独占欲と蛇
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宇「煉獄!鬼がそっちに行った!挟み撃ちにするぞ!!」
煉「承知した!」
多くの隊士が被害に遭ったとされる山奥で任務にあたっていた俺と宇髄は鬼を追い詰める事に成功した。
あとはいつもの様に鬼の頸を斬るだけだ。
煉「炎の呼吸、壱の型!」
宇「音の呼吸、壱の型!」
2人で同時に斬り込む。
技を繰り出そうとした瞬間、鬼がニヤリと笑う。
煉「む!?」
宇「あ!?」
刹那、土埃が舞い上がる。
目眩しか!
小賢しい真似をする!!
煉宇「「・・・・・・っ!!」」
土埃の向こうで気配がする。
刀を持ち替え体勢を整え様とするが、体に違和感を覚える。
気にはなったが目の前の鬼を逃すまいと土埃を掻き分け前に飛び出す。
反対側にいる宇髄も同時に動いた様だ。
煉宇「「覚悟!!ーーーー!?」」
俺は目の前に現れた人物を見て固まったーーー。
目の前の人物も同様に固まる。
煉「・・・・・・?」
俺の目の前には、俺がいたーーーー。
血鬼術か!?
宇髄はどこへ消えた!?
煉「・・クソッ!煉獄!!どこへ行った!?」
目の前の俺が俺を捜している。
どう言う事だ??
宇「何を・・・!?」
声を発し違和感が更に強くなる。
ふと自分の手元を確認すると、愛刀ではなく宇髄の武器を握りしめていた。
目の前の俺も同様に自分の体を確かめている。
煉「まさか・・・」
宇「よもや・・・」
煉宇「「体が入れ替わってる!!??」」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
し「・・・柱が2人揃っていながら、なんとも情けないですね・・・」
あの後、原因を作った鬼を何度か追い詰めたが体が入れ替わったことで呼吸が合わず取り逃してしまった。
そうこうしている内に夜が明けてしまい、鬼の捜索を断念し蝶屋敷へとやってきた所だ。
煉(宇)「くそ・・・十二鬼月じゃないからと油断したぜ・・・」
宇(煉)「よもやよもやだ!!穴があったら入りたい!!」
し「・・・・・・」
煉(宇)「で、胡蝶。解毒薬とかねぇのか?この体じゃまともに戦えねぇ」
し「・・・私は何でも屋さんじゃないのですよ?まぁ、術をかけた鬼を退治すれば自然に戻るでしょう。今夜冨岡さんが任務に就かれるので遅くとも明日の朝までには決着がつくでしょうね。」
宇(煉)「!? 俺と宇髄の2人がかりでも逃げられたというのに冨岡1人で行くのか?」
し「1人なら中身を入れ替える相手がいないので鬼の術の効果はなくなるでしょう?それに相手が十二鬼月でないのなら柱1人で充分です。」
宇(煉)「むぅ!成る程!!」
し「・・・という訳なので、お二人は元に戻るまで蝶屋敷で待機していてくださいね。」
煉(宇)「・・・はぁ。しょうがねぇな。今日の所は大人しくしとくか」
宇(煉)「うむ・・・いや!駄目だ!!」
し煉(宇)「「は?」」
宇(煉)「家を空けてもう3日経っている!!家に戻らねば美桜が心配する!!」
今回は近場の為2日程で帰ると伝えてしまった。
鬼が中々見つからなかった事と血鬼術のせいで帰りが遅れている。
今頃何も連絡が来ない事を心配しているだろう。
そう言って診察室を出ようとする所を、胡蝶と宇髄に止められる。
煉(宇)「待て待て!お前そのまま行くつもりか!?」
し「事情を知らない美桜さんが驚いてしまいますよ。今の煉獄さんの外見は宇髄さんなのですから」
宇(煉)「むぅ!しかし・・・」
煉(宇)「・・・よし!じゃあ俺に任せろ!」
宇髄がニヤリと笑う。
宇(煉)「?何を任せるというのだ??」
煉(宇)「俺がお前になりきって美桜を安心させてやればいいんだろ?」
宇(煉)「なっ!?」
煉(宇)「美桜に心配かけたくねぇんだろ?・・・それとも本当の事伝えに行くか?十二鬼月でもねぇ雑魚鬼の術にかかった間抜けだと美桜に思われてもいいのか?」
宇(煉)「!!・・・むぅ・・・」
し「術にかかったのは宇髄さんも同じでしょう?・・・まぁ、怪我もしていませんし大ごとにならなければ外出は許可しますが。」
煉(宇)「よし!決まりだな!!煉獄、お前は俺の家に行けよ。嫁たちも俺の帰りを待ってるしな!!」
宇(煉)「宇髄の家に?」
煉(宇)「いいか?お前もしっかり俺になりきれよ!」
宇(煉)「うむ・・・。宇髄!俺の体で勝手に美桜に手を出す事は許さんぞ!!」
し「・・・・・(もう何か面倒なので放っておきましょう)」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇(煉)「・・・あそこが宇髄の家だな。」
俺は宇髄から聞いた住所を元に家の前までやってきた。
そういえば宇髄には嫁がいたな。
確か名前はーーー
そう考えた時、戸が開き例の嫁が姿を現す。
雛「!! 天元様。おかえりなさい!」
宇(煉)「! うむ!ただいま戻ったぞ!舞鶴!!」
雛「ま、舞鶴・・・?(天元様・・何故声を張っているの?)」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『・・・杏寿郎さん、任務長引いてるのかな・・・』
また新しい任務でも入ってしまったのかな?
それとも怪我をして動けなくなったとか・・・?
庭先を箒で掃きながら、帰らぬ恋人の事を思う。
『・・無事に帰ってくるよね・・・?』
そう呟いた時
煉(宇)「美桜!」
『っ!!?』
私のすぐ真後ろから急に声をかけられて飛び上がる。
『えっ!?きょ、杏寿郎さん・・・?』
いつもなら玄関先で大声で「ただいま戻ったぞ!」と言うのに・・・
煉(宇)「帰りが遅くなって悪かったな」
『・・・?いえ・・おかえりなさい』
何か雰囲気違う・・・?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇(煉)「美味い!!」
ま「・・・・・・」
宇髄の家に入ると食事が用意された。
宇(煉)「美味い!」
ま「・・天元様、そんなに食べて大丈夫ですか・・・?」
宇髄の家には嫁の他に女性が2人いた。
恐らく住み込みの家政婦だな!
宇(煉)「問題ない!心配してくれてありがとう!みきを!!」
ま「みき・・・を??・・・はぁ・・?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉(宇)「・・・・・・・」
『・・・・・・』
煉(宇)「・・・・・・」
『・・・・・・あの・・・』
煉(宇)「ん?」
『ご飯・・・お口に合わなかったですか??』
煉(宇)「いや?美味いぞ?」
『そ、そうですか・・・』
・・・嘘だ。
いつもは美味い!美味い!を連呼してくれるのに・・・
味付け失敗しちゃったんだ。
久しぶりに帰ってきたのに、ろくな食事も出せないなんて・・・私、婚約者として失格なんじゃ・・・!
目の前で静かに食事を続ける煉獄さんに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇(煉)「・・・ふぅ。」
食事を終え、風呂に入っている。
3日振りの湯船に浸かり溜まった疲れを落としていると
須「天元様〜!!」
ガラッと扉が開き、全裸の女性が入ってきた。
宇(煉)「っ!!!?」
咄嗟に背を向ける。
須「天元様、お背中お流ししますね♡」
宇(煉)「!?」
何を考えているのだ!?
宇髄は妻帯者だぞ!
妻と同じ屋根の下にいながら何と大胆な行動を!?
宇(煉)「いや!必要ない!!」
須「・・・え?」
宇(煉)「知っていると思うが俺には妻がいる!!その為君の気持ちに応える事はできない!!すまない!!志摩!!」
須「は・・・志摩??・・・天元様、頭でも打っちゃったんですか??私も天元様の妻でしょう??」
あと私の名前は須磨です!!
