新生活と新天地
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ー俺は近々新しい屋敷へ移るー
ー俺に着いてきて欲しいー
ー俺と夫婦になって欲しいー
千「美桜さん!」
『!!・・・千ちゃん・・・何?』
千「鍋が吹きこぼれます!」
『えっ!?あぁっっ!!!』
慌てて鍋を火から離そうとする
千「危ないです!火傷してしまいますよ!!」
千ちゃんが素早く布巾で取手を押さえて火から外してくれる。
前もこんな事あったなぁ・・・
久し振りの失敗に落ち込む
『千ちゃん、ごめん・・・』
千「・・・美桜さん。何かあったんですか?」
『えっ、何か?』
千「・・・兄上と」
『!!』
蜜「美桜ちゃん、千寿郎くん!昨日は泊めてくれてありがとう!!朝ごはんの準備手伝うわ!!」
蜜璃ちゃんがガラッと扉を開けて入ってくる。
蜜「・・・美桜ちゃん?・・煉獄さんと何かあったの??」
『っ!!!!』
2人が心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
『・・・千ちゃん、蜜璃ちゃん・・・私、』
2人は前のめりで聞いてくる
『私・・・煉獄さんに嫌われたかもしれないっ』
千蜜「「・・・はぁっ!?」」
ワァッと泣き出す私を2人が慌てて慰めてくれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
千「兄上、千寿郎です。朝食をお持ちしました。・・・入ってもよろしいですか?」
煉「・・・うむ」
障子を開けると、兄上が部屋の真ん中で座禅を組んでいた。
毎朝、必ず庭先で素振りをしている兄上が今日は一歩も部屋から出ていない・・・
兄上の前に朝食をおき、少し迷ったが思い切って口を開く。
千「・・・兄上、昨日美桜さんと何をお話になったのですか?」
煉「・・・美桜には、俺の想いを告げた」
千「・・・」
煉「・・・美桜は、どうしている?何か言っていたか?」
千「・・・美桜さんは、兄上に嫌われてしまったと・・・泣いていました」
煉「!?・・・何故・・?」
兄上は驚いた顔をする。
千「・・・昨日、何があったのですか?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺と夫婦になってほしい
・・・え・・・?
待って
煉獄さん、柱になったらこの屋敷を出て行くの・・・
私に、着いてきて欲しいって・・・
め、夫婦に・・・?誰と、誰が・・・!??
煉獄さんの言葉を一つずつ整理していく。
煉獄さんと・・夫婦?
それってつまり・・・
『Σはっ!えぇえっ!!?』
待って、何で急に!?
え
煉獄さん、私の事、す、好きだったの・・?
いつから?
私のどこを?
私・・・?
私を?
煉「美桜・・・?」
煉獄さんが近づいてくる。
待って
私・・・
煉「美桜、これを・・・」
と、私の手を取る。
『っ!!』
煉「!・・・・・」
私は、煉獄さんの手を振り解いていた
煉「・・・美桜・・・」
『あっ・・・。〜〜〜〜っごめんなさいっ!!』
手を振り解かれて固まってしまった煉獄さんを残して、私は部屋を飛び出してしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
千「・・・・・・」
煉「俺は少なからず美桜に好意を持たれていると思っていたのだが、とんだ自惚れだったようだな・・・」
美桜を困らせてしまったと淋しそうに言う。
千「兄上・・・」
そんな筈はない。
俺から見た美桜さんは間違いなく兄上の事を好いていた。
何か、想いがすれ違っている・・・
そんな気がした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
蜜「美桜ちゃん・・・」
私の部屋で、昨日の一連のやりとりを報告し終えると蜜璃ちゃんは困ったように眉を下げる。
そして泣き止まない私の背をそっとさすってくれる。
『蜜璃ちゃん・・ごめん、ね。』
蜜「謝らなくていいの。・・・ねぇ、美桜ちゃん。・・・煉獄さんの事、好きじゃないの?」
『・・・・・・っ』
蜜璃ちゃんの言葉にまたブワッと涙が溢れる
『・・・・好き・・・』
蜜「美桜ちゃん。だったらどうして・・・」
蜜璃ちゃん、、私も良く分からないの
どうして素直に喜べないのか
『・・・煉獄さんを傷つけちゃった・・・』
蜜「・・・・・・」
宇「派手に泣いたかと思ったら、またくだらねぇ事で悩んでんだな」
蜜「むっ!くだらないとはなんですか!!女の子にとっては一大事なんですよっ!!」
『・・・・・』
宇「あっそう。てか、何にだか知らんがお前がグジグジ悩んでる事煉獄は知らねェだろ。多分お前に嫌われたと思ってるぜ」
『・・・っ!?』
その言葉に私はバッと顔を上げる
私が、煉獄さんを嫌う!?
