繰り返される呪い
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第二章
再び蘇る
ミルフィーナは焦っていた。
・・・とても焦っていた。
彼女は立体機動装置の基礎であるバランスがとれないのだ。
その状況に周囲の訓練兵達が苦笑する。
ドカッ!
「痛っ!」
ミルフィーナはバランスが取れず地面へ叩きつけられた。
「おいおい、もう見てられないぜ。・・・俺が教えてやってもいいんだぜ?」
訓練兵の中からジャンがそう言いながら傍まで歩み寄ってきた。
「ほ、ほんと!?教えてください!」
ミルフィーナは瞳を輝かしてそう言った。
それからジャンに感覚やコツを教わった。
どうにかバランスが取れるようになっていた。
「わ〜!ジャンありがとう!見てほら!すごいでしょ〜〜!」
ミルフィーナはプルプル震えながらバランスをとる姿をジャンに自慢していた。
「お、おう。ま、俺の教え方が良かったからだな!・・・にしても、お前ギリギリでバランス保ってるって感じだな。まぁ自主練に付き合ってやってもいいぜ?」
ジャンは頭を照れくさそうに掻きながらそう言った。すると、ミルフィーナはさらに瞳を輝かせた。
「ジャン!私は最高の友人を持ったよ!ありがとう!」
「ま、まぁな。このくらい俺にとっちゃあ・・・」
「ミルフィーナ、そろそろ交代してくれないか?」
ジャンの言葉を遮り黒髪の少年がそう言った。
「あ、ごめんね!今降りるね!えっと・・・」
「エレンだ。そう言えばまともに自己紹介してなかったな。これからよろしくな!」
エレンはミルフィーナが自分の名前を知らないと察してそう言いミルフィーナを吊っている金具とベルトを外した。
「はいエレン。このベルトありがとう!」
ミルフィーナはエレンの助けを得ながら地に降りると、ベルトをエレンへとわたした。それを見てジャンは不思議な顔をしてミルフィーナを見た。
「あ、私のベルトね・・・。恥ずかしいんだけど胸のベルトの穴が足りなくて閉まらなかったから、借りたの。」
ミルフィーナがアハハと笑いながら言うと周りの視線がこちらに一気に向き、ジャンは顔を赤くし突然鼻を押さえ出した。
「なっ!ミルフィーナお、お前・・・。早く新しいベルト用意しとけよ!」
「あ、大丈夫大丈夫!今日中に何とかするから!」
ミルフィーナは笑いながらそう言い、エレンの準備が整ったことを確認しエレンを宙に浮かせた。
ドカッ!!
エレンは浮いてすぐにバランスを崩した。
「わーーー!!エレン!ごめん!私の上げ方が悪かったね!!」
ミルフィーナは叫びながらエレンに駆け寄った。
するとミルフィーナがエレンのもとに着く前に綺麗な黒髪の少女が駆け寄り、怪我の有無を確認していた。
「エレン、大丈夫?」
「あぁ、俺は大丈夫だ、ミカサ。」
どうやら黒髪の少女はミカサと言うらしい。
エレンと一通りの会話を終えたミカサがくるりとミルフィーナの方へ向いた。
「あなた、エレンに何するの。」
ミカサが凄い威圧をミルフィーナへかけながらいった。
「ごめんなさい。わざとではないの。」
「おい、ミカサ。ミルフィーナは悪くねぇよ。俺の不注意だ。」
「でも・・・。」
ミカサは納得いかないという様子でエレンを見ていたが、エレンがミルフィーナへ再度宙に浮かせるよう指示をするのを見て諦めた様子でペアの元へと向かった。
ドンッ!
