寸進と弟
空欄の場合は「美桜」になります。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『・・・・・・』
煉「・・・・・・」
煉獄さんと向かい合わせで正座して数十分。
お互い何も発しないまま時間ばかりが過ぎていく。
せっかく話し合いの場としてお部屋を一つ用意してくれたのに。
私はあちこちに視線を動かして落ち着かず、煉獄さんはと言うと身じろぎもしないで真っ直ぐこちらを見ている。
・・・いや、目はどこを向いているのか分からない。
宇(あいつら、いつまでああやっているつもりだ?)
蜜(こんな、盗み聞きなんて良いのかしら・・・ドキドキしちゃうわ)
冨(・・・・・何故俺まで)
・・・どうしよう
何か言わなくちゃ・・・
『・・・あ、あの・・・』
煉「!」
『ご・・・』
煉「・・・」
『ご飯!!』
煉「?」
『・・・ご飯は、ちゃんと食べてますか?』
煉「・・・ああ。しっかり食べているぞ」
違う!!
田舎の母親か!!!
そんな事が言いたいんじゃない!!!
『そ、そうですか・・・えっと、あの・・・』
煉「美桜。あの夜の事だが・・・」
『!!』
身体が強張る。
煉「あれは俺が悪かった。すまない」
『!?・・・何で杏寿郎さんが謝るの??』
煉「元はと言えば君に酒を飲ませてしまったのは俺だ」
『で、でも・・・いくら酔っていたからといって私がやった事は許される事ではありません!』
宇(おいおい、美桜に飲ませたのかよ・・・)
蜜(許されない事って、何があったのかしら・・・)
冨(・・・俺はもう寝たいのだが・・・)
煉「・・・美桜、自分が何をしたのか覚えているのか?」
『うっ・・・・・・杏寿郎さんが駄目だって言ってる、のに、私が、無理矢理・・・』
宇(押し倒したのか!?)
蜜(ええっ!?)
冨(お前達はいつまでいる気だ?)
煉「ああ。俺の制止を振り切って酒を飲んでいたな」
『・・・え?』
煉「美桜が心配しているような事は何もなかった!だから安心しなさい」
『え・・・そんな筈は・・・杏寿郎さん、私に気を遣って何か隠してませんか??』
煉「隠すも何も何もなかった!あった事としたら美桜に投げられた位だな!!」
『投げた!?杏寿郎さんを?私が!?』
煉「うむ!呼吸を使った見事な二丁投げだった!!」
『・・・何か、すみません・・・』
違う意味で襲ってたなんて・・・
それはそれで最悪だ
煉「美桜は悪くない!悪いのは君に変な事を吹き込んだ宇髄だ!」
宇(何で俺のせいになるんだよ!)
蜜(うっ宇髄さん落ち着いてくださいっ)
冨(・・・俺はもう寝る。好きにやってくれ)
そっか、本当に何もなかったのか・・・
ほうっと安心しかけたけど
『待ってください。じゃあ何で同じお布団で寝てたんですか・・・?』
目覚めた時の事を思い出す。
煉「うむ・・・更に酒を飲んだら気を失ってしまってな」
また夜中に起き出してそれ以上飲まないようにホールドされてたという事らしい。
『・・・じゃあ、本当の本当に』
煉「ああ!何もなかった!!何だか虚しくなるので何度も言わせないでくれ」
『・・・わかりました』
私の酒癖が悪かったということは良くわかった。
『・・・でも、杏寿郎さんは何で私にお酒を勧めたんでしょう?』
私がどうなるかは想像ついてた筈なのに。。。
煉「むぅ!それは・・・」
煉獄さんは少しバツが悪そうな顔をするとスッと立ち上がる。
『?』
そして部屋の襖を勢いよく開く。
そこには宇髄さん、蜜璃ちゃんが立っていた。
『!?』
煉「ここから先は美桜と2人で話したい。立ち聞きは遠慮願いたいのだが?」
蜜「はっはい!ごめんなさいっ!!」
宇「しゃーねぇなぁ。じゃあ俺らは帰るとするか」
えっ、今までの会話は聞かれてたの!?
煉獄さん気付いてたんなら最初から遠慮願ってよ・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
人払いを済ませ美桜と改めて向き合う。
一度自分の中で整理してから話そうと思っていたのだが・・・
どう切り出そうか思案していると、美桜が急に頭を抱えて蹲った。
煉「!?どうした、美桜!!」
具合でも悪くなったのか!?