そんな事ありえない・・・
煉獄さんが私に愛想つかすならまだしも・・
・・・ていうか、
『何で宇髄さんがいるの!?』
宇「おいおい、まさか今気付いたのか?」
いや、最初いなかったよね?
蜜璃ちゃんも吃驚してるし、大体どこから入って来たの?
第一ここ、私の部屋・・・
宇「・・・俺は“元”忍だからな!」
ドヤァ!!
じゃないよ!!!
『いや忍は忍でも常識は持ち合わせてくださいよ・・』
宇「しけた事いうなって。そんな事より、元気ないんだろ?俺様が慰めてやろうか」
『え・・・?』
宇髄さんの手が私の顎にかけられる。
宇「大人の嗜みってやつを教えてやるよ」
耳元で囁かれた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
食事を終え、お茶を飲んでいる。
いつもの半分の量も食べなかった事で千寿郎にひどく心配をされてしまった。
今まで、どれだけ怪我をしようが病に倒れようが食欲を落とす事などなかったからな。
・・・美桜に拒絶されたことが相当響いているらしいな
これから柱として任務にあたるのに、このままではいかんな・・・
煉「千寿郎、俺はこれから鍛錬をしてくる。」
千「は・・はい。・・・兄上、無理はしないでください」
煉「無理などではないぞ!柱たるもの、どのような時でも心を強く持たねばならんからな!!」
きっと精進が足りんのだ。
立ち上がって準備を始めようとした時、廊下を物凄い勢いで走ってくる足音が響いた。
そして俺の部屋の障子が思い切り開いた。
蜜「煉獄さんっ!!!」
煉「甘露寺、どうした急いで。任務か?」
蜜「ちがっ、ちがいますっ!でも大変です・・美桜ちゃんが・・・」
煉「!!・・・どうした・・?」
蜜「音柱様が来て、美桜ちゃんに・・・」
宇髄が?
ピクッと反応する
蜜「美桜ちゃんに、お酒を飲ませて・・」
煉千「「!!!!!!!」」
よもや!!!
煉「それはいかん!千寿郎!!」
千「は、はい!!」
2人で血相を変えて部屋を飛び出した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
煉「美桜!宇髄!開けるぞ!!」
言ったと同時にスパーン!と開ける。
そこには、やはり
『もうっ!宇髄さんなんれお酒とっちゃうんれすか〜!!』
宇「やかましいっ!!このクソ酔っ払いがぁ!」
とんでもない美桜がいた・・・
煉「・・・何をしているんだ」
宇「お、よぉ煉獄。いや、コイツがあまりにもしけた面してたから軽く飲ませてやったら豹変しやがって・・・」
千「・・・とっとりあえず、水を持ってきます」
千寿郎が慌てて駆けていく。
『宇髄さん。さっさとその手に持っているお酒をこっちに寄越しらさい・・・まらまら、呑みたりないんれすかりゃ』
宇「いやもう呂律まわってねぇし、大体一口で酔いすぎだろ!」
煉「・・・・」
蜜「れっ煉獄さん、すみません・・一応止めたんですけど・・・」
『む〜っ!!・・・じゃあ、さっき言ってた大人の嗜みってやつを教えてくらしゃいよ』
煉「!!」
宇「いや、だからそれが酒・・・」
『忍に二言はなしれすよ!わらしが子どもらと思ってからかってるんれしょ〜』
宇「おいおい、落ち着けよ」
宇髄に近づいた美桜は足をもつれさせ、宇髄に飛び込むように転ぶ。
煉「!」
宇「ちょ、お前動くなよ。座っとけ!!わかった。からかった俺が悪かった!」
宇髄の膝の上に座らされた美桜はなおも
絡んでいく
『むむむ。やっぱり揶揄ってたんですね。悪い子にはお仕置きれす!』
宇髄の頬をペチペチ叩く。
宇髄も大人しくされるがままになっている・・・
以前に比べて美桜の酒癖が悪くなっている気がする・・・
しかし、振られたとは言え好きな女が違う男に絡んでいるのはどうにも我慢がならん!
