漫画(ジャンプ系)
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王宮の庭は広い。それを中心となって管理している庭師が彼であった。事実、年齢のわりに優秀な男でもあるが、口がさない人間はドフラミンゴに気に入られているからだと噂している。当の本人は噂を意識しないようにしているが。実際、今この王宮の主であるドフラミンゴには気に入られているのだろう。その理由を自分から吹聴するようなことはしない。後ろめたいものではないが、ただ恥ずかしいのだ。
能力が認められて王宮付きの庭師になったばかりの頃、トピアリーの手入れをしていたとき後ろからがさがさと誰かが来る音が聞こえたのだ。集中していた庭師は、そんなわけがないのについ「兄さん?」と呼んでしまった。
「フフフ! 兄さんじゃなくて悪かったな」
「ドフラミンゴ様!」
とんだ無礼を、と彼は頭を深く下げた。兄もまた庭師であったが、少し前から他の島へ招聘されている。一緒に作業をしていた頃の癖はまだ抜けていなかった。構わん、とドフラミンゴが鷹揚に笑ったので、庭師は意外に思う。海兵でも海賊でもない彼にとって、七武海なぞはちょっとした妖怪変化の類に感じていたからだ。
後日、彼は更に驚かされることになる。仕事など手につかず、ドフラミンゴを探し回り王宮内を駆け回った。結局ドアを蹴破る勢いで書斎に転がり込む。
「とても頂けません、こんな立派な物!」
おれは新入りなんですよ、と言う庭師の手に握りしめられているのは、かの有名な鍛冶師が鍛えた剪定鋏であった。手入れをすれば百年は使えるという代物であり、無論庭師も憧れてはいたがこんなに降って湧いたように手に入っても嬉しくはない。むしろ恐ろしいだけである。
「フッフ、それだけ期待してるということさ」
慌てふためく庭師を見てドフラミンゴは満足そうに笑う。実際安くはない買い物であるが、ドフラミンゴにとっては大した金ではなかった。そして与えたものを素直に突き返されるような男ではない。庭師は震える手を握りしめて、精進させていただきますと諦めたように答えた。彼が律儀にもらった鋏を使っているものだから、嫌でも噂は立つ。贈り主を隠すのも失礼である気がして、頂いたものだと正直に庭師は答える。そのことをドフラミンゴに訊く者も居た。しかし冗談めいた口調で「兄さんと呼ばれたからな」と答えられてしまえばそれ以上言及する勇者はいなかった。古株であればあるほどコラソンのことを思い出したからだ。しかし、庭師は職業柄手先が器用で、また周囲の失敗のフォローに回ることのほうが多かった。また、反対に庭師の兄も太陽の下で働く人間らしい快活さと正直さがあり、ドフラミンゴとは似ても似つかない性質であった。無論庭師はドフラミンゴと兄を重ねたことはない。強者の考えることは意味が分からないと思っている。ただ、目をかけられていることは分かっていた。不義理をしたくはないのと、実際王宮の庭で仕事ができるのは嬉しいことのため真面目に仕事に励んでいた。
その甲斐があり、何年か後には庭の各所に新しい品種や育てるのか困難な花が活き活きと咲き誇っていた。よく手入れされた芝を踏む足音がして、すぐに薔薇の蕾を間引いていた庭師の手元が陰った。真後ろにドフラミンゴが立ったからだ。けして小柄な方ではない庭師だが、ドフラミンゴの影にはすっぽりと収まってしまう。至近距離すぎて振り向くこともできず、彼は首が痛くなるほど上を見上げ雇い主に挨拶をした。その手元に握られているのが、自分の贈った鋏であることに、ドフラミンゴはサングラスの奥の目を細める。庭師の髪についていた葉を取ってやり、そのまま指を首や頬に這わせた。
「お戯れを」
刃物を持っている相手にちょっかいを出すこと自体を庭師は咎めなかった。どうせ本気を出すまでもなく気まぐれに指先ひとつ動かすだけで自分の命を奪えることを知っていたからだ。
「相変わらずつれないな」
ドフラミンゴが気まぐれにかけてくるちょっかいについて、庭師は一貫した態度で接している。さすがに雇い主をはねつけることはできないが、これ以上変に寵愛を受ける気もなかった。兄のように思え、と言われたこともあったがそれもまた「お戯れを」と流している。しかしそのような生意気も結局はドフラミンゴに許されているに過ぎない。今日もまたあっさりと主が自分から離れたため、庭師は安堵する。ドフラミンゴの足が、今朝咲いたばかりのマーガレットを踏みつけにしていた。潰れてしまった株を抜かなければ、と庭師は算段を立てる。また同時に、この男にとっては自分もこの小さな花のようなものだろうとも思った。小さな蕾であるのに、剪定した薔薇の強い匂いが手に移っている。
