新生活と新天地
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翌朝
目が覚め、布団からゆっくりと身体を起こす。
頭がフワフワしている・・・
昨日のお酒が残っているのかな・・・
昨日・・・
結婚を前提に、煉獄さんと恋人同士になった
よね?
酔っ払った私の都合の良い夢とかじゃないよね??
急に不安になって、立ち上がり急いで机の上を確認する。
あった。
可愛らしい、小箱がきちんと置かれている。
『夢じゃ、なかった・・・』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「俺からの贈り物だ。受け取って欲しい」
私の手の上にそっと置かれた小箱。
煉獄さんが優しく開くと、
キラリと赤く光る宝石が一つ付いた可愛い指輪だった
『これ・・・』
煉獄さんはそうだな、と手を顎に当てて少し考えて、そして
煉「結婚を前提なので、婚約指輪だな!」
パァァッと輝く程の笑顔を見せる
婚約・・・
その言葉にドキッと一々反応してしまう。
『・・・綺麗・・・でも、こんなに高価なもの、いいんでしょうか・・・』
私には勿体ない気がする・・・
煉「俺は美桜に身につけていて欲しいのだが?」
つけても良いだろうか?と聞かれる。
『・・・はい』
煉獄さんの手が私の左手を取る。
心臓の鼓動が早くなる
そして、そっと薬指に指輪を通すーーー
スカッ
煉「・・・・・・」
『・・・・・・』
指輪は私の指より一回り程大きかった
煉「すっすまん!美桜の薬指の太さが分からなかったので俺の子指に合わせて買ってしまったのだ!!美桜の指がこんなに細いとはよもやよもやだった!!」
『・・・・・・』
煉「これは忘れてくれ!また新たに買ってくるのでもう少し待って・・・!」
煉獄さんが慌てて指輪を戻そうとする手を掴んで止める。
『・・・フフッ』
煉「美桜?」
『フフフッ!あはははははっ』
煉「・・・そんなに笑わないでくれ」
『フフッ、ごめんなさい。何だか嬉しくって』
煉「?」
私の指のサイズも確認しないで慌てて準備したんだと思うと愛しさが込み上げてくる。
『・・・私、これがいいです』
煉「・・・しかし、これでは身につけられぬ」
『じゃあ、首にかけます。ネックレスの部分だけ、杏寿郎さんが今度お休みの時に一緒に買いに行きましょう?』
煉「!・・・わかった!」
次の任務が終わってから一緒に買いに行く約束をして、煉獄さんは部屋を出ようと立ち上がる。
私も部屋の入り口まで見送ろうと立ち上がり、煉獄さんの後に続く。
すると、襖の前で急に振り返った煉獄さんに包み込まれる様に抱きしめられる。
煉「・・・・・・」
『・・・・・・』
煉「・・・では、また明日。おやすみ」
名残惜しそうに優しい手つきで髪に触れ、離れていく。
『・・・・・・』
1人になった部屋でしばらく赤い顔のまま呆然と立ち尽くしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
仏壇に手を合わせながら昨日のやりとりを煉獄さんのお母さんー瑠火さんに報告をする。
私は煉獄家に来てから毎日手を合わせながら、その日起きた出来事や私の悩みをすべて瑠火さんに伝えていた。
きっと煉獄家の中で一番、瑠火さんが私の事知ってると思う。
恥ずかしいけど、杏寿郎さんとの事も全部報告した。
もし、生きていたら何て言ってくれたかな・・・?
『今日も一日、よろしくお願いします』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、心配をかけてしまった千ちゃんにも煉獄さんとの事を報告した。
あと、酔っ払って絡んだ事も謝った。
千ちゃんは笑顔で
千「兄上と美桜さんが一緒になってくれると俺も嬉しいです!!」
と喜んでくれた。
天使!天使はやっぱり存在するんだ!!
朝の鍛錬を終えた煉獄さんが顔を出す。
煉「美桜!千寿郎!おはよう!!!」
いつもより声が大きい!
朝から元気だなぁ・・・
すると隣の天使、もとい千ちゃんがこっそり
千「昨日の兄上とは別人ですよ。美桜さんとの事がよっぽど嬉しいのだと思います」
と囁くので朝から顔が真っ赤になる。
煉「!?どうした美桜!顔が赤いぞ!よもや体調が悪いのか??」
煉獄さんが近づいてきて私の両頬に手を当てる。
ちょ、千ちゃん見てるから!!