と怒られた。
ん?
須磨殿が宇髄の妻だと?
いや、その前に私「も」と言った・・・
宇(煉)「・・・妻が2人という事か・・・?」
混乱していると、追い討ちをかける様に
須「もー何言っちゃってるんですか!須磨と、まきをさんと、雛鶴さん!3人共天元様の妻です!!」
宇(煉)「なっ!?宇髄は3人も嫁がいたのか!?・・・おっと!」
驚きのあまり振り返ってしまう。
そうだ、裸だった!
またも急いで背を向ける。
その行動に
本当に頭打ったんですか??
と心配される。
宇(煉)「大丈夫だ!!今日の所は1人で入るので早く服を着なさい!!」
そう言うと、首を傾げながらも渋々風呂場から出て行った。
宇(煉)「・・・よもや・・・」
余りの衝撃に言葉を失っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『杏寿郎さん、お風呂沸いてますけど入ります?』
煉(宇)「あ、あぁ。そうだな」
じゃあ行ってくる。
と、煉獄さんは部屋を出てそのままお風呂場に直行してしまった。
『・・・あれ?』
今、手ぶらで行ったよね?
いつもは自分の部屋から着替えを持って行くのに・・・
・・・??
とりあえず、着替えがないと出た時困るよね。
煉獄さんの着替えを持って、脱衣所に向かう。
扉の外から声をかける
『あの、杏寿郎さん・・・着替えを持ってきたので・・・ぎゃっ!!?』
置いておきますね、と言おうとした所で勢いよく扉が開く。
私の目の前に腰にタオルを巻いただけの煉獄さんが立っていた。
煉(宇)「おお、悪いな」
私の手から着替えを受け取り、再びお風呂場の方へ体を向ける。
(見ちゃった・・・煉獄さんの上半身!!)
直視できず目が泳いで固まったままの私に
煉(宇)「・・・何だ?一緒に入りたいのか?」
さらっととんでもない事を言った。
『っ!!そそそんな!!すみません!!?』
混乱して何故か謝ってしまった。
煉(宇)「・・・冗談だ。(いけね、いつもの癖が出た)」
扉が閉まる。
『・・・・・』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
駄目だ・・・
さっきの煉獄さんの姿が頭に焼き付いて離れない・・・
外の空気を吸って落ち着こうと庭に出た時、ちょうど門の前に人影を見つける。
『?・・・あっ、宇髄さん!!』
宇髄さんはいつもの格好ではなく、着流しを着てお化粧もしていなかったから最初誰だか分からなかった。
宇(煉)「! 美桜・・・!」
『宇髄さんも杏寿郎さんと同じ任務でしたよね!お疲れでしょう?お家で休まなくていいんですか??』
宇(煉)「うむ!大丈夫だ!」
『??』
宇髄さん、いつもより元気・・・?
『・・・あ、もしかして杏寿郎さんに御用ですか?今丁度お風呂に入っていて・・・』
宇(煉)「いや・・・美桜の顔が見たくなってな・・・」
『・・・えっ?』
宇髄さんの言葉と少し切なげな表情に思わず顔が赤くなる。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
美桜が顔を赤くしてこちらを見上げている。
何と可愛いのだ!
宇髄の視点から見る美桜は身長差もあっていつもよりも上目遣いだ。
宇髄はいつもこんな可愛い美桜を見ているのか!!
『どっ、どうしたんですか?宇髄さん・・・』
気がつくと美桜の頭に触れていた。
宇(煉)「あっ!これは・・・」
煉(宇)「宇髄!!何をしている!美桜から離れろ!!」
俺と美桜の間に宇髄が現れる。
宇(煉)「む!何故だ!?」
カチンとする。
美桜は俺の婚約者だぞ!!
煉(宇)「お前がいつも言ってる台詞だろうが」
宇髄が美桜に聞こえない小声で言ってくる。
宇(煉)「!! そうだった!今俺は宇髄だった!!・・むぐっ!?」
煉(宇)「っ馬鹿お前!!声!」
宇髄に口を塞がれる。
『・・・宇髄さん、どうしちゃったんですか??』
美桜に怪訝な顔を向けられる。
宇(煉)「いや!何でもないんだ。気にしないでくれ!!」
煉(宇)「・・・ったく、こいつは・・・。美桜、俺は宇髄と重要な話がある。暫く席を外してもらえるか?」
『はっはい!!・・じゃあ、お茶の用意をしてきますね』
美桜は慌てた様子で厨房へと向かって行った。
宇(煉)「美桜・・・」
煉(宇)「で、何しに来たんだよ。俺の嫁達放っておいて」
宇(煉)「!! その事だ!嫁が3人とはどういう事だ!?」
煉(宇)「あれ?言ってなかったか??」
宇髄は悪びれる様子もない。
煉(宇)「3人共いい女だろう?」
宇(煉)「むぅ!確かに器量の良い娘達ではあるが・・・そんな事より!美桜に変な事はしていないだろうな?」
煉(宇)「安心しろ。今んところはしてねーよ。」
宇(煉)「何だ今のところとは!!」
煉(宇)「俺からは手を出さねぇが、美桜が求めてきたら分かんねぇって事だよ」
宇(煉)「!!」
何という奴だ!!
しかし、美桜はかなりの奥手だからそういう意味では心配は無さそうだ。
宇(煉)「・・・・・・」
煉(宇)「ほら、分かったらとっとと家に戻れ。長居してると美桜も俺の嫁達も不審がるだろうが」
シッシッと手で払う仕種をされる。
自分に追い払われるというのは何とも奇妙な感じだ・・・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
『失礼します。お茶をーーーって、あれ?宇髄さんは?』
煉(宇)「先程家に戻ったぞ!」
『そうですか・・・何だか慌ただしいですね』
煉(宇)「ああ、そうだな・・・美桜、俺はこれから少し仮眠をとる」
くわぁと大きな口を開けて欠伸をする。
煉獄さんが欠伸を!!
初めて見た!!!可愛い!!!
煉(宇)「ん?どうした??」
『ハッ!!いえ!!お布団準備しますね!』
慌てて布団を敷く。
ん?・・・煉獄さんがこの時間から寝る?
『・・・杏寿郎さん、やっぱりどこか具合でも悪いんじゃ・・・』
お医者さんを呼びましょうか?
と聞く。
煉(宇)「医者!?何故だ?」
『何かいつもと様子が違います。食欲もないみたいですし、こんな時間から寝るなんて・・・』
いつもならこの時間は道場で素振りをしているはず。
煉(宇)「・・・・(いや、煉獄のテンションで1日持たねぇよ)・・・うむ!鍛錬したい気持ちは山々なのだが、任務続きだからな。たまには休息も必要だろう?」
『っ!!そうですね!休息も大事ですね!!私ったら・・・ごめんなさい』
煉(宇)「いや、謝る事じゃない。少し休むだけだ。」
『はい・・・おやすみなさい』
そう言って煉獄さんに近づくと、
煉(宇)「ああ。おやすみ。」
頭に手をポンと乗せられる。
そのまま布団に入ってしまった。
『・・・・・・』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇髄の屋敷に戻ってきた俺は道場に篭りひたすら素振りを続けていた。
じっとしていると美桜の事ばかり考えてしまう。
この体では、美桜に気安く触れる事もできない・・・
油断したとはいえ、あの様な鬼の術にかかるとは不甲斐ない!!
もっともっと精進せねば!!
苛立ちやもどかしさを剣に込める。
須「・・天元様・・・やっぱり変です・・・」
ま「ああ・・・仮眠もとらずに鍛錬に打ち込むなんて・・・」
雛「まさか気付かぬ内に鬼の術にかかっているのでは・・・?」
道場の入口に3人の嫁の気配を感じ、素振りを中断する。
そうだ、俺は今宇髄の姿だった!
