漫画(ジャンプ系)
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船乗りに喫煙者は多い。麦わらの一味である彼女もその一人であった。夜も更けて誰もいない甲板で、残り少ない紙巻たばこに火をつける。毎日すぱすぱと吸っているわけではないが、さすがに次の寄港地で補充しなければならない。はぁ、とため息と共に煙を吐いた。決していい香りなどではないが、慣れ親しんだにおいに包まれるのは安心するものだった。
「いい夜ですね」
月明かりを遮るように、音もなく背後に立った人影を彼女は見上げる。立ちのぼった煙のいくらかが、かすかに隙間のあるブルックの口の中に吸い込まれて、真っ暗な眼窩から抜けていった。
「いるならいるって言ってくださいよ」
「邪魔したら悪いかと思いまして」
ブルックの差し出した手を無視して、彼女はまだ長さのある吸いさしを、躊躇なく握り潰す。火の消えたぐしゃぐしゃの吸い殻をポケットにしまったその真面目な横顔を見て、ブルックはやれやれと首を振った。
「ナミさんやルフィさんの前ならともかく、私は気にしませんよ」
「わたしが気にするんで」
非喫煙者の前で煙草を吸わないというのが彼女のポリシーであった。相手がどう思っているかは関係がない。自分の吸っている煙草のにおいで、相手を汚してしまいそうな気がするからだ。
一方のブルックは、自分で煙草を吸うのはあまり好まない。しかし情のある彼女の吐き出す煙であれば、自分の体の中に通すのはやぶさかでなかった。元より、煙で痛む声帯はないのだから。
「サンジさんとは一緒にスパスパ吸ってるのに」
子どもじみた声色で、ブルックは非難する。
「だってサンジくんは好きで吸ってますからね。ブルックさん自分から吸わないでしょ」
「うーん正論!」
ヨホホ、と陽気に笑ったブルックは、彼女の顔に自分の顔を寄せ、囁いた。
「妬けますねぇ」
宴のとき、料理が一段落ついた料理人を労わるように彼女がサンジの煙草に火をつけてやるのをブルックは見ている。年甲斐もなく、と自嘲がないでもない。しかし自分に想いを寄せているくせに他の男と親密にしているところを見せられて、悋気にかられるなという方が無理であった。ブルックもサンジという青年のことを気に入っているからなおのことである。
「大切にさせてくださいよ」
吸い殻の灰を払った己の手を、彼女はブルックの大きな手に重ねた。ブルックの心の動きを、他人である彼女が完全に把握することはできない。しかし言葉を素直に受け取ることはできる。この寂しがり屋の、年上の男を誰よりも大切にしたいのは偽りない気持ちであった。
彼女は、生家のことを思い出す。父親の吸っていた煙草のにおいと、黄ばんだ壁紙のことを。そして、月光に照らされた曇りのないブルックの白い指先を見た。どうせ汚させもしてくれないくせに、と他の人間に対してとは裏腹の感情を抱く。背中を大きく曲げて、近づけられたブルックの頬に、彼女は唇で触れた。その白く硬い肌からは、紅茶のいい匂いがした。
「いい夜ですね」
月明かりを遮るように、音もなく背後に立った人影を彼女は見上げる。立ちのぼった煙のいくらかが、かすかに隙間のあるブルックの口の中に吸い込まれて、真っ暗な眼窩から抜けていった。
「いるならいるって言ってくださいよ」
「邪魔したら悪いかと思いまして」
ブルックの差し出した手を無視して、彼女はまだ長さのある吸いさしを、躊躇なく握り潰す。火の消えたぐしゃぐしゃの吸い殻をポケットにしまったその真面目な横顔を見て、ブルックはやれやれと首を振った。
「ナミさんやルフィさんの前ならともかく、私は気にしませんよ」
「わたしが気にするんで」
非喫煙者の前で煙草を吸わないというのが彼女のポリシーであった。相手がどう思っているかは関係がない。自分の吸っている煙草のにおいで、相手を汚してしまいそうな気がするからだ。
一方のブルックは、自分で煙草を吸うのはあまり好まない。しかし情のある彼女の吐き出す煙であれば、自分の体の中に通すのはやぶさかでなかった。元より、煙で痛む声帯はないのだから。
「サンジさんとは一緒にスパスパ吸ってるのに」
子どもじみた声色で、ブルックは非難する。
「だってサンジくんは好きで吸ってますからね。ブルックさん自分から吸わないでしょ」
「うーん正論!」
ヨホホ、と陽気に笑ったブルックは、彼女の顔に自分の顔を寄せ、囁いた。
「妬けますねぇ」
宴のとき、料理が一段落ついた料理人を労わるように彼女がサンジの煙草に火をつけてやるのをブルックは見ている。年甲斐もなく、と自嘲がないでもない。しかし自分に想いを寄せているくせに他の男と親密にしているところを見せられて、悋気にかられるなという方が無理であった。ブルックもサンジという青年のことを気に入っているからなおのことである。
「大切にさせてくださいよ」
吸い殻の灰を払った己の手を、彼女はブルックの大きな手に重ねた。ブルックの心の動きを、他人である彼女が完全に把握することはできない。しかし言葉を素直に受け取ることはできる。この寂しがり屋の、年上の男を誰よりも大切にしたいのは偽りない気持ちであった。
彼女は、生家のことを思い出す。父親の吸っていた煙草のにおいと、黄ばんだ壁紙のことを。そして、月光に照らされた曇りのないブルックの白い指先を見た。どうせ汚させもしてくれないくせに、と他の人間に対してとは裏腹の感情を抱く。背中を大きく曲げて、近づけられたブルックの頬に、彼女は唇で触れた。その白く硬い肌からは、紅茶のいい匂いがした。