「っで!!」
あれから、何度挑戦してもエレンはバランスを取る事が出来なかった。何故かジャンはミルフィーナにしてくれたようには教えてくれず、遠くでケラケラと笑ってるだけだった。
結局その日、エレンは1度もバランスを取る事が出来なかった。
ミカサにすごい剣幕で睨まれたのは言うまでもない。
ミルフィーナは、昨日とおなじ隅の席で食事を取っていた。
どうやら、エレンをうまく浮かせられず落ち込んでいるようで食事もあまり進んでいなかった。
「そ、それ、食べないなら、貰ってもいいですか?」
ミルフィーナに訓練兵が恐る恐る声をかけてきた。ミルフィーナはその姿を見ると口からヨダレを少し垂らしながら食べ物をじーっと見つめていた。
「あ、いいよ。私もうお腹いっぱいだから。」
「あ、ありがとうございますぅ!!」
訓練兵はそう言って向かいの席に座り、すごい勢いで食事を口にかき込んでいく・・・。
「お、お腹すいてたんだね。・・・えっと」
「サシャです。サシャ・ブラウスです。ごはんありがとうございます。」
サシャは口にいっぱい物を詰めながらそう言った。
「私、ミルフィーナ!よろしくね。・・・残すのもったいないし、また食欲無い時は言うね。」
ミルフィーナがそういうと、サシャが瞳を輝かして首を縦に大きく振った。
ミルフィーナがサシャの食事にがっついてる姿を見つめていると隣にジャンが座った。
「よお、ミルフィーナ。今日は大変だったな。ところで・・・・・・お前の食事は?」
「ん、あぁ、食欲無いから、サシャにあげた!」
ミルフィーナがそう言うとジャンは何かわかったようにニヤッとわらった。
「さてはお前、エレンを地面に叩きつけてボコボコにしたこと気にしてるんだろ?」
「うん、そんなことろ。ミカサも怒らせちゃったし。」
私がそう言うと何故かジャンは顔を赤くしていた。
「ミ、ミカサ!?あの黒髪のか!?」
突然ジャンの落ち着きがなくなった。
「う、うん。そうだけど、どうしたの?」
「ミ、ミカサか。き、綺麗な黒髪だよな。」
「あ、そうだね。」
それからしばらくはジャンのミカサ語りが続いた。
「エレン、怪我大丈夫?」
ミルフィーナがエレンへ声をかけ近寄るとすぐ隣に座っているミカサに睨まれミルフィーナは自身の顔がひきつってるのを感じた。
「おう、どうした?」
エレンはそんなことに気づかず軽い調子で返事する。
「今日、ごめんね。こんなに怪我させて本当にごめんね。」
「なーんだ。そんなことか!気にすんなよ!明日も訓練があるんだ!その時にぜってぇできるようになってやる!」
「・・・ありがとう!」
エレンが気にしていないことを知りミルフィーナは安堵した。
翌日、ミルフィーナは自分でベルトに穴を開け、自分にしっかり合うようにしたベルトを身につけ訓練に参加すると・・・。
「ええええ!なにこれ!チョー簡単じゃん!」
ミルフィーナは昨日との差に驚き思わず叫んでいた。
そんな時、エレンが地面に叩きつけられる音が響いた。そして教官に睨まれている様子を遠くから見ていた。
ミルフィーナは、昨日との差に違和感を覚え、一応エレンにそれを伝えようと近寄るとキース教官に呼び止められた。
「ミルフィーナ・ロフマニス、ベルトはどうだ?ちゃんと使えるようになったのか?」
「はいっ!しっかり使えます。」
「そうか。・・・イェーガーのベルトとなにか違うことは無かったか?」
ミルフィーナはキースに自分の感じた違和感を伝えた。するとキースはエレンの元へと向かった。ミルフィーナもあとを追いエレンの元へと向かった。
「ロフマニス、貴様のベルトをイェーガーに貸してやれ。」
キースはミルフィーナが後ろにいることをかくにんしそう言った。
ミルフィーナは、はい!と返事をしエレンのベルトと交換した。
「エレン、上げるよ。」
「あぁ、頼む。」
エレンの足が地から離れた。・・・がエレンは地面に叩きつけられることなくバランスを取り続けていた。
「どうやらお前の装備が壊れていたようだ。」
キースがそう言うと辺りがザワついた。
