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重たい瞼を持ち上げて、しばらくぼーっとする。
視界の端に茶色い髪が見えた。そちらへ顔を向けると、長い睫毛に、もちもちとした頬。白い肌。
愛おしい彼女が、隣で眠っている。
いつもは保乃のほうが先に起きていることが多いから、こうして寝顔を眺めるのはなんだか新鮮だった。
思わず、ふっと笑みがこぼれる。
そっと手を伸ばして、保乃の髪に触れようとする。
けれど、起こしてしまいそうで、伸ばした手を引っ込めた。
行き場をなくした手で前髪をかき上げ、そのまま手の甲を自分の口元に当てる。
いつもは見られない寝顔を、もう少し見ていたい。
それももちろんある。
でも、一番気になったのは、少しだけ上がった保乃の口角だった。
寝ているのに、笑っている。
相変わらずだな、と感心してしまう。
保乃の後ろに見える窓から差し込む日差しに目が眩み、思わず目を細めた。
次に目を開けたとき、横から視線を感じる。
夏「……あ、起きた」
まだ瞼が開ききっていない保乃は、頭もぼーっとしているらしい。
長い瞬きをして、「んぅ」と小さく声を漏らしながら身体を伸ばす。
そして、そのまま腕をこちらへ伸ばしてきた。
伸ばされた腕は、私のお腹に置かれたままになっている。
……ただの伸びの延長だったらしい。
そう思っていたのに。
数秒の沈黙を、先に破ったのは保乃だった。
保「おはよ」
夏「おはよう」
保「……手」
夏「え?」
突然、指が絡まる。
お腹に置かれていた腕は、どうやら伸びの延長線ではなかったらしい。
寝起きで体温が高いからか、繋がった手がいつもより暖かく感じる。
保「ごはん、たべる?」
夏「うん」
保「いこ」
絡まった手を解かないまま、保乃は起き上がってベッドに腰をかけた。
……え、このまま行くの?
起き上がらない私を不思議に思ったのか、保乃が真顔でこちらを見る。
「……?」
私も慌てて身体を起こし、同じようにベッドへ腰をかけた。
すると保乃は、待ってましたとばかりに立ち上がる。
夏「はやっ」
保「夏鈴ちゃんが遅いんだよ」
急いでスリッパを履いて、パタパタと保乃の後を追いかける。
キッチンに着く頃には、さすがに繋いでいた手も解かれていた。
保乃は慣れた手つきでフライパンと卵を用意する。
保「食パン焼いてくれる?」
夏「あ、うん」
言われた通り、食パンを二枚トースターに入れて、ボタンを押す。
これで私の仕事は終わり。
特にすることもなくなった手が、自然と保乃のお腹へ伸びていった。
保「危ないよ」
夏「包丁使うときだけ離れるから」
保「まぁ、それならいいけど」
肩にこてんと顎を乗せる。
目の前では、フライパンの中で油がぱちぱちと跳ねている。
少しだけ怯えながら、目玉焼きを眺めていた。
すると、保乃の手が私の手に重なった。
思わず、保乃の顔を見る。
保「油、怖いんでしょ?」
夏「よく分かったね」
保「まぁね」
「夏鈴ちゃんのことなら、なんでも分かるよ」
夏「じゃあ、今何考えてると思う?」
保「……ほの好き」
夏「怖っ」
保「分かりやすいんだよなぁ笑」
やっぱり。
彼女には、何もかもお見通しらしい。
ピーピー
保「はい、夏鈴ちゃんパン置いて」
「火傷しないようにね」
夏「はーい」
いつも通りの日常が始まる。
それなのに、今日は少しだけ特別でいつもより暖かい気がした。
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