宇「(煉獄、黙って見てねぇで助けろ!)おい、
美桜いいかげん離れ・・・」
『・・・宇髄さんってお肌がスベスベなんれすねぇ』
ペチペチしていた手を止め、今度は宇髄の頬を撫でる。
そして顔が近いぞ!!
目も酒のせいか潤んでいる・・・
宇 (おい煉獄、まさかこの状況見て嫉妬してるんじゃねぇよな・・・)
無理矢理にでも引き剥がそうと思った所に千寿郎が水を持って入ってくる。
千「美桜さん!お水を持ってきたのでとりあえず飲んでください」
宇髄の膝の上にいた美桜は千寿郎の姿を見るなり
『千ちゃんだ〜!お水ありがと〜♡』
急に上機嫌になり千寿郎に抱きついた。
千「わわっ!美桜さんっ!!」
千寿郎は赤面しながらも美桜に水を飲ませる。
煉「・・・・・・」
宇 (おい、弟にまで嫉妬してんのかコイツ・・・重症じゃねーか・・・)
美桜は千寿郎に勧められるがまま大人しく水を飲み干す。
『ありがと、千ちゃん♡』
千「いっいえ。美桜さん、お酒は身体に良くないのでこれからは控えてくださいね」
『・・・っ!千ちゃん・・そうだよね。私悪い子だね・・・』
今度は泣き上戸だ・・
千「あっそんな泣かないでください。美桜さんが辛いお気持ちなのは分かります。でも、お酒では解決しないと思いますよ」
『・・うっ!千ちゃん〜〜』
再び千寿郎に抱きつく。
宇髄から標的が移ったのは良かったがそろそろ眠らせないとな・・
美桜に近づいて身体を支えようとした時
『わらし、千ちゃんのお嫁さんになる!!』
煉千蜜宇「「「「!!!!????」」」」
美桜の一言に身体が凍りついた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ああ、兄上が固まってしまった・・・
美桜さん、このタイミングで言う言葉じゃないですよ。
『千ちゃん、ダメ??』
上目遣いでコトンと首を傾げる美桜さん。
可愛らしい仕草に顔が赤くなってしまう。
その様子を見て
『ふふ、可愛い♡』
頬ずりをされる
兄上の顔が見れない・・・
蜜「美桜ちゃん、一回横になった方がいいと思うの!私お布団敷くね!!」
蜜璃さんが布団を準備してくれる。
『蜜璃ちゃん・・・』
蜜「なぁに?」
『わたし、蜜璃ちゃんをお嫁さんにしたい』
蜜「えぇっ!?」
『千ちゃんがわたしの旦那さんで、蜜璃ちゃんがわたしのお嫁さん。皆で仲良く暮らそうよ♡』
ニッコリ笑って言ってるけど支離滅裂です・・・
蜜「・・・煉獄さん!ごめんなさい。ちょっとだけそれもいいかもって思っちゃいました!!ホントすみません!!!」
煉「・・・何故、千寿郎と甘露寺は選ばれて俺は駄目なのだろうか・・・」
宇「いや、酔っ払いの戯言だぞ。魔に受けるな」
美桜さん、どんどん饒舌になってるな・・・
・・・・・・
千「・・・美桜さん」
『なぁに?』
千「兄上は、どうして駄目なのですか?」
煉「!!」
それまでニコニコしていた美桜さんが、兄上の話をした途端、表情を落とした。
『・・・だって・・・』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
さっきまでヘラヘラ酔っ払っていた美桜の様子が変わった。
まぁ、素面じゃ言えねぇ事もあるかもしれねぇ。この機会に吐かせちまうってのもアリだな。
千坊、中々冷静に周りが見えるじゃねぇか。
『・・・だって、杏寿郎さんが好きって言ってくれてるのは今の私でしょ・・?』
千「今の・・?」
『記憶がない今の私・・・本当の私は、違う人間かもしれないのに』
煉「・・・!」
