漫画(ジャンプ系)
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仕事を終えたナマエは、自宅の窓から光が漏れているのに気が付いた。ナマエは一人暮らしである。誰もいない部屋にどうして明かりがつきっぱなしになっているのか。決して裕福でないナマエは、家に泥棒が入ったなどの可能性には思い当たらなかった。そもそもこの辺りはまだ治安のいい方である。もし出がけの自分の不注意であれば、そんなに勿体ないことはない。ナマエは急いで家の扉を開けた。
「遅かったな」
広くないワンルームのソファにどっかりと腰かけた男が、横柄に言った。
「………………ルッチ?」
「それ以外に誰がいるって?」
ルッチの横で膨らんでいたハットリがポポ、と鳴いた。ナマエは一瞬、趣味の悪い夢でも見ているのかと思った。しかしルッチの恰好はやたらと高そうなスーツであり、その姿はナマエの記憶にはなかった。
「生きてたんだ」
言葉以上の含みがなさそうな、あっけらかんとしたナマエの言葉で、ルッチの眉間にシワが寄った。
「久しぶりに会った恋人へ言うことか」
「恋人ォ!?」
ルッチの顔がますます険しくなる。人の一人や二人殺してそうな凶悪さだな、とナマエは久々の感想を抱いた。
実際、二人が恋人同士だったのは事実である。しかしそれも何年も前のことだ。
「自分がいなくなってから何年経ってると思ってんのさ」
反論しながら、ナマエは自分でも考える。五年以上は経っているだろうが、正確なところは自身でもあやふやだった。
当時も、ルッチはふらりと町に現れた。日雇いで色々な場所で働いていたのだ。出会ったのは今はもう潰れた酒場で、いつの間にかそういう仲になり、いつの間にかハットリごと家に転がり込まれていた。傍若無人なところもあるが、変に憎めないところと、細かいことを気にしないナマエの性質もあって付き合いは続いていた。しかし、ある日いつものように出かけたルッチはそのまま帰ってこなかったのだ。さすがに、いなくなってからしばらくの間はナマエもルッチのことを探していたが、町のどこにも彼の痕跡は見つからなかった。
この土地でも流れ者は珍しくない。ルッチもその一人だったのだろう。ナマエはそう了解していた。
「どこ行ってたの?」
ナマエの質問にルッチは黙り込んだ。答えたくないことに一切答えないのは、かつてのままらしい。
今、ナマエの目の前にいるルッチは姿を消した時期などなかったかのように振る舞っている。ハットリが皿の上の豆をついばんでいると思ったら、それは片付けそびれたままだったハットリ用のエサ皿であった。はぁ、とナマエは大きくため息を一つついた。
「ここから私が引っ越してたらどうするつもりだったのさ」
「………………考えてなかった」
やや沈黙したのち、ルッチはそれだけ答えた。ポ!? とハットリがエサ皿から顔を上げ、困惑したように鳴く。久しぶりの再会で、知らずに緊張していたナマエは、ルッチの答えに力が抜ける。自分が玄関に立ちっぱなしだったのにも、やっと気が付いた。ソファに近付き、傍らのローテーブルにとまっているハットリを撫でた。羽の滑らかさとぬくもりを感じて、ナマエはやっと今が現実であることを飲み込めた気がした。
「何か食べる?」
「食べる」
本当にありあわせになるだろうが、勝手に来たのは向こうだから気を遣う必要はないだろう。ナマエはそう結論づけた。またしばらくはここにいるのかもしれないし、明日になったらいなくなるかもしれない。ただ、いなくなることと関係性が断たれることはルッチの中で同義じゃないらしかった。勝手な奴だと思わないでもないが、蹴り出すほどの強い感情は湧かなかった。かといって無条件に嬉しさが勝つほどの情もない。
しかし、短くはない年数が経ったのに変わらず恋人が待っていると信じ切るルッチの態度には子どもじみた思い込みを感じ、多少絆される気持ちがあるのも確かであった。目下の問題は、買い替えてしまったベッドがシングルサイズなことのみである。
「遅かったな」
広くないワンルームのソファにどっかりと腰かけた男が、横柄に言った。
「………………ルッチ?」
「それ以外に誰がいるって?」
ルッチの横で膨らんでいたハットリがポポ、と鳴いた。ナマエは一瞬、趣味の悪い夢でも見ているのかと思った。しかしルッチの恰好はやたらと高そうなスーツであり、その姿はナマエの記憶にはなかった。
「生きてたんだ」
言葉以上の含みがなさそうな、あっけらかんとしたナマエの言葉で、ルッチの眉間にシワが寄った。
「久しぶりに会った恋人へ言うことか」
「恋人ォ!?」
ルッチの顔がますます険しくなる。人の一人や二人殺してそうな凶悪さだな、とナマエは久々の感想を抱いた。
実際、二人が恋人同士だったのは事実である。しかしそれも何年も前のことだ。
「自分がいなくなってから何年経ってると思ってんのさ」
反論しながら、ナマエは自分でも考える。五年以上は経っているだろうが、正確なところは自身でもあやふやだった。
当時も、ルッチはふらりと町に現れた。日雇いで色々な場所で働いていたのだ。出会ったのは今はもう潰れた酒場で、いつの間にかそういう仲になり、いつの間にかハットリごと家に転がり込まれていた。傍若無人なところもあるが、変に憎めないところと、細かいことを気にしないナマエの性質もあって付き合いは続いていた。しかし、ある日いつものように出かけたルッチはそのまま帰ってこなかったのだ。さすがに、いなくなってからしばらくの間はナマエもルッチのことを探していたが、町のどこにも彼の痕跡は見つからなかった。
この土地でも流れ者は珍しくない。ルッチもその一人だったのだろう。ナマエはそう了解していた。
「どこ行ってたの?」
ナマエの質問にルッチは黙り込んだ。答えたくないことに一切答えないのは、かつてのままらしい。
今、ナマエの目の前にいるルッチは姿を消した時期などなかったかのように振る舞っている。ハットリが皿の上の豆をついばんでいると思ったら、それは片付けそびれたままだったハットリ用のエサ皿であった。はぁ、とナマエは大きくため息を一つついた。
「ここから私が引っ越してたらどうするつもりだったのさ」
「………………考えてなかった」
やや沈黙したのち、ルッチはそれだけ答えた。ポ!? とハットリがエサ皿から顔を上げ、困惑したように鳴く。久しぶりの再会で、知らずに緊張していたナマエは、ルッチの答えに力が抜ける。自分が玄関に立ちっぱなしだったのにも、やっと気が付いた。ソファに近付き、傍らのローテーブルにとまっているハットリを撫でた。羽の滑らかさとぬくもりを感じて、ナマエはやっと今が現実であることを飲み込めた気がした。
「何か食べる?」
「食べる」
本当にありあわせになるだろうが、勝手に来たのは向こうだから気を遣う必要はないだろう。ナマエはそう結論づけた。またしばらくはここにいるのかもしれないし、明日になったらいなくなるかもしれない。ただ、いなくなることと関係性が断たれることはルッチの中で同義じゃないらしかった。勝手な奴だと思わないでもないが、蹴り出すほどの強い感情は湧かなかった。かといって無条件に嬉しさが勝つほどの情もない。
しかし、短くはない年数が経ったのに変わらず恋人が待っていると信じ切るルッチの態度には子どもじみた思い込みを感じ、多少絆される気持ちがあるのも確かであった。目下の問題は、買い替えてしまったベッドがシングルサイズなことのみである。
