恋と呼吸
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急遽、狭霧山に行くことが決定し最低限の荷物を持って前を行く鱗滝さんに付いて歩いていた。
『・・・・・・』
あんなに駄目だって言ってたのにどうして連れて行ってくれる気になったんだろう。
名目はお家のお片付けだけど、空気の薄い山で少しでも呼吸の訓練をすればきっと肺が強くなる筈!
意気揚々と歩き出して、数時間が経過した。
『・・・ハァ、ハァ・・・』
休みなく歩き続けて疲れて来た。
鱗滝さんは息を切らすこともペースを落とす事もなく先を歩いている。
『・・・ハァッ、鱗、滝さん・・!』
鱗「なんだ?」
『ハァハァ・・・狭霧山までは、あと、どのくらい・・・』
鱗「山を2つ超えた先だ」
『!!?』
え、今目の前に見えている山じゃないの・・・?
鱗「・・・家に戻るか?」
『!』
見透かされている・・・。
正直、途方に暮れかけた。
『だっ、大丈夫です!行きます!!』
鱗「・・・そうか」
そうだ、こんな事で挫けているようじゃ駄目だ。
これも修行!!
呼吸を整えて、また歩き出す。
鱗「・・・・・・」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
『・・・ふわあぁ〜〜〜』
鱗「なんだ、その声は?」
あれから更に数時間歩いてたどり着いた村の食堂に入った。
今は遅めの昼食のうどんを一口食べた所。
『あぁ、美味しくてつい声が・・』
やっと腰を落ち着かせられた事とお腹に温かい料理が入ってくる幸福感から気の抜けた声を出してしまった。
鱗「疲れたか?」
『いいえ!!・・・あ、いや・・・はい・・・』
否定しかけて辞めた。
こんな事で強がったってどうせ見透かされてる。
鱗「・・・そうか」
『あ、あのでも、狭霧山まではどんな事があっても着いていきますから!』
慌てて付け加える。
引き返せと言われるのが怖かった。
鱗「・・・正直、ここまで着いてくるとは思っていなかった」
『・・・?』
店「お客さんたち見ない顔だけど、どこから来たんだい?」
温かいお茶を出しながらお店の人に話しかけられる。
『あ、東京府の・・・』
店「東京!?さっき狭霧山とか言ってたよねぇ?」
『はい。』
店「ここの村は東京からだと全然方角違うよ!何だってこんな遠回りしてるんだい?」
『・・・は、はい?えっ!鱗滝さん・・・』
どう言う事!?
と、鱗滝さんを見ると黙って湯呑みを傾けていた。
『・・・私を試してるんですか?』
鱗「・・・・・・」
何故黙る・・・。
店「まぁ、よく分からんけど今日はあの山を越えるのは辞めた方が良いよ」
『?何でですか??』
店「今から山を越えようとすると夜になっちまう。最近、夜に熊が出るみたいでよ、この村の者も何人か被害にあってんだよ。」
『熊が・・・』
店「まぁ、夜しか被害が出てないみたいだから今日はこの村に泊まって明日の朝向かった方がいいよ!」
そう言って厨房に入っていった。
『・・・鱗滝さん、熊ってもしかして・・・』
鱗「うむ」
『・・・・・・』
私は無事に狭霧山までいけるのだろうか・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉「む。どうやらあの村だな!!」
山道の開けた場所から麓に見える村を発見する。
地図を確認しながら2人へ話しかける。
不「よぉし。さっさと鬼をブチ殺して終わらせんぞォ」
冨「・・・まずは情報集めだな」
不「分かってるわ!俺に命令すんじゃねェ!」
冨「・・・(してない)」
煉「うむ!まずは腹ごしらえだな!!」
不「・・・話聞いてたかァ?」
不死川が盛大なため息をつく。
人が集まる飲食店ならば情報が集めやすいだろう!
それに丁度小腹が空いている!!
