恋と呼吸
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『えぇっ!!新しい柱って・・・蜜璃ちゃん!!?』
不「チッ・・・おい」
『ッ!!すっすみません・・・』
柱合会議に呼ばれた私は、お館様に促され入ってきた新しい柱の姿を見て思わず立ち上がり大声を出してしまった。
お館様の御前で失礼だろォと実弥さんに睨まれ慌てて座り直す。
館「いいよ実弥」
不「はい・・・」
お館様が笑って許してくれる。
そして、
館「蜜璃は美桜とは友人なんだよね?」
蜜璃ちゃんに向かって優しく問いかける。
蜜「はっはいっ!!美桜ちゃんは友達です!っていうよりもう心の友!って書いて親友って感じで!」
不「・・・・・・」
悲「・・・・・・」
冨「・・・・・・」
蜜「・・・すみません・・・」
お館様に急に声を掛けられた蜜璃ちゃんはガチガチに緊張して声が裏返りながら口走るが実弥さんたちからの視線に耐えられず両手で顔を覆ってしまった。
しのぶさんと宇髄さんは下を向いてプルプルしている。
煉獄さんはうむ!美桜と甘露寺はとても仲が良い!と頷いている。
私は、というと、
『・・・親友・・・!』
とても感動していた。
館「そう。じゃあこれからも仲良く、そして他の柱たちと一緒に美桜を守ってね」
蜜「!はい、勿論です!!」
新しい柱の紹介も済んだので、会議の邪魔にならないように部屋を出ようとした時
館「美桜。ちょっと待って」
『? はい』
お館様に呼び止められ、座り直す。
館「全集中の呼吸が随分上達したね。短い期間で沢山頑張ったんだね。君は凄い子だ」
『・・・お館様・・・』
うわぁ・・・何だろう
ちょっと恥ずかしいような、誇らしいような
まるで幼子が親に褒められた時のようなフワフワした高揚感。
館「この先 柱の任務に同行する事になると思うけど・・・美桜の思いに変わりはないかな?今までの任務とは違い危険度も増していくよ」
もし、心変わりをしていたとしたら断っても良いんだよと優しく語りかけてくれる。
『ありがとうございます。でも大丈夫です。早く・・・力の使い方を思い出して皆さんの役に立ちたいんです』
煉「・・・・・・」
館「そう・・・では例の物を」
私の意思確認をしたお館様の合図で、あまね様が風呂敷を持って入ってきた。
包みを開くと中からいくつかの石が出てくる。
これって・・・
あまね様を見ると
あ「猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石を含んだ玉鋼です。」
『取引の時に見た・・・』
あ「そうです。美桜様にはこちらから1つの鋼を選んでいただきます」
『?』
館「美桜の日輪刀を造るんだよ」
『えっ!?』
館「美桜は鬼殺隊士ではないけれど我々に協力してもらっている立場だから、美桜自身を守る為にも持っていた方がいいから」
悲「本来は、藤襲山での最終選別を突破しないと手に入らない物だが・・・特例という事ですね」
『特例・・・』
館「うん 美桜は下弦の鬼に遭遇して一人で立ち回ってみせた 素質は十分にあると判断したんだ」
チラ、と周りを窺うとこの特例措置に皆目を丸くしながらもお館様の説明に納得したような反応を示す。
伊「何をぼさっとしている。とっとと鋼を選べ」
会議が進まんだろうと嫌味を言われる。
そうか、私のせいで会議が中断されてるんだったと慌てて鋼に目を向けるが・・・
選ぶ・・・?どうやって??