『!!だ、大丈夫です!火のそばにいたから顔が熱くって・・・』
煉獄さんの手をやんわり外し、手で顔を煽ぎながら誤魔化す。
煉「そうか・・・。俺は任務が入ったので夕刻には家を出る。その前に父上に正式に柱になれた事を報告してくる!」
煉獄さん、早速任務かぁ・・・
槇寿郎さんにも報告して・・・・・・
て、
『槇寿郎さんに報告してなかったんですか?』
あれ、正式に任命されたの一昨日だよね??
煉「・・・うむ。昨日までは俺が報告どころではなかったからな!」
はっ!
それって
『めちゃくちゃ私のせいじゃないですか・・・』
真っ青になってごめんなさいと謝る。
煉「いや、問題ない!少し心の準備も欲しかったのだ。美桜との事も落ち着いたし、これで胸をはって報告ができる!」
そう言って優しく笑ってくれた。
午後、煉獄さんは改めて柱になった事を槇寿郎さんに報告をしに行った。
千ちゃんも緊張しているみたい。
千「兄上が柱になって、俺も将来炎柱になれれば父上もきっと喜んでくれますよね」
これが前からの千ちゃんの口癖だった。
私が洗濯物を干している時、報告を終えた煉獄さんが千寿郎くんへ話している声が聞こえてきた。
ー父上は喜んでくれなかったー
ーどうでもいいとのことだー
・・・そうなんだ。
煉獄さんが努力して、柱になっても槇寿郎さんの気力は戻らなかったんだ・・・
それ程までに、瑠火さんを失った事が大きいんだなぁ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『失礼します。お茶を淹れたのでお持ちしました。』
布団に横になり、背を向けている槇寿郎さんの元にお茶とお茶菓子を置く。
槇「・・・・・・」
『・・・ここに、置いておきますね。冷めない内に召し上がってください』
そう言って部屋を後にしようとする。
槇「・・・おい」
『・・・?はい。』
槇「そこにある羽織、目障りだ。俺の目の届かない場所に持っていけ」
そこにある羽織ーー
煉“父上の部屋に飾られている羽織は代々炎柱のみが着ることを許されている由緒正しい羽織だ!”
いつか煉獄さんが教えてくれた。
『・・・これは、槇寿郎さんの大切なものですよね?』
槇「俺にはどうでも良い物だ。柱も、炎の呼吸も俺には関係がない!」
早くそれを持って出て行け!
と怒鳴られる。
『・・・はい。』
私は炎柱の羽織をそっと手に取る。
ーあれ?
これ・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は一度自分の部屋へ戻る。
そして、箪笥の中から一着の羽織を取り出す。
・・・やっぱり、同じだ・・・
いつかの、小人さんに掛けてもらった羽織と、炎柱の羽織から同じ匂いがした。
・・・私にかけてくれた羽織、誰のか聞いても誰も名乗り出てくれなかった・・・
小人さんの正体がやっとわかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そろそろ任務に出る時間か。
父上への報告を終えた俺は千寿郎へ稽古をつけていた。
煉「千寿郎!俺はそろそろ任務へ向かう!」
千「はっはい!ぎりぎりまでご指導ありがとうございました!」
俺はうむ!と言って、いつもの羽織を纏い任務に赴こうとする。
『れん・・・杏寿郎さん!!』
美桜が小走りで駆け寄ってくる。
煉「美桜!俺はそろそろ任務へ向かう!次に帰ってきたら約束通り町へ行こう!」
『は、はい・・・。あの、これを』
そう言って、美桜が手渡してきた物は
煉「・・・これは、父上の・・・」
『・・・槇寿郎さんには、もう必要のない物だそうです』
煉「・・・・・・」
父上は柱などどうでもいいと言っていた。
父上の本心は分からぬが、自分に都合の良い解釈をしてしまいそうになる。
『・・・改めて、炎柱ご就任おめでとうございます』
どうか無事に帰ってきてください、と羽織を差し出される。
煉「・・・うむ!」
美桜から羽織を受け取り、袖を通す。
煉「では、行ってくる!」
風にはためく羽織からは懐かしい匂いがした。
それだけで、心強く感じる。
柱として、煉獄家の長男として恥じない生き方をしようと再度心に誓った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『失礼します』
夕飯を持って槇寿郎さんの部屋へ入る。
珍しく寝床から出て縁側に座っていた。
『今日は、こちらに置きますね』
槇寿郎さんの隣に夕飯を置き、私はその隣に正座をする。
槇「・・・何の用だ」
『・・先程、煉獄さんは柱になってからの初任務に向われました。』
槇「・・・俺には関係ない」
『そうですか』
槇「・・・まだ何かあるのか?」
正座したまま動かない私を横目で睨む。
『この任務から戻ると、煉獄さん・・杏寿郎さんは新しいお屋敷に移られます。・・・私も、着いていくことに致しました。』
槇「・・・・・・」
『これまで、私をこのお屋敷に置いてくださってありがとうございました』