嫁達を放っておくのは宇髄にも悪いな!!
宇(煉)「どうした君達!!何か用か?そんな所にいないで話があるならこちらへおいで」
流れる汗を手でぬぐいながら声をかける。
雛ま須「「「っ!!!!?」」」
雛「天元様が・・・♡」
ま「爽やか・・・♡」
須「いつもの感じも素敵だけど、こっちも良いかも・・・♡」
宇(煉)「??」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
仮眠を取った煉獄さんは近所の散歩に出掛けて1刻程で戻ってきた。
それから夕食をとり、私は後片付けを済ませてお風呂に入っていた。
『・・・やっぱり、おかしい・・・』
湯船に浸かりながら1日を振り返っていた。
今日の煉獄さんは絶対いつもと違う。
夕食も、いつもの半分も食べていない割にいつもの倍時間をかけていたし
やっぱり美味い!って言ってくれなかった・・・
毎日一度は握る木剣も今日は触ってないし・・・
何より
任務から帰ってきた時も、仮眠をとる時も起きた時も、散歩に行く時も帰ってくる時も、今日は一度もハグしていない・・・
今まで忘れた事なんて一度もないのに・・・
まだ抱き締められるのは恥ずかしくて慣れないけど・・・
でも
でもなんか
『淋しいな・・・』
小さな呟きがお風呂場に小さく響いた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
お風呂から上がって部屋に向かっていると、縁側に煉獄さんが腰掛けていた。
『杏寿郎さん・・・お酒飲んでるんですか・・?』
珍しい
煉獄さんは付き合い以外でお酒を飲むなんて滅多にない。
煉(宇)「ああ。・・・駄目だったか?」
『いえ、珍しいな、と・・・』
煉(宇)「美桜は駄目だぞ?」
『う・・わかってます・・・』
過去に2度も煉獄さんの前でやらかしてるしね。
煉獄さんの隣に腰掛ける。
煉(宇)「・・・たまにはこういう静かなのもいいな」
『?たまには??』
煉(宇)「ああ。いつもは嫁達が賑やかだからなぁ。まぁそれも楽しいんだけどな」
『・・・え?嫁、たち??』
煉獄さんの一言に固まってしまう。
煉(宇)「ん?美桜にも言ってなかったか?俺、嫁が3人いるんだよ」
『・・・・・・は?』
嫁?
嫁ってあれだよね。
奥さんって事?
結婚してなるアレだよね??
煉獄さんってお嫁さんいたの?
え、3人も!?
ていうか、私、婚約者だよね・・・??
煉(宇)「っ!!(そうだ、俺は今煉獄なんだったな!)」
煉獄さんがバツの悪そうな顔をする。
煉(宇)「今のは嘘だ!いや、嘘というか〜アレだ!!」
『・・・・・・』
煉(宇)「さて!俺はそろそろ寝る!!須磨も湯冷めしない内に休め、な!!おやすみ」
そう言って慌てて部屋に入って行った。
『・・・・・・え?』
須磨って誰?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
冨「・・・この辺りか」
宇髄と煉獄が仕留め損ねた鬼が潜伏している地点までやってきた。
冨「・・・・・・」
余程警戒心が強いのか、気配が探り辛い。
だが昨晩2人の攻撃によって多少怪我を負っている筈。
手負いの鬼は血肉に飢えている為、必ず俺を喰おうと姿を現すだろう。
冨「・・・・・・」
鬼の警戒心を解く為、刀から手を離し無防備な姿勢でその時を待つ事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉(宇)「くそ・・最後の最後に失敗したな・・・」
煉獄のやつがこんなに酒に弱いとはな・・・
あいつの体で酒を飲んだら酔いのまわりが早く、つい素に戻ってしまった。
煉(宇)「・・駄目だ、クラクラする・・・」
水を飲んで落ち着こう。
立ちあがろうとした時
『杏寿郎さん、・・・寝ちゃいました?』
お水を持ってきたんですけど・・・と美桜の声がする。
煉(宇)「ああ、起きている。丁度水をもらいに行こうと思っていた所だ」
美桜を部屋に招き入れ、水を貰う。
その間、何か言いたそうにこっちを伺い見ている。
さっきの発言を気にしてるんだよな・・・。
さて、どう切り抜けるか。
『あの・・杏寿郎さん・・・』
煉(宇)「・・・何だ?」
『・・・もしかして、私に愛想尽かしちゃいました?』
煉(宇)「・・・は?」
てっきり、嫁発言に怒って責められると思っていた俺は予想もしない美桜の言葉と泣きそうに震える声に驚きを隠せなかった。
『だって・・・今日の杏寿郎さんはいつもと違うし・・・』
煉(宇)「いや、それは・・・」
『料理も美味しく作れないし、いつまで経っても婚約者としてちゃんと出来てないから・・・もう嫌になっちゃいましたよね?』
言いながら涙を零す。
その姿に思わず心臓が跳ねる。
美桜・・・こいつ、こんなに女らしかったっけ!?
いや、元々美桜の事は可愛いと思っていたが、それは妹みたいなもんで、煉獄とかが思うようなものではなかった。・・・筈だ。
煉(宇)「・・・そんな事はない。不安にさせたのなら謝る。それに俺はいつも通りだ」
・・・の、筈だ。
『!! 嘘・・・だって・・・今日は1回もしてない・・・』
俺のいつも通り発言で余計に泣かせてしまった!!
うおお?何だ?いつもしてる事??
全然わからねぇ・・・
美桜の涙に柄にもなく慌ててしまう。
『いつも、挨拶代わりにって杏寿郎さんからしてくれるのに・・・』
グスグス鼻を啜りながら訴えてくる。
煉獄の野郎・・・こんなに泣かせるような大事な事があるなら前もって言っとけよ・・・
なんだよ挨拶代わりって・・・
下手な事して間違ったら余計ややこしくなるしな・・・
駄目だ、見当もつかねぇ。。。
こうなったら美桜に言わせるか。
煉(宇)「・・・いつも俺からだから、たまには美桜からしてくれてもいいんだぞ?」
『っ!!!』
その言葉にピタッと泣き止み、みるみる顔が赤くなっていく。
・・・ヤベェな。コレ。
煉獄フィルターかかってんのか??
スゲー可愛いんだけど・・・
『わっ私、から・・・?』
煉(宇)「出来ないのか?」
もっと美桜の反応を楽しみたくて、ワザと困るような言葉を選ぶ。
『うう・・・』
煉(宇)「じゃあ、俺にして欲しい事を美桜がちゃんとお願いすれば聞いてやる」
『っ!!・・・杏寿郎さん・・なんでそんな意地悪するの・・・?』
煉(宇)「・・・そうか・・・言えないのか。ではこの話は終いだな。」
『っ!!』
美桜は完全に俺のペースに嵌まったな。
これで今日の所は諦めて寝るだろう。
何だか知らんが明日元に戻った煉獄にしてもらえ。
さて寝るか、と美桜に背中を向ける。
と、
着物の裾を引っ張られる。
振り返ると、涙を溜めた上目遣いで俺の着物の端を掴んでいた。
煉(宇)「・・・・・・」
『・・・・っ』
美桜の顔をジッと見つめる。
美桜は唇を震わせながら、蚊の鳴くような声で
『・・・・・・抱いて・・・・・』
煉(宇)「っ!!?」
そこで俺の理性がぶっ飛んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ザワッ
木々が揺れるのを感じた。
近づいてきているなーーー
だが、相当警戒されているらしい。
一定の距離を保った所で気配が止まる。
冨「・・・・・・逃がすと厄介だな」
一撃で仕留めなければ
次に鬼が動いた時が勝負だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉(宇)「・・・・・・本気で言っているのか?」
『なっ!冗談でこんな恥ずかしい事言えませんっ!』
言わせておいて酷い・・・とまた涙ぐむ。
煉(宇)「・・・・・・」
それにしても、健全そうに見えてヤル事はヤッてんだな、こいつら・・・
てか、挨拶代わりって言ってたな!?