「じ、じゃあ、あいつそれでバランス取ってたのか?」
「す、すげぇ」
などなど皆驚いた様子でいた。
エレンはキースを見つめていた。
「て、適正判断は・・・」
エレンが恐る恐るキースへ声をかけると・・・キースは表情を少し弛めた。
「合格だ。」
キースのその言葉に皆が拍手を送った。
その後、本格的に立体機動の訓練が始まった。皆、訓練に遅れをとる者はおらず、仲間と協力や競争をしながら取り組んでいた。
ミルフィーナも、順調に訓練をこなしていた。・・・が、格闘技だけは苦手なようで、毎回のように投げられ地面に転がっていた。
ミルフィーナは、この調子で訓練兵としてやっていけると思っていた。
そんなある日、ミルフィーナにあの日の記憶が襲いかかった。
夢に出てくるだけだったその記憶は、とうとう目を開けていても突然蘇り、脳裏に生々しい映像が浮かぶのだ。
ミルフィーナはその度に吐き気をこらえ、耳を必死に塞ぐようになっていた・・・。
そして、巨人模型の討伐数を競っている時、ミルフィーナは順調に討伐数を稼いでいたが、あの記憶が彼女を襲った。
「ぎゃぁぁぁぁぁ・・・。」
母親の悲鳴が聞こえる・・・。
バキッ
木の枝が折れるような骨の折れる音・・・。
グチャ
バリッ
肉が、骨が噛み砕かれる音・・・。
あの日の記憶全てが今、起こっているようなくらいに生々しく目に浮かび、音が蘇る。
立体機動装置で飛び、両手が剣で塞がっているため、耳を塞げずミルフィーナの心はパニック状態だった。
そんなミルフィーナの異変に気づいたのかキース教官がミルフィーナを追う。しかし、立体機動の扱いがジャンと競えるほど上手く、小回りがかなりきくミルフィーナに追いつくのは容易では無かった。
「おい!キルシュタイン、イェーガー、ここに来るな!」
キースは、ミルフィーナと2人が衝突するであろう事が分かり、声を張ったが、もう遅かった・・・。
「「うわ!!!」」
ミルフィーナのワイヤーが2人のワイヤーと絡まり地に落ちてしまった。
キースは、やれやれといった様子でミルフィーナを見下ろし口を開いた。
「・・・・・・ロフマニス!!なにをやってるんだ貴さ・・・。」
キースの怒鳴り声が響くと思われたがそれは途中で止まった。
ミルフィーナは、ガタガタと震え、涙を滝のように流しブツブツと何かを呟いていたからだ。
キースはミルフィーナに何が起きているのかを知るためにじっと見つめ耳をすました。
「おか・・・さん、おと・・・さん、しんだ・・・きょ・・・んが・・・ないて・・・がけ・・・落ちる・・・こわい・・・だれ・・・なん・・・で、だれの・・・き・・・おく・・・」
「お、おい。ミルフィーナ、大丈夫かお前・・・。」
何があっても笑顔でいるミルフィーナの初めて見る異様な光景にジャンが顔を真っ青にして声をかけた。が、聞こえておらず今だ震え続けブツブツと呟いている。
「ミルフィーナ!大丈夫か!?」
エレンがミルフィーナに触れた瞬間、ミルフィーナは目を大きく見開き悲鳴をあげた。
「私に変なものを見せないで!何も見たくない!やめて!」
悲鳴をあげた後、ミルフィーナはそう叫ぶとピタリと動かなくなった。
ミルフィーナの悲鳴により、ほかの訓練兵たちも集まってきた。
キースはミルフィーナの状況分析を止め、自分のことに集中するようにと怒鳴った。
「お、おい、ミルフィーナ、どうしたんだよお前。・・・クソっ。こんな絡まり方じゃあ訓練に戻れねぇ。」
「ジャン落ち着け!」
「なんだと!?お前はいいのかよ訓練に戻れなくて!」
「訓練よりもミルフィーナの状態がっ!」
ジャンとエレンがそうやり取りをしているとキースが2人に声をかけた。
「貴様らの評価は明日の訓練で行う。とにかくキルシュタインはロフマニスの立体機動装置を外し、医務室へ運べ。イェーガーはキルシュタインとロフマニス、そしてお前の立体機動装置を見せて来い。」
キースの指示に2人はピシッと敬礼しそれぞれの行動に移った。
ジャンは、ミルフィーナの立体機動装置を外すためにミルフィーナに触れた瞬間、ミルフィーナは突然、意識を取り戻し、2人に謝りながら自らの足で医務室へと向かった。
