな時も、美桜だけは俺を避けなかった
・・・美桜に嫌いだと言われた・・・
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鴉「カアァッ!冨岡義勇!棄権!!心ガ折レタ為棄権スルゥッ!!」
各柱に鴉から情報が入る。
不「何だぁ?その理由は!アイツやる気あんのかぁ!!」
煉「・・・冨岡が棄権?一体何が起こったのだ・・・」
宇「て事は残る好敵手は2人か・・・美桜も中々やるじゃねぇか」
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私は先程までワンピースだった布きれで身体を隠しながら山道を進む。
『うぅっ・・・義勇さん、ひどい・・・』
とにかくまた何処かに身を潜めないと・・・
その前に、この辺に罠を仕掛けよう。
掛からないとしても、足止めくらいにはなるだろう。
『・・・これで、よし。と・・・』
さぁ、移動しよう。
と、立ち上がって行こうとした時
ガサッ!
『っ!あっ!!?』
不「見つけたぜぇ!」
私の真後ろの茂みから手が伸びてきて身体ごと捕まってしまった・・・
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さっき冨岡が棄権した場所から少し登って行くといくつかの雑な罠が仕掛けられていた。
こんなもん、通った道を教えているようなもんじゃねぇか・・・
しばらくすると、美桜の気配が。
どうやら、また罠を仕掛けているらしい・・・
警戒心ゼロじゃねぇか。
いや、姿を現すと逃げられちまうかもしれねぇな。
ここは後ろから行くか。
茂みに潜んで気配を探る。
どうやら仕掛け終わったらしい。
『・・・これで、よし。と』
立ち上がったタイミングで勢いよく飛び出す。
不「見つけたぜぇっ!」
後ろから羽交い締めにする。
『っきゃあっ!!』
美桜が慌てた様子で悲鳴を上げる。
不「お前にしちゃ粘った方だが、これで終わりだなぁ。さぁ、羽織を脱いで寄越せ・・・!?」
と言って美桜の姿を確認して固まる。
美桜は虎柄の乳当てと下着姿だった。
地面には、俺が捕まえた時に落としたと思われる虎柄の布切れが落ちている。
動揺して手を離してしまうと、美桜が素早く距離を取る。
不「・・・何だァ、お前のその格好は・・!?羽織はどうしたァ??」
『はっ羽織!??そんなもの、最初からなかったですよっ!!』
美桜は涙目で屈んでいる。
羽織がなかった?
どういう事だぁ・・・?
よく分からねぇが、こいつを連れて帰れば終わるだろう。
不「・・・まぁいい。山小屋まで戻んぞぉ」
美桜の姿を見ないように近づこうとするが、
『いっ嫌です!!こんな格好で戻りたくありませんっ!!』
不「・・・チッ」
俺は自分の上着を掛けてやろうと脱ぎながら美桜に近づく。
美桜から視線を外していた事で、足元に落ちていた布切れに気がつかず踏んでしまい、それに足を取られる。
そのまま前に倒れる形で転んでしまう。
『っ!?』
不「・・チィッ、クソが・・・」
起きあがろうと地面に手をかけると妙に感触が柔らかい。
不「??・・・!?」
俺の目の前には真っ赤になった美桜の顔
そして、地面をついた筈の俺の右手は美桜の胸を鷲掴みしていたーーーーー
つまり、押し倒すような形で倒れた拍子に乳当てがずれてそこに俺の手が入り込んだ形になっているーーー
不「っ!!悪ィッ・・・」
慌てて立ち上がり後ずさる。
と、さっきの布をまたしても踏んづけてしまい今度は後ろに重心が行く。
不「!!」
今度は転ばない様、左足を更に後ろに下げて踏ん張る。
カタッ
不「んなっ!?うおおおおお!??」
足をついた所は運悪く先程美桜が仕掛けた罠があった。
罠が作動し俺は宙吊りになる。
『・・・見られた上に触られた・・・男の人に・・・うわぁーん!!』
美桜は暫く固まっていたが、俺の存在を忘れて更に山奥へと逃げてしまった
不「・・・・・クソ・・・何なんだ一体・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
鴉「カアァッ!不死川実弥ィ!棄権!!美桜ノ罠ニカカリ身動キ取レズ棄権スルゥ!!」
煉「なっ!?不死川もか!!美桜に鬼ごっこの素質があったとは!よもやよもやだ!!」
宇「・・・マジかよ。素人の罠にかかるかよ普通・・・何かおかしいな」
し「・・・冨岡さんに続き不死川さんもですか・・・何だか様子がおかしいですね」
悲「うむ・・例年棄権するものは滅多におらんからな・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ヒック、ヒック・・・ぐすん』
私は泣きじゃくりながら山道を更に進む。
何で鬼ごっこでこんな目に遭わなきゃいけないの・・・
もう無理・・・皆には悪いけど棄権しよう・・・
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美桜の捜索を一時中断し、罠にかかった不死川の救出に向かう。
到着すると既に宇髄の姿があった。
だが宇髄は助けるどころか指を差して笑っていた。
宇「ギャハハハハッ!!はっ腹痛ぇっ!!泣く子も泣かす天下の風柱様が宙吊りとはな!!」
不「テメェ・・・殺す・・・」
煉「大丈夫か不死川!!今降ろしてやるぞ!」
不「煉獄!・・あァ・・悪ィな・・・」
俺を見た不死川は一瞬気まずそうな顔をする。
まぁ、この様な姿はあまり見られたくないだろうな!