煉「では行こう!!」
目的地まで再び足を動かし始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『・・・あの山に、いるんだ・・・』
さっきの食堂のおじさんに言われたように、今日は宿をとってこの村に留まる事になった。
私は部屋の窓から見える山をぼんやり眺めていた。
村の人たちは“熊”と言ってたけど、その正体はきっと鬼だ・・・。
『・・・・・・』
いくら目を凝らした所で、ここから鬼の姿など見える筈もないのだけど、“すぐそこ”にいるのだと思うと気になって仕方がなかった。
子1「待ってよ〜」
子2「早く早く!母ちゃんに怒られるぞ!」
窓のすぐ下で子どもたちが駆けていくのが見える。
夕暮れ時だから、外で遊んでいた兄弟が家に帰る所かな。
子「カラスが泣くからか〜えろ!」
パタパタと足音を鳴らしながら家路へ急ぐ子ども達を懐かしい気持ちになって見つめていた。
“待ってよ〜お姉ちゃん!!”
“早く早く!門限過ぎると父さんにしごかれるよ!”
ああ、そうだった。
少しでも帰るのが遅くなると後が大変なんだよなぁ・・・
朧げな弟とのやりとりが脳裏に蘇る。
走り去る子ども達を目で追っていると、すれ違う様に1人の男の人が歩いてくるのが目に入った。
『・・・・・・』
大きな荷物を抱えて、例の山の方へ向かっている。
装いからして恐らく村の人ではなさそうだった。
このまま山に入るつもり?
もしかして、熊の情報を知らないのかも・・・
『・・・ッ!』
慌てて部屋を飛び出し、隣の鱗滝さんの部屋をノックする。
しかし、何度叩いても呼び掛けても返事はない。
『えぇ・・・どこに行っちゃったんだろう』
こうしている間にもあの男の人は山へと向かって歩いて行ってしまう。
陽もだいぶ傾いてしまった。
『・・・・・・』
駄目だ。
勝手な行動はするなと言われている。
鱗滝さんの帰りを待たなきゃ
ーーでも、すぐに帰って来なかったら?
だって、私一人では何も出来ない・・・
ーーじゃあこのまま何もしないでいる?
『・・・・・・』
自問自答を繰り返しながら私は走り出していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
不「妙だぜぇ」
村に到着し、食堂や道中で出会った者たちから一通り聞き込みを終えた俺たちは情報を整理するため宿をとった。
腰を落ち着けた所で不死川が口を開いた。
冨「確かに。ここまで情報が出ないのはおかしいな」
冨岡も同意する。
二人の言う通り、奇妙な感覚だった。
不「何故、こんなに平和なんだ?」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
村人1「行方不明?聞いた事ないねぇ」
村人2「あんたら旅の人かい?珍しいね!」
村人3「大したものは無いけど、村で作った野菜や酒の味は保証するよ!!」
そう。
余りにも平和過ぎて逆に違和感を持った。
煉「何か困りごと等はないだろうか?」
と、質問してみても
村人4「いやぁ、何もないよ!」
と返ってくる。
これが一人二人ならば気にするまでもないが、話を聞いた村人全てが同じ答えだった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
煉「情報に誤りがあったのだろうか?」
不「いや、今回の任務はお館様から直々に仰せつかった案件だ。その可能性は極めて低いだろォ」
冨「旅の者が珍しいと言っていたな・・・何人か隊士が訪れている筈だが・・・」
考えれば考える程不審な点が多すぎる。
さてこれからどう動こうかと話を始めた時、俺たちを訪ねて来た者がいると宿の主人が伝えに来た。
煉「・・・」
不「・・・」
冨「・・・」
3人で目配せをし、来訪者を迎え入れる事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は山に向かって必死に走っていた。
まだ、追いつかない・・・
私が迷っている間にあの人はどんどん先へ進んでしまったようだ。
本当に、
自分の優柔不断さが嫌になる。
『・・・どうしよう』