性格も、話し方も、雰囲気も変わるかもしれない。。。
『もし、この先全部記憶が戻って、本当の私を知った時・・杏寿郎さんが好きでいてくれる私なのかが分からない・・・』
蜜「美桜ちゃん・・・」
『本当は凄く嬉しかったのに・・私が傷つきたくないから、逃げたの・・・』
そう言って静かに涙を流す。
成る程なぁ。
隣で固まったままの煉獄の背中を思い切り叩いてやる。
煉「っ!!」
宇「今の話を踏まえた上でもっぺん話してみろよ。お前はせっかちなんだよ。」
煉「・・・・・」
千「美桜さん・・・」
蜜「美桜ちゃん・・・」
2人がすっかり黙りこくった美桜の顔をそっと伺う。
千蜜「「あ・・・」」
スヤァッ
千蜜「「・・・寝た・・」」
宇「・・・やっと静かになったな」
眠った美桜を布団に寝かせたところで
煉「ところで宇髄、何故美桜の部屋にいたのだ?」
おいまたピリついてんな。
宇「お前の柱任命祝いに酒を持ってきたんだよ。まぁ、たまたま美桜たちの話が耳に入って流れでこうなったけど、俺の酒のお陰で本音が聞けたんだから良しとしろ!」
煉「むぅ!!」
宇「あぁ、あと次の任務は俺とお前の合同だ。それまでにこの件は解決しとけよ」
じゃあな、と言って俺は部屋を後にする。
どうなる事かと思ったが中々面白いもんが見れたわ。
次に会う時どうなってるか楽しみだな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇髄が帰り、甘露寺も任務に行った。
千寿郎は洗濯に行っている。
俺は1人、気持ちよさそうに眠る美桜の側にいた。
ーお前はせっかちなんだよー
確かに、答えを急ぎすぎていたな・・・
美桜の記憶が戻る前にー俺の前からいなくなってしまう前に、俺のものにしたかったのかもしれない・・・
煉「美桜・・・」
『うぅ・・・ん』
煉「!!美桜。」
美桜が目を覚ました。
『・・・杏寿郎さん・・・』
俺の姿を確認して少しバツの悪そうな顔をする。
『・・・ごめんなさい。私・・・うぅっ!・・頭ガンガンする・・・』
身体を起こしフラつく所を支える。
煉「・・・とりあえず水を飲みなさい」
座り直して水を飲ませる。
煉「・・・落ち着いたか?」
『はい・・・。すみません。ご迷惑をおかけして・・・』
煉「君は酒は飲まない方がいいな。何より未成年だろう」
『・・はい。ごめんなさい・・・』
煉「・・・ちなみに、酔っていた間の事は覚えているか?」
『・・・・・・』
美桜は気まずそうに目を逸らす。
何と分かりやすい反応だろうか。
煉「美桜・・・昨晩は君の気持ちも考えず、俺の気持ちを一方的に押しつけてしまい申し訳なかった!」
『・・・』
煉「俺は少し焦っていたようだ」
『・・焦る?』
何に?といった表情を見せる。
煉「美桜が不安な様に、俺も美桜の記憶が戻ったら俺への気持ちも無かったことになってしまうのではないかと不安になってしまった。」
『・・・そんな事は』
ない。と言いたいのに言い切れない。
そうやっていつも苦しんでいたのだな。
煉「美桜の記憶が戻った時、もう一度気持ちを伝えさせてくれ。その時、お互い今の気持ちのままであったら・・・」
その時は、俺と夫婦になって欲しい
『・・・いいんですか?』
煉「ん?」
『だって、いつ記憶が戻るかわからないんですよ・・・?』
煉「・・・それまで、美桜が俺の側にいてくれるならな」
『!』
美桜の手を優しく取る。
今度は振り解かれない
煉「結婚を前提として、俺と恋人同士になってほしいのだが?」
それでは駄目だろうか?