私は深く頭を下げる。
『・・・結構、急な話でご迷惑をおかけします・・・』
今はお家の家事を半分以上私がやっている。
その分千ちゃんは鍛錬に時間を使っていたけれど、私がこの家を出たらまた千ちゃんは全ての家事を一人でやらなければならない。
私はそれが気がかりだった。
槇「くだらん」
『・・・えっ?』
槇「元々、杏寿郎がお前を拾ってきたのだ。俺たちがお前の面倒を見る筋合いはない。杏寿郎が最後まで面倒を見るのが筋だ」
『・・・私、犬みたいな扱いですね・・・』
槇「ふん。似たようなものだろう」
『・・・・』
槇「話は終わりだ、飯が冷める。とっとと出て行け。」
『・・・はい。』
私は立ち上がり、槇寿郎さんの肩に羽織をかける。
槇「!何を・・・」
『今日は風が少し冷たいので、風邪をひいてしまいますよ。』
小人さん、と言って部屋を出て行く。
槇「!・・・・・・フン」
障子が閉まる前に槇寿郎さんのため息が聞こえた。
ほんの少しだけ、柔らかい声に聞こえた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉「俺は炎柱!煉獄杏寿郎だ!!今からお前の頸を斬る!!!」
鬼「なっ!?柱!!うわあぁぁあっ!」
鮮やかな炎が夜の闇に輝くー
煉「宇髄!これで終わりか!?」
宇「・・・あぁ。」
あれから立て続けに3つの指令が入り、煉獄と行動を共にしているが・・・
あいつ、これからずっと鬼に対してあの口上を述べる気か・・・
柱になった事と美桜との関係が落ち着いた事が嬉しいのはわかる。
が、
宇「うるっせええええええんだよおお!!!!」
山の中で一晩中、二人の声がこだましていたという・・・
目が覚め、布団からゆっくりと身体を起こす。
頭がフワフワしている・・・
昨日のお酒が残っているのかな・・・
昨日・・・
結婚を前提に、煉獄さんと恋人同士になった
よね?
酔っ払った私の都合の良い夢とかじゃないよね??
急に不安になって、立ち上がり急いで机の上を確認する。
あった。
可愛らしい、小箱がきちんと置かれている。
『夢じゃ、なかった・・・』
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「俺からの贈り物だ。受け取って欲しい」
私の手の上にそっと置かれた小箱。
煉獄さんが優しく開くと、
キラリと赤く光る宝石が一つ付いた可愛い指輪だった
『これ・・・』
煉獄さんはそうだな、と手を顎に当てて少し考えて、そして
煉「結婚を前提なので、婚約指輪だな!」
パァァッと輝く程の笑顔を見せる
婚約・・・
その言葉にドキッと一々反応してしまう。
『・・・綺麗・・・でも、こんなに高価なもの、いいんでしょうか・・・』
私には勿体ない気がする・・・
煉「俺は美桜に身につけていて欲しいのだが?」
つけても良いだろうか?と聞かれる。
『・・・はい』
煉獄さんの手が私の左手を取る。
心臓の鼓動が早くなる
そして、そっと薬指に指輪を通すーーー
スカッ
煉「・・・・・・」
『・・・・・・』
指輪は私の指より一回り程大きかった
煉「すっすまん!美桜の薬指の太さが分からなかったので俺の子指に合わせて買ってしまったのだ!!美桜の指がこんなに細いとはよもやよもやだった!!」
『・・・・・・』
煉「これは忘れてくれ!また新たに買ってくるのでもう少し待って・・・!」
煉獄さんが慌てて指輪を戻そうとする手を掴んで止める。
『・・・フフッ』
煉「美桜?」
『フフフッ!あはははははっ』
煉「・・・そんなに笑わないでくれ」
『フフッ、ごめんなさい。何だか嬉しくって』
煉「?」
私の指のサイズも確認しないで慌てて準備したんだと思うと愛しさが込み上げてくる。
『・・・私、これがいいです』
煉「・・・しかし、これでは身につけられぬ」
『じゃあ、首にかけます。ネックレスの部分だけ、杏寿郎さんが今度お休みの時に一緒に買いに行きましょう?』
煉「!・・・わかった!」
次の任務が終わってから一緒に買いに行く約束をして、煉獄さんは部屋を出ようと立ち上がる。
私も部屋の入り口まで見送ろうと立ち上がり、煉獄さんの後に続く。
すると、襖の前で急に振り返った煉獄さんに包み込まれる様に抱きしめられる。
煉「・・・・・・」
『・・・・・・』
煉「・・・では、また明日。おやすみ」
名残惜しそうに優しい手つきで髪に触れ、離れていく。
『・・・・・・』
1人になった部屋でしばらく赤い顔のまま呆然と立ち尽くしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
仏壇に手を合わせながら昨日のやりとりを煉獄さんのお母さんー瑠火さんに報告をする。
私は煉獄家に来てから毎日手を合わせながら、その日起きた出来事や私の悩みをすべて瑠火さんに伝えていた。
きっと煉獄家の中で一番、瑠火さんが私の事知ってると思う。
恥ずかしいけど、杏寿郎さんとの事も全部報告した。
もし、生きていたら何て言ってくれたかな・・・?
