新生活と新天地
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柱初任務から一週間後、煉獄さんが帰ってきた。
煉「ただいま帰った!さあ美桜、町に行くぞ!!」
『おかえりなさい、杏寿郎さん。落ち着いて、まずは仮眠を・・・』
煉「仮眠の必要はない!俺は元気だ!!」
『・・・でしたら、お風呂を沸かしますので少しゆっくりされてください。』
煉「いや!一刻も早く町へ出たい!早くネックレスを買いに行こう!!」
物凄い勢いだなぁ・・・
本当に早く行きたいんだな。。。
でも、
『・・・あの、お気持ちは嬉しいのですが、まだ朝早すぎてお店はどこも開いてないと思いますよ?』
煉「!!・・そうだったな。・・分かった!風呂をいただこう!」
そう。
今はド早朝
私もさっき起きたばかりだし、何なら千ちゃんはまだ寝ている。
もしかしたら煉獄さんの声で起きたかもしれないけど・・・
お風呂の準備をして、そのまま朝食の支度を始めた所に
千「美桜さん、おはようございます。兄上が帰られたのですね」
千ちゃんが入ってくる。
『千ちゃんおはよう。・・ごめんね、起こしちゃったよね?』
千「いえ、ちょうど目が覚めた所でした」
お気になさらず、と言ってくれる。
本当にいい子だなぁ。
お風呂から上がった煉獄さんと千ちゃんと朝食をとり、陽が高くなってきた頃に
煉「美桜!もうじき店も開くだろう!そろそろ出かけよう!!」
まだ早いと思うけど・・・
少年のようにウキウキしている煉獄さんを見ると・・・
『そうですね。お散歩がてらゆっくり行きましょうか』
断れるわけがない。
そうして2人並んで町へ向かう。
『本当に仮眠を取らなくて良かったんですか?』
煉「うむ!買い物が終わってからいつでも寝られるからな!」
それに、と
煉「今は少しでも美桜との時間が欲しいのだ」
そう言って肩を抱かれる。
『っ・・・・』
肩を抱かれて歩くのはこれが3回目だけど・・・
慣れる訳もなく、全身の熱が顔に集中する。
煉「美桜はすぐ赤くなるな」
『うっ・・・だって・・・』
煉「可愛いな!」
『っ!!!』
私・・・町までもたないかも・・・
ていうか、煉獄さんって恥ずかしいとかないのかな。
いつも余裕だよね。。。
私ばっかりドキドキしてるなぁ。
もしかして、こういう経験いっぱいしてきてるのかな・・・
『・・・・・』
煉「どうした?」
『!!いっいえ!』
いけない、今変な顔してたよね・・・
過去の煉獄さんの恋人に嫉妬なんて・・・
いけない!この邪心を払わなきゃ!!
邪心を払う・・・
『あ・・・』
煉「ん?どうした美桜?」
『杏寿郎さん、少し寄り道してもいいですか?』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
煉「寄り道とは、ここか?」
『はい!』
私たちは神社に来ていた。
『杏寿郎さんが十ニ鬼月と戦う前にお参りをしていたので、お礼参りをしないと』
煉「・・・そうか」
・・・お陰様で杏寿郎さんが無事、柱になる事が出来ました。
ありがとうございました・・・
お参りが終わって、煉獄さんの方を振り返ると
優しい眼差しでこちらを見ていた。
煉「よし、折角なので俺もお参りをしていこう」
そう言って私の横に立ち手を合わせる。
お参りしている煉獄さんも凛々しくて素敵・・と一々キュンとしてしまう。
目を閉じているのを良いことにマジマジと煉獄さんの顔を見ていたら
煉「・・そんなに見られると恥ずかしいな」
『!!・・すみません・・・』
目を閉じてるのにバレてしまった・・・
煉「・・・よし。そろそろ行こうか」
『あ、はい・・・あ!あの・・・』
煉「ん?」
再び肩に手を回そうとした煉獄さんを言葉で制する。
『あ、あの・・・手!手を・・・・・・繋いでもいいでしょうか・・・?』
肩を抱かれると密着具合が凄いのよ・・・
免疫がない私には心臓への負担が凄い。
手を繋ぐのもかなりのハードルだけどね・・・
煉「・・・・・・」
ダメだった、かな?
拒否してると思っちゃったかな・・?
