漫画(ジャンプ系)
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ある程度意識しないと思考が読めないとはいえ、それは相手にもよる。単純な相性もあるが、思考が単純な者や疑い深くない者のほうが読みやすい。だから彼女の思考は、シンにとって自然に入ってくるに等しかった。また、坂本の相棒として戦闘の際にバックアップ等をしたり買い物客の手伝いをしているシンにとっては彼女の思考を先読みしてちょっとした世話を焼くことは別段苦ではない。むしろ進んでやっているほどだ。しかし当の彼女はそれを少々、――いや、かなり申し訳なく思っている。
「ルーちゃん、どうすればいいかなぁ」
「好きにさせときなヨ」
誰も来ないのをいいことに、レジカウンターを挟んだ彼女とルーはだらだらと恋バナに興じていた。性格には一方的に彼女がシンとの惚気を聞かせるだけであるが。ポテトチップス二袋で買収されたルーはコンソメとのり塩を交互につまみながら適当に答えた。実際それしか言うことがないからである。坂本夫妻を見ているだけでも、相思相愛の人間同士の間に口を挟むだけ無駄なことは重々理解できるからだ。ただ、彼女も彼女なりに真剣である。彼女に尽くしすぎて疲弊して別れた、というサンプルを身近な友人で見てしまった彼女は我が身を振り返り、そして血の気が引いたからだ。手段は選んでいられない、と彼女は財布を出す。
「ルーちゃん、そろそろ甘いものも食べたいんじゃない?」
にやり、と二人は笑い合った。
プリンを食べ終わり、またポテトチップスをぱりぱり食べ始めたルーはそういえば、と指を舐めた。
「うちのコン……身内とシンでババ抜きしたとき、ウ……ちの身内の思考を読もうとして失敗してたネ」
「詳しく!」
うーん、と拭いた指で眉間をぐりぐりとこすってルーはそのときのことを思い出して彼女に説明する。
「……なるほど、言語化された思考を読んでるだけか」
でも鼻血を出して動けなくなるのは困るなぁ、と彼女は腕を組む。
「一個のことしか考えない……とか?」
袋の底にたまったポテトチップスの欠片を集めながら、ルーは何気なく口にする。
「ルーちゃん」
彼女の声があまりにも真剣だから、ルーは身構える。
「ルーちゃん、天才かも!」
中々ない褒められ方をした理由は分からないが、そうでしょとルーは口の周りにのりを付けたまま胸を張った。
数日後、彼女はシンと東京シュガーパークへ来ていた。坂本商店に身を寄せてすぐに大立ち回りをした場所のため、シンにとってはある意味思い出深い場所である。楽しみだねぇ、と笑う彼女に少し違和感を感じて、シンは意識を集中させる。
(寿限無寿限無……)
「は?」
「どうしたの?」
あぁいや……とシンは適当にごまかして、何かの間違いかと思いもう一度彼女の思考に意識を向ける。
(パイポパイポパイポのうわ顔良!)
思考を追うために、シンが顔を覗き込んだことに彼女は気が付いてぼっと顔を赤らめる。
(じゃなくて……えーと……パイポパイポ……)
どうやら、彼女は本当に寿限無を唱えているらしい(寿限無については、花と一緒に見た教育テレビで知った)。なぜかまでは分からないシンは首をかしげながらも、行こうかと彼女の手を引いた。
(ポンポ手を繋いでくれた!嬉しい)
はにかんだ彼女が、思い直したようにぷるぷると頭を振った。
(だめ、今日はシンくんに気を遣わせないようにしないと……寿限無寿限無……)
なるほど、とシンは合点した。もしかしたらルーあたりに入れ知恵をされたのかもしれないが、彼女程度が並行で考えていることくらいは普通に読み取ることができる。いじらしいことを……とシンが感動していることに彼女は気が付いていない。
「何から乗る?」
あえてシンが言葉にして訊いてやると、彼女は嬉しそうな顔をした。
「どうしよう、空いてるうちにジェットコースターとか?」
「絶叫系平気なんだ」
「ここのやつくらいなら!」
前に友達と来たとき、楽しかったんだよねと繋いだ手をぶんぶん振り回す彼女を、可愛いなとシンは思う。それにジェットコースターに振り回されても寿限無を唱え続けられるのかが気になってもいた。