大きさや形はまちまちだけど、一体何を基準に選べばいいんだろう。
石の良し悪しは私には分からないよ・・・
『・・・杏寿郎さん、どれが良いと思います・・・?』
煉「それは俺には分からんな!美桜が自分で選ぶといい!」
『ええっ』
こそっと相談すると大声で突き放され少しショックを受ける
し「美桜さん。この玉鋼は自分で選ぶのですよ」
宇「己の身を守る刀だからな。他人任せにしないで自分で決めな」
煉「そういう事だ!」
『・・・分かりました』
自らの行いとして全ては自分に返ってくる。
つまり、自己責任。
自分の考えが甘かった事に反省し、改めて鋼と向き合う。
『・・・・・・じゃあ』
じっくり見たところで分かる訳ない。
だったら直感で選ぶしかない。
『これにします』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『・・・はぁ』
玉鋼を選び終えた私は庭に出ていた。
そしてまた悩んでいる。
『何がいいかな・・・名前』
庭木を見上げて零した先には一羽の鴉。
そう。連絡用として私に与えられた鎹鴉だ。
『・・・クロちゃん』
鴉「ケェーッ!!」
『いった!!』
さっきからこれの繰り返しである。
気に入らない名付けをするとめっちゃ突いてくる。
どうやら私に名付けのセンスはないらしく、
カーちゃん、トリッピー、まっくろくろすけ等ことごとく却下をくらっている。
『んもう!じゃあ何ならいいのさ!!』
怪我しない程度に加減してくれてるが痛いものは痛い。
こちらも我慢出来ずに抗議の声を挙げると
鴉「コッチハ隊士デモ無イ小娘ノオ守リヲ任サレ憤慨シテルンダ!セメテ名前クライハ高貴ナモノニシロ!!」
『・・・高貴な名前って・・・』
何??
余計難しくなったじゃん・・・
でも、この仔の言う通り本来は隊士に就くのが役目なんだから私につけられて不本意なのは分かる。
『・・・わかった。真剣に考えるからちょっと待って』
鴉「・・・・・・」
鴉からの突き攻撃がやっと収まり、ふうと一息つきながら着崩れた襟元を正すと首元のネックレスがチャリっと小さい音を立てる。
鴉「!!カァッ!!」
『ぎゃっ!何何!!?引っ張らないで!!!』
光に反射したネックレスにすかさず反応し、嘴に挟んで引っ張られる。
私は引きちぎられない様必死に抵抗する。
鴉「何ダコノキラキラシタ石ハ!!」
『これは杏寿郎さんにもらった大事な指輪!ちぎったら怒るよ!!』
人の言葉を話せたり知能は高いけど光り物に興奮する所はやっぱり鴉だ。
引っ張るのをやめると私の肩に止まって興味深そうに赤く光る宝石をじっと見つめている。
『・・・柘榴』
鴉「?」
『この宝石の名前。海外ではガーネットっていうらしいんだけど、日本での呼び方は紅榴石って言うの』
柘榴の実の様に赤いでしょ。と言うとマジマジとこちらを見てくる。
『・・・だから、この宝石と同じ“柘榴”がキミの名前ってことで・・・』
どうかな?と問いかける。
しばらくの沈黙の後、翼を大きくはためかせたのでまた突かれる!と体をすくめたが、そのまま真上の木の枝に飛び移って行った。
鴉「・・・宝石ノ名前・・・悪クナイ!」
『・・・じゃあ!』
やっと合格を貰えてホッとする。
『これから宜しくね。柘榴』
柘「カァッ」
柘榴が返事をしてくれる。
自分が名付けた鴉だからか、なんだか愛着が湧いてくる。
柘「マア小娘ニシテハ上出来ダナ!及第点ト言ッタ所ダ!」
前言撤回。
上から目線でネチネチと・・・
『・・・やっぱり“小芭内”と名付ければ良かった』
伊「ほう、俺の名を鴉につけるのか。貴様も随分と偉くなったものだな」
『ッ!!!いっ伊黒さん!!?』
ボソッとぼやいた私の真後ろからドスの効いた声がして飛び上がる。
『もっ、もう会議が終わったんですか!!早かったですね・・・』
伊「・・・フン」
あれ、それだけ??
いつもなら更に2、3言ネチネチ言われるんだけどな・・・
少し拍子抜けしてしまった。
蜜「美桜ちゃーん!!」
『蜜璃ちゃん!!』
蜜璃ちゃんがこちらに駆けてきて、2人で手を取り合って喜ぶ。
『昇進おめでとう!なんで教えてくれなかったの?』
蜜「えへへ、美桜ちゃんを驚かせたくって皆にお願いして黙っててもらったの。吃驚した??」
『したよぉ!え、皆は知ってたの??』
蜜「うん。しのぶちゃんと、宇髄さんと煉獄さんは知ってたよ」
下弦の鬼を倒した報告の時にいたからという。
『そうだったんだ・・・ん?んん??』
蜜「??」
ーーー柱が増えるのは喜ばしい事だ。しかし、あの鬼は・・・美桜を苦しめた鬼は俺が退治したかったーーー
・・・煉獄さん、蜜璃ちゃんにまでヤキモチ妬いてたの・・・
蜜「美桜ちゃん?」
『あっ、なんでもない・・・。蜜璃ちゃん、あの鬼を倒してくれてありがとう』
蜜「ううん。私も、美桜ちゃんの事守れて良かった。これからもしっかり守るからねっ」
煉「美桜!そろそろ帰ろうか」
『あ、はい。蜜璃ちゃん、今度お祝いさせてね』
蜜璃ちゃんとひしっと感動の抱擁をしている所に煉獄さんから声がかかり我に帰る。
気が付けば皆帰る準備をしていた。
蜜「ありがとう!あっ、あの!!」
蜜璃ちゃんが何かに気付き、私の後ろに向かって声をかけ足を向ける。
その動きに釣られて私も振り返る。
蜜「さっきは、ありがとうございました」
伊「いや・・・大した事はしてない」
『・・・・・・』
蜜璃ちゃんが伊黒さんにお礼を言っていた。
蜜「じゃあ・・・また。美桜ちゃんも、またね」
そう言って帰っていった。
・・・振り返った蜜璃ちゃんは、なんか・・・いつもより可愛かったぞ・・・!