煉「しかし、この様な罠に掛かるとは不死川らしくないな!」
不「・・・それなんだけどよ・・・アイツをさっさと捕まえねぇと取り返しがつかなくなるぞ」
煉「?どういう事だ??」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
宇「はぁ!?下着姿?」
不「最初は服を着ていただろうが、破けた様だなァ」
と言って、不死川の目線を辿るとボロボロになった虎柄の布切れが落ちている。
宇「おい、美桜は羽織なんか知らないって言ったんだよな?」
不「あァ。いつも使うのとは別の物が用意されてたって事だ」
煉「なっ・・一体誰が・・・」
不宇「「ゲスメガネに決まってんだろ!!」」
宇「とりあえず、美桜が自棄になる前に捕獲しに行くぞ、煉獄!」
煉「うむ!いや、駄目だ!!」
宇「あ?」
煉「宇髄は駄目だ!!そんな姿の美桜を君には見せられん!!」
宇「そんな事言ってる場合かよ!もうすぐ日没だ。暗くなると野犬や狼も出てくるだろうが!」
煉「むぅ!」
不「俺は小屋まで戻って悲鳴嶼さん達に説明してくるわ」
宇「おうよ!ほれ、行くぞ煉獄!!」
煉「むぅ・・・!!」
宇髄に急かされるがまま後に続く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は棄権しようと山小屋に向かっている。
が、歩けど歩けど辿り着かない・・・。
『な、なんで・・・あの大きい木を左に降りて行けば山小屋に着く筈なのに・・・』
日が傾き始めている。
周りの景色も少しずつ暗くなって心細さが増して行く。
こんな格好じゃなかったら、大声で煉獄さんを呼んで助けを求めるのに・・・
鴉「カアァッ!美桜ヲ発見ッ!!」
急に頭上で鴉の声がしてビクッとする。
あ、あれは・・・
『要!!』
煉獄さんの鴉だ!!
って事は煉獄さんに居場所が知られてしまう!!
煉獄さんにだけは見られたくないのに!!!
ていうか鴉使うの反則じゃない!?
はっ!
そこで私はある作戦を思いつく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺の鴉が美桜を発見した。
俺と宇髄は現場へ急ぐ。
煉「宇髄!君は現場に到着したら目隠しだ!良いな!!」
宇「なんでだよ!!冨岡も不死川も見たんだろ?こんな時に言ってる場合か!」
煉「俺だってまだ見たことない!!」
宇「・・・マジかよ・・・」
冨岡と不死川は不可抗力だとしても宇髄は駄目だ!!
頭上で鴉が旋回している。
現場は近いな。
煉「美桜!!聞こえるか?鬼ごっこは終わりだ!!一緒に戻るぞ!!」
大声で呼びかける。
『れっ煉獄さんだけは来ちゃ駄目です!!』
美桜の声が返ってくる。
俺だけは?何故だ!?
そうこうしている内に茂みの向こうで美桜の気配がする。
煉「・・・美桜。今の君の状態は不死川から聞いている」
美桜の身体を隠す為に俺は自身の羽織を脱ぐ。
『っ!!?』
煉「小屋に戻るぞ。出て来なさい」
『いっ!嫌です!煉獄さんがいるなら行きませんっ!』
煉「む!何故だ!?」
俺はカチンとする。
まるで冨岡や不死川は良くて婚約者の俺は駄目みたいではないか!