ついに、山の入り口まで来てしまった。
辺りはすっかり暗くなっている。
1人で入るのは危険すぎる。
そもそも1人で山になんて昼間でも入った事がない。
やっぱり、鱗滝さんの帰りを待っていれば良かった・・・
私はいくつもの判断を間違えていた事に漸く気がつく。
・・・今からでも鱗滝さんを呼びに「うわあああああっ!!」
『ッ!!?』
山の中から男の人の悲鳴が聞こえた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
男「ヒッ!ヒイィッ!!!」
鬼「チッ!また男か・・・男の肉は硬くて不味いんだよなぁ・・・!」
男「なっ、何なんだ一体・・・」
鬼「だが久し振りの食事だからなァ。好き嫌い言っても仕方ねえか!」
男「うわあッ!たっ!助け・・・」
鬼「助けなんて来る訳ねぇだろぉが!大人しく食われろや!!」
男「・・・・ッ!!」
ーーー水の呼吸、壱の型、水面斬り!!ーーー
鬼「ッ!!!」
鬼の腕が落ちる。
鬼「だっ、誰だ!?」
『ハァッハァッ!!』
私は荒くなった呼吸を必死に戻そうとしていた。
駄目だと分かっていたのに、悲鳴を聞いたら体が勝手に動き出していた。
『ハァッ・・・!怪我は??』
男「・・・!あ、足をやられた・・・。あんたは・・・」
『貴方が山に向かったのを見て止めに来たのですが、ごめんなさい。間に合わなくて・・・』
この人は足に怪我を負っている。
走って逃すことが出来ない。
勿論、私が支えて逃げ切れる訳がない。
『・・・・・・』
私とこの人が助かるためには
『・・・私が、鬼の頸を斬るしかない・・・』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
鬼「・・・!!ハハ、ハハハハッ!!」
『・・・・・・』
腕を落とされた鬼は暫く驚いた様子だったが、私の姿を確認すると笑い出す。
鬼「女だ!!久し振りの女の肉!!」
まさかご馳走の方からやってくるとはな!と上機嫌だ。
鬼「なあお嬢ちゃん、今なんて言った?頸を斬るって言ったなぁ??」
『・・・・・・』
鬼「そんなに震えてて出来るのかぁ?」
鬼の言う通り、私の足はすくんでしまった。
恐怖で腕も震えてしまう。
辛うじて全集中の呼吸だけを続けていた。
だけどそれも長くはもたない・・・
自分の体力を考えると長期戦は不利だった。
油断している今ならーーー
無理矢理気持ちを奮い立たせ、鱗滝さんから借りた日輪刀を構え直す。
『・・・水の呼吸、壱の型・・・』
水面斬り!!
再び斬り掛かり、今度は反対の手首を斬る。
鬼「ッ!!」
間髪入れずに
『水の呼吸、壱の型、水面斬り!!!』
今度は頸を狙うーーーが
紙一重で躱される。
『・・・ハァッハァッ』
鬼「そう何度も同じ技を喰らうかよ!!」
鬼はニヤリと笑っている。
『・・・・・・・』
鬼(この娘、どうやらこの技しか使えねえ様だな。このまま体力を削らせてから一思いに喰ってやる)
『・・・・・・水の呼吸、』
ーーー漆の型、雫波紋突き!!ーーー
鬼「ッ!?何ッ!!!」
私の刀は鬼の頸目掛けて突き刺さるーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉「美味い!!!」
不「・・・五月蝿ェ、黙って食え」
冨「・・・・・・」
不「冨岡はボロボロ零すんじゃねェ」
煉「不死川はお母さんみたいだな!!」
不「煉獄・・・テメェ・・・」
長「いやいや、お口に合ったようで何よりです」
部屋の戸が開き、年配の男が入ってくる。
この村の長だった。
先程部屋を訪ねてきたのは村長の使いの者で、俺たちと話がしたいと屋敷に招待され食事をご馳走になっていた。
煉「うむ!どの料理も実に美味い!!」
長「それは良かった」
不「で、俺たちに話ってのは何だァ?」
長「・・・まぁ、それは食事の後でゆっくりと・・・こちらは村一番の酒です。どうぞ召し上がってください」
煉「折角の申し出だが、俺たちはこの後も仕事があるので酒は遠慮する。」
長「そう仰らずに・・・お猪口一杯で良いので付き合って下さい」
半ば強引にお猪口を渡される。
煉「むぅ・・・」
村長は乾杯、と言いながらお猪口を傾ける。