耳元で囁くと美桜は身体を震わせる。
目に涙を溜めて、これでもかという程顔を赤く染めている。
本当に愛おしいな
『わ・・・私で良ければ、喜んでっ』
そこで大粒の涙を流す。
良かった
受け入れられた事がこんなにも嬉しいものだとは思わなかった。
煉「ああ、そうだ」
俺は懐から小箱を取り出し、美桜の手にそっと乗せる。
『・・・?』
煉「俺からの贈り物だ。受け取って欲しい」
小箱を開くと、美桜の目からまた一つ涙が零れた
ー俺に着いてきて欲しいー
ー俺と夫婦になって欲しいー
千「美桜さん!」
『!!・・・千ちゃん・・・何?』
千「鍋が吹きこぼれます!」
『えっ!?あぁっっ!!!』
慌てて鍋を火から離そうとする
千「危ないです!火傷してしまいますよ!!」
千ちゃんが素早く布巾で取手を押さえて火から外してくれる。
前もこんな事あったなぁ・・・
久し振りの失敗に落ち込む
『千ちゃん、ごめん・・・』
千「・・・美桜さん。何かあったんですか?」
『えっ、何か?』
千「・・・兄上と」
『!!』
蜜「美桜ちゃん、千寿郎くん!昨日は泊めてくれてありがとう!!朝ごはんの準備手伝うわ!!」
蜜璃ちゃんがガラッと扉を開けて入ってくる。
蜜「・・・美桜ちゃん?・・煉獄さんと何かあったの??」
『っ!!!!』
2人が心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
『・・・千ちゃん、蜜璃ちゃん・・・私、』
2人は前のめりで聞いてくる
『私・・・煉獄さんに嫌われたかもしれないっ』
千蜜「「・・・はぁっ!?」」
ワァッと泣き出す私を2人が慌てて慰めてくれた。
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千「兄上、千寿郎です。朝食をお持ちしました。・・・入ってもよろしいですか?」
煉「・・・うむ」
障子を開けると、兄上が部屋の真ん中で座禅を組んでいた。
毎朝、必ず庭先で素振りをしている兄上が今日は一歩も部屋から出ていない・・・
兄上の前に朝食をおき、少し迷ったが思い切って口を開く。
千「・・・兄上、昨日美桜さんと何をお話になったのですか?」
煉「・・・美桜には、俺の想いを告げた」
千「・・・」
煉「・・・美桜は、どうしている?何か言っていたか?」
千「・・・美桜さんは、兄上に嫌われてしまったと・・・泣いていました」
煉「!?・・・何故・・?」
兄上は驚いた顔をする。
千「・・・昨日、何があったのですか?」
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俺と夫婦になってほしい
・・・え・・・?
待って
煉獄さん、柱になったらこの屋敷を出て行くの・・・
私に、着いてきて欲しいって・・・
め、夫婦に・・・?誰と、誰が・・・!??
煉獄さんの言葉を一つずつ整理していく。
煉獄さんと・・夫婦?
それってつまり・・・
『Σはっ!えぇえっ!!?』
待って、何で急に!?
え
煉獄さん、私の事、す、好きだったの・・?
いつから?
私のどこを?
私・・・?
私を?
煉「美桜・・・?」
煉獄さんが近づいてくる。
待って
私・・・
煉「美桜、これを・・・」
と、私の手を取る。
『っ!!』
煉「!・・・・・」
私は、煉獄さんの手を振り解いていた
煉「・・・美桜・・・」
『あっ・・・。〜〜〜〜っごめんなさいっ!!』
手を振り解かれて固まってしまった煉獄さんを残して、私は部屋を飛び出してしまった。
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千「・・・・・・」
煉「俺は少なからず美桜に好意を持たれていると思っていたのだが、とんだ自惚れだったようだな・・・」
美桜を困らせてしまったと淋しそうに言う。
千「兄上・・・」
そんな筈はない。
俺から見た美桜さんは間違いなく兄上の事を好いていた。
何か、想いがすれ違っている・・・
そんな気がした。
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蜜「美桜ちゃん・・・」
私の部屋で、昨日の一連のやりとりを報告し終えると蜜璃ちゃんは困ったように眉を下げる。
そして泣き止まない私の背をそっとさすってくれる。
『蜜璃ちゃん・・ごめん、ね。』
蜜「謝らなくていいの。・・・ねぇ、美桜ちゃん。・・・煉獄さんの事、好きじゃないの?」
『・・・・・・っ』
蜜璃ちゃんの言葉にまたブワッと涙が溢れる
『・・・・好き・・・』
蜜「美桜ちゃん。だったらどうして・・・」
蜜璃ちゃん、、私も良く分からないの
どうして素直に喜べないのか
『・・・煉獄さんを傷つけちゃった・・・』
蜜「・・・・・・」
宇「派手に泣いたかと思ったら、またくだらねぇ事で悩んでんだな」
蜜「むっ!くだらないとはなんですか!!女の子にとっては一大事なんですよっ!!」
『・・・・・』
宇「あっそう。てか、何にだか知らんがお前がグジグジ悩んでる事煉獄は知らねェだろ。多分お前に嫌われたと思ってるぜ」
『・・・っ!?』
その言葉に私はバッと顔を上げる
私が、煉獄さんを嫌う!?