ジャンはキースの指示を受けているためかミルフィーナのあとへ続いた。
エレンは2人の立体機動装置を抱え訓練所をあとにした。
医務室へ向かっている途中、ジャンはミルフィーナに何が起きたのか訊ねた。
ミルフィーナは下を向きながら細い声で事情を話した。
そのあとジャンはかける声が見つからず、耳の痛くなるような沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのはミルフィーナだった。
「ねぇ、ジャン、私、2年前のあの日流れこんできた映像ね、もしかしたら巨人の記憶なのかもしれない。」
「はぁ!?馬鹿かお前!巨人に幸せな家庭がきずけるって言うのか!?」
ジャンは突拍子もないミルフィーナの言葉に思わず大声でそう言う。
「変な話だけど・・・エレンの記憶もみえた・・・。」
ミルフィーナは自分の殻に籠るように両腕で自分の肩を抱きながら言った。
「なんだ?じゃあ、エレンもあのバカでかい知能のないバケモノなのか?」
ジャンはさらにミルフィーナに詰め寄る
。
「わかんない・・・。でも、エレンのは確実にエレンがいた。ミカサも・・・いた。だから記憶だと思う。巨人から流れてきたのかはなにか分からないけど・・・、私はそう思う。でも、なんであの時の巨人と、エレンだけなの・・・?」
ミルフィーナは必死に言葉を繋いだ。
「んなことしるかよ!」
ジャンは険しい顔でそう言いミルフィーナを黙らせた。
「そっか、そうだよね、ごめんね。・・・あ、こ、ここまででいいよ。ごめんね、ありがとう。」
ミルフィーナは引きつった笑顔でジャンにそういうと、走って医務室へとむかった。
再び蘇る
ミルフィーナは焦っていた。
・・・とても焦っていた。
彼女は立体機動装置の基礎であるバランスがとれないのだ。
その状況に周囲の訓練兵達が苦笑する。
ドカッ!
「痛っ!」
ミルフィーナはバランスが取れず地面へ叩きつけられた。
「おいおい、もう見てられないぜ。・・・俺が教えてやってもいいんだぜ?」
訓練兵の中からジャンがそう言いながら傍まで歩み寄ってきた。
「ほ、ほんと!?教えてください!」
ミルフィーナは瞳を輝かしてそう言った。
それからジャンに感覚やコツを教わった。
どうにかバランスが取れるようになっていた。
「わ〜!ジャンありがとう!見てほら!すごいでしょ〜〜!」
ミルフィーナはプルプル震えながらバランスをとる姿をジャンに自慢していた。
「お、おう。ま、俺の教え方が良かったからだな!・・・にしても、お前ギリギリでバランス保ってるって感じだな。まぁ自主練に付き合ってやってもいいぜ?」
ジャンは頭を照れくさそうに掻きながらそう言った。すると、ミルフィーナはさらに瞳を輝かせた。
「ジャン!私は最高の友人を持ったよ!ありがとう!」
「ま、まぁな。このくらい俺にとっちゃあ・・・」
「ミルフィーナ、そろそろ交代してくれないか?」
ジャンの言葉を遮り黒髪の少年がそう言った。
「あ、ごめんね!今降りるね!えっと・・・」
「エレンだ。そう言えばまともに自己紹介してなかったな。これからよろしくな!」
エレンはミルフィーナが自分の名前を知らないと察してそう言いミルフィーナを吊っている金具とベルトを外した。
「はいエレン。このベルトありがとう!」
ミルフィーナはエレンの助けを得ながら地に降りると、ベルトをエレンへとわたした。それを見てジャンは不思議な顔をしてミルフィーナを見た。
「あ、私のベルトね・・・。恥ずかしいんだけど胸のベルトの穴が足りなくて閉まらなかったから、借りたの。」
ミルフィーナがアハハと笑いながら言うと周りの視線がこちらに一気に向き、ジャンは顔を赤くし突然鼻を押さえ出した。
「なっ!ミルフィーナお、お前・・・。早く新しいベルト用意しとけよ!」
「あ、大丈夫大丈夫!今日中に何とかするから!」
ミルフィーナは笑いながらそう言い、エレンの準備が整ったことを確認しエレンを宙に浮かせた。
ドカッ!!