仕方なく、俺たちも口をつける。
村「・・・貴方達は、困り事はないかと村の者たちに聞いていたそうで」
不「あァ?」
冨「何か困り事があるのか?」
村「えぇ、まぁ・・・」
すると障子が開き、数人の村人が入ってくる。
村「それも貴方達のお陰で何とかなりそうです」
煉「・・・?」
冨「ッ・・・」
不「冨岡!!」
不死川の声に振り返ると冨岡が床に倒れていた。
同時に視界が揺れる。
煉「むっ・・・これは・・・」
不「何か盛りやがったなァ・・・クソが」
煉「・・・・・ッ」
瞼が閉じる寸前、村長が何かを指示し村人達が近付いてくるのが見えたーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ゼェッ、ゼェッ・・・・・・』
鬼「・・・・・・ッ」
私の刀は鬼の頸に突き刺さった。
だけど、そこから振り切れる事はなかった。
ーーー腕が伸びきっていない。呼吸のまま型を完璧に出さないと意味がないぞーーー
『・・・・・・ッ』
鬼「・・・ハハ、ハハハ!!驚かしやがって!!」
『ッ!?あっ!!』
鬼は笑いながら刀の刃を掴み自分の頸から抜いて思い切り引く。
刀を握ったままの私も同時に引き寄せられる。
さっき手首から斬り落とした方の手が再生している・・・
そのまま刀ごと投げ飛ばされる。
『うぁっ!!』
ギリギリの所で受け身を取るが、呼吸が乱れてしまった。
鬼「小娘だからと油断したぜ・・・腕が片方しか再生できないとはな」
そのまま男の人の方へ体を向ける。
男「ヒィッ!!」
鬼「人間を食って治さねぇとなァ・・・」
『やめ・・て・・・!』
地面の上を必死にもがいて何とか鬼の足を掴む。
鬼「・・・心配しなくてもお前はあの男の後にちゃんと食ってやるよ!」
『ッ!!』
頭を思い切り蹴られる。
・・・気が遠くなる
暗くなりかけた視界の先で鬼が男の人の元へ辿り着こうとしていた。
悔しい
また
私は
守る事ができないーーーーー
『・・・・・・』
あんなに駄目だって言ってたのにどうして連れて行ってくれる気になったんだろう。
名目はお家のお片付けだけど、空気の薄い山で少しでも呼吸の訓練をすればきっと肺が強くなる筈!
意気揚々と歩き出して、数時間が経過した。
『・・・ハァ、ハァ・・・』
休みなく歩き続けて疲れて来た。
鱗滝さんは息を切らすこともペースを落とす事もなく先を歩いている。
『・・・ハァッ、鱗、滝さん・・!』
鱗「なんだ?」
『ハァハァ・・・狭霧山までは、あと、どのくらい・・・』
鱗「山を2つ超えた先だ」
『!!?』
え、今目の前に見えている山じゃないの・・・?
鱗「・・・家に戻るか?」
『!』
見透かされている・・・。
正直、途方に暮れかけた。
『だっ、大丈夫です!行きます!!』
鱗「・・・そうか」
そうだ、こんな事で挫けているようじゃ駄目だ。
これも修行!!
呼吸を整えて、また歩き出す。
鱗「・・・・・・」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
『・・・ふわあぁ〜〜〜』
鱗「なんだ、その声は?」
あれから更に数時間歩いてたどり着いた村の食堂に入った。
今は遅めの昼食のうどんを一口食べた所。
『あぁ、美味しくてつい声が・・』
やっと腰を落ち着かせられた事とお腹に温かい料理が入ってくる幸福感から気の抜けた声を出してしまった。
鱗「疲れたか?」
『いいえ!!・・・あ、いや・・・はい・・・』
否定しかけて辞めた。
こんな事で強がったってどうせ見透かされてる。
鱗「・・・そうか」
『あ、あのでも、狭霧山まではどんな事があっても着いていきますから!』
慌てて付け加える。
引き返せと言われるのが怖かった。
鱗「・・・正直、ここまで着いてくるとは思っていなかった」
『・・・?』
店「お客さんたち見ない顔だけど、どこから来たんだい?」
温かいお茶を出しながらお店の人に話しかけられる。
『あ、東京府の・・・』
店「東京!?さっき狭霧山とか言ってたよねぇ?」
『はい。』
店「ここの村は東京からだと全然方角違うよ!何だってこんな遠回りしてるんだい?」
『・・・は、はい?えっ!鱗滝さん・・・』
どう言う事!?