『今日も一日、よろしくお願いします』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、心配をかけてしまった千ちゃんにも煉獄さんとの事を報告した。
あと、酔っ払って絡んだ事も謝った。
千ちゃんは笑顔で
千「兄上と美桜さんが一緒になってくれると俺も嬉しいです!!」
と喜んでくれた。
天使!天使はやっぱり存在するんだ!!
朝の鍛錬を終えた煉獄さんが顔を出す。
煉「美桜!千寿郎!おはよう!!!」
いつもより声が大きい!
朝から元気だなぁ・・・
すると隣の天使、もとい千ちゃんがこっそり
千「昨日の兄上とは別人ですよ。美桜さんとの事がよっぽど嬉しいのだと思います」
と囁くので朝から顔が真っ赤になる。
煉「!?どうした美桜!顔が赤いぞ!よもや体調が悪いのか??」
煉獄さんが近づいてきて私の両頬に手を当てる。
ちょ、千ちゃん見てるから!!
『!!だ、大丈夫です!火のそばにいたから顔が熱くって・・・』
煉獄さんの手をやんわり外し、手で顔を煽ぎながら誤魔化す。
煉「そうか・・・。俺は任務が入ったので夕刻には家を出る。その前に父上に正式に柱になれた事を報告してくる!」
煉獄さん、早速任務かぁ・・・
槇寿郎さんにも報告して・・・・・・
て、
『槇寿郎さんに報告してなかったんですか?』
あれ、正式に任命されたの一昨日だよね??
煉「・・・うむ。昨日までは俺が報告どころではなかったからな!」
はっ!
それって
『めちゃくちゃ私のせいじゃないですか・・・』
真っ青になってごめんなさいと謝る。
煉「いや、問題ない!少し心の準備も欲しかったのだ。美桜との事も落ち着いたし、これで胸をはって報告ができる!」
そう言って優しく笑ってくれた。
午後、煉獄さんは改めて柱になった事を槇寿郎さんに報告をしに行った。
千ちゃんも緊張しているみたい。
千「兄上が柱になって、俺も将来炎柱になれれば父上もきっと喜んでくれますよね」
これが前からの千ちゃんの口癖だった。
私が洗濯物を干している時、報告を終えた煉獄さんが千寿郎くんへ話している声が聞こえてきた。
ー父上は喜んでくれなかったー
ーどうでもいいとのことだー
・・・そうなんだ。
煉獄さんが努力して、柱になっても槇寿郎さんの気力は戻らなかったんだ・・・
それ程までに、瑠火さんを失った事が大きいんだなぁ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『失礼します。お茶を淹れたのでお持ちしました。』
布団に横になり、背を向けている槇寿郎さんの元にお茶とお茶菓子を置く。
槇「・・・・・・」
『・・・ここに、置いておきますね。冷めない内に召し上がってください』
そう言って部屋を後にしようとする。
槇「・・・おい」
『・・・?はい。』
槇「そこにある羽織、目障りだ。俺の目の届かない場所に持っていけ」
そこにある羽織ーー
煉“父上の部屋に飾られている羽織は代々炎柱のみが着ることを許されている由緒正しい羽織だ!”
いつか煉獄さんが教えてくれた。
『・・・これは、槇寿郎さんの大切なものですよね?』
槇「俺にはどうでも良い物だ。柱も、炎の呼吸も俺には関係がない!」
早くそれを持って出て行け!