エレンは浮いてすぐにバランスを崩した。
「わーーー!!エレン!ごめん!私の上げ方が悪かったね!!」
ミルフィーナは叫びながらエレンに駆け寄った。
するとミルフィーナがエレンのもとに着く前に綺麗な黒髪の少女が駆け寄り、怪我の有無を確認していた。
「エレン、大丈夫?」
「あぁ、俺は大丈夫だ、ミカサ。」
どうやら黒髪の少女はミカサと言うらしい。
エレンと一通りの会話を終えたミカサがくるりとミルフィーナの方へ向いた。
「あなた、エレンに何するの。」
ミカサが凄い威圧をミルフィーナへかけながらいった。
「ごめんなさい。わざとではないの。」
「おい、ミカサ。ミルフィーナは悪くねぇよ。俺の不注意だ。」
「でも・・・。」
ミカサは納得いかないという様子でエレンを見ていたが、エレンがミルフィーナへ再度宙に浮かせるよう指示をするのを見て諦めた様子でペアの元へと向かった。
ドンッ!
「っで!!」
あれから、何度挑戦してもエレンはバランスを取る事が出来なかった。何故かジャンはミルフィーナにしてくれたようには教えてくれず、遠くでケラケラと笑ってるだけだった。
結局その日、エレンは1度もバランスを取る事が出来なかった。
ミカサにすごい剣幕で睨まれたのは言うまでもない。
ミルフィーナは、昨日とおなじ隅の席で食事を取っていた。
どうやら、エレンをうまく浮かせられず落ち込んでいるようで食事もあまり進んでいなかった。
「そ、それ、食べないなら、貰ってもいいですか?」
ミルフィーナに訓練兵が恐る恐る声をかけてきた。ミルフィーナはその姿を見ると口からヨダレを少し垂らしながら食べ物をじーっと見つめていた。
「あ、いいよ。私もうお腹いっぱいだから。」
「あ、ありがとうございますぅ!!」
訓練兵はそう言って向かいの席に座り、すごい勢いで食事を口にかき込んでいく・・・。
「お、お腹すいてたんだね。・・・えっと」
「サシャです。サシャ・ブラウスです。ごはんありがとうございます。」
サシャは口にいっぱい物を詰めながらそう言った。
「私、ミルフィーナ!よろしくね。・・・残すのもったいないし、また食欲無い時は言うね。」
ミルフィーナがそういうと、サシャが瞳を輝かして首を縦に大きく振った。
ミルフィーナがサシャの食事にがっついてる姿を見つめていると隣にジャンが座った。
「よお、ミルフィーナ。今日は大変だったな。ところで・・・・・・お前の食事は?」
「ん、あぁ、食欲無いから、サシャにあげた!」
ミルフィーナがそう言うとジャンは何かわかったようにニヤッとわらった。
「さてはお前、エレンを地面に叩きつけてボコボコにしたこと気にしてるんだろ?」
「うん、そんなことろ。ミカサも怒らせちゃったし。」
私がそう言うと何故かジャンは顔を赤くしていた。
「ミ、ミカサ!?あの黒髪のか!?」
突然ジャンの落ち着きがなくなった。
「う、うん。そうだけど、どうしたの?」
「ミ、ミカサか。き、綺麗な黒髪だよな。」
「あ、そうだね。」
それからしばらくはジャンのミカサ語りが続いた。
「エレン、怪我大丈夫?」
ミルフィーナがエレンへ声をかけ近寄るとすぐ隣に座っているミカサに睨まれミルフィーナは自身の顔がひきつってるのを感じた。
「おう、どうした?」
エレンはそんなことに気づかず軽い調子で返事する。
「今日、ごめんね。こんなに怪我させて本当にごめんね。」
「なーんだ。そんなことか!気にすんなよ!明日も訓練があるんだ!その時にぜってぇできるようになってやる!」
「・・・ありがとう!」
エレンが気にしていないことを知りミルフィーナは安堵した。