煉獄、あいつ・・・マジか!!
煉(宇)「・・・先に断っておくが、お前から求めたんだからな?」
『・・・っ!?』
美桜の腰を引き寄せそのまま布団に倒す。
『!!!?』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
え?
え??
何で煉獄さんの後ろに天井が見えるの???
『なっなっなっ??』
そのまま煉獄さんの顔が近づいてくる。
『なーーーーーーーっ!?』
煉(宇)「っ! 何だ?」
私は両手で近づいてくる煉獄さんの顔を押し返していた。
『だっだっだって・・・!!』
今何しようとしたの!?
煉(宇)「いつもしている事だろう?」
した事ない!!
ブンブン首を横に振る。
何、いつもって!?
誰かと間違えてる!?
ハッ
ーーー俺、嫁が3人いるんだよーーー
さっきは私の聞き間違いかと思って1回スルーしたけど、もしかしてホント??
須磨さん・・・?
・・・もしかして、
いや
もしかしなくても
私がいつも恥ずかしがって煉獄さんの思いにちゃんと応えられないから・・・別の人と・・・
煉獄さんの顔を押していた私の両手は力なく布団に落ちる。
煉(宇)「・・・・・・何故泣く?」
後悔したって遅いのに
恥ずかしがっている場合じゃなかったのに・・・
煉(宇)「美桜?」
煉獄さんの着物をギュッと掴む。
他のお嫁さん達には悪いけど、これからちゃんとするから。
ちゃんと応えるから・・・
『・・・どこにも行かないで・・・』
他の女の人の所に行っちゃやだ・・・
煉(宇)「!!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
さっきから泣いたり恥ずかしがったり固まったり忙しなく表情が変わっていたが・・・
ここに来て切なげな顔と声にやられてしまった。
普段なら何を考えているのか手にとるように分かるのに、今の美桜は全く読み取れなかった。
だが・・・
煉(宇)「・・・分かった」
これは美桜が望んでいる事だと自分を正当化する。
煉獄に対して申し訳ない気持ちもあるにはあるが、こんな姿の美桜を目の前にして己を止める事はもう無理だった。
再び美桜の顔に近づき、次から次へと瞳から溢れ出る涙を舐めとる。
『っ!!』
煉(宇)「フッ。しょっぱいな」
目を見開いた美桜は驚きのあまり涙が引っ込んだ様だ。
そのまま美桜の耳元へと顔を移動させ、息を吹きかけたり耳たぶを甘噛みする。
『っん!』
美桜の体がピクンと跳ね、刺激から逃れようと頭を振るが、俺は片手で側頭部を掴みそれを阻止する。
煉(宇)「こら、逃げるな・・・」
耳元で囁き、そのまま耳の中へ舌を侵入させる。わざと音を立ててやると美桜の体はいちいち反応する。
煉(宇)「・・・・・・」
美桜の反応を楽しみながら、右手を身体に這わしていく。
『っ!!』
胸の膨らみに到達した所で美桜の身体が一瞬強張る。
・・・さっきから生娘みたいな反応するな・・・
美桜の顔を見ると、再び涙を溜め不安と少しの期待に満ちた瞳で此方を見ていた。
煉(宇)「お前は・・・本当、可愛いな・・・」
再び美桜の顔に近づいていく。
今度は両手で押し返される事はなく、瞳と唇をギュッと瞑る。
緊張しすぎだ。
思わず笑みが溢れる。
ゆっくり、唇を近づけていくーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ブワッ!!
土埃が舞い上がる。
遂に仕掛けてきたな。
此方からは動かずジッとしていると土埃の向こうで気配が動く。
冨「水の呼吸、拾壱の型 凪」
すれ違いざまに技を放つ
鬼「ぐあっ!!」
冨「・・・任務完了」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇煉「「っ!!!?」」
一瞬目の前が真っ白になる。
咄嗟に目を閉じて異変をやり過ごす。
呼吸を整え、落ち着いた所でゆっくり目を開く。
宇「美桜・・・ん?」
目の前にあった筈の美桜の唇はそこになく、代わりにもう暫く仕舞い込んで読んでもいなかった忍の書物を手にしていた。
宇「・・・決着がついたって事か・・・チッ」
冨岡め、もう少しゆっくり任務をこなしやがれ。
ふと、視線を感じ部屋の入口を向くと俺の嫁が3人して此方へ熱い視線を送っていた。
宇「・・・何してんの?お前ら・・・」
ま「!!いつもの天元様に戻った!」
雛「良かった!具合でも悪いのかと心配しましたよ!」
須「ホントですよ!!・・・でも好青年な天元様も素敵でした♡」
雛「そうね・・・姿勢を正して書物を読む姿も・・♡」
ま「私の料理を美味しそうにたくさん食べてくれたし・・・♡」
嫁達は中身が煉獄な俺を相当気に入ったらしい。
宇「・・・あ、そう・・・」
あの天然たらしめ!!
俺の嫁まで虜にしてんじゃねぇよ!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉「む・・・」
忍の書物を読み耽っていた俺は急な視界の異変に強く目を閉じた。
漸く落ち着いた頃、薄く目を開き続きを読もうとしたーーーー
煉「っ!!?」
視界いっぱいに美桜がいた。俺の鼻先と美桜の鼻先がつきそうな位の近距離だ。
煉「な・・・これは・・・っ!?」
驚いて顔を上げた時、右手に柔らかい感触が。
見下ろすと美桜の胸に俺の手が乗っていたーーーいや、鷲掴みにしていたーーー
煉「っ!!!!?」
すかさず離れる。
『・・・?・・杏寿郎さん・・・??』
美桜が涙に濡れた顔で此方を見る。
ーーー俺は・・・いや、宇髄は美桜に一体何をしたのだ!?
煉「・・・・・・!」
『っ!?』
自分の拳で自分の頬を打つ。
ゴッ!という音がして美桜が驚いて飛び起きる。
『なっ!?急にどうしたんですか?杏寿郎さん・・・?』
煉「すまん!!」
美桜に土下座をする。
『えっ??』
煉「俺はどうかしていた様だ!!美桜の嫌がる様な事はしないと誓ったのに!!気の済むまで殴ってくれ!!」
『ええっ!?殴っ・・・なんで??』
煉「俺の気が済まない!!美桜がやらないなら俺自身で・・・」
そう言って再び握った拳を止めようと美桜が俺の腕にしがみつく。
『ちょっ!ちょっと待ってください!!落ち着きましょう、一回!!』
このやり取りが夜更けまで続いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〈後日〉
『えっ!?宇髄さん、お嫁さん3人いるんですか!?』
宇「まぁな。柱たるものそれ位の甲斐性は必要だろ?・・・っていうのは・・・」
・・・柱にはお嫁さんが複数必要なの!?
ハッ!
煉獄さんと宇髄さんは普段から何かと競っている所がある・・・
まさか杏寿郎さん、お嫁さんの数で勝とうとして私を婚約者に・・・!?
宇「・・冗談で、忍びの時の掟というか風習みたいなもんで・・・って、聞いてるか?美桜?」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
冨「美桜、怪我は治ったのか」
不「今日から同行復帰かァ。無理すんなよ」
『・・・義勇さん、実弥さん・・・』
冨不「「??」」
『お二人は何人お嫁さんがいらっしゃるんですか??』
冨「!??」
不「ハァ!?」
その後悲鳴嶼さんにも同じ質問を投げかけた事で今回の騒動が公になり、原因を作った宇髄さんと煉獄さんは鬼殺隊(主に柱)の風紀を乱したと悲鳴嶼さんにこってり絞られたとか。
ちなみに血鬼術というものを知らなかった私はしのぶさんから事の顛末を聞くまで、しばらく煉獄さんのお嫁さんが本当にいると思い込んだままだった。
煉「承知した!」
多くの隊士が被害に遭ったとされる山奥で任務にあたっていた俺と宇髄は鬼を追い詰める事に成功した。
あとはいつもの様に鬼の頸を斬るだけだ。
煉「炎の呼吸、壱の型!」
宇「音の呼吸、壱の型!」
2人で同時に斬り込む。
技を繰り出そうとした瞬間、鬼がニヤリと笑う。
煉「む!?」
宇「あ!?」
刹那、土埃が舞い上がる。
目眩しか!
