漫画(ジャンプ系)
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音楽の島、エレジア。気候も比較的穏やかで、他に何もないような辺境の地にあるために海賊などもあまり寄り付かない。ここに住む人々は誰しもが音楽を愛しており、必ず皆ひとつは楽器を演奏できる。僕だって例外じゃない。ピアノとかギターとかチェンバロとか、色々やったけど一番性に合った楽器は自分自身の声だった。同じくらいの年頃の男子も女子も僕のボーイソプラノには敵わなかった。なにせあのゴードン国王からも直々に褒められたのだ。
「君の歌は天使の歌声のように素晴らしい」
そんな誉め言葉をいただいても僕は調子に乗らず、真面目に練習をした。発声練習とか以外にも図書館に籠って今歌っている曲がどのような背景を持つのかや様々な表現方法を調べたりもした。そうしていたら時間はあっという間に過ぎていく。外でほとんど遊ばなかったからか、僕の背はあまり伸びていない。周りは皆、音楽も好きだけど外で遊ぶのも好きだという子たちばかりだ。僕が図書館で本を読んでいる間に、彼らはにょきにょきと背が伸びて声もどんどん低くなっていった。同じパートで隣で歌っていた友だちも、テノールのパートを歌うようになった。
そんなある日、島が急に騒がしくなった。聞けば、海賊の船が来たらしい。でもその海賊たちは他と違って略奪のためでも遭難の結果でもないようだった。よく日に焼けてオペラ歌手とはまた違った体格の良さを持つ男たちに混じって小さな女の子がいるという噂は島中を駆け巡った。屈強な海賊たちに手を引かれて学院を見学しているその子は、悪い海賊に誘拐されてきたようには見えなかった。もしかしたら船員の誰かの娘なのかもしれない。自分が外から来た音楽家でもなさそうな人間に興味を持つことはそうそうない。けど、自分にしては珍しく図書館から出て見学している海賊たちの後を追った。他にも野次馬をしている生徒は何人かいたから、そこに混じって、ホールへ滑り込む。大人たちで構成された楽団を率いるようにステージの中心に立っているのは、その女の子だった。すう、と彼女の歌い出しのブレスがよく聞こえた。
「すばらしい!」
ゴードン国王が熱の入った声で彼女を褒めそやしている。僕のときの熱量とはずいぶん違うように見えた。それは来客へのお世辞とかではなく心からの本音であることが分かってしまう。だって僕もエレジアの国民だから。彼女のまっすぐ伸びる声は一瞬で全身に突き刺さり、否応なしに胸を震わせる。彼女が何を表現したいのかを強引にでも分からされる。自分がもし、この年頃の人間に一人の逸材であるならば彼女はこの時代にただ一人の逸材であった。ぎり、と僕は歯を食いしばる。無理やりに悪夢から目覚めようとするときのように。重厚なホールに似合わない「いいぞ! ウタ!」という粗野な歓声が飛んでいた。
海賊――もとい海賊の連れて来た彼女を囲むパーティーが行われているが、足を運ぶ気にはなれなかった。皆ホールに集まっているから、図書館には自分の他は誰もいない。きっと誰もが彼女と一緒に歌いたいと思っているか、彼女の歌に合わせて演奏したいと思っている。それに、彼女はそれを拒まないのだろう。パーティーに参加しなかったことを、未来の自分は後悔するかもしれないが、今は心の整理が付いていなかった。彼女が歌っていた歌を口ずさむ。むしゃくしゃしているときに歌っても美しい旋律は奏でられない。でも何にむしゃくしゃしてるかといえば、彼女にではなく彼女に嫉妬する気にもなれない自分自身だ。勝手に溢れてくる涙は、袖で拭った。自分に対して乱暴にしたかったのだ
図書館の奥底に押し込められた、ページの取れかけた古い本に書かれていたことを思い出した。この島に封印されているという魔王トットムジカ。世界を滅ぼすこともできると書かれていた。垂れてきた鼻を啜る。世界が滅ぶなら今日この瞬間だと思った。
「君の歌は天使の歌声のように素晴らしい」
そんな誉め言葉をいただいても僕は調子に乗らず、真面目に練習をした。発声練習とか以外にも図書館に籠って今歌っている曲がどのような背景を持つのかや様々な表現方法を調べたりもした。そうしていたら時間はあっという間に過ぎていく。外でほとんど遊ばなかったからか、僕の背はあまり伸びていない。周りは皆、音楽も好きだけど外で遊ぶのも好きだという子たちばかりだ。僕が図書館で本を読んでいる間に、彼らはにょきにょきと背が伸びて声もどんどん低くなっていった。同じパートで隣で歌っていた友だちも、テノールのパートを歌うようになった。
そんなある日、島が急に騒がしくなった。聞けば、海賊の船が来たらしい。でもその海賊たちは他と違って略奪のためでも遭難の結果でもないようだった。よく日に焼けてオペラ歌手とはまた違った体格の良さを持つ男たちに混じって小さな女の子がいるという噂は島中を駆け巡った。屈強な海賊たちに手を引かれて学院を見学しているその子は、悪い海賊に誘拐されてきたようには見えなかった。もしかしたら船員の誰かの娘なのかもしれない。自分が外から来た音楽家でもなさそうな人間に興味を持つことはそうそうない。けど、自分にしては珍しく図書館から出て見学している海賊たちの後を追った。他にも野次馬をしている生徒は何人かいたから、そこに混じって、ホールへ滑り込む。大人たちで構成された楽団を率いるようにステージの中心に立っているのは、その女の子だった。すう、と彼女の歌い出しのブレスがよく聞こえた。
「すばらしい!」
ゴードン国王が熱の入った声で彼女を褒めそやしている。僕のときの熱量とはずいぶん違うように見えた。それは来客へのお世辞とかではなく心からの本音であることが分かってしまう。だって僕もエレジアの国民だから。彼女のまっすぐ伸びる声は一瞬で全身に突き刺さり、否応なしに胸を震わせる。彼女が何を表現したいのかを強引にでも分からされる。自分がもし、この年頃の人間に一人の逸材であるならば彼女はこの時代にただ一人の逸材であった。ぎり、と僕は歯を食いしばる。無理やりに悪夢から目覚めようとするときのように。重厚なホールに似合わない「いいぞ! ウタ!」という粗野な歓声が飛んでいた。
海賊――もとい海賊の連れて来た彼女を囲むパーティーが行われているが、足を運ぶ気にはなれなかった。皆ホールに集まっているから、図書館には自分の他は誰もいない。きっと誰もが彼女と一緒に歌いたいと思っているか、彼女の歌に合わせて演奏したいと思っている。それに、彼女はそれを拒まないのだろう。パーティーに参加しなかったことを、未来の自分は後悔するかもしれないが、今は心の整理が付いていなかった。彼女が歌っていた歌を口ずさむ。むしゃくしゃしているときに歌っても美しい旋律は奏でられない。でも何にむしゃくしゃしてるかといえば、彼女にではなく彼女に嫉妬する気にもなれない自分自身だ。勝手に溢れてくる涙は、袖で拭った。自分に対して乱暴にしたかったのだ
図書館の奥底に押し込められた、ページの取れかけた古い本に書かれていたことを思い出した。この島に封印されているという魔王トットムジカ。世界を滅ぼすこともできると書かれていた。垂れてきた鼻を啜る。世界が滅ぶなら今日この瞬間だと思った。
