吸死
ジョンは決意した。必ずこの若い吸血鬼と大切な主の関係を成就させねばならぬと決意した。ジョンにはひとの恋愛は分からぬ。ジョンはアルマジロである。使い魔として、ドラルクの作ったご飯を食べ、可愛がられて暮らしてきた。そうであるので、主人の幸せに対しては人一倍に敏感であった。主人の幸せは自分の幸せであるし、ジョンだってそもそもこの若い吸血鬼――なにせジョンより年下である――のことは割と気に入っていた。
元々、彼女はドラドラちゃんねるのリスナーであった。彼女のバイトしている洋菓子屋に来たジョンに、意を決したような顔の彼女が話しかけてきたのだ。
「あの、ドラドラちゃんねるいつも観てます。ドラルクさんのゲームのチョイスとか、トークとか好きで。その、よろしくお伝えください」
そう言ってマドレーヌをおまけしてくれた彼女をジョンは気に入ったのだ。新横浜に来て間もない頃であったので、ドラドラちゃんねるのファンに話しかけられるのも初めてであった。さらに、自分でいうのもなんだがその可愛らしさでもてはやされるジョンではなく、主たるドラルクのことを褒めてくれたのも気分が良かった。だからジョンも嬉しくなって、そのケーキ屋で彼女とドラルクを引き合わせたのだった。その後、ケーキ屋のケーキに対抗したドラルクがケーキを作り、ジョンのついでに彼女を招待した。彼女が素直にケーキを褒めそやすからドラルクもいい気になり、それから交流が深まっていったのだ。ドラルクに何か菓子や食事を作ってもらったり、彼女が流行りのゲームをドラルクとプレイしたり。あるいは吸血鬼としてはまだ未熟な彼女に、(対ロナルドとは違って)ちゃんとした年かさの吸血鬼に対してのマナーを教えたこともあった。聞けば、彼女は自分の血族とはかつて何かがあったらしく疎遠だという。だから助かりました、と笑う彼女が帰ったあと、ドラルクがぽそりと「そうであるならばうちの一族に迎え入れても構わない」と言っていたのをジョンはちゃんと聞いていた。彼女を送り出す際に身だしなみを整えてやったドラルクの指が、彼女の首筋をかすめたときに二人とも赤面していたことも賢いアルマジロは見ている。
今、ジョンは彼女とたまたま道で出会って一緒にお茶をしている。その程度にはジョンとも仲が良いのだ。ヌン、とジョンは彼女に話しかけた。能力のひとつとして、動物の言葉が分かる彼女はジョンの言葉を聞いて慌てたように手を振った。
「いや、私なんかがジョンさんとドラルクさんの間に挟まるなんて恐れ多すぎますよ! さながら百合に挟まる男のように……」
「ヌン!?」
流れが変わったことをジョンは悟る。別にジョンは「自分はこれからもご主人と仲良くしてほしいし、そうであれば自分も嬉しい。ご主人もあなたのことを気に入っているようだがあなたはどうか」というようなことを言っただけである。いや、もう少し恋愛的な意味も含ませたかもしれないが。
「だってジョンさんはその小さな体で、まだ使い魔でもないときに世界をほとんど一周してまでドラルクさんを追いかけたじゃないですか。そんな深い愛情にとても敵うことはできないですよ」
ジョンの困惑は深まる。そもそも愛とかいうものは比べるものではない。それにジョンは「あなたとご主人が仲良くしてくれれば嬉しい」と言ったのであって、それは彼女がドラルクとジョンの関係を尊重してくれているのと同じようなことではないか。なれば、やっぱりますます彼女であればドラルクと良い仲になってほしい気がする。ジョンは、どうすれば彼女がジョンの気持ちや要望を理解してくれるのかを考えるため、その小さな頭をフル回転させるのであった。
元々、彼女はドラドラちゃんねるのリスナーであった。彼女のバイトしている洋菓子屋に来たジョンに、意を決したような顔の彼女が話しかけてきたのだ。
「あの、ドラドラちゃんねるいつも観てます。ドラルクさんのゲームのチョイスとか、トークとか好きで。その、よろしくお伝えください」
そう言ってマドレーヌをおまけしてくれた彼女をジョンは気に入ったのだ。新横浜に来て間もない頃であったので、ドラドラちゃんねるのファンに話しかけられるのも初めてであった。さらに、自分でいうのもなんだがその可愛らしさでもてはやされるジョンではなく、主たるドラルクのことを褒めてくれたのも気分が良かった。だからジョンも嬉しくなって、そのケーキ屋で彼女とドラルクを引き合わせたのだった。その後、ケーキ屋のケーキに対抗したドラルクがケーキを作り、ジョンのついでに彼女を招待した。彼女が素直にケーキを褒めそやすからドラルクもいい気になり、それから交流が深まっていったのだ。ドラルクに何か菓子や食事を作ってもらったり、彼女が流行りのゲームをドラルクとプレイしたり。あるいは吸血鬼としてはまだ未熟な彼女に、(対ロナルドとは違って)ちゃんとした年かさの吸血鬼に対してのマナーを教えたこともあった。聞けば、彼女は自分の血族とはかつて何かがあったらしく疎遠だという。だから助かりました、と笑う彼女が帰ったあと、ドラルクがぽそりと「そうであるならばうちの一族に迎え入れても構わない」と言っていたのをジョンはちゃんと聞いていた。彼女を送り出す際に身だしなみを整えてやったドラルクの指が、彼女の首筋をかすめたときに二人とも赤面していたことも賢いアルマジロは見ている。
今、ジョンは彼女とたまたま道で出会って一緒にお茶をしている。その程度にはジョンとも仲が良いのだ。ヌン、とジョンは彼女に話しかけた。能力のひとつとして、動物の言葉が分かる彼女はジョンの言葉を聞いて慌てたように手を振った。
「いや、私なんかがジョンさんとドラルクさんの間に挟まるなんて恐れ多すぎますよ! さながら百合に挟まる男のように……」
「ヌン!?」
流れが変わったことをジョンは悟る。別にジョンは「自分はこれからもご主人と仲良くしてほしいし、そうであれば自分も嬉しい。ご主人もあなたのことを気に入っているようだがあなたはどうか」というようなことを言っただけである。いや、もう少し恋愛的な意味も含ませたかもしれないが。
「だってジョンさんはその小さな体で、まだ使い魔でもないときに世界をほとんど一周してまでドラルクさんを追いかけたじゃないですか。そんな深い愛情にとても敵うことはできないですよ」
ジョンの困惑は深まる。そもそも愛とかいうものは比べるものではない。それにジョンは「あなたとご主人が仲良くしてくれれば嬉しい」と言ったのであって、それは彼女がドラルクとジョンの関係を尊重してくれているのと同じようなことではないか。なれば、やっぱりますます彼女であればドラルクと良い仲になってほしい気がする。ジョンは、どうすれば彼女がジョンの気持ちや要望を理解してくれるのかを考えるため、その小さな頭をフル回転させるのであった。