小賢しい真似をする!!
煉宇「「・・・・・・っ!!」」
土埃の向こうで気配がする。
刀を持ち替え体勢を整え様とするが、体に違和感を覚える。
気にはなったが目の前の鬼を逃すまいと土埃を掻き分け前に飛び出す。
反対側にいる宇髄も同時に動いた様だ。
煉宇「「覚悟!!ーーーー!?」」
俺は目の前に現れた人物を見て固まったーーー。
目の前の人物も同様に固まる。
煉「・・・・・・?」
俺の目の前には、俺がいたーーーー。
血鬼術か!?
宇髄はどこへ消えた!?
煉「・・クソッ!煉獄!!どこへ行った!?」
目の前の俺が俺を捜している。
どう言う事だ??
宇「何を・・・!?」
声を発し違和感が更に強くなる。
ふと自分の手元を確認すると、愛刀ではなく宇髄の武器を握りしめていた。
目の前の俺も同様に自分の体を確かめている。
煉「まさか・・・」
宇「よもや・・・」
煉宇「「体が入れ替わってる!!??」」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
し「・・・柱が2人揃っていながら、なんとも情けないですね・・・」
あの後、原因を作った鬼を何度か追い詰めたが体が入れ替わったことで呼吸が合わず取り逃してしまった。
そうこうしている内に夜が明けてしまい、鬼の捜索を断念し蝶屋敷へとやってきた所だ。
煉(宇)「くそ・・・十二鬼月じゃないからと油断したぜ・・・」
宇(煉)「よもやよもやだ!!穴があったら入りたい!!」
し「・・・・・・」
煉(宇)「で、胡蝶。解毒薬とかねぇのか?この体じゃまともに戦えねぇ」
し「・・・私は何でも屋さんじゃないのですよ?まぁ、術をかけた鬼を退治すれば自然に戻るでしょう。今夜冨岡さんが任務に就かれるので遅くとも明日の朝までには決着がつくでしょうね。」
宇(煉)「!? 俺と宇髄の2人がかりでも逃げられたというのに冨岡1人で行くのか?」
し「1人なら中身を入れ替える相手がいないので鬼の術の効果はなくなるでしょう?それに相手が十二鬼月でないのなら柱1人で充分です。」
宇(煉)「むぅ!成る程!!」
し「・・・という訳なので、お二人は元に戻るまで蝶屋敷で待機していてくださいね。」
煉(宇)「・・・はぁ。しょうがねぇな。今日の所は大人しくしとくか」
宇(煉)「うむ・・・いや!駄目だ!!」
し煉(宇)「「は?」」
宇(煉)「家を空けてもう3日経っている!!家に戻らねば美桜が心配する!!」
今回は近場の為2日程で帰ると伝えてしまった。
鬼が中々見つからなかった事と血鬼術のせいで帰りが遅れている。
今頃何も連絡が来ない事を心配しているだろう。
そう言って診察室を出ようとする所を、胡蝶と宇髄に止められる。
煉(宇)「待て待て!お前そのまま行くつもりか!?」
し「事情を知らない美桜さんが驚いてしまいますよ。今の煉獄さんの外見は宇髄さんなのですから」
宇(煉)「むぅ!しかし・・・」
煉(宇)「・・・よし!じゃあ俺に任せろ!」
宇髄がニヤリと笑う。
宇(煉)「?何を任せるというのだ??」
煉(宇)「俺がお前になりきって美桜を安心させてやればいいんだろ?」
宇(煉)「なっ!?」
煉(宇)「美桜に心配かけたくねぇんだろ?・・・それとも本当の事伝えに行くか?十二鬼月でもねぇ雑魚鬼の術にかかった間抜けだと美桜に思われてもいいのか?」
宇(煉)「!!・・・むぅ・・・」
し「術にかかったのは宇髄さんも同じでしょう?・・・まぁ、怪我もしていませんし大ごとにならなければ外出は許可しますが。」
煉(宇)「よし!決まりだな!!煉獄、お前は俺の家に行けよ。嫁たちも俺の帰りを待ってるしな!!」
宇(煉)「宇髄の家に?」
煉(宇)「いいか?お前もしっかり俺になりきれよ!」
宇(煉)「うむ・・・。宇髄!俺の体で勝手に美桜に手を出す事は許さんぞ!!」
し「・・・・・(もう何か面倒なので放っておきましょう)」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇(煉)「・・・あそこが宇髄の家だな。」
俺は宇髄から聞いた住所を元に家の前までやってきた。
そういえば宇髄には嫁がいたな。
確か名前はーーー
そう考えた時、戸が開き例の嫁が姿を現す。
雛「!! 天元様。おかえりなさい!」
宇(煉)「! うむ!ただいま戻ったぞ!舞鶴!!」
雛「ま、舞鶴・・・?(天元様・・何故声を張っているの?)」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『・・・杏寿郎さん、任務長引いてるのかな・・・』
また新しい任務でも入ってしまったのかな?
それとも怪我をして動けなくなったとか・・・?
庭先を箒で掃きながら、帰らぬ恋人の事を思う。
『・・無事に帰ってくるよね・・・?』
そう呟いた時
煉(宇)「美桜!」
『っ!!?』
私のすぐ真後ろから急に声をかけられて飛び上がる。
『えっ!?きょ、杏寿郎さん・・・?』
いつもなら玄関先で大声で「ただいま戻ったぞ!」と言うのに・・・
煉(宇)「帰りが遅くなって悪かったな」
『・・・?いえ・・おかえりなさい』
何か雰囲気違う・・・?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇(煉)「美味い!!」
ま「・・・・・・」
宇髄の家に入ると食事が用意された。
宇(煉)「美味い!」
ま「・・天元様、そんなに食べて大丈夫ですか・・・?」
宇髄の家には嫁の他に女性が2人いた。
恐らく住み込みの家政婦だな!
宇(煉)「問題ない!心配してくれてありがとう!みきを!!」
ま「みき・・・を??・・・はぁ・・?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉(宇)「・・・・・・・」
『・・・・・・』
煉(宇)「・・・・・・」
『・・・・・・あの・・・』
煉(宇)「ん?」
『ご飯・・・お口に合わなかったですか??』
煉(宇)「いや?美味いぞ?」
『そ、そうですか・・・』
・・・嘘だ。
いつもは美味い!美味い!を連呼してくれるのに・・・
味付け失敗しちゃったんだ。
久しぶりに帰ってきたのに、ろくな食事も出せないなんて・・・私、婚約者として失格なんじゃ・・・!
目の前で静かに食事を続ける煉獄さんに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇(煉)「・・・ふぅ。」
食事を終え、風呂に入っている。
3日振りの湯船に浸かり溜まった疲れを落としていると
須「天元様〜!!」
ガラッと扉が開き、全裸の女性が入ってきた。
宇(煉)「っ!!!?」
咄嗟に背を向ける。
須「天元様、お背中お流ししますね♡」
宇(煉)「!?」
何を考えているのだ!?
宇髄は妻帯者だぞ!
妻と同じ屋根の下にいながら何と大胆な行動を!?
宇(煉)「いや!必要ない!!」
須「・・・え?」
宇(煉)「知っていると思うが俺には妻がいる!!その為君の気持ちに応える事はできない!!すまない!!志摩!!」
須「は・・・志摩??・・・天元様、頭でも打っちゃったんですか??私も天元様の妻でしょう??」
あと私の名前は須磨です!!
