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両面宿儺がまだかろうじて「化け物じみた人間」である頃の話だ。その日もまた、彼は孤独であった。夏の夕でいい加減傾きかけた陽光に目を細めながら、宿儺は慣れぬ道を歩いていた。その道の脇にある屋敷の塀に破れ目があることに彼は気がつく。当時の若い男どもは連れたってそのような穴を覗き、どこそこの娘が美人だとか噂をしたものだ。宿儺はそれを冷笑していた。この日に限ってその小さな穴に目を押し当てたのは、まったくの気まぐれであった。やはり、何の意味もないではないかと嗤うためだったかもしれぬ。
陽光を取り込むために少し巻き上げられた簾の向こうに、女たちが何か読み物をしているのが見えた。真ん中にいるのがこの家の娘であろう。伏せた目や所作はいかにも貴族の娘という風情で、宿儺はつまらんと舌打ちをした。それに呼ばれるように、強い風が吹く。それは病を運ぶような嫌な類であることが、宿儺には分かった。簾を巻き上げんばかりの強風に侍女たちは慌てふためいた様子であったが、その娘だけはすっと顔を上げ、吹き付ける風に目を細める様子もない。それどころか唇がうっすらほころんでいるのに、宿儺は気が付いた。
(ただの人間の癖にな)
政治の場で争ううちに、そのような性質になる人間を宿儺は飽きるほど見てきたが、生来の気質として持ち合わせている人間はやや珍しかった。普段はそれをおくびにも出さずにとぼけているのだろう。寸の間の暇つぶしにはなった、と宿儺は破れ目から顔を離した。それきりのことであり、すぐに記憶の片隅に埋もれてしまった。
虎杖悠仁の視界を通じてある女を知覚した瞬間、宿儺はふと千年以上前に、大したことない記憶を思い起こした。冷たい風は落ち葉を巻き上げて、虎杖とその女に吹き付ける。補助監督だとかいうその女は、スマートフォンに目を落としていたが、顔を上げて風をまともに受けた。その目に宿った、紙吹雪のようにすべてを手放してしまいそうな明るい厭世感に宿儺は既視感があった。やはりあの魂の本質はそこなのか、と彼は呆れる。それは気付いてしまった自分にも向いていた。
(大した因果もなかろうに)
そう彼は思いかけたが、今自分が宿っている肉体の心拍数が上がったことに気が付いてほくそ笑む。なるほど、これか。そう考える宿儺に気が付くはずもなく、虎杖はもじもじと女に話しかける。少しでも共にいる時間を引き延ばしたいのだろう。ここで自分が女を縊り殺したらさぞ愉快だろうな、と宿儺は想像した。所詮はその程度の情であった。
陽光を取り込むために少し巻き上げられた簾の向こうに、女たちが何か読み物をしているのが見えた。真ん中にいるのがこの家の娘であろう。伏せた目や所作はいかにも貴族の娘という風情で、宿儺はつまらんと舌打ちをした。それに呼ばれるように、強い風が吹く。それは病を運ぶような嫌な類であることが、宿儺には分かった。簾を巻き上げんばかりの強風に侍女たちは慌てふためいた様子であったが、その娘だけはすっと顔を上げ、吹き付ける風に目を細める様子もない。それどころか唇がうっすらほころんでいるのに、宿儺は気が付いた。
(ただの人間の癖にな)
政治の場で争ううちに、そのような性質になる人間を宿儺は飽きるほど見てきたが、生来の気質として持ち合わせている人間はやや珍しかった。普段はそれをおくびにも出さずにとぼけているのだろう。寸の間の暇つぶしにはなった、と宿儺は破れ目から顔を離した。それきりのことであり、すぐに記憶の片隅に埋もれてしまった。
虎杖悠仁の視界を通じてある女を知覚した瞬間、宿儺はふと千年以上前に、大したことない記憶を思い起こした。冷たい風は落ち葉を巻き上げて、虎杖とその女に吹き付ける。補助監督だとかいうその女は、スマートフォンに目を落としていたが、顔を上げて風をまともに受けた。その目に宿った、紙吹雪のようにすべてを手放してしまいそうな明るい厭世感に宿儺は既視感があった。やはりあの魂の本質はそこなのか、と彼は呆れる。それは気付いてしまった自分にも向いていた。
(大した因果もなかろうに)
そう彼は思いかけたが、今自分が宿っている肉体の心拍数が上がったことに気が付いてほくそ笑む。なるほど、これか。そう考える宿儺に気が付くはずもなく、虎杖はもじもじと女に話しかける。少しでも共にいる時間を引き延ばしたいのだろう。ここで自分が女を縊り殺したらさぞ愉快だろうな、と宿儺は想像した。所詮はその程度の情であった。