能力が認められて王宮付きの庭師になったばかりの頃、トピアリーの手入れをしていたとき後ろからがさがさと誰かが来る音が聞こえたのだ。集中していた庭師は、そんなわけがないのについ「兄さん?」と呼んでしまった。
「フフフ! 兄さんじゃなくて悪かったな」
「ドフラミンゴ様!」
とんだ無礼を、と彼は頭を深く下げた。兄もまた庭師であったが、少し前から他の島へ招聘されている。一緒に作業をしていた頃の癖はまだ抜けていなかった。構わん、とドフラミンゴが鷹揚に笑ったので、庭師は意外に思う。海兵でも海賊でもない彼にとって、七武海なぞはちょっとした妖怪変化の類に感じていたからだ。
後日、彼は更に驚かされることになる。仕事など手につかず、ドフラミンゴを探し回り王宮内を駆け回った。結局ドアを蹴破る勢いで書斎に転がり込む。
「とても頂けません、こんな立派な物!」
おれは新入りなんですよ、と言う庭師の手に握りしめられているのは、かの有名な鍛冶師が鍛えた剪定鋏であった。手入れをすれば百年は使えるという代物であり、無論庭師も憧れてはいたがこんなに降って湧いたように手に入っても嬉しくはない。むしろ恐ろしいだけである。
「フッフ、それだけ期待してるということさ」
慌てふためく庭師を見てドフラミンゴは満足そうに笑う。実際安くはない買い物であるが、ドフラミンゴにとっては大した金ではなかった。そして与えたものを素直に突き返されるような男ではない。庭師は震える手を握りしめて、精進させていただきますと諦めたように答えた。彼が律儀にもらった鋏を使っているものだから、嫌でも噂は立つ。贈り主を隠すのも失礼である気がして、頂いたものだと正直に庭師は答える。そのことをドフラミンゴに訊く者も居た。しかし冗談めいた口調で「兄さんと呼ばれたからな」と答えられてしまえばそれ以上言及する勇者はいなかった。古株であればあるほどコラソンのことを思い出したからだ。しかし、庭師は職業柄手先が器用で、また周囲の失敗のフォローに回ることのほうが多かった。また、反対に庭師の兄も太陽の下で働く人間らしい快活さと正直さがあり、ドフラミンゴとは似ても似つかない性質であった。無論庭師はドフラミンゴと兄を重ねたことはない。強者の考えることは意味が分からないと思っている。ただ、目をかけられていることは分かっていた。不義理をしたくはないのと、実際王宮の庭で仕事ができるのは嬉しいことのため真面目に仕事に励んでいた。
その甲斐があり、何年か後には庭の各所に新しい品種や育てるのか困難な花が活き活きと咲き誇っていた。よく手入れされた芝を踏む足音がして、すぐに薔薇の蕾を間引いていた庭師の手元が陰った。真後ろにドフラミンゴが立ったからだ。けして小柄な方ではない庭師だが、ドフラミンゴの影にはすっぽりと収まってしまう。至近距離すぎて振り向くこともできず、彼は首が痛くなるほど上を見上げ雇い主に挨拶をした。その手元に握られているのが、自分の贈った鋏であることに、ドフラミンゴはサングラスの奥の目を細める。庭師の髪についていた葉を取ってやり、そのまま指を首や頬に這わせた。
「お戯れを」
刃物を持っている相手にちょっかいを出すこと自体を庭師は咎めなかった。どうせ本気を出すまでもなく気まぐれに指先ひとつ動かすだけで自分の命を奪えることを知っていたからだ。
「相変わらずつれないな」
ドフラミンゴが気まぐれにかけてくるちょっかいについて、庭師は一貫した態度で接している。さすがに雇い主をはねつけることはできないが、これ以上変に寵愛を受ける気もなかった。兄のように思え、と言われたこともあったがそれもまた「お戯れを」と流している。しかしそのような生意気も結局はドフラミンゴに許されているに過ぎない。今日もまたあっさりと主が自分から離れたため、庭師は安堵する。ドフラミンゴの足が、今朝咲いたばかりのマーガレットを踏みつけにしていた。潰れてしまった株を抜かなければ、と庭師は算段を立てる。また同時に、この男にとっては自分もこの小さな花のようなものだろうとも思った。小さな蕾であるのに、剪定した薔薇の強い匂いが手に移っている。