不安になった時
私の右手が大きくて暖かい煉獄さんの左手に包み込まれる。
顔を上げると、嬉しそうな顔をした煉獄さん。
煉「美桜からおねだりをされるのは初めてだな」
『っ!!』
しました!しましたけど!!
私・・・こういうの慣れる日来るのかな・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
町へ着き、装飾品を取り扱う店に入る。
早速ネックレスの並ぶ棚へ向かうと、金色、銀色、チェーンの大きさや太さ等色々種類があって悩んでしまう。
煉「気に入った物はあるか?」
『うーん・・・これだけ沢山あると迷っちゃいます』
煉獄さんはふむ。とネックレスに視線を向ける。
しばらく動かなかった煉獄さんはスッと1つのネックレスを手に取る。
そして私の首元に当てると
煉「うん。やはり似合う」
煉獄さんが選んだのは銀色に光る細いチェーンのネックレスだった。
『・・・じゃあ、これにします』
煉「もう少し見ていていいのだぞ?」
『いえ、杏寿郎さんが似合うと言ってくれたので、これが一番良いものに見えてきました』
煉「!・・そうか!ではこれにしよう!!」
無事にネックレスを手に入れた私たちは店を出る。
それから河川敷に腰掛けた所で私は手提げから小箱を取り出す。
煉「持ってきていたのか?」
煉獄さんが少し驚いた顔をする。
『はい・・・すぐにつけたかったので』
煉「!・・・そうか」
煉獄さんみたいに分かりやすくはないけど、私だって今日の事を結構楽しみにしていた。
先程買ったネックレスに指輪を通す。
太陽に反射して赤い宝石がキラキラ輝く。
『やっぱり、綺麗・・・』
この宝石がこの世で一番美しい物に見えた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
今日の美桜はいつにも増して可愛く見える。
美桜の行動の一つ一つが、発する言葉が、全てが愛おしい。
煉「俺がつけても良いだろうか?」
『・・・はい。お願いします。』
美桜からネックレスを受け取る。
首元にあてて留め具を後ろに回す。
俺がつけやすい様、美桜は下ろしていた髪を横に流す。
隠れていたうなじが見える。
それだけで胸が高鳴る俺はどうかしているのだろう。
美桜に悟られぬ様、平静を装う。
『・・・』
煉「・・・つけたぞ。見せてくれ」
『はい・・・』
ゆっくりと振り返った美桜の姿に思わず息を飲む。
頬を赤らめ
目を潤ませ
胸元に光る指輪に手を添えるその姿は
この世で一番美しい者に見えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉「さて、これからどうする?」
再び手を繋いで歩き始めた矢先、煉獄さんに聞かれて驚く。
『えっ、お買い物も終わりましたしお家に戻らないのですか?』
煉「せっかく町まで来たのだから、美桜の行きたい所に付き合うぞ!」
確かに、買い出し以外で町まで出るのは滅多にないから色々見てみたいお店はあるけど・・・
『ん〜、お家に帰りましょう?』
煉「む、何故だ?」
『今日の目的は果たせましたし。それに・・・』
煉獄さんも任務帰りで疲れてるでしょう?
『・・・杏寿郎さんとお家でゆっくり過ごしたいなぁと・・・』
一瞬出そうになった言葉を言い方を変えて伝えてみる。
きっと煉獄さんは疲れてないって言うだろう。
朝からずっと続いたやりとりを思い出す。
『さつまいもを買って帰りましょう?おやつに蒸してあげますから』
煉「そうか!わかった!!」
好物に釣られた煉獄さんはお家に帰るのを納得してくれた。可愛い。
煉獄さんの体の心配もあるけど、何よりあのお家で過ごすのもあと僅かだし、千ちゃんや槇寿郎さんとの時間も大切にして欲しいな。
お家に帰り、約束通り蒸したさつまいもとお茶を用意し縁側で千ちゃんを交えて3人で過ごしている。
千「兄上、新しいお屋敷にはいつ頃移られるのですか?」
煉「新たな任務が入らなければ2・3日後には移る予定だ!」
千「そうですか・・・」
少し淋しそうな千ちゃん。
そうだよね、大好きなお兄さんがお家出るのは淋しいよね。
お父さんと2人になっちゃうんだもんなぁ。。。
『・・・・・・』
私も無意識の内に暗い表情になってしまう。
そんな私の頭に暖かい手が乗る。
顔を上げると、やっぱり暖かい表情の煉獄さんが微笑んでいた。
もう片方の煉獄さんの手は千ちゃんの頭に乗っている。
煉「2人ともそんな顔をするな。今生の別れではないのだぞ!それに、新しい屋敷はそこまで離れていないからな。美桜も俺が任務で不在の時は行き来すると良い!」
『・・・はい』
