漫画(ジャンプ系)
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うちのあまり広くないベランダを圧迫しているのは、元彼が置いていったでかい観葉植物だ。勤め先のオフィスで邪魔になり捨てられるところだったのを、忍びないとかで持って帰ってきたのだったか。あの頃はまだ円満だったから、優しいねと感心したものだったが愛想がつきて久しい今となっては、そのようにぐずぐずと物を捨てられないところが嫌だったのだと分かる。会社の観葉植物も元サークルの後輩とかいう女子のことも。同居を解消して大体のものは引き上げられていったがあの鉢植えだけは置き去りにされた。なし崩しに押し付けられたともいう。とりあえず屋内に置いておくのは邪魔で仕方ない。外に出せば枯れるだろうと思ったが日光を浴びてすくすく……とはいかないまでもねじれた幹からひょろひょろ枝を伸ばしている。まだ生きているものを自分で終わりにする勇気だったり、また土や鉢の始末をする気力がなかったりする自分もあの元彼と同じなのかもしれなかった。
寝入りばな、怒号や何かが割れる音で私は現実へと引き戻された。隣の部屋からのようだ。誰かしらが住んでいることは知っていたが、特に交流はない。強盗だろうか、それとも喧嘩だろうか。通報したほうがいいのではないかと私はそっとベランダに出て、観葉植物越しに隣を覗き込む。すると割れた窓を背景に見知らぬ男が部屋の中を伺っていた。やはり強盗か。ば、と男がこちらを振り向く。まずいと思ったが体は咄嗟に動かない。男の舌打ちが静かな夜に響いてこちらの腕を掴もうとした。もう片方の手に握られたナイフが光るのが目に入る。
「こらこら」
こちらの硬直や男の必死な顔に不釣り合いなほど穏やかな仲裁が聞こえた。男の姿が一瞬で消える。入れ替わりにいかにも優男風の青年が顔を出した。さっきの穏やかな声の主だと私は気が付く。
「うるさくしてごめんね~」
ちっとも申し訳なくなさそうに彼は謝る。その緊張感のなさに、私は日常に引き戻される。しかし先ほど私を引っ張ろうとしたほうの男が、彼の背後でナイフを振りかぶった。危ない、と私が叫ぶ前に優男はぐわ、とそれなりの重さがあるはずの観葉植物を片手で掴み持ち上げる。そのまま勢いを付けてこちらからあちらへ振りかぶり男の頭へ振り下ろした。アクション映画のような一幕だったが現実はあまりに一瞬だったし派手な音はしないのだった。清潔な白い色をした鉢は陶器だったから粉々に割れて土と血にまみれている。木の幹は真っ二つに折れていた。あっけにとられている私に、優男があっという顔をする。
「借りちゃった」
「いや、返さなくていいです……」
そもそも返せないだろ、と思う前に私は返答していた。鉢植えが外的要因でばらばらに損なわれた事については、むしろ清々した気持ちすらある。ざり、と青年が散らばった土を踏む。殴られたほうの男は倒れたまま動かない。まさか死んだのだろうか。青年の顔についている汚れは返り血らしいということに気付いていないふりをして私はベランダの外に視線を向ける。アパートの下の植え込みから足が二本突き出ている気がするがそれもきっと気のせいだろう。あっ、と青年が手を叩く。
「片付けはこっちで頼むからダイジョーブ!」
この場において明確に加害者なのは彼だろうと思うが、目の前で通報されるとは考えないのだろうか。呑気そうな笑顔を見て私は思う。しかし彼の目が笑っていないことに気が付いて冷や汗が首をつたった。
「お邪魔しました~」
通報されても問題ないし私のような人間を見逃しても構わないのだろう。ご近所付き合いの一環のように軽く手を振ったこの青年は。青年が隣の部屋に引っ込むのを見届けて、私は彼がその気になったら無駄だろうと思いながら、自室のベランダと玄関の鍵をしっかり閉めなおした。
寝入りばな、怒号や何かが割れる音で私は現実へと引き戻された。隣の部屋からのようだ。誰かしらが住んでいることは知っていたが、特に交流はない。強盗だろうか、それとも喧嘩だろうか。通報したほうがいいのではないかと私はそっとベランダに出て、観葉植物越しに隣を覗き込む。すると割れた窓を背景に見知らぬ男が部屋の中を伺っていた。やはり強盗か。ば、と男がこちらを振り向く。まずいと思ったが体は咄嗟に動かない。男の舌打ちが静かな夜に響いてこちらの腕を掴もうとした。もう片方の手に握られたナイフが光るのが目に入る。
「こらこら」
こちらの硬直や男の必死な顔に不釣り合いなほど穏やかな仲裁が聞こえた。男の姿が一瞬で消える。入れ替わりにいかにも優男風の青年が顔を出した。さっきの穏やかな声の主だと私は気が付く。
「うるさくしてごめんね~」
ちっとも申し訳なくなさそうに彼は謝る。その緊張感のなさに、私は日常に引き戻される。しかし先ほど私を引っ張ろうとしたほうの男が、彼の背後でナイフを振りかぶった。危ない、と私が叫ぶ前に優男はぐわ、とそれなりの重さがあるはずの観葉植物を片手で掴み持ち上げる。そのまま勢いを付けてこちらからあちらへ振りかぶり男の頭へ振り下ろした。アクション映画のような一幕だったが現実はあまりに一瞬だったし派手な音はしないのだった。清潔な白い色をした鉢は陶器だったから粉々に割れて土と血にまみれている。木の幹は真っ二つに折れていた。あっけにとられている私に、優男があっという顔をする。
「借りちゃった」
「いや、返さなくていいです……」
そもそも返せないだろ、と思う前に私は返答していた。鉢植えが外的要因でばらばらに損なわれた事については、むしろ清々した気持ちすらある。ざり、と青年が散らばった土を踏む。殴られたほうの男は倒れたまま動かない。まさか死んだのだろうか。青年の顔についている汚れは返り血らしいということに気付いていないふりをして私はベランダの外に視線を向ける。アパートの下の植え込みから足が二本突き出ている気がするがそれもきっと気のせいだろう。あっ、と青年が手を叩く。
「片付けはこっちで頼むからダイジョーブ!」
この場において明確に加害者なのは彼だろうと思うが、目の前で通報されるとは考えないのだろうか。呑気そうな笑顔を見て私は思う。しかし彼の目が笑っていないことに気が付いて冷や汗が首をつたった。
「お邪魔しました~」
通報されても問題ないし私のような人間を見逃しても構わないのだろう。ご近所付き合いの一環のように軽く手を振ったこの青年は。青年が隣の部屋に引っ込むのを見届けて、私は彼がその気になったら無駄だろうと思いながら、自室のベランダと玄関の鍵をしっかり閉めなおした。
