終わりと始まり
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あれから数日が経過した。
蝶屋敷に残してきたあの女性は目を覚ましただろうかーーー
気にはなっていたが、あれから立て続けに指令が入ったため足が遠のいていた。
任務がひと段落し、その足で蝶屋敷への道を歩く。
屋敷の門をくぐると髪を高い位置で2つに結んだ娘が気づいて出迎えてくれる。
アオイという、責任感が顔から滲み出るしっかりとした娘だ。
ア「煉獄さま!本日はいかがなさいましたか?」
お怪我でもされましたか、と少し心配そうな声音に
煉「いや、俺は元気だ!心配してくれてありがとう!先日ここに運ばれてきた女性がいるだろう。あれからどうなったか気になってな!」
訪問の旨を伝えると、あぁと納得した様子で
ア「2日前に目を覚ましました。今は引き続き療養しています。」
こちらです。と病室へと案内してくれる。
部屋に近づくと何やら賑やかな声が聞こえてくる。
き「お願いですからちゃんと飲んでください〜」
す「治るものも治らないですよ」
な「お布団から出てきてください〜!」
ここで働く看護婦の娘たちが泣きそうな声で訴えている。
『っでもでも!この薬めっっちゃ苦いんですよ!こんなに沢山の量を1日に3回も飲むなんて無理ですっ!』
布団の中からこれまた泣きそうに訴える声が聞こえる。
隣に立っていたアオイはまたですか、と盛大なため息を吐きながらベッドに近づいていく。
そして布団を掴んだかと思うと一気に剥がす。
ア「もう!いい加減素直に飲んでください!何だかんだ言いながら毎回ちゃんと飲めるんだから我が儘言わない!」
布団を剥がされた彼女はヒィィと声を上げ涙目になっている。
煉「うむ、胡蝶の作る薬はあり得ん位苦いからな!気持ちはわかる!だが元気になる為には必要なことだ!がんばれ!」
話しかけると全員が飛び上がるほど驚いた。
む、急に話しかけたので吃驚させてしまったか。
((((声でっか!耳壊れるかと思った))))
煉「すまない!驚かせてしまったか」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
心臓が飛び出るほど大きな声の人は煉獄杏寿郎さん。
私を助けてくれた人だ。
『あの、その節は危ない所を助けていただいてありがとうございました。今日もわざわざ来ていただいて、すみません。』
深々と頭を下げると、うむ!気にしなくて良い!と快活な返事が返ってきた。
煉「君には聞きたいこともあるしな!」
『・・・・・・』
その言葉に私は俯いてしまう。
アオイちゃんが間に入ってくれる。
ア「煉獄さま。その事なのですが・・・」
煉「む?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉「記憶喪失?」
あれから部屋を移動し、胡蝶の診療室で説明を受ける。
し「はい。どうやらその様ですね。」
胡蝶はカルテを眺めながらも彼女の目が覚めた翌日、つまり昨日の診察時のやりとりを語り始めたーーー
ーーーーでは、あなたのお名前は?
しのぶが質問をすると、
『・・・美桜です。』
し「美桜さん。では、貴女のご出身は?」
『・・えぇと、・・・分かりません。』
しばらく考え込んでいたが分からないという。
し「・・・では、あの夜はあんな時間にあんな場所で、1人で何をなさっていたのですか?」
『・・・・・わからないんです。何度思い出そうとしても、あの男の子の顔、鬼の姿、助けてくれた人の後ろ姿・・・それ以外の事は何も覚えていないんです。』
し「では、鬼を切ったことも覚えていらっしゃらない?」
『えっ』
美桜は驚いた様に顔を上げる。
『私が、、?・・・そんな事、できない、と思います。』
し「これは貴女の持ち物です。見覚えは?」
例の刀と銃を美桜に見せる。
『ーーーーっっ!?』
何かを思い出そうとする様にじっと刀を見ていたが、急に頭を押さえて蹲ってしまう。
冷や汗をかき、息もだいぶ乱れている。
放っておくと過呼吸になってしまうだろう。
し「落ち着いて、ゆっくり息を吐いてください」
背中をさすり、何とか落ち着かせる。
それから幾つか質問を投げかけてみたが何を聞いても悲しそうな顔で首を横に振るだけだったーーーー
ーーー診察室にしばし沈黙が流れるーーー
し「・・・美桜さんは、自分の名前とあの夜の断片的な記憶以外は何も覚えていない様です。」
苗字も、年齢も、家族のこともー。
煉「・・・」
し「考えられるとしたら、頭部を強打した事による外的要因、そして鬼に襲われた心的外傷が原因かと。」
煉「・・・彼女の記憶は戻るのだろうか?」
し「現状では何とも言えませんね・・・。戻るとしても時間はかかるでしょうし。」
胡蝶は大きなため息を吐く。
し「・・ひとまず、美桜さんは怪我が完治するまで蝶屋敷でお預かりします。記憶に関しての治療は私の方で色々調べてみます。」
煉「うむ、胡蝶が側にいるのなら問題はないだろうな。俺も任務の合間にはなるべく顔を出そう!」