煉「千寿郎も、いつでも俺や美桜に会いに来てくれ!」
千「・・・はい!」
煉獄さんは本当凄いなぁ。
2人の落ち込んだ気持ちを一気に引き上げてくれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あれから2日
夜の警備には行っていたものの遠出の任務は入らなかったため明日新しい屋敷に移ることになった。
とはいえ、家具など入用のものは隊から支給されるとの事で大掛かりな引越しということもなく、煉獄さんと私の服などの私物も隠の方が運んでくれるので身ひとつで移るだけらしい。
なので特に何も変わらぬままこのお家で過ごす最後の日を迎えたわけだけど、今日はどうしてもやりたいことがあった。
『お願いがあります!』
槇「断る!」
『まだ何も言ってませんが!?』
冷たく槇寿郎さんに言い放たれガーン!とショックを受ける。
槇「お前の願いは大体下らんことだ」
『ひ・・ひどい・・・』
簡単に聞いてくれるとは思ってなかったけど、まさか話すら聞いてもらえないなんて・・・
シュンと落ち込む。
槇「・・・話だけなら聞いてやる・・・」
さっさと話せ、とぶっきらぼうに言う。
『!!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
美桜さん、どこに行ったのだろう・・・?
夕食の支度の途中でどこかに行ったきり戻ってこない・・・
今日は最後の日だからと、また美桜さんが洋食を作ってくれている。
教わりながら作ってはいたけど、この先は美桜さんがいないと分からないな。。。
しばらくすると、パタパタと戻ってくる。
『千ちゃん、ごめんね。待たせちゃって』
千「いえ。どちらに行ってたのですか?」
『うん。ちょっとね・・・』
千「?」
それから2人でご馳走を作り終え部屋に運ぶ。
『よし!これで準備できたね。千ちゃん、煉獄さんを呼んできてもらってもいい?』
千「え?わ、わかりました」
いつもなら美桜さんが呼びに行くのに・・・?
不思議に思いながら兄上を呼びに部屋を後にする。
もしかして、喧嘩でもしてしまったのだろうか。
千「兄上、食事の支度が整いました」
部屋の外から声をかけると「うむ」と返事が返ってくる。
煉「めずらしいな。千寿郎が呼びにくるとは」
兄上の反応から喧嘩ではなさそうだな・・・
千「はい・・・美桜さんは手が離せない様だったので」
煉「そうか!朝からご馳走を作ると張り切っていたからな!」
そう言いながら部屋の障子を開く。
煉千「!!」
部屋に入った兄上と僕は入り口で固まってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『どうしたんですか?2人とも。早く入って』
入り口で固まったままの2人。
その視線の先には
槇「・・・・・」
煉「・・・父上・・・」
千「・・・父上!」
槇寿郎さんが無愛想に座っている。
煉獄さんはこれでもかと驚いた顔をし、千ちゃんは驚きに加え喜びの表情だ。
『さぁ、ご飯が冷めてしまいますよ?食べましょう!』
そう。
私がどうしてもやりたかった事。
家族揃って食卓を囲むことだった。
朝からしつこく槇寿郎さんにお願いし続け、先ほどやっと折れてくれたのだ。
もちろん、瑠火さんの位牌と写真も槇寿郎さんの横に置いた。
『やっと煉獄家の皆さんが揃いましたね』
私の我が侭を聞いてくれた槇寿郎さんは本当に優しいな。
煉獄さんと千ちゃんが楽しそうに話しているのを相槌もしないで黙ってお酒を飲んでいるけれど。
3人の様子に私も嬉しくなってくる。
『槇寿郎さん。我が侭に付き合って下さってありがとうございます』
槇「・・・お前は意外と我が強いな」
大人しそうな顔をして、と悪態をつかれる。
『・・・我が強いついでにいいですか?』
槇「は?」
『これからは出来るだけ、千ちゃんと一緒にご飯食べてあげてくださいね』
槇寿郎さんがいれば千ちゃんも淋しくないですから。
槇「・・・フン。調子に乗るな!」
『フフ。お願いしますね。小人さん?』
槇「!!その言い方をやめろ!」
煉「父上、美桜、何の話を?」
槇「!なんでもない。くだらん戯言だ」
煉「?そうですか・・・」
千「美桜さん、大丈夫ですか?」
声を荒げた槇寿郎さんに煉獄さんと千ちゃんが心配そうに話に入ってくる。
顔がそっくりな3人が並ぶの初めて見たかも。
目の保養!!幸せだなあ~。
『うん大丈夫だよ。3人がいて今すっごい幸せだよ』
煉千槇「「「っ!!!」」」
にっこり笑って言うと3人が同じ表情をする。
思ったままの言葉がつい口をついてしまった。
ドン引かれた??