そんな事ありえない・・・
煉獄さんが私に愛想つかすならまだしも・・
・・・ていうか、
『何で宇髄さんがいるの!?』
宇「おいおい、まさか今気付いたのか?」
いや、最初いなかったよね?
蜜璃ちゃんも吃驚してるし、大体どこから入って来たの?
第一ここ、私の部屋・・・
宇「・・・俺は“元”忍だからな!」
ドヤァ!!
じゃないよ!!!
『いや忍は忍でも常識は持ち合わせてくださいよ・・』
宇「しけた事いうなって。そんな事より、元気ないんだろ?俺様が慰めてやろうか」
『え・・・?』
宇髄さんの手が私の顎にかけられる。
宇「大人の嗜みってやつを教えてやるよ」
耳元で囁かれた
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食事を終え、お茶を飲んでいる。
いつもの半分の量も食べなかった事で千寿郎にひどく心配をされてしまった。
今まで、どれだけ怪我をしようが病に倒れようが食欲を落とす事などなかったからな。
・・・美桜に拒絶されたことが相当響いているらしいな
これから柱として任務にあたるのに、このままではいかんな・・・
煉「千寿郎、俺はこれから鍛錬をしてくる。」
千「は・・はい。・・・兄上、無理はしないでください」
煉「無理などではないぞ!柱たるもの、どのような時でも心を強く持たねばならんからな!!」
きっと精進が足りんのだ。
立ち上がって準備を始めようとした時、廊下を物凄い勢いで走ってくる足音が響いた。
そして俺の部屋の障子が思い切り開いた。
蜜「煉獄さんっ!!!」
煉「甘露寺、どうした急いで。任務か?」
蜜「ちがっ、ちがいますっ!でも大変です・・美桜ちゃんが・・・」
煉「!!・・・どうした・・?」
蜜「音柱様が来て、美桜ちゃんに・・・」
宇髄が?
ピクッと反応する
蜜「美桜ちゃんに、お酒を飲ませて・・」
煉千「「!!!!!!!」」
よもや!!!
煉「それはいかん!千寿郎!!」
千「は、はい!!」
2人で血相を変えて部屋を飛び出した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
煉「美桜!宇髄!開けるぞ!!」
言ったと同時にスパーン!と開ける。
そこには、やはり
『もうっ!宇髄さんなんれお酒とっちゃうんれすか〜!!』
宇「やかましいっ!!このクソ酔っ払いがぁ!」
とんでもない美桜がいた・・・
煉「・・・何をしているんだ」
宇「お、よぉ煉獄。いや、コイツがあまりにもしけた面してたから軽く飲ませてやったら豹変しやがって・・・」
千「・・・とっとりあえず、水を持ってきます」
千寿郎が慌てて駆けていく。
『宇髄さん。さっさとその手に持っているお酒をこっちに寄越しらさい・・・まらまら、呑みたりないんれすかりゃ』
宇「いやもう呂律まわってねぇし、大体一口で酔いすぎだろ!」
煉「・・・・」
蜜「れっ煉獄さん、すみません・・一応止めたんですけど・・・」
『む〜っ!!・・・じゃあ、さっき言ってた大人の嗜みってやつを教えてくらしゃいよ』
煉「!!」
宇「いや、だからそれが酒・・・」
『忍に二言はなしれすよ!わらしが子どもらと思ってからかってるんれしょ〜』
宇「おいおい、落ち着けよ」
宇髄に近づいた美桜は足をもつれさせ、宇髄に飛び込むように転ぶ。
煉「!」
宇「ちょ、お前動くなよ。座っとけ!!わかった。からかった俺が悪かった!」
宇髄の膝の上に座らされた美桜はなおも
絡んでいく
『むむむ。やっぱり揶揄ってたんですね。悪い子にはお仕置きれす!』
宇髄の頬をペチペチ叩く。
宇髄も大人しくされるがままになっている・・・
以前に比べて美桜の酒癖が悪くなっている気がする・・・
しかし、振られたとは言え好きな女が違う男に絡んでいるのはどうにも我慢がならん!