と怒られた。
ん?
須磨殿が宇髄の妻だと?
いや、その前に私「も」と言った・・・
宇(煉)「・・・妻が2人という事か・・・?」
混乱していると、追い討ちをかける様に
須「もー何言っちゃってるんですか!須磨と、まきをさんと、雛鶴さん!3人共天元様の妻です!!」
宇(煉)「なっ!?宇髄は3人も嫁がいたのか!?・・・おっと!」
驚きのあまり振り返ってしまう。
そうだ、裸だった!
またも急いで背を向ける。
その行動に
本当に頭打ったんですか??
と心配される。
宇(煉)「大丈夫だ!!今日の所は1人で入るので早く服を着なさい!!」
そう言うと、首を傾げながらも渋々風呂場から出て行った。
宇(煉)「・・・よもや・・・」
余りの衝撃に言葉を失っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『杏寿郎さん、お風呂沸いてますけど入ります?』
煉(宇)「あ、あぁ。そうだな」
じゃあ行ってくる。
と、煉獄さんは部屋を出てそのままお風呂場に直行してしまった。
『・・・あれ?』
今、手ぶらで行ったよね?
いつもは自分の部屋から着替えを持って行くのに・・・
・・・??
とりあえず、着替えがないと出た時困るよね。
煉獄さんの着替えを持って、脱衣所に向かう。
扉の外から声をかける
『あの、杏寿郎さん・・・着替えを持ってきたので・・・ぎゃっ!!?』
置いておきますね、と言おうとした所で勢いよく扉が開く。
私の目の前に腰にタオルを巻いただけの煉獄さんが立っていた。
煉(宇)「おお、悪いな」
私の手から着替えを受け取り、再びお風呂場の方へ体を向ける。
(見ちゃった・・・煉獄さんの上半身!!)
直視できず目が泳いで固まったままの私に
煉(宇)「・・・何だ?一緒に入りたいのか?」
さらっととんでもない事を言った。
『っ!!そそそんな!!すみません!!?』
混乱して何故か謝ってしまった。
煉(宇)「・・・冗談だ。(いけね、いつもの癖が出た)」
扉が閉まる。
『・・・・・』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
駄目だ・・・
さっきの煉獄さんの姿が頭に焼き付いて離れない・・・
外の空気を吸って落ち着こうと庭に出た時、ちょうど門の前に人影を見つける。
『?・・・あっ、宇髄さん!!』
宇髄さんはいつもの格好ではなく、着流しを着てお化粧もしていなかったから最初誰だか分からなかった。
宇(煉)「! 美桜・・・!」
『宇髄さんも杏寿郎さんと同じ任務でしたよね!お疲れでしょう?お家で休まなくていいんですか??』
宇(煉)「うむ!大丈夫だ!」
『??』
宇髄さん、いつもより元気・・・?
『・・・あ、もしかして杏寿郎さんに御用ですか?今丁度お風呂に入っていて・・・』
宇(煉)「いや・・・美桜の顔が見たくなってな・・・」
『・・・えっ?』
宇髄さんの言葉と少し切なげな表情に思わず顔が赤くなる。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
美桜が顔を赤くしてこちらを見上げている。
何と可愛いのだ!
宇髄の視点から見る美桜は身長差もあっていつもよりも上目遣いだ。
宇髄はいつもこんな可愛い美桜を見ているのか!!
『どっ、どうしたんですか?宇髄さん・・・』
気がつくと美桜の頭に触れていた。
宇(煉)「あっ!これは・・・」
煉(宇)「宇髄!!何をしている!美桜から離れろ!!」
俺と美桜の間に宇髄が現れる。
宇(煉)「む!何故だ!?」
カチンとする。
美桜は俺の婚約者だぞ!!
煉(宇)「お前がいつも言ってる台詞だろうが」
宇髄が美桜に聞こえない小声で言ってくる。
宇(煉)「!! そうだった!今俺は宇髄だった!!・・むぐっ!?」
煉(宇)「っ馬鹿お前!!声!」
宇髄に口を塞がれる。
『・・・宇髄さん、どうしちゃったんですか??』
美桜に怪訝な顔を向けられる。
宇(煉)「いや!何でもないんだ。気にしないでくれ!!」
煉(宇)「・・・ったく、こいつは・・・。美桜、俺は宇髄と重要な話がある。暫く席を外してもらえるか?」
『はっはい!!・・じゃあ、お茶の用意をしてきますね』
美桜は慌てた様子で厨房へと向かって行った。
宇(煉)「美桜・・・」
煉(宇)「で、何しに来たんだよ。俺の嫁達放っておいて」
宇(煉)「!! その事だ!嫁が3人とはどういう事だ!?」
煉(宇)「あれ?言ってなかったか??」
宇髄は悪びれる様子もない。
煉(宇)「3人共いい女だろう?」
宇(煉)「むぅ!確かに器量の良い娘達ではあるが・・・そんな事より!美桜に変な事はしていないだろうな?」
煉(宇)「安心しろ。今んところはしてねーよ。」
宇(煉)「何だ今のところとは!!」
煉(宇)「俺からは手を出さねぇが、美桜が求めてきたら分かんねぇって事だよ」
宇(煉)「!!」
何という奴だ!!
しかし、美桜はかなりの奥手だからそういう意味では心配は無さそうだ。
宇(煉)「・・・・・・」
煉(宇)「ほら、分かったらとっとと家に戻れ。長居してると美桜も俺の嫁達も不審がるだろうが」
シッシッと手で払う仕種をされる。
自分に追い払われるというのは何とも奇妙な感じだ・・・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
『失礼します。お茶をーーーって、あれ?宇髄さんは?』
煉(宇)「先程家に戻ったぞ!」
『そうですか・・・何だか慌ただしいですね』
煉(宇)「ああ、そうだな・・・美桜、俺はこれから少し仮眠をとる」
くわぁと大きな口を開けて欠伸をする。
煉獄さんが欠伸を!!
初めて見た!!!可愛い!!!
煉(宇)「ん?どうした??」
『ハッ!!いえ!!お布団準備しますね!』
慌てて布団を敷く。
ん?・・・煉獄さんがこの時間から寝る?
『・・・杏寿郎さん、やっぱりどこか具合でも悪いんじゃ・・・』
お医者さんを呼びましょうか?
と聞く。
煉(宇)「医者!?何故だ?」
『何かいつもと様子が違います。食欲もないみたいですし、こんな時間から寝るなんて・・・』
いつもならこの時間は道場で素振りをしているはず。
煉(宇)「・・・・(いや、煉獄のテンションで1日持たねぇよ)・・・うむ!鍛錬したい気持ちは山々なのだが、任務続きだからな。たまには休息も必要だろう?」
『っ!!そうですね!休息も大事ですね!!私ったら・・・ごめんなさい』
煉(宇)「いや、謝る事じゃない。少し休むだけだ。」
『はい・・・おやすみなさい』
そう言って煉獄さんに近づくと、
煉(宇)「ああ。おやすみ。」
頭に手をポンと乗せられる。
そのまま布団に入ってしまった。
『・・・・・・』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇髄の屋敷に戻ってきた俺は道場に篭りひたすら素振りを続けていた。
じっとしていると美桜の事ばかり考えてしまう。
この体では、美桜に気安く触れる事もできない・・・
油断したとはいえ、あの様な鬼の術にかかるとは不甲斐ない!!
もっともっと精進せねば!!
苛立ちやもどかしさを剣に込める。
須「・・天元様・・・やっぱり変です・・・」
ま「ああ・・・仮眠もとらずに鍛錬に打ち込むなんて・・・」
雛「まさか気付かぬ内に鬼の術にかかっているのでは・・・?」
道場の入口に3人の嫁の気配を感じ、素振りを中断する。
そうだ、俺は今宇髄の姿だった!