翌日、ミルフィーナは自分でベルトに穴を開け、自分にしっかり合うようにしたベルトを身につけ訓練に参加すると・・・。
「ええええ!なにこれ!チョー簡単じゃん!」
ミルフィーナは昨日との差に驚き思わず叫んでいた。
そんな時、エレンが地面に叩きつけられる音が響いた。そして教官に睨まれている様子を遠くから見ていた。
ミルフィーナは、昨日との差に違和感を覚え、一応エレンにそれを伝えようと近寄るとキース教官に呼び止められた。
「ミルフィーナ・ロフマニス、ベルトはどうだ?ちゃんと使えるようになったのか?」
「はいっ!しっかり使えます。」
「そうか。・・・イェーガーのベルトとなにか違うことは無かったか?」
ミルフィーナはキースに自分の感じた違和感を伝えた。するとキースはエレンの元へと向かった。ミルフィーナもあとを追いエレンの元へと向かった。
「ロフマニス、貴様のベルトをイェーガーに貸してやれ。」
キースはミルフィーナが後ろにいることをかくにんしそう言った。
ミルフィーナは、はい!と返事をしエレンのベルトと交換した。
「エレン、上げるよ。」
「あぁ、頼む。」
エレンの足が地から離れた。・・・がエレンは地面に叩きつけられることなくバランスを取り続けていた。
「どうやらお前の装備が壊れていたようだ。」
キースがそう言うと辺りがザワついた。
「じ、じゃあ、あいつそれでバランス取ってたのか?」
「す、すげぇ」
などなど皆驚いた様子でいた。
エレンはキースを見つめていた。
「て、適正判断は・・・」
エレンが恐る恐るキースへ声をかけると・・・キースは表情を少し弛めた。
「合格だ。」
キースのその言葉に皆が拍手を送った。
その後、本格的に立体機動の訓練が始まった。皆、訓練に遅れをとる者はおらず、仲間と協力や競争をしながら取り組んでいた。
ミルフィーナも、順調に訓練をこなしていた。・・・が、格闘技だけは苦手なようで、毎回のように投げられ地面に転がっていた。
ミルフィーナは、この調子で訓練兵としてやっていけると思っていた。
そんなある日、ミルフィーナにあの日の記憶が襲いかかった。
夢に出てくるだけだったその記憶は、とうとう目を開けていても突然蘇り、脳裏に生々しい映像が浮かぶのだ。
ミルフィーナはその度に吐き気をこらえ、耳を必死に塞ぐようになっていた・・・。
そして、巨人模型の討伐数を競っている時、ミルフィーナは順調に討伐数を稼いでいたが、あの記憶が彼女を襲った。
「ぎゃぁぁぁぁぁ・・・。」
母親の悲鳴が聞こえる・・・。
バキッ
木の枝が折れるような骨の折れる音・・・。
グチャ
バリッ
肉が、骨が噛み砕かれる音・・・。
あの日の記憶全てが今、起こっているようなくらいに生々しく目に浮かび、音が蘇る。
立体機動装置で飛び、両手が剣で塞がっているため、耳を塞げずミルフィーナの心はパニック状態だった。
そんなミルフィーナの異変に気づいたのかキース教官がミルフィーナを追う。しかし、立体機動の扱いがジャンと競えるほど上手く、小回りがかなりきくミルフィーナに追いつくのは容易では無かった。
「おい!キルシュタイン、イェーガー、ここに来るな!」
キースは、ミルフィーナと2人が衝突するであろう事が分かり、声を張ったが、もう遅かった・・・。
「「うわ!!!」」
ミルフィーナのワイヤーが2人のワイヤーと絡まり地に落ちてしまった。
キースは、やれやれといった様子でミルフィーナを見下ろし口を開いた。
「・・・・・・ロフマニス!!なにをやってるんだ貴さ・・・。」
キースの怒鳴り声が響くと思われたがそれは途中で止まった。
ミルフィーナは、ガタガタと震え、涙を滝のように流しブツブツと何かを呟いていたからだ。