と怒鳴られる。
『・・・はい。』
私は炎柱の羽織をそっと手に取る。
ーあれ?
これ・・・
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私は一度自分の部屋へ戻る。
そして、箪笥の中から一着の羽織を取り出す。
・・・やっぱり、同じだ・・・
いつかの、小人さんに掛けてもらった羽織と、炎柱の羽織から同じ匂いがした。
・・・私にかけてくれた羽織、誰のか聞いても誰も名乗り出てくれなかった・・・
小人さんの正体がやっとわかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そろそろ任務に出る時間か。
父上への報告を終えた俺は千寿郎へ稽古をつけていた。
煉「千寿郎!俺はそろそろ任務へ向かう!」
千「はっはい!ぎりぎりまでご指導ありがとうございました!」
俺はうむ!と言って、いつもの羽織を纏い任務に赴こうとする。
『れん・・・杏寿郎さん!!』
美桜が小走りで駆け寄ってくる。
煉「美桜!俺はそろそろ任務へ向かう!次に帰ってきたら約束通り町へ行こう!」
『は、はい・・・。あの、これを』
そう言って、美桜が手渡してきた物は
煉「・・・これは、父上の・・・」
『・・・槇寿郎さんには、もう必要のない物だそうです』
煉「・・・・・・」
父上は柱などどうでもいいと言っていた。
父上の本心は分からぬが、自分に都合の良い解釈をしてしまいそうになる。
『・・・改めて、炎柱ご就任おめでとうございます』
どうか無事に帰ってきてください、と羽織を差し出される。
煉「・・・うむ!」
美桜から羽織を受け取り、袖を通す。
煉「では、行ってくる!」
風にはためく羽織からは懐かしい匂いがした。
それだけで、心強く感じる。
柱として、煉獄家の長男として恥じない生き方をしようと再度心に誓った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『失礼します』
夕飯を持って槇寿郎さんの部屋へ入る。
珍しく寝床から出て縁側に座っていた。
『今日は、こちらに置きますね』
槇寿郎さんの隣に夕飯を置き、私はその隣に正座をする。
槇「・・・何の用だ」
『・・先程、煉獄さんは柱になってからの初任務に向われました。』
槇「・・・俺には関係ない」
『そうですか』
槇「・・・まだ何かあるのか?」
正座したまま動かない私を横目で睨む。
『この任務から戻ると、煉獄さん・・杏寿郎さんは新しいお屋敷に移られます。・・・私も、着いていくことに致しました。』
槇「・・・・・・」
『これまで、私をこのお屋敷に置いてくださってありがとうございました』
私は深く頭を下げる。
『・・・結構、急な話でご迷惑をおかけします・・・』
今はお家の家事を半分以上私がやっている。
その分千ちゃんは鍛錬に時間を使っていたけれど、私がこの家を出たらまた千ちゃんは全ての家事を一人でやらなければならない。
私はそれが気がかりだった。
槇「くだらん」
『・・・えっ?』
槇「元々、杏寿郎がお前を拾ってきたのだ。俺たちがお前の面倒を見る筋合いはない。杏寿郎が最後まで面倒を見るのが筋だ」
『・・・私、犬みたいな扱いですね・・・』
槇「ふん。似たようなものだろう」
『・・・・』
槇「話は終わりだ、飯が冷める。とっとと出て行け。」
『・・・はい。』
私は立ち上がり、槇寿郎さんの肩に羽織をかける。
槇「!何を・・・」
『今日は風が少し冷たいので、風邪をひいてしまいますよ。』
小人さん、と言って部屋を出て行く。
槇「!・・・・・・フン」
障子が閉まる前に槇寿郎さんのため息が聞こえた。
ほんの少しだけ、柔らかい声に聞こえた。
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煉「俺は炎柱!煉獄杏寿郎だ!!今からお前の頸を斬る!!!」
鬼「なっ!?柱!!うわあぁぁあっ!」
鮮やかな炎が夜の闇に輝くー
煉「宇髄!これで終わりか!?」
宇「・・・あぁ。」
あれから立て続けに3つの指令が入り、煉獄と行動を共にしているが・・・
あいつ、これからずっと鬼に対してあの口上を述べる気か・・・
柱になった事と美桜との関係が落ち着いた事が嬉しいのはわかる。
が、
宇「うるっせええええええんだよおお!!!!」
山の中で一晩中、二人の声がこだましていたという・・・