俺が連れてきた彼女の事を胡蝶にばかり任せておくのは気が引ける。何よりー
煉「胡蝶も柱になったばかりで色々大変だろう!俺にできる事があれば言ってくれ!」
胡蝶はフワリと笑って
胡「ありがとうございます。私が先を越してしまいましたね。煉獄さんも、お待ちしていますよ」
煉「うむ、俺も早く柱になれる様、精進せねばな!」
そんなやりとりをして、帰る前にまた美桜の部屋へと向かう。
扉を開けると美桜はベッドに腰を下ろし窓の外を眺めていたが、俺に気付くと体ごとこちらに向けた。
『煉獄さん』
煉「身体の調子はどうだ?」
『背中はまだ痛みます。でも、さっきの薬は頑張って飲みました』
煉「うむ、よく食べてよく寝て、薬を飲んでいれば直に良くなるだろう!」
『はい。・・・でも・・・』
美桜は俯いて
『今は治療の為にここに置いてもらえてるけど、怪我が治ったらここを出ないと・・・』
いつまでも甘えるわけにはいかないし、と苦しそうな顔をする。
ー確かに、怪我が治れば退院するのは当たり前の事だ。
だが、彼女は自分の名前以外、ほぼ全ての記憶がないのだ。当然、行くあてもないだろう。
見たところ、歳の頃は16、17くらいだろうか。
不安にならない訳がない。
煉「大丈夫だ!」
『えっ?』
煉「先の事はなる様になる!今はとにかく自分の身体の事を第一に考えなさい」
美桜はポカンと口を開けてこちらを見ている。
『そっか・・・そうですよね。今から先の事を心配したってしょうがないですよね。』
フッと力を抜いた様に微笑む。
初めて彼女の笑顔が見られたことに嬉しくなる。
煉「うむ!俺も合間を見て顔を出す様にする!ここには君と同じ位の娘たちもいるし淋しくはないだろう」
『はい』
煉「では今日はこれで失礼する!」
部屋を出ようとした所で『煉獄さん!』と呼び止められる。
『本当に、ありがとうございます!次にお会い出来るのを楽しみにしてますね』
うむ!と返事をして部屋を後にする。
次に来る時は菓子でも買ってくるとしよう。
彼女の嬉しそうな顔をもっと見たいと思った。
蝶屋敷に残してきたあの女性は目を覚ましただろうかーーー
気にはなっていたが、あれから立て続けに指令が入ったため足が遠のいていた。
任務がひと段落し、その足で蝶屋敷への道を歩く。
屋敷の門をくぐると髪を高い位置で2つに結んだ娘が気づいて出迎えてくれる。
アオイという、責任感が顔から滲み出るしっかりとした娘だ。
ア「煉獄さま!本日はいかがなさいましたか?」
お怪我でもされましたか、と少し心配そうな声音に
煉「いや、俺は元気だ!心配してくれてありがとう!先日ここに運ばれてきた女性がいるだろう。あれからどうなったか気になってな!」
訪問の旨を伝えると、あぁと納得した様子で
ア「2日前に目を覚ましました。今は引き続き療養しています。」
こちらです。と病室へと案内してくれる。
部屋に近づくと何やら賑やかな声が聞こえてくる。
き「お願いですからちゃんと飲んでください〜」
す「治るものも治らないですよ」
な「お布団から出てきてください〜!」
ここで働く看護婦の娘たちが泣きそうな声で訴えている。
『っでもでも!この薬めっっちゃ苦いんですよ!こんなに沢山の量を1日に3回も飲むなんて無理ですっ!』
布団の中からこれまた泣きそうに訴える声が聞こえる。
隣に立っていたアオイはまたですか、と盛大なため息を吐きながらベッドに近づいていく。
そして布団を掴んだかと思うと一気に剥がす。
ア「もう!いい加減素直に飲んでください!何だかんだ言いながら毎回ちゃんと飲めるんだから我が儘言わない!」
布団を剥がされた彼女はヒィィと声を上げ涙目になっている。
煉「うむ、胡蝶の作る薬はあり得ん位苦いからな!気持ちはわかる!だが元気になる為には必要なことだ!がんばれ!」
話しかけると全員が飛び上がるほど驚いた。
む、急に話しかけたので吃驚させてしまったか。
((((声でっか!耳壊れるかと思った))))
煉「すまない!驚かせてしまったか」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
心臓が飛び出るほど大きな声の人は煉獄杏寿郎さん。
私を助けてくれた人だ。
『あの、その節は危ない所を助けていただいてありがとうございました。今日もわざわざ来ていただいて、すみません。』
深々と頭を下げると、うむ!気にしなくて良い!と快活な返事が返ってきた。
煉「君には聞きたいこともあるしな!」
『・・・・・・』
その言葉に私は俯いてしまう。
アオイちゃんが間に入ってくれる。
ア「煉獄さま。その事なのですが・・・」
煉「む?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煉「記憶喪失?」
あれから部屋を移動し、胡蝶の診療室で説明を受ける。
し「はい。どうやらその様ですね。」
胡蝶はカルテを眺めながらも彼女の目が覚めた翌日、つまり昨日の診察時のやりとりを語り始めたーーー
ーーーーでは、あなたのお名前は?