「っワ゛ァァァァァ!」
正直もっと死ぬような目に遭っているシンは、前来た時よりも心配がなくていいなと呑気に考えながら、隣で叫んでいる彼女を観察していた。そりゃこんだけ叫んでいたらこのジェットコースターを作った人は喜ぶだろうなと言わんばかりの絶叫をしている。さすがに余裕はないらしく、思考も「高い」と「速い」「まだあるの!?」の三単語がミックスされているのみだった。
「……いやあ、すごかったね」
「そうだな」
突風を受けてぼさついた彼女の髪を、シンは直してやる。
「あっ、ありがとう。ごめんね」
「気にすんなって」
(優しい……好き……あっ五劫の擦り切れ海砂利水魚の……)
はっとしたように寿限無を唱えだす彼女が面白くて、笑ってしまわないようにシンは腹筋に力を入れた。そもそも思考を読むまでもなく分かりやすく変わる彼女の表情が、シンは好きだった。
「あのお化け屋敷、エリア最大級なんだって」
図らずも以前と同じルートになっていることにシンは苦笑しながらも、はいはいとお化け屋敷に向かって歩を進めた。
進行上開けなければならないロッカーを開けると、案の定バァ!と両手を上げた幽霊役のキャストが現れた。今度は声も出せずシンの腕に彼女はしがみつく。ある程度気配で来ることが分かっていたシンはそこまでの驚きはなく、ただ(これがデートはお化け屋敷に入るものだっていう理由か……)と感動していた。通路へ戻り、落ち着いた彼女はシンの腕に抱き着いたままなことに気付かず、きらきらした顔でシンを見上げる。
「怖いの平気なんだ、頼もしいね……」
「お、おう」
(雲来松……照れてるのかな、かわいいな)
正直どんどん寿限無がぶつ切りになっているが、それを指摘するのは野暮というものだろう。言いたいことがありそうなときにちょっと意識を覗くいつもよりも、むしろ彼女の心を覗いているシンは明快な好意をぶつけられどんどん照れ臭くなっている。気持ちを切り替えるように、彼は進行方向を指さした。
「ほら、あともう少しっぽいから、行こう」
彼女がどうしたいかを、シンがあえて聞いてやると嬉しそうに彼女は答える。それが楽しくてシンはついつい何でも言うことを聞いてやってしまう。大体彼女の要望なんて日頃の坂本からの無茶ぶりに比べれば可愛いものだから苦にもならない。
「あっ! シンくんの乗りたいやつ、私聞いてない」
これじゃあ結局いつもと同じだよ、という鳴き声を読み取ったシンはハッと目を見開く。たしかにこれではシンが先回りしているか彼女が口に出しているかの違いしかない。うーん、とシンは辺りを見回す。
「観覧車……とか?」
閉園間際というにはまだ少し早い時間だからか、観覧車は比較的空いていた。横に座るか向かい合って座るかの僅かな逡巡があり、結局向かい合って座ることになる。なにせこんな密室で二人きりになるのは初めてだ。彼女の緊張がシンにも伝わっている。なんならシンは初めて人を殺したときよりも緊張しているかもしれなかった。黙り込む二人をよそに、観覧車は上へと進んでいく。最高点に到達する少し前で、彼女がシンの名前を呼んだ。意識を読もうとしたシンの目が見開かれるのを、彼女は静止する。
「ストップ!」
シンは無意識にホールドアップの体勢をとる。すわついに気味悪がられるかと彼は不安になった。しかし彼女は心配そうな、不安そうな顔をシンに向けた。
「そんなに気を遣ってくれて、疲れない?」
シンくんの優しいところは好きだけど、別に何でも言うこと聞いてくれるから好きになったわけじゃないし……と彼女が訥々と話す。
「べつに、オレがやりたいからやってるだけで……喜んでくれるのは嬉しいし……別に大変じゃないし……」
両手を上げたまま釈明するシンは、坂本が葵や花のために奔走していることに改めてシンパシーを覚え、また尊敬を深くした。
「本当に?」
席を立って身を乗り出した彼女にじとりと睨まれたシンはブンブン首を縦に振る。
「なら良し!」