『いえ・・・今になって同じお布団で寝ていた事実に恥ずかしくなりまして・・・』
杏寿郎さんの顔が見れません。と。
煉「・・・美桜は、俺と寝るのは嫌だったか?」
『なっ!嫌な訳ないじゃないですか!!恥ずかしいだけです!!』
そう言って勢いよく顔を上げる。
そして目が合うとまた顔を隠してしまった。
愛い!!
やはり美桜は可愛いな!!
顔を隠したまま、分かってる癖に言わせるなんて狡いと零される。
煉「確かに、俺は狡いな」
『?』
煉「美桜に酒を飲ませたのも、俺の狡さからだ」
『??どういう意味ですか?』
煉「・・・美桜は酔うと本心を話してくれるだろう?」
『え・・・本心を、ですか?』
煉「うむ・・・しかし浅はかな行動だったと反省している!もう二度とそんな事はしない!」
結局聞くことも叶わなかったしな!
と伝えると、
『・・・何を聞きたかったんですか?』
そっと瞳だけこちらへ向けてくる。
煉「聞いたら答えてくれるか?」
『っ・・・・・』
瞳が大きく揺れる。
そしてまたそっと下へ視線を動かすと
『・・・・・・はい』
小さな声で返事をしてくれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
な、何だろう・・・
煉獄さんが聞きたい事って・・・
別に、隠し事があるわけじゃないし、聞かれて困る事はないと思うけど
緊張するーーー
煉「・・・うーん、何から聞けば良いか・・」
『えっ!そんなに沢山あるんですか??』
煉「うむ!折角の機会だからな!」
美桜の事をもっと知りたい!!
なんて言われたら、折角引いてきた頬がまた熱を帯びてくる。
煉「そうだな・・・まずは、トーマス殿の事だが」
『えっ、トーマスさん??』
煉「うむ・・・求婚されていただろう」
『あ、あれは・・・』
煉「あの場では何も答えていなかったので、美桜自身どうするか迷っているのではないかと思ってな」
海外に住んでいた経験がありそうだし、あちらでの生活に戻りたいのではないかとか色々考えていたらしい。
『・・・・・・』
トーマスさんが言ってた事、煉獄さん気にしてたんだ・・・
あの後、何もなかった様に振る舞っていたから煉獄さんにとってそこまでの事じゃなかったのかと思ってた。
ていうか、訓練に夢中でプロポーズされた事もすっかり忘れていた・・・
ごめんなさい、トーマスさん。。。
煉「・・・やはり、まだ答えに迷っているか・・・?」
私が何も言わない事に困った様な表情で少し眉を下げて問いかけてくる。
はわわ!!
可愛いなあ!!!
好き!!!!
『いえ・・・迷うも何も、トーマスさんには丁重にお断りするつもりでした!』
煉「!そうなのか?」
『はい・・・あの時は、急な話の展開に驚いてしまって言葉が出てこなかっただけで・・・次にお会いした時にちゃんとお話するつもりです』
煉「そうか・・・わかった!ではこの話は終いだな!」
パッと顔を明るくする。
煉「では次の質問だ!!」
『は、はい・・・』
切り替え早!!
でもそういう所、
好き!!!!