蜜璃ちゃんの背中を目で追っていると、伊黒さんと目が合う。
何だその間抜け面は
こっちをジロジロ見るな
目障りだ
などの暴言を待っていたのに
伊「・・・・・・」
何も言わずに帰っていった。
『・・・杏寿郎さん。今日は伊黒さん調子悪かったのでしょうか?』
煉「ん?別にいつもと変わりなかったと思うが?」
『そうですか・・・』
悲「美桜、刀が届いたら次回の俺の任務に同行しなさい。詳細は鴉づてに伝える」
『!は、はいっ!!』
いよいよ動き出すんだ・・・
足を引っ張らない様にもっともっと鍛錬しないと・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
数日後、道場では木剣同士がぶつかる音が響いていた。
須「ひゃああっ!!」
須磨さんの悲鳴と共に木剣が空を舞い、床に落ちる。
『・・・ふぅ。もう一本、お願いします!』
私は流れる汗を袖で拭いながら再び構える。
須「ちょっ!ちょっと待ってぇ!!」
『?どうかしましたか??』
須「美桜ちゃん急に強くなりすぎ!私じゃ相手にならないよおぉ!!」
くノ一の稽古が再開し、今日は3人揃って来てくれたのだけど・・・
『じゃあ・・・まきをさんか雛鶴さん、お相手してくれますか?』
ま「・・・いや、私でも相手にならないよ」
雛「本当、この短期間で凄い成長ね」
二人も目を見開いて驚いている。
いや、若干引いている??
ま「やっぱ元柱の育手の教えは凄いんだな」
雛「もう私たちの出る幕はなさそうね」
須「その通りですっ!」
『・・・あんまり実感ないんですけど・・・そっか』
鱗滝さんの稽古は確かにきつかった。
必死に食らいついてきた事がちゃんと身になってるんだ・・・
少しだけ安心した。
?「御免!」
『?誰か来たみたい・・・ちょっと失礼します』
外から声がして道場の扉を開ける。
『ッ!?』
来訪者の姿を確認した私は驚きのあまり言葉が出てこなかった。
鋼「俺は鋼塚という者だ。美桜の刀を打ってきた。」
『え・・・刀鍛冶の方・・・?』
笠のまわりに沢山の風鈴をつけ、さらに火男の面を被った風貌に思わず後退ってしまった。
室内へと招き入れ、私と鋼塚さんは向かい合って座り、私のうしろに雛鶴さん達が並んで座っている。
須「天元様の刀を見る以来だからドキドキしちゃうわ」
ま「美桜のは何色になるんだろうな?」
『色?』
雛「日輪刀は別名“色変わりの刀”と呼ばれていて持ち主によって色が変わるのよ」
『へぇ・・・不思議』
鋼「ここは炎柱の屋敷だろう?そこにいる娘なら赤くなるかもなぁ。さぁさぁ刀を抜いてみなぁ」
『・・・煉獄家の血は入ってないのでどうでしょうね・・・』
皆の視線が刀に注がれる。
私は息を整えてから、鞘に手をかけゆっくりと抜いていく。
綺麗な鉄色をした刀身が露わになる。
『・・・・・・』
柄を両手でしっかり握りしめ、変化を待つ。
鋼「!?」
雛「・・・・・・!」
須「・・・えっ!そんな・・・」
ま「色が・・・」
私は刀身を見たまま固まり、部屋の中はシンと静まり返り、暫く口を開く者はいなかったーーー