宇「(煉獄、黙って見てねぇで助けろ!)おい、
美桜いいかげん離れ・・・」
『・・・宇髄さんってお肌がスベスベなんれすねぇ』
ペチペチしていた手を止め、今度は宇髄の頬を撫でる。
そして顔が近いぞ!!
目も酒のせいか潤んでいる・・・
宇 (おい煉獄、まさかこの状況見て嫉妬してるんじゃねぇよな・・・)
無理矢理にでも引き剥がそうと思った所に千寿郎が水を持って入ってくる。
千「美桜さん!お水を持ってきたのでとりあえず飲んでください」
宇髄の膝の上にいた美桜は千寿郎の姿を見るなり
『千ちゃんだ〜!お水ありがと〜♡』
急に上機嫌になり千寿郎に抱きついた。
千「わわっ!美桜さんっ!!」
千寿郎は赤面しながらも美桜に水を飲ませる。
煉「・・・・・・」
宇 (おい、弟にまで嫉妬してんのかコイツ・・・重症じゃねーか・・・)
美桜は千寿郎に勧められるがまま大人しく水を飲み干す。
『ありがと、千ちゃん♡』
千「いっいえ。美桜さん、お酒は身体に良くないのでこれからは控えてくださいね」
『・・・っ!千ちゃん・・そうだよね。私悪い子だね・・・』
今度は泣き上戸だ・・
千「あっそんな泣かないでください。美桜さんが辛いお気持ちなのは分かります。でも、お酒では解決しないと思いますよ」
『・・うっ!千ちゃん〜〜』
再び千寿郎に抱きつく。
宇髄から標的が移ったのは良かったがそろそろ眠らせないとな・・
美桜に近づいて身体を支えようとした時
『わらし、千ちゃんのお嫁さんになる!!』
煉千蜜宇「「「「!!!!????」」」」
美桜の一言に身体が凍りついた
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ああ、兄上が固まってしまった・・・
美桜さん、このタイミングで言う言葉じゃないですよ。
『千ちゃん、ダメ??』
上目遣いでコトンと首を傾げる美桜さん。
可愛らしい仕草に顔が赤くなってしまう。
その様子を見て
『ふふ、可愛い♡』
頬ずりをされる
兄上の顔が見れない・・・
蜜「美桜ちゃん、一回横になった方がいいと思うの!私お布団敷くね!!」
蜜璃さんが布団を準備してくれる。
『蜜璃ちゃん・・・』
蜜「なぁに?」
『わたし、蜜璃ちゃんをお嫁さんにしたい』
蜜「えぇっ!?」
『千ちゃんがわたしの旦那さんで、蜜璃ちゃんがわたしのお嫁さん。皆で仲良く暮らそうよ♡』
ニッコリ笑って言ってるけど支離滅裂です・・・
蜜「・・・煉獄さん!ごめんなさい。ちょっとだけそれもいいかもって思っちゃいました!!ホントすみません!!!」
煉「・・・何故、千寿郎と甘露寺は選ばれて俺は駄目なのだろうか・・・」
宇「いや、酔っ払いの戯言だぞ。魔に受けるな」
美桜さん、どんどん饒舌になってるな・・・
・・・・・・
千「・・・美桜さん」
『なぁに?』
千「兄上は、どうして駄目なのですか?」
煉「!!」
それまでニコニコしていた美桜さんが、兄上の話をした途端、表情を落とした。
『・・・だって・・・』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
さっきまでヘラヘラ酔っ払っていた美桜の様子が変わった。
まぁ、素面じゃ言えねぇ事もあるかもしれねぇ。この機会に吐かせちまうってのもアリだな。
千坊、中々冷静に周りが見えるじゃねぇか。
『・・・だって、杏寿郎さんが好きって言ってくれてるのは今の私でしょ・・?』
千「今の・・?」
『記憶がない今の私・・・本当の私は、違う人間かもしれないのに』
煉「・・・!」
性格も、話し方も、雰囲気も変わるかもしれない。。。
『もし、この先全部記憶が戻って、本当の私を知った時・・杏寿郎さんが好きでいてくれる私なのかが分からない・・・』
蜜「美桜ちゃん・・・」