煉『美桜が強くなろうとするのは本当は何の為だ?』
『・・・え?』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あの日、トーマス殿が帰った後ーーー
俺は鬼殺隊本部へ赴いていた。
煉「・・・お館様」
館「やぁ杏寿郎 今日はどうしたのかな」
煉「突然の訪問をお許しください。不躾ではございますが、どうしてもお館様のお考えを聞きたく参りました」
館「私の考えとは なんの事だい?」
煉「・・・美桜の事です。」
館「美桜?」
煉「美桜の力が鬼殺隊にとって重要なものであるのは重々承知しています。しかし・・・俺はこれ以上美桜を危険に晒したくはないのです。」
今までは、血鬼術も使えない様な低級な鬼を相手にしていたので心配は少なかった。
だが、柱の任務への同行となるとそうはいかない。
十二鬼月との遭遇も考えられる。
まだ相見えた事のない上弦との戦いになった時、柱でさえも無事で済む保証はない。
果たして美桜を守り切れるのだろうか・・・
否、この命に変えてでも守り抜く覚悟は持っている。
他の柱もそうだろう。
しかし・・・
館「そうだね 危険には変わりない」
煉「はい・・・」
館「美桜は どう言っているのかな?」
煉「美桜は・・・役に立ちたいと、今は呼吸を身につけようとしています。」
館「そう・・・杏寿郎 私はね」
美桜を鬼殺隊に縛り付けるつもりはないんだよ
美桜が望まない事はしなくても良いと思っている
館「美桜は心の優しい子だから私や皆の期待に無理して応えようとしているのかもしれないね」
一番大切なのは美桜の気持ちだよ
館「それを聞けるのは杏寿郎。君だけだと私は思うよ」
煉「・・・はい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『何のため・・・』
煉「うむ。近頃の美桜には早く強くなろうという焦りが見える。それは鬼殺隊の為か?」
煉獄さんのストレートな質問に心臓がドクンと波打つ。
強くなりたい
もっと、早く、
もっと、もっと
強くならなきゃ
私の言いようのない焦りを煉獄さんに見抜かれていた事にも驚きを隠せなかった。
『・・・最初は、皆の足を引っ張らない様に体を鍛える事が目的でした』
煉「・・・うむ」
『でも、体力がつけばつくほど今の自分が"本当の私"じゃない気がして・・・』
煉「・・・・・・」
『"本当の私"はもっと強い筈。何者にも負けない強い私にならないと、って』
体力がついて、体の動かし方を知って、呼吸を覚えて・・・出来る事が増える度に本来の自分の姿に戻っていく様な気がしていた。
『鬼殺隊の為というのもありますが、今は"本当の私"を取り戻す為に強くなりたいのかもしれません』
煉獄さんは黙ったまま私の話を聞いている。
『・・・ごめんなさい、自分でもこの焦りの正体がよく分かってないんです。だから今話した事も本当は違うかもしれなくて、』
煉「約束をしたのだろう?」
『・・・え?』
煉「誰よりも強くなると、その約束を果たそうとしているのだろう?」
ーあの夜、そう話していたぞ。
煉獄さんは今まで見た事もない様な真剣な眼差しを私に向けていた。
ーーーーー『私が強くないと・・・また守れなくなる・・・』
煉「・・・守る?誰をだ??」
『・・・私の大切な人・・・“ 桜介”との約束・・・だから・・・』
そう言ったかと思えば気を失うように眠りに落ちたーーーーー
煉「桜介とは、何者だ?美桜とはどんな関係なのだ?」
強い口調で問いかけられる。
『・・・桜介・・・』
口の中でその名を何度か呟く。
すると煉獄さんが目を見開いて驚く様子が滲んで見えた。
気がつけば私の瞳から大粒の涙が次から次へと溢れていた。
煉「美桜・・・」
『桜介・・・桜介は、私の・・・』
私の弟の名前
『どうしてっ・・・今の今まで名前を思い出せなかったんだろう・・・っ!』
今まで実弥さんや千ちゃんとのやり取りの中で、自分に弟がいた事は薄ら分かっていた。
なのに、何も思い出せなかったーーー
煉「ーーー・・・。」
今だって、名前を思い出しただけで桜介の顔も思い浮かばない。
煉「ーーー・・・!」
必死に思い出そうとすると頭痛が起こり動悸が激しくなる。
久しぶりの発作だーーー
苦しい・・・
煉「ーーー美桜・・・!!」
目の前にいる煉獄さんの声がすごく遠くに聞こえるーーーー
呼吸が、うまくできない・・・
もう駄目ーーーー
『ッ!・・・ハァッ!杏、寿郎、さん・・・』
煉「大丈夫か!?」
煉獄さんが口移しで空気を送ってくれた事で意識が戻ってくる。
そのまま抱きしめられる。
煉「・・・すまない。また美桜に無理をさせてしまった」