『??あ、槇寿郎さん。お酒のお相手しましょうか?』
煉千槇「「「それは絶対に駄目だ(です)!!!」」」
3人のシンクロ凄い迫力!
『・・・冗談ですよう』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
食事の後片付けを終え廊下を歩いていると、部屋の前で煉獄さんが待っていた。
煉「美桜、少しいいだろうか?」
『どうかしましたか?杏寿郎さん・・っ!!?』
部屋に煉獄さんを招きいれ振り返ろうとした時
煉獄さんの手が回されて
後ろから抱きしめられていた。
煉「・・・美桜・・・ありがとう」
『・・・・・・?』
煉「父上との事は、正直俺は諦めていた」
『・・・それは』
私の我が強いから、優しい槇寿郎さんが折れてくれたんですよ。
煉「千寿郎の事もだ。孤独になってしまうのではないかと気がかりだった」
『・・・・・・』
それも私がやりたくてやった事ですよ。
煉「美桜がいてくれて、本当に良かった」
『!・・・・・』
言いたい言葉が出てこないのに、涙だけが次からあふれてくる。
私、このお家で少しは役に立てたのかな・・・
煉「・・・美桜は良く泣く子だな」
煉獄さんがフッと笑う。
腕に回されていた手が頭に置かれ優しくなでられる。
『・・・・・っごめ、なさ・・前は、こんな事、なかったんですけど・・・』
煉「・・・前は?記憶をなくす前の事か?」
『・・・あ・・・・』
何でそんな風に思ったんだろう。
口から自然に出た言葉だった。
煉「ただいま帰った!さあ美桜、町に行くぞ!!」
『おかえりなさい、杏寿郎さん。落ち着いて、まずは仮眠を・・・』
煉「仮眠の必要はない!俺は元気だ!!」
『・・・でしたら、お風呂を沸かしますので少しゆっくりされてください。』
煉「いや!一刻も早く町へ出たい!早くネックレスを買いに行こう!!」
物凄い勢いだなぁ・・・
本当に早く行きたいんだな。。。
でも、
『・・・あの、お気持ちは嬉しいのですが、まだ朝早すぎてお店はどこも開いてないと思いますよ?』
煉「!!・・そうだったな。・・分かった!風呂をいただこう!」
そう。
今はド早朝
私もさっき起きたばかりだし、何なら千ちゃんはまだ寝ている。
もしかしたら煉獄さんの声で起きたかもしれないけど・・・
お風呂の準備をして、そのまま朝食の支度を始めた所に
千「美桜さん、おはようございます。兄上が帰られたのですね」
千ちゃんが入ってくる。
『千ちゃんおはよう。・・ごめんね、起こしちゃったよね?』
千「いえ、ちょうど目が覚めた所でした」
お気になさらず、と言ってくれる。
本当にいい子だなぁ。
お風呂から上がった煉獄さんと千ちゃんと朝食をとり、陽が高くなってきた頃に
煉「美桜!もうじき店も開くだろう!そろそろ出かけよう!!」
まだ早いと思うけど・・・
少年のようにウキウキしている煉獄さんを見ると・・・
『そうですね。お散歩がてらゆっくり行きましょうか』
断れるわけがない。
そうして2人並んで町へ向かう。
『本当に仮眠を取らなくて良かったんですか?』
煉「うむ!買い物が終わってからいつでも寝られるからな!」
それに、と
煉「今は少しでも美桜との時間が欲しいのだ」
そう言って肩を抱かれる。
『っ・・・・』
肩を抱かれて歩くのはこれが3回目だけど・・・
慣れる訳もなく、全身の熱が顔に集中する。
煉「美桜はすぐ赤くなるな」
『うっ・・・だって・・・』
煉「可愛いな!」
『っ!!!』
私・・・町までもたないかも・・・
ていうか、煉獄さんって恥ずかしいとかないのかな。
いつも余裕だよね。。。
私ばっかりドキドキしてるなぁ。
もしかして、こういう経験いっぱいしてきてるのかな・・・
『・・・・・』
煉「どうした?」
『!!いっいえ!』
いけない、今変な顔してたよね・・・
過去の煉獄さんの恋人に嫉妬なんて・・・
いけない!この邪心を払わなきゃ!!