と、鱗滝さんを見ると黙って湯呑みを傾けていた。
『・・・私を試してるんですか?』
鱗「・・・・・・」
何故黙る・・・。
店「まぁ、よく分からんけど今日はあの山を越えるのは辞めた方が良いよ」
『?何でですか??』
店「今から山を越えようとすると夜になっちまう。最近、夜に熊が出るみたいでよ、この村の者も何人か被害にあってんだよ。」
『熊が・・・』
店「まぁ、夜しか被害が出てないみたいだから今日はこの村に泊まって明日の朝向かった方がいいよ!」
そう言って厨房に入っていった。
『・・・鱗滝さん、熊ってもしかして・・・』
鱗「うむ」
『・・・・・・』
私は無事に狭霧山までいけるのだろうか・・・
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煉「む。どうやらあの村だな!!」
山道の開けた場所から麓に見える村を発見する。
地図を確認しながら2人へ話しかける。
不「よぉし。さっさと鬼をブチ殺して終わらせんぞォ」
冨「・・・まずは情報集めだな」
不「分かってるわ!俺に命令すんじゃねェ!」
冨「・・・(してない)」
煉「うむ!まずは腹ごしらえだな!!」
不「・・・話聞いてたかァ?」
不死川が盛大なため息をつく。
人が集まる飲食店ならば情報が集めやすいだろう!
それに丁度小腹が空いている!!
煉「では行こう!!」
目的地まで再び足を動かし始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『・・・あの山に、いるんだ・・・』
さっきの食堂のおじさんに言われたように、今日は宿をとってこの村に留まる事になった。
私は部屋の窓から見える山をぼんやり眺めていた。
村の人たちは“熊”と言ってたけど、その正体はきっと鬼だ・・・。
『・・・・・・』
いくら目を凝らした所で、ここから鬼の姿など見える筈もないのだけど、“すぐそこ”にいるのだと思うと気になって仕方がなかった。
子1「待ってよ〜」
子2「早く早く!母ちゃんに怒られるぞ!」
窓のすぐ下で子どもたちが駆けていくのが見える。
夕暮れ時だから、外で遊んでいた兄弟が家に帰る所かな。
子「カラスが泣くからか〜えろ!」
パタパタと足音を鳴らしながら家路へ急ぐ子ども達を懐かしい気持ちになって見つめていた。
“待ってよ〜お姉ちゃん!!”
“早く早く!門限過ぎると父さんにしごかれるよ!”
ああ、そうだった。
少しでも帰るのが遅くなると後が大変なんだよなぁ・・・
朧げな弟とのやりとりが脳裏に蘇る。
走り去る子ども達を目で追っていると、すれ違う様に1人の男の人が歩いてくるのが目に入った。
『・・・・・・』
大きな荷物を抱えて、例の山の方へ向かっている。
装いからして恐らく村の人ではなさそうだった。
このまま山に入るつもり?
もしかして、熊の情報を知らないのかも・・・
『・・・ッ!』
慌てて部屋を飛び出し、隣の鱗滝さんの部屋をノックする。
しかし、何度叩いても呼び掛けても返事はない。
『えぇ・・・どこに行っちゃったんだろう』
こうしている間にもあの男の人は山へと向かって歩いて行ってしまう。
陽もだいぶ傾いてしまった。
『・・・・・・』
駄目だ。
勝手な行動はするなと言われている。
鱗滝さんの帰りを待たなきゃ
ーーでも、すぐに帰って来なかったら?
だって、私一人では何も出来ない・・・
ーーじゃあこのまま何もしないでいる?