嫁達を放っておくのは宇髄にも悪いな!!
宇(煉)「どうした君達!!何か用か?そんな所にいないで話があるならこちらへおいで」
流れる汗を手でぬぐいながら声をかける。
雛ま須「「「っ!!!!?」」」
雛「天元様が・・・♡」
ま「爽やか・・・♡」
須「いつもの感じも素敵だけど、こっちも良いかも・・・♡」
宇(煉)「??」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
仮眠を取った煉獄さんは近所の散歩に出掛けて1刻程で戻ってきた。
それから夕食をとり、私は後片付けを済ませてお風呂に入っていた。
『・・・やっぱり、おかしい・・・』
湯船に浸かりながら1日を振り返っていた。
今日の煉獄さんは絶対いつもと違う。
夕食も、いつもの半分も食べていない割にいつもの倍時間をかけていたし
やっぱり美味い!って言ってくれなかった・・・
毎日一度は握る木剣も今日は触ってないし・・・
何より
任務から帰ってきた時も、仮眠をとる時も起きた時も、散歩に行く時も帰ってくる時も、今日は一度もハグしていない・・・
今まで忘れた事なんて一度もないのに・・・
まだ抱き締められるのは恥ずかしくて慣れないけど・・・
でも
でもなんか
『淋しいな・・・』
小さな呟きがお風呂場に小さく響いた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
お風呂から上がって部屋に向かっていると、縁側に煉獄さんが腰掛けていた。
『杏寿郎さん・・・お酒飲んでるんですか・・?』
珍しい
煉獄さんは付き合い以外でお酒を飲むなんて滅多にない。
煉(宇)「ああ。・・・駄目だったか?」
『いえ、珍しいな、と・・・』
煉(宇)「美桜は駄目だぞ?」
『う・・わかってます・・・』
過去に2度も煉獄さんの前でやらかしてるしね。
煉獄さんの隣に腰掛ける。
煉(宇)「・・・たまにはこういう静かなのもいいな」
『?たまには??』
煉(宇)「ああ。いつもは嫁達が賑やかだからなぁ。まぁそれも楽しいんだけどな」
『・・・え?嫁、たち??』
煉獄さんの一言に固まってしまう。
煉(宇)「ん?美桜にも言ってなかったか?俺、嫁が3人いるんだよ」
『・・・・・・は?』
嫁?
嫁ってあれだよね。
奥さんって事?
結婚してなるアレだよね??
煉獄さんってお嫁さんいたの?
え、3人も!?
ていうか、私、婚約者だよね・・・??
煉(宇)「っ!!(そうだ、俺は今煉獄なんだったな!)」
煉獄さんがバツの悪そうな顔をする。
煉(宇)「今のは嘘だ!いや、嘘というか〜アレだ!!」
『・・・・・・』
煉(宇)「さて!俺はそろそろ寝る!!須磨も湯冷めしない内に休め、な!!おやすみ」
そう言って慌てて部屋に入って行った。
『・・・・・・え?』
須磨って誰?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
冨「・・・この辺りか」
宇髄と煉獄が仕留め損ねた鬼が潜伏している地点までやってきた。
冨「・・・・・・」
余程警戒心が強いのか、気配が探り辛い。
だが昨晩2人の攻撃によって多少怪我を負っている筈。
手負いの鬼は血肉に飢えている為、必ず俺を喰おうと姿を現すだろう。
冨「・・・・・・」
鬼の警戒心を解く為、刀から手を離し無防備な姿勢でその時を待つ事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉(宇)「くそ・・最後の最後に失敗したな・・・」
煉獄のやつがこんなに酒に弱いとはな・・・
あいつの体で酒を飲んだら酔いのまわりが早く、つい素に戻ってしまった。
煉(宇)「・・駄目だ、クラクラする・・・」
水を飲んで落ち着こう。
立ちあがろうとした時
『杏寿郎さん、・・・寝ちゃいました?』
お水を持ってきたんですけど・・・と美桜の声がする。
煉(宇)「ああ、起きている。丁度水をもらいに行こうと思っていた所だ」
美桜を部屋に招き入れ、水を貰う。
その間、何か言いたそうにこっちを伺い見ている。
さっきの発言を気にしてるんだよな・・・。
さて、どう切り抜けるか。
『あの・・杏寿郎さん・・・』
煉(宇)「・・・何だ?」
『・・・もしかして、私に愛想尽かしちゃいました?』
煉(宇)「・・・は?」
てっきり、嫁発言に怒って責められると思っていた俺は予想もしない美桜の言葉と泣きそうに震える声に驚きを隠せなかった。
『だって・・・今日の杏寿郎さんはいつもと違うし・・・』
煉(宇)「いや、それは・・・」
『料理も美味しく作れないし、いつまで経っても婚約者としてちゃんと出来てないから・・・もう嫌になっちゃいましたよね?』
言いながら涙を零す。
その姿に思わず心臓が跳ねる。
美桜・・・こいつ、こんなに女らしかったっけ!?
いや、元々美桜の事は可愛いと思っていたが、それは妹みたいなもんで、煉獄とかが思うようなものではなかった。・・・筈だ。
煉(宇)「・・・そんな事はない。不安にさせたのなら謝る。それに俺はいつも通りだ」
・・・の、筈だ。
『!! 嘘・・・だって・・・今日は1回もしてない・・・』
俺のいつも通り発言で余計に泣かせてしまった!!
うおお?何だ?いつもしてる事??
全然わからねぇ・・・
美桜の涙に柄にもなく慌ててしまう。
『いつも、挨拶代わりにって杏寿郎さんからしてくれるのに・・・』
グスグス鼻を啜りながら訴えてくる。
煉獄の野郎・・・こんなに泣かせるような大事な事があるなら前もって言っとけよ・・・
なんだよ挨拶代わりって・・・
下手な事して間違ったら余計ややこしくなるしな・・・
駄目だ、見当もつかねぇ。。。
こうなったら美桜に言わせるか。
煉(宇)「・・・いつも俺からだから、たまには美桜からしてくれてもいいんだぞ?」
『っ!!!』
その言葉にピタッと泣き止み、みるみる顔が赤くなっていく。
・・・ヤベェな。コレ。
煉獄フィルターかかってんのか??
スゲー可愛いんだけど・・・
『わっ私、から・・・?』
煉(宇)「出来ないのか?」
もっと美桜の反応を楽しみたくて、ワザと困るような言葉を選ぶ。
『うう・・・』
煉(宇)「じゃあ、俺にして欲しい事を美桜がちゃんとお願いすれば聞いてやる」
『っ!!・・・杏寿郎さん・・なんでそんな意地悪するの・・・?』
煉(宇)「・・・そうか・・・言えないのか。ではこの話は終いだな。」
『っ!!』
美桜は完全に俺のペースに嵌まったな。
これで今日の所は諦めて寝るだろう。
何だか知らんが明日元に戻った煉獄にしてもらえ。
さて寝るか、と美桜に背中を向ける。
と、
着物の裾を引っ張られる。
振り返ると、涙を溜めた上目遣いで俺の着物の端を掴んでいた。
煉(宇)「・・・・・・」
『・・・・っ』
美桜の顔をジッと見つめる。
美桜は唇を震わせながら、蚊の鳴くような声で
『・・・・・・抱いて・・・・・』
煉(宇)「っ!!?」
そこで俺の理性がぶっ飛んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ザワッ
木々が揺れるのを感じた。
近づいてきているなーーー
だが、相当警戒されているらしい。
一定の距離を保った所で気配が止まる。
冨「・・・・・・逃がすと厄介だな」
一撃で仕留めなければ
次に鬼が動いた時が勝負だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉(宇)「・・・・・・本気で言っているのか?」
『なっ!冗談でこんな恥ずかしい事言えませんっ!』
言わせておいて酷い・・・とまた涙ぐむ。
煉(宇)「・・・・・・」
それにしても、健全そうに見えてヤル事はヤッてんだな、こいつら・・・
てか、挨拶代わりって言ってたな!?