邪心を払う・・・
『あ・・・』
煉「ん?どうした美桜?」
『杏寿郎さん、少し寄り道してもいいですか?』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
煉「寄り道とは、ここか?」
『はい!』
私たちは神社に来ていた。
『杏寿郎さんが十ニ鬼月と戦う前にお参りをしていたので、お礼参りをしないと』
煉「・・・そうか」
・・・お陰様で杏寿郎さんが無事、柱になる事が出来ました。
ありがとうございました・・・
お参りが終わって、煉獄さんの方を振り返ると
優しい眼差しでこちらを見ていた。
煉「よし、折角なので俺もお参りをしていこう」
そう言って私の横に立ち手を合わせる。
お参りしている煉獄さんも凛々しくて素敵・・と一々キュンとしてしまう。
目を閉じているのを良いことにマジマジと煉獄さんの顔を見ていたら
煉「・・そんなに見られると恥ずかしいな」
『!!・・すみません・・・』
目を閉じてるのにバレてしまった・・・
煉「・・・よし。そろそろ行こうか」
『あ、はい・・・あ!あの・・・』
煉「ん?」
再び肩に手を回そうとした煉獄さんを言葉で制する。
『あ、あの・・・手!手を・・・・・・繋いでもいいでしょうか・・・?』
肩を抱かれると密着具合が凄いのよ・・・
免疫がない私には心臓への負担が凄い。
手を繋ぐのもかなりのハードルだけどね・・・
煉「・・・・・・」
ダメだった、かな?
拒否してると思っちゃったかな・・?
不安になった時
私の右手が大きくて暖かい煉獄さんの左手に包み込まれる。
顔を上げると、嬉しそうな顔をした煉獄さん。
煉「美桜からおねだりをされるのは初めてだな」
『っ!!』
しました!しましたけど!!
私・・・こういうの慣れる日来るのかな・・・
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町へ着き、装飾品を取り扱う店に入る。
早速ネックレスの並ぶ棚へ向かうと、金色、銀色、チェーンの大きさや太さ等色々種類があって悩んでしまう。
煉「気に入った物はあるか?」
『うーん・・・これだけ沢山あると迷っちゃいます』
煉獄さんはふむ。とネックレスに視線を向ける。
しばらく動かなかった煉獄さんはスッと1つのネックレスを手に取る。
そして私の首元に当てると
煉「うん。やはり似合う」
煉獄さんが選んだのは銀色に光る細いチェーンのネックレスだった。
『・・・じゃあ、これにします』
煉「もう少し見ていていいのだぞ?」
『いえ、杏寿郎さんが似合うと言ってくれたので、これが一番良いものに見えてきました』
煉「!・・そうか!ではこれにしよう!!」
無事にネックレスを手に入れた私たちは店を出る。
それから河川敷に腰掛けた所で私は手提げから小箱を取り出す。
煉「持ってきていたのか?」
煉獄さんが少し驚いた顔をする。
『はい・・・すぐにつけたかったので』
煉「!・・・そうか」
煉獄さんみたいに分かりやすくはないけど、私だって今日の事を結構楽しみにしていた。
先程買ったネックレスに指輪を通す。
太陽に反射して赤い宝石がキラキラ輝く。
『やっぱり、綺麗・・・』
この宝石がこの世で一番美しい物に見えた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
今日の美桜はいつにも増して可愛く見える。
美桜の行動の一つ一つが、発する言葉が、全てが愛おしい。
煉「俺がつけても良いだろうか?」
『・・・はい。お願いします。』
美桜からネックレスを受け取る。
首元にあてて留め具を後ろに回す。
俺がつけやすい様、美桜は下ろしていた髪を横に流す。
隠れていたうなじが見える。
それだけで胸が高鳴る俺はどうかしているのだろう。
美桜に悟られぬ様、平静を装う。
『・・・』
煉「・・・つけたぞ。見せてくれ」
『はい・・・』
ゆっくりと振り返った美桜の姿に思わず息を飲む。
頬を赤らめ
目を潤ませ
胸元に光る指輪に手を添えるその姿は
この世で一番美しい者に見えた。
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煉「さて、これからどうする?」
再び手を繋いで歩き始めた矢先、煉獄さんに聞かれて驚く。
『えっ、お買い物も終わりましたしお家に戻らないのですか?』
煉「せっかく町まで来たのだから、美桜の行きたい所に付き合うぞ!」
確かに、買い出し以外で町まで出るのは滅多にないから色々見てみたいお店はあるけど・・・
『ん〜、お家に帰りましょう?』
煉「む、何故だ?」
『今日の目的は果たせましたし。それに・・・』
煉獄さんも任務帰りで疲れてるでしょう?