『何ででも、嫌なものは嫌ですっ!!』
煉「・・・・・・」
宇「・・・なぁ、美桜。わかった。俺たちは2人とも目を瞑ってるから!気にしないで出てこいよ!」
『うっ宇髄さんまでいるんですか!?』
尚更嫌です!
と返事が返ってくる。
それはそうだろう。
今の美桜の姿を考えれば至極当然だ。
煉「わかった!俺の羽織をそちらへ投げるから、それで身体を隠して出て来なさい」
そう言って羽織を投げる。
『っ!!』
煉「美桜、出てきてくれるか?」
『・・・はい・・・』
煉「良かった。さぁ、おいで」
美桜がこちらへ向かってくる気配がする。
そこで宇髄と俺はようやく安心する。
カタッ
『っ!きゃあああああ!?』
煉宇「「美桜!?」」
美桜の悲鳴に反応し、俺と宇髄は同時に美桜の元へ進む。
カタッ
カタッ
宇「うおおっ!?」
煉「ぬうっ!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
茂みを挟んでの攻防の末、煉獄さんの羽織が飛んできた。
『っ!』
羽織を掴んで身体に巻きつける様に着て、前を押さえる。
煉獄さんの匂いだ・・・
身体を隠せた事と煉獄さんの匂いで落ち着きを取り戻していく。
煉「美桜、出てきてくれるか?」
煉獄さんの優しい声がする。
『・・・はい・・・』
煉「良かった。さぁ、おいで」
きっと両手を広げて待ってくれているんだろうな・・・
煉獄さんの元に駆け寄りたい気持ちで足を前に出す。
カタッ
ハッ!
しまった!!
『っ!?きゃあああああ!!』
自分で仕掛けた罠の事をすっかり忘れていた!
煉宇「「美桜!?」」
と、2人が同時に飛び出してくる。
カタッ
カタッ
宇「うおおっ!?」
煉「ぬぅっ!?」
2人とも慌てて飛び出して来た事で別々の罠に掛かってしまい、
私たちは3人仲良く宙吊り状態になった。
そう、追い込まれた私が咄嗟に取った作戦とは、私を囲う形で罠を張り巡らせる事だった。
これで簡単に近づかせない作戦だったのだけど・・・
宇「・・・・・・」
煉「美桜・・・!」
『うっ、2人ともごめんなさい・・・せっかく助けに来てくれたのに・・・』
煉「宇髄!目を閉じろ!!美桜を見るな!!」
宇「いや、もう遅ぇだろ・・・」
『・・・は?』
煉獄さんの羽織のお陰で身体は隠れている筈・・・と自分の状態を確認する。
『!!?』
身体に羽織を巻いているものの、ロープが胸下で食い込んだ状態で吊られているため胸元の部分ははだけてしまっている・・・
下も、なんというか見えそうで見えない逆に嫌らしい感じになっていた。
『きゃああ!!煉獄さんも見ないでくださいっ!!・・・ぐすん・・・皆に色々見られた・・もうお嫁に行けない・・・』
煉「それは問題ないぞ!美桜は俺の婚約者なのだから、俺の所に嫁にくれば安心だ!!」
『そういう問題じゃなーい!!!』
私の叫びが暗くなった山に木霊する。
私たちは実弥さん達に救助されるまで宙吊り状態だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
悲「・・・今年の鬼ごっこは、捕獲役も鬼役も全員棄権という結果になった・・・」
し「前代未聞ですねぇ」
『・・・・・・』
宇「おい美桜、機嫌直せよ」
『・・・・・・』
救助された私達はスタート地点に戻ってきた。
私は無事に着替える事が出来たが皆と顔を合わせられず煉獄さんの羽織を頭から被り貝のように心を閉ざしていた。
冨「美桜、服を裂いてしまいすまなかった」
『・・・・・・』
不「・・・俺も、色々とアレだ・・・悪かったなァ」
『・・・・・・』
煉「美桜、過ぎてしまった事は仕方がない!元気を出せ!!」
『・・・・・・』
し「まぁまぁ、また来年頑張りましょう!元気を出してください美桜さん。」
『もう鬼ごっこなんて二度とやりませんっ!!』
その後、柱の人達は私の機嫌を直そうと四苦八苦するのだけれど、それはまた別のお話。
ちなみに、今回の事件の元凶であるゲスメガネこと前田さんは柱全員にシメられ美桜接触禁止令が出たとか出ないとか。
そして、今回の鬼ごっこは柱達を棄権に追い込んだ者として鬼殺隊の中でもちょっとした事件扱いになったとかならないとか・・・
ー完ー
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