しのぶが質問をすると、
『・・・美桜です。』
し「美桜さん。では、貴女のご出身は?」
『・・えぇと、・・・分かりません。』
しばらく考え込んでいたが分からないという。
し「・・・では、あの夜はあんな時間にあんな場所で、1人で何をなさっていたのですか?」
『・・・・・わからないんです。何度思い出そうとしても、あの男の子の顔、鬼の姿、助けてくれた人の後ろ姿・・・それ以外の事は何も覚えていないんです。』
し「では、鬼を切ったことも覚えていらっしゃらない?」
『えっ』
美桜は驚いた様に顔を上げる。
『私が、、?・・・そんな事、できない、と思います。』
し「これは貴女の持ち物です。見覚えは?」
例の刀と銃を美桜に見せる。
『ーーーーっっ!?』
何かを思い出そうとする様にじっと刀を見ていたが、急に頭を押さえて蹲ってしまう。
冷や汗をかき、息もだいぶ乱れている。
放っておくと過呼吸になってしまうだろう。
し「落ち着いて、ゆっくり息を吐いてください」
背中をさすり、何とか落ち着かせる。
それから幾つか質問を投げかけてみたが何を聞いても悲しそうな顔で首を横に振るだけだったーーーー
ーーー診察室にしばし沈黙が流れるーーー
し「・・・美桜さんは、自分の名前とあの夜の断片的な記憶以外は何も覚えていない様です。」
苗字も、年齢も、家族のこともー。
煉「・・・」
し「考えられるとしたら、頭部を強打した事による外的要因、そして鬼に襲われた心的外傷が原因かと。」
煉「・・・彼女の記憶は戻るのだろうか?」
し「現状では何とも言えませんね・・・。戻るとしても時間はかかるでしょうし。」
胡蝶は大きなため息を吐く。
し「・・ひとまず、美桜さんは怪我が完治するまで蝶屋敷でお預かりします。記憶に関しての治療は私の方で色々調べてみます。」
煉「うむ、胡蝶が側にいるのなら問題はないだろうな。俺も任務の合間にはなるべく顔を出そう!」
俺が連れてきた彼女の事を胡蝶にばかり任せておくのは気が引ける。何よりー
煉「胡蝶も柱になったばかりで色々大変だろう!俺にできる事があれば言ってくれ!」
胡蝶はフワリと笑って
胡「ありがとうございます。私が先を越してしまいましたね。煉獄さんも、お待ちしていますよ」
煉「うむ、俺も早く柱になれる様、精進せねばな!」
そんなやりとりをして、帰る前にまた美桜の部屋へと向かう。
扉を開けると美桜はベッドに腰を下ろし窓の外を眺めていたが、俺に気付くと体ごとこちらに向けた。
『煉獄さん』
煉「身体の調子はどうだ?」
『背中はまだ痛みます。でも、さっきの薬は頑張って飲みました』
煉「うむ、よく食べてよく寝て、薬を飲んでいれば直に良くなるだろう!」
『はい。・・・でも・・・』
美桜は俯いて
『今は治療の為にここに置いてもらえてるけど、怪我が治ったらここを出ないと・・・』
いつまでも甘えるわけにはいかないし、と苦しそうな顔をする。
ー確かに、怪我が治れば退院するのは当たり前の事だ。
だが、彼女は自分の名前以外、ほぼ全ての記憶がないのだ。当然、行くあてもないだろう。
見たところ、歳の頃は16、17くらいだろうか。
不安にならない訳がない。
煉「大丈夫だ!」
『えっ?』
煉「先の事はなる様になる!今はとにかく自分の身体の事を第一に考えなさい」
美桜はポカンと口を開けてこちらを見ている。
『そっか・・・そうですよね。今から先の事を心配したってしょうがないですよね。』
フッと力を抜いた様に微笑む。
初めて彼女の笑顔が見られたことに嬉しくなる。
煉「うむ!俺も合間を見て顔を出す様にする!ここには君と同じ位の娘たちもいるし淋しくはないだろう」
『はい』
煉「では今日はこれで失礼する!」
部屋を出ようとした所で『煉獄さん!』と呼び止められる。
『本当に、ありがとうございます!次にお会い出来るのを楽しみにしてますね』
うむ!と返事をして部屋を後にする。
次に来る時は菓子でも買ってくるとしよう。
彼女の嬉しそうな顔をもっと見たいと思った。