漫画(ジャンプ系)
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この程度の賊軍はクザンの敵ではなかった。押し寄せる物量だけがやや面倒くさいだけだ。敵だった氷像の間を彼は悠々と歩き、気まぐれを起こして部下たちの様子をちゃんと見に行くことにした。概ね鎮圧されていたようだが、やたらと一角が騒がしかった。その雰囲気に剣呑なものを感じて、嫌々ながらクザンは歩を進める。おおかた功を逸ったぺーぺーが痛い目を見たのだろう、くらいにしか思っていなかった。
しかし近づいてみると、クザンの予想に反してそういうことをしそうな新入りは無事であった。普段は血の気の多い元気な若造であるが、今は青菜に塩を振ったようにおとなしくうなだれている。
「あらら、どうしたの」
いつもと変わらぬクザンの問いかけに、彼はぱくぱくと何かを言いかけて一度口をつぐみ、少将が。とだけやっと発声した。
「自分を、庇って」
若造のすぐそばに倒れ伏しているのは、いつもクザンの尻叩き係になっている少将であった。泣きそうな新入りの支離滅裂な説明を総合すると、命令を聞かず飛び出た自分を敵の攻撃から庇ったらしい。甘ちゃんだからなァ、とクザンは頭を掻く。そんなだから自分のような人間の目付役を押し付けられるし命令無視した後輩を庇って死にかけるのだ。
「……自分、は平気だから、一般人の……救護を」
コートの下のシャツが半分くらい焼け焦げているのによくもそんな鋭い目つきができるものだ。一人でも死なせたらお前を殺すといわんばかりの眼光に気圧された新入りは彼女に(クザンではなく)敬礼をして走り去っていった。あんたもですよ、と大義そうに呟いた声はもうほとんど喉を震わせていない。クザンは彼女が睨むのをいつものように無視して腰を下ろした。
「もう制圧は済んでるんだから、そうカッカするんじゃァないよ」
失礼、とクザンはもうほとんど用をなさなくなったシャツを破り彼女の傷の様子を確かめる。いつもであれば抗議の声と足が飛んでくるところだが流石に地面に吸われた血が多い。火傷は広範囲のわりには表皮を多少焼いたくらいで済んでいるようだったが、ざっくりとついた切り傷のほうがまずい状況であった。意識を保っているのが不思議なくらいだ。はぁ、とクザンはため息をつく。こんな状況でもなければ嬉しいんだけどねと心中でぼやきつつ、部下の腹に手を置いた。彼女の呼吸はさすがにいつもよりも荒い。
「失血死よりはマシでしょうよ」
パキパキと音を立てて彼女の腹を薄い氷が覆っていく。応急処置として医務室に担ぎ込まれるまで保てばいいのだ。氷が張るまでの僅かな間、直に触れた肌はまだ命の燃えるあたたかさがあった。人間の胴体程度、直に触らずともクザンであれば好きなように凍らせることができる。それなのにわざわざ触れたことまではまったく無意識だった。しかし、その手の冷たさに目を閉じたまま反射的に身じろぎをする彼女を見たクザンはまた大きくため息をついた。何をされているのか分かっていないわけではないだろうに、もう抵抗する元気もないのかそれとも多少の信頼はあるのか。今はいったんどちらでもよかった。彼女の胴体に今回ついたものではない古傷を見つけたクザンは、これを他の人間に見せたくはないと思う。なんだかんだ歴の長い女だ。他にも古傷はあるのだろう。興味はあったがそれを暴くのは今ではないことはさすがのクザンでも分かっている。
「据え膳ならもっと平和な時にやってもらいたいもんだな」
クザンの独り言を聞いた者はいない。彼は気だるそうに立ち上がると、無理やり傷をふさいだ彼女を本人のコートにくるんで、小脇に抱えた。しばらくはこれをダシにして仕事をサボろうか、それとも食事にでも誘ってやろうか。ここまでしてやって死ぬタマではないことをクザンはよく知っている。そのため呑気に次の算段をたてながら、彼は船へ戻っていった。
しかし近づいてみると、クザンの予想に反してそういうことをしそうな新入りは無事であった。普段は血の気の多い元気な若造であるが、今は青菜に塩を振ったようにおとなしくうなだれている。
「あらら、どうしたの」
いつもと変わらぬクザンの問いかけに、彼はぱくぱくと何かを言いかけて一度口をつぐみ、少将が。とだけやっと発声した。
「自分を、庇って」
若造のすぐそばに倒れ伏しているのは、いつもクザンの尻叩き係になっている少将であった。泣きそうな新入りの支離滅裂な説明を総合すると、命令を聞かず飛び出た自分を敵の攻撃から庇ったらしい。甘ちゃんだからなァ、とクザンは頭を掻く。そんなだから自分のような人間の目付役を押し付けられるし命令無視した後輩を庇って死にかけるのだ。
「……自分、は平気だから、一般人の……救護を」
コートの下のシャツが半分くらい焼け焦げているのによくもそんな鋭い目つきができるものだ。一人でも死なせたらお前を殺すといわんばかりの眼光に気圧された新入りは彼女に(クザンではなく)敬礼をして走り去っていった。あんたもですよ、と大義そうに呟いた声はもうほとんど喉を震わせていない。クザンは彼女が睨むのをいつものように無視して腰を下ろした。
「もう制圧は済んでるんだから、そうカッカするんじゃァないよ」
失礼、とクザンはもうほとんど用をなさなくなったシャツを破り彼女の傷の様子を確かめる。いつもであれば抗議の声と足が飛んでくるところだが流石に地面に吸われた血が多い。火傷は広範囲のわりには表皮を多少焼いたくらいで済んでいるようだったが、ざっくりとついた切り傷のほうがまずい状況であった。意識を保っているのが不思議なくらいだ。はぁ、とクザンはため息をつく。こんな状況でもなければ嬉しいんだけどねと心中でぼやきつつ、部下の腹に手を置いた。彼女の呼吸はさすがにいつもよりも荒い。
「失血死よりはマシでしょうよ」
パキパキと音を立てて彼女の腹を薄い氷が覆っていく。応急処置として医務室に担ぎ込まれるまで保てばいいのだ。氷が張るまでの僅かな間、直に触れた肌はまだ命の燃えるあたたかさがあった。人間の胴体程度、直に触らずともクザンであれば好きなように凍らせることができる。それなのにわざわざ触れたことまではまったく無意識だった。しかし、その手の冷たさに目を閉じたまま反射的に身じろぎをする彼女を見たクザンはまた大きくため息をついた。何をされているのか分かっていないわけではないだろうに、もう抵抗する元気もないのかそれとも多少の信頼はあるのか。今はいったんどちらでもよかった。彼女の胴体に今回ついたものではない古傷を見つけたクザンは、これを他の人間に見せたくはないと思う。なんだかんだ歴の長い女だ。他にも古傷はあるのだろう。興味はあったがそれを暴くのは今ではないことはさすがのクザンでも分かっている。
「据え膳ならもっと平和な時にやってもらいたいもんだな」
クザンの独り言を聞いた者はいない。彼は気だるそうに立ち上がると、無理やり傷をふさいだ彼女を本人のコートにくるんで、小脇に抱えた。しばらくはこれをダシにして仕事をサボろうか、それとも食事にでも誘ってやろうか。ここまでしてやって死ぬタマではないことをクザンはよく知っている。そのため呑気に次の算段をたてながら、彼は船へ戻っていった。