『・・・・・・』
自問自答を繰り返しながら私は走り出していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
不「妙だぜぇ」
村に到着し、食堂や道中で出会った者たちから一通り聞き込みを終えた俺たちは情報を整理するため宿をとった。
腰を落ち着けた所で不死川が口を開いた。
冨「確かに。ここまで情報が出ないのはおかしいな」
冨岡も同意する。
二人の言う通り、奇妙な感覚だった。
不「何故、こんなに平和なんだ?」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
村人1「行方不明?聞いた事ないねぇ」
村人2「あんたら旅の人かい?珍しいね!」
村人3「大したものは無いけど、村で作った野菜や酒の味は保証するよ!!」
そう。
余りにも平和過ぎて逆に違和感を持った。
煉「何か困りごと等はないだろうか?」
と、質問してみても
村人4「いやぁ、何もないよ!」
と返ってくる。
これが一人二人ならば気にするまでもないが、話を聞いた村人全てが同じ答えだった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
煉「情報に誤りがあったのだろうか?」
不「いや、今回の任務はお館様から直々に仰せつかった案件だ。その可能性は極めて低いだろォ」
冨「旅の者が珍しいと言っていたな・・・何人か隊士が訪れている筈だが・・・」
考えれば考える程不審な点が多すぎる。
さてこれからどう動こうかと話を始めた時、俺たちを訪ねて来た者がいると宿の主人が伝えに来た。
煉「・・・」
不「・・・」
冨「・・・」
3人で目配せをし、来訪者を迎え入れる事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は山に向かって必死に走っていた。
まだ、追いつかない・・・
私が迷っている間にあの人はどんどん先へ進んでしまったようだ。
本当に、
自分の優柔不断さが嫌になる。
『・・・どうしよう』
ついに、山の入り口まで来てしまった。
辺りはすっかり暗くなっている。
1人で入るのは危険すぎる。
そもそも1人で山になんて昼間でも入った事がない。
やっぱり、鱗滝さんの帰りを待っていれば良かった・・・
私はいくつもの判断を間違えていた事に漸く気がつく。
・・・今からでも鱗滝さんを呼びに「うわあああああっ!!」
『ッ!!?』
山の中から男の人の悲鳴が聞こえた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
男「ヒッ!ヒイィッ!!!」
鬼「チッ!また男か・・・男の肉は硬くて不味いんだよなぁ・・・!」
男「なっ、何なんだ一体・・・」
鬼「だが久し振りの食事だからなァ。好き嫌い言っても仕方ねえか!」
男「うわあッ!たっ!助け・・・」
鬼「助けなんて来る訳ねぇだろぉが!大人しく食われろや!!」
男「・・・・ッ!!」
ーーー水の呼吸、壱の型、水面斬り!!ーーー
鬼「ッ!!!」
鬼の腕が落ちる。
鬼「だっ、誰だ!?」
『ハァッハァッ!!』
私は荒くなった呼吸を必死に戻そうとしていた。
駄目だと分かっていたのに、悲鳴を聞いたら体が勝手に動き出していた。
『ハァッ・・・!怪我は??』
男「・・・!あ、足をやられた・・・。あんたは・・・」
『貴方が山に向かったのを見て止めに来たのですが、ごめんなさい。間に合わなくて・・・』
この人は足に怪我を負っている。
走って逃すことが出来ない。
勿論、私が支えて逃げ切れる訳がない。
『・・・・・・』
私とこの人が助かるためには
『・・・私が、鬼の頸を斬るしかない・・・』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
鬼「・・・!!ハハ、ハハハハッ!!」
『・・・・・・』
腕を落とされた鬼は暫く驚いた様子だったが、私の姿を確認すると笑い出す。
鬼「女だ!!久し振りの女の肉!!」
まさかご馳走の方からやってくるとはな!と上機嫌だ。
鬼「なあお嬢ちゃん、今なんて言った?頸を斬るって言ったなぁ??」
『・・・・・・』
鬼「そんなに震えてて出来るのかぁ?」
鬼の言う通り、私の足はすくんでしまった。
恐怖で腕も震えてしまう。
辛うじて全集中の呼吸だけを続けていた。
だけどそれも長くはもたない・・・
自分の体力を考えると長期戦は不利だった。
油断している今ならーーー
無理矢理気持ちを奮い立たせ、鱗滝さんから借りた日輪刀を構え直す。
『・・・水の呼吸、壱の型・・・』
水面斬り!!