『本当は凄く嬉しかったのに・・私が傷つきたくないから、逃げたの・・・』
そう言って静かに涙を流す。
成る程なぁ。
隣で固まったままの煉獄の背中を思い切り叩いてやる。
煉「っ!!」
宇「今の話を踏まえた上でもっぺん話してみろよ。お前はせっかちなんだよ。」
煉「・・・・・」
千「美桜さん・・・」
蜜「美桜ちゃん・・・」
2人がすっかり黙りこくった美桜の顔をそっと伺う。
千蜜「「あ・・・」」
スヤァッ
千蜜「「・・・寝た・・」」
宇「・・・やっと静かになったな」
眠った美桜を布団に寝かせたところで
煉「ところで宇髄、何故美桜の部屋にいたのだ?」
おいまたピリついてんな。
宇「お前の柱任命祝いに酒を持ってきたんだよ。まぁ、たまたま美桜たちの話が耳に入って流れでこうなったけど、俺の酒のお陰で本音が聞けたんだから良しとしろ!」
煉「むぅ!!」
宇「あぁ、あと次の任務は俺とお前の合同だ。それまでにこの件は解決しとけよ」
じゃあな、と言って俺は部屋を後にする。
どうなる事かと思ったが中々面白いもんが見れたわ。
次に会う時どうなってるか楽しみだな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇髄が帰り、甘露寺も任務に行った。
千寿郎は洗濯に行っている。
俺は1人、気持ちよさそうに眠る美桜の側にいた。
ーお前はせっかちなんだよー
確かに、答えを急ぎすぎていたな・・・
美桜の記憶が戻る前にー俺の前からいなくなってしまう前に、俺のものにしたかったのかもしれない・・・
煉「美桜・・・」
『うぅ・・・ん』
煉「!!美桜。」
美桜が目を覚ました。
『・・・杏寿郎さん・・・』
俺の姿を確認して少しバツの悪そうな顔をする。
『・・・ごめんなさい。私・・・うぅっ!・・頭ガンガンする・・・』
身体を起こしフラつく所を支える。
煉「・・・とりあえず水を飲みなさい」
座り直して水を飲ませる。
煉「・・・落ち着いたか?」
『はい・・・。すみません。ご迷惑をおかけして・・・』
煉「君は酒は飲まない方がいいな。何より未成年だろう」
『・・はい。ごめんなさい・・・』
煉「・・・ちなみに、酔っていた間の事は覚えているか?」
『・・・・・・』
美桜は気まずそうに目を逸らす。
何と分かりやすい反応だろうか。
煉「美桜・・・昨晩は君の気持ちも考えず、俺の気持ちを一方的に押しつけてしまい申し訳なかった!」
『・・・』
煉「俺は少し焦っていたようだ」
『・・焦る?』
何に?といった表情を見せる。
煉「美桜が不安な様に、俺も美桜の記憶が戻ったら俺への気持ちも無かったことになってしまうのではないかと不安になってしまった。」
『・・・そんな事は』
ない。と言いたいのに言い切れない。
そうやっていつも苦しんでいたのだな。
煉「美桜の記憶が戻った時、もう一度気持ちを伝えさせてくれ。その時、お互い今の気持ちのままであったら・・・」
その時は、俺と夫婦になって欲しい
『・・・いいんですか?』
煉「ん?」
『だって、いつ記憶が戻るかわからないんですよ・・・?』
煉「・・・それまで、美桜が俺の側にいてくれるならな」
『!』
美桜の手を優しく取る。
今度は振り解かれない
煉「結婚を前提として、俺と恋人同士になってほしいのだが?」
それでは駄目だろうか?
耳元で囁くと美桜は身体を震わせる。
目に涙を溜めて、これでもかという程顔を赤く染めている。
本当に愛おしいな
『わ・・・私で良ければ、喜んでっ』
そこで大粒の涙を流す。
良かった
受け入れられた事がこんなにも嬉しいものだとは思わなかった。
煉「ああ、そうだ」
俺は懐から小箱を取り出し、美桜の手にそっと乗せる。
『・・・?』
煉「俺からの贈り物だ。受け取って欲しい」
小箱を開くと、美桜の目からまた一つ涙が零れた