『・・・杏寿郎さんとお家でゆっくり過ごしたいなぁと・・・』
一瞬出そうになった言葉を言い方を変えて伝えてみる。
きっと煉獄さんは疲れてないって言うだろう。
朝からずっと続いたやりとりを思い出す。
『さつまいもを買って帰りましょう?おやつに蒸してあげますから』
煉「そうか!わかった!!」
好物に釣られた煉獄さんはお家に帰るのを納得してくれた。可愛い。
煉獄さんの体の心配もあるけど、何よりあのお家で過ごすのもあと僅かだし、千ちゃんや槇寿郎さんとの時間も大切にして欲しいな。
お家に帰り、約束通り蒸したさつまいもとお茶を用意し縁側で千ちゃんを交えて3人で過ごしている。
千「兄上、新しいお屋敷にはいつ頃移られるのですか?」
煉「新たな任務が入らなければ2・3日後には移る予定だ!」
千「そうですか・・・」
少し淋しそうな千ちゃん。
そうだよね、大好きなお兄さんがお家出るのは淋しいよね。
お父さんと2人になっちゃうんだもんなぁ。。。
『・・・・・・』
私も無意識の内に暗い表情になってしまう。
そんな私の頭に暖かい手が乗る。
顔を上げると、やっぱり暖かい表情の煉獄さんが微笑んでいた。
もう片方の煉獄さんの手は千ちゃんの頭に乗っている。
煉「2人ともそんな顔をするな。今生の別れではないのだぞ!それに、新しい屋敷はそこまで離れていないからな。美桜も俺が任務で不在の時は行き来すると良い!」
『・・・はい』
煉「千寿郎も、いつでも俺や美桜に会いに来てくれ!」
千「・・・はい!」
煉獄さんは本当凄いなぁ。
2人の落ち込んだ気持ちを一気に引き上げてくれた。
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あれから2日
夜の警備には行っていたものの遠出の任務は入らなかったため明日新しい屋敷に移ることになった。
とはいえ、家具など入用のものは隊から支給されるとの事で大掛かりな引越しということもなく、煉獄さんと私の服などの私物も隠の方が運んでくれるので身ひとつで移るだけらしい。
なので特に何も変わらぬままこのお家で過ごす最後の日を迎えたわけだけど、今日はどうしてもやりたいことがあった。
『お願いがあります!』
槇「断る!」
『まだ何も言ってませんが!?』
冷たく槇寿郎さんに言い放たれガーン!とショックを受ける。
槇「お前の願いは大体下らんことだ」
『ひ・・ひどい・・・』
簡単に聞いてくれるとは思ってなかったけど、まさか話すら聞いてもらえないなんて・・・
シュンと落ち込む。
槇「・・・話だけなら聞いてやる・・・」
さっさと話せ、とぶっきらぼうに言う。
『!!』
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美桜さん、どこに行ったのだろう・・・?
夕食の支度の途中でどこかに行ったきり戻ってこない・・・
今日は最後の日だからと、また美桜さんが洋食を作ってくれている。
教わりながら作ってはいたけど、この先は美桜さんがいないと分からないな。。。
しばらくすると、パタパタと戻ってくる。
『千ちゃん、ごめんね。待たせちゃって』
千「いえ。どちらに行ってたのですか?」
『うん。ちょっとね・・・』
千「?」
それから2人でご馳走を作り終え部屋に運ぶ。
『よし!これで準備できたね。千ちゃん、煉獄さんを呼んできてもらってもいい?』
千「え?わ、わかりました」
いつもなら美桜さんが呼びに行くのに・・・?