再び斬り掛かり、今度は反対の手首を斬る。
鬼「ッ!!」
間髪入れずに
『水の呼吸、壱の型、水面斬り!!!』
今度は頸を狙うーーーが
紙一重で躱される。
『・・・ハァッハァッ』
鬼「そう何度も同じ技を喰らうかよ!!」
鬼はニヤリと笑っている。
『・・・・・・・』
鬼(この娘、どうやらこの技しか使えねえ様だな。このまま体力を削らせてから一思いに喰ってやる)
『・・・・・・水の呼吸、』
ーーー漆の型、雫波紋突き!!ーーー
鬼「ッ!?何ッ!!!」
私の刀は鬼の頸目掛けて突き刺さるーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉「美味い!!!」
不「・・・五月蝿ェ、黙って食え」
冨「・・・・・・」
不「冨岡はボロボロ零すんじゃねェ」
煉「不死川はお母さんみたいだな!!」
不「煉獄・・・テメェ・・・」
長「いやいや、お口に合ったようで何よりです」
部屋の戸が開き、年配の男が入ってくる。
この村の長だった。
先程部屋を訪ねてきたのは村長の使いの者で、俺たちと話がしたいと屋敷に招待され食事をご馳走になっていた。
煉「うむ!どの料理も実に美味い!!」
長「それは良かった」
不「で、俺たちに話ってのは何だァ?」
長「・・・まぁ、それは食事の後でゆっくりと・・・こちらは村一番の酒です。どうぞ召し上がってください」
煉「折角の申し出だが、俺たちはこの後も仕事があるので酒は遠慮する。」
長「そう仰らずに・・・お猪口一杯で良いので付き合って下さい」
半ば強引にお猪口を渡される。
煉「むぅ・・・」
村長は乾杯、と言いながらお猪口を傾ける。
仕方なく、俺たちも口をつける。
村「・・・貴方達は、困り事はないかと村の者たちに聞いていたそうで」
不「あァ?」
冨「何か困り事があるのか?」
村「えぇ、まぁ・・・」
すると障子が開き、数人の村人が入ってくる。
村「それも貴方達のお陰で何とかなりそうです」
煉「・・・?」
冨「ッ・・・」
不「冨岡!!」
不死川の声に振り返ると冨岡が床に倒れていた。
同時に視界が揺れる。
煉「むっ・・・これは・・・」
不「何か盛りやがったなァ・・・クソが」
煉「・・・・・ッ」
瞼が閉じる寸前、村長が何かを指示し村人達が近付いてくるのが見えたーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ゼェッ、ゼェッ・・・・・・』
鬼「・・・・・・ッ」
私の刀は鬼の頸に突き刺さった。
だけど、そこから振り切れる事はなかった。
ーーー腕が伸びきっていない。呼吸のまま型を完璧に出さないと意味がないぞーーー
『・・・・・・ッ』
鬼「・・・ハハ、ハハハ!!驚かしやがって!!」
『ッ!?あっ!!』
鬼は笑いながら刀の刃を掴み自分の頸から抜いて思い切り引く。
刀を握ったままの私も同時に引き寄せられる。
さっき手首から斬り落とした方の手が再生している・・・
そのまま刀ごと投げ飛ばされる。
『うぁっ!!』
ギリギリの所で受け身を取るが、呼吸が乱れてしまった。
鬼「小娘だからと油断したぜ・・・腕が片方しか再生できないとはな」
そのまま男の人の方へ体を向ける。
男「ヒィッ!!」
鬼「人間を食って治さねぇとなァ・・・」
『やめ・・て・・・!』
地面の上を必死にもがいて何とか鬼の足を掴む。
鬼「・・・心配しなくてもお前はあの男の後にちゃんと食ってやるよ!」
『ッ!!』
頭を思い切り蹴られる。
・・・気が遠くなる
暗くなりかけた視界の先で鬼が男の人の元へ辿り着こうとしていた。
悔しい
また
私は
守る事ができないーーーーー