煉獄、あいつ・・・マジか!!
煉(宇)「・・・先に断っておくが、お前から求めたんだからな?」
『・・・っ!?』
美桜の腰を引き寄せそのまま布団に倒す。
『!!!?』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
え?
え??
何で煉獄さんの後ろに天井が見えるの???
『なっなっなっ??』
そのまま煉獄さんの顔が近づいてくる。
『なーーーーーーーっ!?』
煉(宇)「っ! 何だ?」
私は両手で近づいてくる煉獄さんの顔を押し返していた。
『だっだっだって・・・!!』
今何しようとしたの!?
煉(宇)「いつもしている事だろう?」
した事ない!!
ブンブン首を横に振る。
何、いつもって!?
誰かと間違えてる!?
ハッ
ーーー俺、嫁が3人いるんだよーーー
さっきは私の聞き間違いかと思って1回スルーしたけど、もしかしてホント??
須磨さん・・・?
・・・もしかして、
いや
もしかしなくても
私がいつも恥ずかしがって煉獄さんの思いにちゃんと応えられないから・・・別の人と・・・
煉獄さんの顔を押していた私の両手は力なく布団に落ちる。
煉(宇)「・・・・・・何故泣く?」
後悔したって遅いのに
恥ずかしがっている場合じゃなかったのに・・・
煉(宇)「美桜?」
煉獄さんの着物をギュッと掴む。
他のお嫁さん達には悪いけど、これからちゃんとするから。
ちゃんと応えるから・・・
『・・・どこにも行かないで・・・』
他の女の人の所に行っちゃやだ・・・
煉(宇)「!!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
さっきから泣いたり恥ずかしがったり固まったり忙しなく表情が変わっていたが・・・
ここに来て切なげな顔と声にやられてしまった。
普段なら何を考えているのか手にとるように分かるのに、今の美桜は全く読み取れなかった。
だが・・・
煉(宇)「・・・分かった」
これは美桜が望んでいる事だと自分を正当化する。
煉獄に対して申し訳ない気持ちもあるにはあるが、こんな姿の美桜を目の前にして己を止める事はもう無理だった。
再び美桜の顔に近づき、次から次へと瞳から溢れ出る涙を舐めとる。
『っ!!』
煉(宇)「フッ。しょっぱいな」
目を見開いた美桜は驚きのあまり涙が引っ込んだ様だ。
そのまま美桜の耳元へと顔を移動させ、息を吹きかけたり耳たぶを甘噛みする。
『っん!』
美桜の体がピクンと跳ね、刺激から逃れようと頭を振るが、俺は片手で側頭部を掴みそれを阻止する。
煉(宇)「こら、逃げるな・・・」
耳元で囁き、そのまま耳の中へ舌を侵入させる。わざと音を立ててやると美桜の体はいちいち反応する。
煉(宇)「・・・・・・」
美桜の反応を楽しみながら、右手を身体に這わしていく。
『っ!!』
胸の膨らみに到達した所で美桜の身体が一瞬強張る。
・・・さっきから生娘みたいな反応するな・・・
美桜の顔を見ると、再び涙を溜め不安と少しの期待に満ちた瞳で此方を見ていた。
煉(宇)「お前は・・・本当、可愛いな・・・」
再び美桜の顔に近づいていく。
今度は両手で押し返される事はなく、瞳と唇をギュッと瞑る。
緊張しすぎだ。
思わず笑みが溢れる。
ゆっくり、唇を近づけていくーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ブワッ!!
土埃が舞い上がる。
遂に仕掛けてきたな。
此方からは動かずジッとしていると土埃の向こうで気配が動く。
冨「水の呼吸、拾壱の型 凪」
すれ違いざまに技を放つ
鬼「ぐあっ!!」
冨「・・・任務完了」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇煉「「っ!!!?」」
一瞬目の前が真っ白になる。
咄嗟に目を閉じて異変をやり過ごす。
呼吸を整え、落ち着いた所でゆっくり目を開く。
宇「美桜・・・ん?」
目の前にあった筈の美桜の唇はそこになく、代わりにもう暫く仕舞い込んで読んでもいなかった忍の書物を手にしていた。
宇「・・・決着がついたって事か・・・チッ」
冨岡め、もう少しゆっくり任務をこなしやがれ。
ふと、視線を感じ部屋の入口を向くと俺の嫁が3人して此方へ熱い視線を送っていた。
宇「・・・何してんの?お前ら・・・」
ま「!!いつもの天元様に戻った!」
雛「良かった!具合でも悪いのかと心配しましたよ!」
須「ホントですよ!!・・・でも好青年な天元様も素敵でした♡」
雛「そうね・・・姿勢を正して書物を読む姿も・・♡」
ま「私の料理を美味しそうにたくさん食べてくれたし・・・♡」
嫁達は中身が煉獄な俺を相当気に入ったらしい。
宇「・・・あ、そう・・・」
あの天然たらしめ!!
俺の嫁まで虜にしてんじゃねぇよ!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉「む・・・」
忍の書物を読み耽っていた俺は急な視界の異変に強く目を閉じた。
漸く落ち着いた頃、薄く目を開き続きを読もうとしたーーーー
煉「っ!!?」
視界いっぱいに美桜がいた。俺の鼻先と美桜の鼻先がつきそうな位の近距離だ。
煉「な・・・これは・・・っ!?」
驚いて顔を上げた時、右手に柔らかい感触が。
見下ろすと美桜の胸に俺の手が乗っていたーーーいや、鷲掴みにしていたーーー
煉「っ!!!!?」
すかさず離れる。
『・・・?・・杏寿郎さん・・・??』
美桜が涙に濡れた顔で此方を見る。
ーーー俺は・・・いや、宇髄は美桜に一体何をしたのだ!?
煉「・・・・・・!」
『っ!?』
自分の拳で自分の頬を打つ。
ゴッ!という音がして美桜が驚いて飛び起きる。
『なっ!?急にどうしたんですか?杏寿郎さん・・・?』
煉「すまん!!」
美桜に土下座をする。
『えっ??』
煉「俺はどうかしていた様だ!!美桜の嫌がる様な事はしないと誓ったのに!!気の済むまで殴ってくれ!!」
『ええっ!?殴っ・・・なんで??』
煉「俺の気が済まない!!美桜がやらないなら俺自身で・・・」
そう言って再び握った拳を止めようと美桜が俺の腕にしがみつく。
『ちょっ!ちょっと待ってください!!落ち着きましょう、一回!!』
このやり取りが夜更けまで続いた。
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〈後日〉
『えっ!?宇髄さん、お嫁さん3人いるんですか!?』
宇「まぁな。柱たるものそれ位の甲斐性は必要だろ?・・・っていうのは・・・」
・・・柱にはお嫁さんが複数必要なの!?
ハッ!
煉獄さんと宇髄さんは普段から何かと競っている所がある・・・
まさか杏寿郎さん、お嫁さんの数で勝とうとして私を婚約者に・・・!?
宇「・・冗談で、忍びの時の掟というか風習みたいなもんで・・・って、聞いてるか?美桜?」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
冨「美桜、怪我は治ったのか」
不「今日から同行復帰かァ。無理すんなよ」
『・・・義勇さん、実弥さん・・・』
冨不「「??」」
『お二人は何人お嫁さんがいらっしゃるんですか??』
冨「!??」
不「ハァ!?」
その後悲鳴嶼さんにも同じ質問を投げかけた事で今回の騒動が公になり、原因を作った宇髄さんと煉獄さんは鬼殺隊(主に柱)の風紀を乱したと悲鳴嶼さんにこってり絞られたとか。
ちなみに血鬼術というものを知らなかった私はしのぶさんから事の顛末を聞くまで、しばらく煉獄さんのお嫁さんが本当にいると思い込んだままだった。