キースはミルフィーナに何が起きているのかを知るためにじっと見つめ耳をすました。
「おか・・・さん、おと・・・さん、しんだ・・・きょ・・・んが・・・ないて・・・がけ・・・落ちる・・・こわい・・・だれ・・・なん・・・で、だれの・・・き・・・おく・・・」
「お、おい。ミルフィーナ、大丈夫かお前・・・。」
何があっても笑顔でいるミルフィーナの初めて見る異様な光景にジャンが顔を真っ青にして声をかけた。が、聞こえておらず今だ震え続けブツブツと呟いている。
「ミルフィーナ!大丈夫か!?」
エレンがミルフィーナに触れた瞬間、ミルフィーナは目を大きく見開き悲鳴をあげた。
「私に変なものを見せないで!何も見たくない!やめて!」
悲鳴をあげた後、ミルフィーナはそう叫ぶとピタリと動かなくなった。
ミルフィーナの悲鳴により、ほかの訓練兵たちも集まってきた。
キースはミルフィーナの状況分析を止め、自分のことに集中するようにと怒鳴った。
「お、おい、ミルフィーナ、どうしたんだよお前。・・・クソっ。こんな絡まり方じゃあ訓練に戻れねぇ。」
「ジャン落ち着け!」
「なんだと!?お前はいいのかよ訓練に戻れなくて!」
「訓練よりもミルフィーナの状態がっ!」
ジャンとエレンがそうやり取りをしているとキースが2人に声をかけた。
「貴様らの評価は明日の訓練で行う。とにかくキルシュタインはロフマニスの立体機動装置を外し、医務室へ運べ。イェーガーはキルシュタインとロフマニス、そしてお前の立体機動装置を見せて来い。」
キースの指示に2人はピシッと敬礼しそれぞれの行動に移った。
ジャンは、ミルフィーナの立体機動装置を外すためにミルフィーナに触れた瞬間、ミルフィーナは突然、意識を取り戻し、2人に謝りながら自らの足で医務室へと向かった。
ジャンはキースの指示を受けているためかミルフィーナのあとへ続いた。
エレンは2人の立体機動装置を抱え訓練所をあとにした。
医務室へ向かっている途中、ジャンはミルフィーナに何が起きたのか訊ねた。
ミルフィーナは下を向きながら細い声で事情を話した。
そのあとジャンはかける声が見つからず、耳の痛くなるような沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのはミルフィーナだった。
「ねぇ、ジャン、私、2年前のあの日流れこんできた映像ね、もしかしたら巨人の記憶なのかもしれない。」
「はぁ!?馬鹿かお前!巨人に幸せな家庭がきずけるって言うのか!?」
ジャンは突拍子もないミルフィーナの言葉に思わず大声でそう言う。
「変な話だけど・・・エレンの記憶もみえた・・・。」
ミルフィーナは自分の殻に籠るように両腕で自分の肩を抱きながら言った。
「なんだ?じゃあ、エレンもあのバカでかい知能のないバケモノなのか?」
ジャンはさらにミルフィーナに詰め寄る
。
「わかんない・・・。でも、エレンのは確実にエレンがいた。ミカサも・・・いた。だから記憶だと思う。巨人から流れてきたのかはなにか分からないけど・・・、私はそう思う。でも、なんであの時の巨人と、エレンだけなの・・・?」
ミルフィーナは必死に言葉を繋いだ。
「んなことしるかよ!」
ジャンは険しい顔でそう言いミルフィーナを黙らせた。
「そっか、そうだよね、ごめんね。・・・あ、こ、ここまででいいよ。ごめんね、ありがとう。」
ミルフィーナは引きつった笑顔でジャンにそういうと、走って医務室へとむかった。
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