『ハァッ、ハァッ・・・』
肺に空気を取り込みながら、煉獄さんの服をギュッと掴む。
背中を優しくさすられ、煉獄さんの声と体温、匂いを感じて少しずつ落ち着いてくる。
煉「・・・胡蝶の所へ運ぶか?」
静かな問いかけに首を横に振る。
『だいっ、じょう、ぶ・・・ハァッ、も、すこし、このまま・・・』
煉「・・・分かった」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉「・・・・・・」
発作が落ち着いてしばらく、美桜は俺の腕の中で寝息を立てていた。
穏やかな表情に戻っている事に安心する。
さて、寝床に連れていきたい所だが、ここは富岡の屋敷だ。
美桜に充てがわれた部屋も分からない。
どうしたものかと考えていると、静かに部屋の戸が開く。
煉「ーー貴方は・・・」
鱗「美桜に呼吸を教えている者だ」
煉「貴方が、元水柱の・・・」
鱗「ああ・・・。お前は、煉獄の倅だな」
煉「! 父をご存知ですか!?」
鱗「儂が引退するまでの短い期間だが、共に柱として過ごした事がある」
煉「そうでしたか!」
鱗「・・・美桜の部屋へ案内しよう。早く横にした方が良い」
煉「ありがとうございます!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーー暗くて深い、沼の中にいた。
また、あの夢か・・・
そう思っていると、離れた所に人が立っているのが見えた。
ここに人がいるなんて。こんな事は初めてだった。
その人は私に背を向けたまま、沼の中をどんどん進んで行ってしまう。
ーー待って!そっちは危ないよ!ーー
そう声をかけるのだけれど、聞こえていないのか止まってくれない。
慌てて追いかけようとすると、私だけ沼に体を取られてどんどん沈んでしまう。
ーー待って!お願い、行かないで!!ーー
ーーーー桜介!!!ーーーー
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
『ッ!!』
ハッと目を開ける。
・・・あれ、私、煉獄さんと話してて・・・いつの間に眠ったんだろう??
・・・夢の中のあの人は、きっと桜介だ。
振り返ってくれなかったのは、私がちゃんと思い出していないからなのかな・・・
顔も、声も、思い出せる日が来るのだろうか・・・
『・・・・・・』
そういえば部屋の中まだ暗いけど、今は何時くらいだろう??
『ッ!!?』
時計を見ようと頭をあげた時、目の前に飛び込んできたのは・・・
『・・・・・・ッ!!』
絶世の美男子!!!
こと煉獄杏寿郎さんの寝顔!!!!
デジャヴ!?
つい最近もこんな事あったよね??
あ
夢かな?
こんな事が何度も現実に起こる筈はないよね。
そうか
私、煉獄さん不足なんだ。
きっと私の欲求がリアルな夢として現れたんだ
『・・・・・・』
それにしても
さすが私。
夢の中での煉獄さんの再現度の高さよ
綺麗な寝顔・・・
眠っててもカッコいいなぁ
煉「・・・そんなにいつまでも見つめられると恥ずかしいな」
『!!!??』
薄く目を開いてこちらを見る。
ほ、本物!?
『な、な、なん、なんで・・・』
口をパクパクさせて、絞り出した私の声はとても間抜けだった。
煉獄さんは寝起きなのにめっちゃ目をかっぴらいている。
煉「おはよう!美桜!気分はどうだ??」
おはようございます!心臓が飛び出そうです!!!
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
昨晩、気を失った私を部屋まで運んでくれた煉獄さんと鱗滝さん
布団に寝かせて、自分は屋敷に帰ろうと離れようとした時・・・
煉「む!?」
私の手は煉獄さんの服をしっかり握って離さなかった。らしい。
煉「・・・・・・」
『・・・待って・・・お願い・・・』
煉「・・・・・・」
鱗「・・・・・・」
『行かないで・・・』
煉「むぅ!!」
鱗「・・・・・・布団をもう一組用意しよう。今晩は泊まっていくと良い」
煉「! それはかたじけない!!」
・ ・ ・ ・ ・ ・
気を失ってから、今目が覚めるまでずっと掴んでいたせいで・・・
煉獄さんの隊服は私が握りしめていた所が皺だらけになっていた。
『・・・・・・すみません』
手で皺を伸ばしてみるけど、そんな事で戻る訳はない。
煉「気にしてないぞ!それより、美桜に苦しい思いをさせてしまったな・・・」
頭を優しく撫でられる。
『いえ・・・杏寿郎さんのせいでは・・・』
煉「いや、もっと上手い聞き方があった筈だ。頭を冷やして考えてからと思っていたのだが・・・ついムキになってしまった。」
まさか弟の名だったとはな!