そのまま彼女はシンに顔を近づけて、シンの唇の端に自分の唇を寄せた。そしてすぐ離れ、照れから窓の外に視線を移す。何かやりたがっていることは分かっていたため、シンはあえて動かなかったがむしろ直接口にされるよりも恥ずかしいかもしれないと思い、彼女と反対側の景色を眺めるふりをする。とっくに頂点を過ぎた観覧車はどんどん地面に近付いている。降りる間際にでもどうにかやりかえそうとシンは画策している。
「ルーちゃん、どうすればいいかなぁ」
「好きにさせときなヨ」
誰も来ないのをいいことに、レジカウンターを挟んだ彼女とルーはだらだらと恋バナに興じていた。性格には一方的に彼女がシンとの惚気を聞かせるだけであるが。ポテトチップス二袋で買収されたルーはコンソメとのり塩を交互につまみながら適当に答えた。実際それしか言うことがないからである。坂本夫妻を見ているだけでも、相思相愛の人間同士の間に口を挟むだけ無駄なことは重々理解できるからだ。ただ、彼女も彼女なりに真剣である。彼女に尽くしすぎて疲弊して別れた、というサンプルを身近な友人で見てしまった彼女は我が身を振り返り、そして血の気が引いたからだ。手段は選んでいられない、と彼女は財布を出す。
「ルーちゃん、そろそろ甘いものも食べたいんじゃない?」
にやり、と二人は笑い合った。
プリンを食べ終わり、またポテトチップスをぱりぱり食べ始めたルーはそういえば、と指を舐めた。
「うちのコン……身内とシンでババ抜きしたとき、ウ……ちの身内の思考を読もうとして失敗してたネ」
「詳しく!」
うーん、と拭いた指で眉間をぐりぐりとこすってルーはそのときのことを思い出して彼女に説明する。
「……なるほど、言語化された思考を読んでるだけか」
でも鼻血を出して動けなくなるのは困るなぁ、と彼女は腕を組む。
「一個のことしか考えない……とか?」
袋の底にたまったポテトチップスの欠片を集めながら、ルーは何気なく口にする。
「ルーちゃん」
彼女の声があまりにも真剣だから、ルーは身構える。
「ルーちゃん、天才かも!」
中々ない褒められ方をした理由は分からないが、そうでしょとルーは口の周りにのりを付けたまま胸を張った。
数日後、彼女はシンと東京シュガーパークへ来ていた。坂本商店に身を寄せてすぐに大立ち回りをした場所のため、シンにとってはある意味思い出深い場所である。楽しみだねぇ、と笑う彼女に少し違和感を感じて、シンは意識を集中させる。
(寿限無寿限無……)
「は?」
「どうしたの?」
あぁいや……とシンは適当にごまかして、何かの間違いかと思いもう一度彼女の思考に意識を向ける。
(パイポパイポパイポのうわ顔良!)
思考を追うために、シンが顔を覗き込んだことに彼女は気が付いてぼっと顔を赤らめる。
(じゃなくて……えーと……パイポパイポ……)
どうやら、彼女は本当に寿限無を唱えているらしい(寿限無については、花と一緒に見た教育テレビで知った)。なぜかまでは分からないシンは首をかしげながらも、行こうかと彼女の手を引いた。
(ポンポ手を繋いでくれた!嬉しい)
はにかんだ彼女が、思い直したようにぷるぷると頭を振った。
(だめ、今日はシンくんに気を遣わせないようにしないと……寿限無寿限無……)
なるほど、とシンは合点した。もしかしたらルーあたりに入れ知恵をされたのかもしれないが、彼女程度が並行で考えていることくらいは普通に読み取ることができる。いじらしいことを……とシンが感動していることに彼女は気が付いていない。
「何から乗る?」
あえてシンが言葉にして訊いてやると、彼女は嬉しそうな顔をした。
「どうしよう、空いてるうちにジェットコースターとか?」
「絶叫系平気なんだ」
「ここのやつくらいなら!」
前に友達と来たとき、楽しかったんだよねと繋いだ手をぶんぶん振り回す彼女を、可愛いなとシンは思う。それにジェットコースターに振り回されても寿限無を唱え続けられるのかが気になってもいた。
「っワ゛ァァァァァ!」
正直もっと死ぬような目に遭っているシンは、前来た時よりも心配がなくていいなと呑気に考えながら、隣で叫んでいる彼女を観察していた。そりゃこんだけ叫んでいたらこのジェットコースターを作った人は喜ぶだろうなと言わんばかりの絶叫をしている。さすがに余裕はないらしく、思考も「高い」と「速い」「まだあるの!?」の三単語がミックスされているのみだった。