不思議に思いながら兄上を呼びに部屋を後にする。
もしかして、喧嘩でもしてしまったのだろうか。
千「兄上、食事の支度が整いました」
部屋の外から声をかけると「うむ」と返事が返ってくる。
煉「めずらしいな。千寿郎が呼びにくるとは」
兄上の反応から喧嘩ではなさそうだな・・・
千「はい・・・美桜さんは手が離せない様だったので」
煉「そうか!朝からご馳走を作ると張り切っていたからな!」
そう言いながら部屋の障子を開く。
煉千「!!」
部屋に入った兄上と僕は入り口で固まってしまった。
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『どうしたんですか?2人とも。早く入って』
入り口で固まったままの2人。
その視線の先には
槇「・・・・・」
煉「・・・父上・・・」
千「・・・父上!」
槇寿郎さんが無愛想に座っている。
煉獄さんはこれでもかと驚いた顔をし、千ちゃんは驚きに加え喜びの表情だ。
『さぁ、ご飯が冷めてしまいますよ?食べましょう!』
そう。
私がどうしてもやりたかった事。
家族揃って食卓を囲むことだった。
朝からしつこく槇寿郎さんにお願いし続け、先ほどやっと折れてくれたのだ。
もちろん、瑠火さんの位牌と写真も槇寿郎さんの横に置いた。
『やっと煉獄家の皆さんが揃いましたね』
私の我が侭を聞いてくれた槇寿郎さんは本当に優しいな。
煉獄さんと千ちゃんが楽しそうに話しているのを相槌もしないで黙ってお酒を飲んでいるけれど。
3人の様子に私も嬉しくなってくる。
『槇寿郎さん。我が侭に付き合って下さってありがとうございます』
槇「・・・お前は意外と我が強いな」
大人しそうな顔をして、と悪態をつかれる。
『・・・我が強いついでにいいですか?』
槇「は?」
『これからは出来るだけ、千ちゃんと一緒にご飯食べてあげてくださいね』
槇寿郎さんがいれば千ちゃんも淋しくないですから。
槇「・・・フン。調子に乗るな!」
『フフ。お願いしますね。小人さん?』
槇「!!その言い方をやめろ!」
煉「父上、美桜、何の話を?」
槇「!なんでもない。くだらん戯言だ」
煉「?そうですか・・・」
千「美桜さん、大丈夫ですか?」
声を荒げた槇寿郎さんに煉獄さんと千ちゃんが心配そうに話に入ってくる。
顔がそっくりな3人が並ぶの初めて見たかも。
目の保養!!幸せだなあ~。
『うん大丈夫だよ。3人がいて今すっごい幸せだよ』
煉千槇「「「っ!!!」」」
にっこり笑って言うと3人が同じ表情をする。
思ったままの言葉がつい口をついてしまった。
ドン引かれた??
『??あ、槇寿郎さん。お酒のお相手しましょうか?』
煉千槇「「「それは絶対に駄目だ(です)!!!」」」
3人のシンクロ凄い迫力!
『・・・冗談ですよう』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
食事の後片付けを終え廊下を歩いていると、部屋の前で煉獄さんが待っていた。
煉「美桜、少しいいだろうか?」
『どうかしましたか?杏寿郎さん・・っ!!?』
部屋に煉獄さんを招きいれ振り返ろうとした時
煉獄さんの手が回されて
後ろから抱きしめられていた。
煉「・・・美桜・・・ありがとう」
『・・・・・・?』
煉「父上との事は、正直俺は諦めていた」
『・・・それは』
私の我が強いから、優しい槇寿郎さんが折れてくれたんですよ。
煉「千寿郎の事もだ。孤独になってしまうのではないかと気がかりだった」
『・・・・・・』
それも私がやりたくてやった事ですよ。
煉「美桜がいてくれて、本当に良かった」
『!・・・・・』
言いたい言葉が出てこないのに、涙だけが次からあふれてくる。
私、このお家で少しは役に立てたのかな・・・
煉「・・・美桜は良く泣く子だな」
煉獄さんがフッと笑う。
腕に回されていた手が頭に置かれ優しくなでられる。
『・・・・・っごめ、なさ・・前は、こんな事、なかったんですけど・・・』
煉「・・・前は?記憶をなくす前の事か?」
『・・・あ・・・・』
何でそんな風に思ったんだろう。
口から自然に出た言葉だった。