と苦笑する。
『・・・もしかして、杏寿郎さん・・・』
桜介に嫉妬してたの?
煉「むぅ!・・・美桜が大切な人だと言うのでな・・・」
『・・・・・・』
珍しく声を落とす
煉獄さん・・・
可愛すぎて死にそう!!!
あの寝言も、桜介に向けた台詞だと知ったらどうなってしまうのだろう。
なんだか申し訳ない気持ちとくすぐったい気持ちが入り混じる。
煉「・・・急に黙らないでくれ」
『・・・・・・』
煉獄さんでも、不安に思ったり、ヤキモチを焼いてくれるんだ。
そっと近づいて、煉獄さんをギュッと抱きしめる。
煉「!!?」
『・・・私は、出会った時からずっと杏寿郎さんの事が1番大好きですよ?』
家族は大切な存在だけど、煉獄さんはまた違う特別な存在だということをどうやったら伝わるのかな
行動や言葉にするのって死ぬ程恥ずかしい。
今だって心臓がバクバク言ってる。
でも、
それ以上に
煉獄さんを愛しいと思う気持ちの方が勝ってた。
煉「・・・美桜・・・」
私の胸元で身じろぐ煉獄さん。
顔にフワフワの髪がかかってくすぐったい
肩に手を添えられ少し距離が空く。
煉獄さんは真っ直ぐこっちを見ていた。
『・・・・・・』
煉「・・・・・・」
それから、どちらからともなく顔を近づけていく。
ーーー鴉「カアァッ!!」
煉「!?」
『!?』
あと少しの所で義勇さんの鴉、寛三郎が部屋に乱入してきた。
思わずバッと距離を取る。
そうだ、よく考えたらここは冨岡さんの屋敷!
人様のお家で私は何を・・・
寛「カアッ!朝ゴハン!!朝ゴハン!!!」
『・・・寛三郎・・・まだ早いよ・・・』
寛三郎、おじいちゃんだから早起きなんだよなぁ。
目が覚めると自分のご飯を要求してくる。
何故か私に。
寛「早クゥウ!!」
『ああもう、分かったよ・・・杏寿郎さん、そのまま皆の朝食も準備しますね。杏寿郎さんも食べていってください』
煉「・・・うむ」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
煉「うまい!うまい!!」
鱗「・・・・・・」
冨「・・・煉獄は泊まっていたのか」
煉「うむ!帰るつもりだったが成り行きでな!だがお陰で美桜の作ったごはんが食べられた!!ありがとう!!!」
鱗「・・・朝から元気だな・・・」
鱗滝さんも冨岡さんも煉獄さんのテンションの高さに驚いている。
というか若干引いてる??
寛「カァア!ゴハンゴハン!!」
『寛三郎・・・さっき食べたばかりでしょう?』
なんてお約束なボケ方を・・・
ちゃんと義勇さんに任務内容を伝えられているのか心配になる。
寛「ゴハン!ゴハン!早クゥ!!」
『・・・・・・』
寛「義勇の嫁ェ!早ク準備!!」
『!!?』
煉「!!?」
冨「???」
鱗「!!」
なんて!?
煉「冨岡!!一体どういうつもりだ!!説明しろ!!!」
冨「・・・???」
煉「黙っていては分からないだろう!!」
『・・・・・・』
せっかく話し合いで誤解が解けたというのにまた新たなる火種を・・・
これ等々力さんの耳に入ったらエライ騒ぎになりそうだ
思わず頭を抱える。
『一体誰がこんな事を吹き込んだの・・・』
鱗「・・・・・・」
ーーー数日前ーーー
寛「カァッ!」
鱗「寛三郎、義勇は鬼殺隊の柱として上手く立ち回れているだろうか?」
寛「・・・・・・」
鱗「・・・やはりそうか。あいつは言葉が足らないからな」
寛「カァッ」
鱗「・・・美桜はよく気がつくし明るい娘だ。義勇の性格も理解している様だし、ああいう子が嫁に来てくれると儂も安心できるのだが・・・」
寛「カアッ!義勇の嫁!!義勇の嫁!!」
ーーーーーーー
鱗「・・・・・・(儂だな)」
それから煉獄さんの誤解を解き、寛三郎に訂正させるまでに数時間を要する事になった。