「……いやあ、すごかったね」
「そうだな」
突風を受けてぼさついた彼女の髪を、シンは直してやる。
「あっ、ありがとう。ごめんね」
「気にすんなって」
(優しい……好き……あっ五劫の擦り切れ海砂利水魚の……)
はっとしたように寿限無を唱えだす彼女が面白くて、笑ってしまわないようにシンは腹筋に力を入れた。そもそも思考を読むまでもなく分かりやすく変わる彼女の表情が、シンは好きだった。
「あのお化け屋敷、エリア最大級なんだって」
図らずも以前と同じルートになっていることにシンは苦笑しながらも、はいはいとお化け屋敷に向かって歩を進めた。
進行上開けなければならないロッカーを開けると、案の定バァ!と両手を上げた幽霊役のキャストが現れた。今度は声も出せずシンの腕に彼女はしがみつく。ある程度気配で来ることが分かっていたシンはそこまでの驚きはなく、ただ(これがデートはお化け屋敷に入るものだっていう理由か……)と感動していた。通路へ戻り、落ち着いた彼女はシンの腕に抱き着いたままなことに気付かず、きらきらした顔でシンを見上げる。
「怖いの平気なんだ、頼もしいね……」
「お、おう」
(雲来松……照れてるのかな、かわいいな)
正直どんどん寿限無がぶつ切りになっているが、それを指摘するのは野暮というものだろう。言いたいことがありそうなときにちょっと意識を覗くいつもよりも、むしろ彼女の心を覗いているシンは明快な好意をぶつけられどんどん照れ臭くなっている。気持ちを切り替えるように、彼は進行方向を指さした。
「ほら、あともう少しっぽいから、行こう」
彼女がどうしたいかを、シンがあえて聞いてやると嬉しそうに彼女は答える。それが楽しくてシンはついつい何でも言うことを聞いてやってしまう。大体彼女の要望なんて日頃の坂本からの無茶ぶりに比べれば可愛いものだから苦にもならない。
「あっ! シンくんの乗りたいやつ、私聞いてない」
これじゃあ結局いつもと同じだよ、という鳴き声を読み取ったシンはハッと目を見開く。たしかにこれではシンが先回りしているか彼女が口に出しているかの違いしかない。うーん、とシンは辺りを見回す。
「観覧車……とか?」
閉園間際というにはまだ少し早い時間だからか、観覧車は比較的空いていた。横に座るか向かい合って座るかの僅かな逡巡があり、結局向かい合って座ることになる。なにせこんな密室で二人きりになるのは初めてだ。彼女の緊張がシンにも伝わっている。なんならシンは初めて人を殺したときよりも緊張しているかもしれなかった。黙り込む二人をよそに、観覧車は上へと進んでいく。最高点に到達する少し前で、彼女がシンの名前を呼んだ。意識を読もうとしたシンの目が見開かれるのを、彼女は静止する。
「ストップ!」
シンは無意識にホールドアップの体勢をとる。すわついに気味悪がられるかと彼は不安になった。しかし彼女は心配そうな、不安そうな顔をシンに向けた。
「そんなに気を遣ってくれて、疲れない?」
シンくんの優しいところは好きだけど、別に何でも言うこと聞いてくれるから好きになったわけじゃないし……と彼女が訥々と話す。
「べつに、オレがやりたいからやってるだけで……喜んでくれるのは嬉しいし……別に大変じゃないし……」
両手を上げたまま釈明するシンは、坂本が葵や花のために奔走していることに改めてシンパシーを覚え、また尊敬を深くした。
「本当に?」
席を立って身を乗り出した彼女にじとりと睨まれたシンはブンブン首を縦に振る。
「なら良し!」
そのまま彼女はシンに顔を近づけて、シンの唇の端に自分の唇を寄せた。そしてすぐ離れ、照れから窓の外に視線を移す。何かやりたがっていることは分かっていたため、シンはあえて動かなかったがむしろ直接口にされるよりも恥ずかしいかもしれないと思い、彼女と反対側の景色を眺めるふりをする。とっくに頂点を過ぎた観覧車はどんどん地面に近付いている。降りる間際にでもどうにかやりかえそうとシンは画策している。
