漫画(ジャンプ系)
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ナマエが読んでいる本から顔を上げたら、図書館には自分以外の人はいなかった。測量机に向かっていたナミも見当たらない。先に部屋に戻ったのだろう、とナマエは推測した。集中していたものだから、正確なところは分からないが夜もだいぶ更けたところだろう。
(少し風に当たってから寝たいな)
そう考えたナマエは甲板に出る。読書に集中できるくらい凪いだ夜だ。かすかに吹く風が、雲もどこかに流してしまっているようだった。ひょろ高い人影に、ナマエは気が付く。
「おや、こんばんは」
「ブルックさん」
船の手すりに寄りかかっている彼は、今夜の不寝番担当らしかった。
「どうしたんですか、こんな夜遅く」
「ちょっと図書館で本読んでたら、つい……」
静かな夜だ。あまり声を張らなくてもいいように、ナマエはブルックの隣に並んだ。海面はかすかにさざ波が立っている。ほとんど満月に近い月が明るい。その光が、ブルックの長い指を青白く照らしていた。
「ヨホホ、それは興味深いですね、どのような本を?」
「ほら、ちょっと前に寄った島の骨董市でロビンがどうしても買いたいって言った本があったでしょう」
えぇ、とブルックの頭が縦に動く。
「かつてオハラにいた学者の著書……だったんですよね」
「うん。私も歴史とかそういうのは興味あるし。しかもあのオハラの先生の本がまだ残ってるなんてね。まぁでもほとんどエッセイみたいな内容だったし、ずいぶん前に発行されたものだから、世界政府にも見落とされてたんだろうね」
でも面白いよ、とナマエは付け足した。実際、時間を忘れるくらいには引き込まれたのだ。仲間たちが互いを知りたいと思うことは喜ばしい。ブルックは目を細めた。
「それは、ロビンさんもさぞ喜ぶでしょうね」
「ふふ。ちゃんと感想、言えるようにしとかなきゃな」
二人がたわいない話をしていると、びゅうと少し強い風が吹いた。ブルックの骨の隙間――肋骨や関節部分――を通り抜ける風がかすかに音を立てる。昼間の騒がしいときには気にならない程度の音だ。だからナマエは、その音をはじめて聞いた。会話の切れ目だったこともあり、その音ははっきりと二人の耳に届いてしまった。
ややあって、ブルックが薄く微笑んだようだった。しかし、それはナマエには正しく読み取れない。
「ヨホホ、なにせもう骨だけなもので。お恥ずかしい」
ブルックの声色は明るかった。ナマエには、本当にブルックが気にしていないのか、取り繕って明るく振る舞っているのか分からない。ナマエは自身の、骨の上に皮膚の張られた手を見た。太陽にかざせば、血管が赤く透けるだろう。隣にいる彼にはないものだ。それでも、その差を今ブルックが感じていたとしたら。ナマエには悲しく思えた。
「中身の入ってない骸骨はもっと乾いて寂しい音をたてるよ。あなただって、分かっているでしょう」
ナマエの言葉に、ブルックは眼球のない目をぱちくりと見開いた。人の内心を慮るのが上手いナマエが、そのように踏み込んだことを言ってくるとは思わなかったのだ。
「……ええ、よく存じておりますよ」
この船では比較的新入りのブルックは、目の前にいる若者の事情を知らなかった。それでも、ナマエが自身の中の傷を開示してまで反論したかったということは分かった。
「ブルックさん、私は私の考えしか伝えることができないけど、私はどんな形であれあなたが生きていてくれて嬉しいと思っているよ」
緊張のためか、ナマエの声が震えているのがブルックの鋭敏な耳にはよく分かった。そのくせ、まっすぐに自分に向けた眼差しは月明かりを反射して眩しい。告白されているようだ、と年甲斐もなくブルックは思った。
(少し風に当たってから寝たいな)
そう考えたナマエは甲板に出る。読書に集中できるくらい凪いだ夜だ。かすかに吹く風が、雲もどこかに流してしまっているようだった。ひょろ高い人影に、ナマエは気が付く。
「おや、こんばんは」
「ブルックさん」
船の手すりに寄りかかっている彼は、今夜の不寝番担当らしかった。
「どうしたんですか、こんな夜遅く」
「ちょっと図書館で本読んでたら、つい……」
静かな夜だ。あまり声を張らなくてもいいように、ナマエはブルックの隣に並んだ。海面はかすかにさざ波が立っている。ほとんど満月に近い月が明るい。その光が、ブルックの長い指を青白く照らしていた。
「ヨホホ、それは興味深いですね、どのような本を?」
「ほら、ちょっと前に寄った島の骨董市でロビンがどうしても買いたいって言った本があったでしょう」
えぇ、とブルックの頭が縦に動く。
「かつてオハラにいた学者の著書……だったんですよね」
「うん。私も歴史とかそういうのは興味あるし。しかもあのオハラの先生の本がまだ残ってるなんてね。まぁでもほとんどエッセイみたいな内容だったし、ずいぶん前に発行されたものだから、世界政府にも見落とされてたんだろうね」
でも面白いよ、とナマエは付け足した。実際、時間を忘れるくらいには引き込まれたのだ。仲間たちが互いを知りたいと思うことは喜ばしい。ブルックは目を細めた。
「それは、ロビンさんもさぞ喜ぶでしょうね」
「ふふ。ちゃんと感想、言えるようにしとかなきゃな」
二人がたわいない話をしていると、びゅうと少し強い風が吹いた。ブルックの骨の隙間――肋骨や関節部分――を通り抜ける風がかすかに音を立てる。昼間の騒がしいときには気にならない程度の音だ。だからナマエは、その音をはじめて聞いた。会話の切れ目だったこともあり、その音ははっきりと二人の耳に届いてしまった。
ややあって、ブルックが薄く微笑んだようだった。しかし、それはナマエには正しく読み取れない。
「ヨホホ、なにせもう骨だけなもので。お恥ずかしい」
ブルックの声色は明るかった。ナマエには、本当にブルックが気にしていないのか、取り繕って明るく振る舞っているのか分からない。ナマエは自身の、骨の上に皮膚の張られた手を見た。太陽にかざせば、血管が赤く透けるだろう。隣にいる彼にはないものだ。それでも、その差を今ブルックが感じていたとしたら。ナマエには悲しく思えた。
「中身の入ってない骸骨はもっと乾いて寂しい音をたてるよ。あなただって、分かっているでしょう」
ナマエの言葉に、ブルックは眼球のない目をぱちくりと見開いた。人の内心を慮るのが上手いナマエが、そのように踏み込んだことを言ってくるとは思わなかったのだ。
「……ええ、よく存じておりますよ」
この船では比較的新入りのブルックは、目の前にいる若者の事情を知らなかった。それでも、ナマエが自身の中の傷を開示してまで反論したかったということは分かった。
「ブルックさん、私は私の考えしか伝えることができないけど、私はどんな形であれあなたが生きていてくれて嬉しいと思っているよ」
緊張のためか、ナマエの声が震えているのがブルックの鋭敏な耳にはよく分かった。そのくせ、まっすぐに自分に向けた眼差しは月明かりを反射して眩しい。告白されているようだ、と年甲斐もなくブルックは思った。
