ゲーム作品
「うわっ! お兄さん顔真っ赤だよ!?」
「はあ……」
そう颯に言われたナマエは、気の抜けた返事をした。炎天下のこの季節でなおかつ配達業だというのに、車のエアコンの調子が悪くなったのだ。窓を開けてどうにかやり過ごそうとしたが、目的地のウィズダムに着いたナマエの顔は真っ赤に茹で上がっていた。注文された消耗品を無事届けることができて、力が抜けたのかもしれない。颯に押されて、上品な革張りのソファにナマエは崩れるように座る。調子が悪いと自覚した瞬間本当に目の前がぐらぐらと揺れた。堪えるように、ナマエは目を閉じる。冷房の風が一気に体を冷やしてゆく。大きく息を吸って、冷たい空気を肺に取り込む。
「やあ、来てたのかい」
すぐ近くで声がしたので、ナマエは驚いて目を開けた。見れば、テーブルを挟んで向かい側のソファに浄が腰かけている。ナマエは慌てて居住まいを正した。
「お、お邪魔してます……」
「楽にしていいよ、颯が引き留めたんだろ?」
「ありがとうございます、浄さんも颯さんも」
「気をつけてくれよ。明後日のアフターヌーンティーの予約、もう入れてるんだからさ」
つっけんどんな口調だったが、心配してくれているのが分かったナマエは気を付けますと笑った。ナマエと浄は甘党仲間である。提供期間ぎりぎりの限定パフェに、ナマエが浄を誘ったのがきっかけだった。ナマエはあらゆるスイーツを愛好しており、浄のアンテナ外の情報を共有してくれる。ナマエが教えてくれた店や限定メニューについて、浄はまずナマエと行くことにしていた。それは彼の情報網への敬意であったが、実際眼前のスイーツにのみ向き合うナマエを見るのは最近の浄には愉快だった。
「ちょっと待っててくれないか」
ナマエの肩から力が抜けたのを見て、浄は立ち上がる。バックヤードに消える彼の背中をナマエは見送った。そしてぼーっと残りの配達件数を数え、ルート取りを考え始めたところで急に頬に冷たいものが当てられた。
「うわ!?」
驚いたナマエが座ったまま上を見ると、端正な浄の顔が目に入った。ソファの背もたれごしに、いつの間にか背後に立っていたのだ。
「差し入れ」
頬に当てられたものは、よく冷えたペットボトルだった。
「ありがとうございます……」
浄の手からそれを受け取ったナマエは、感嘆のため息をつく。
(こういうのが嫌味なくできるから、ラウンジの仕事に向いてるんだろうな)
しかし、それはナマエの大いなる誤解であった。浄は、レディの許可なく首に触れるなどそんな不躾なことは――手や指先ならともかく――しない。また、他の男にこのような気安いアプローチをすることもそうそうない。ナマエが今の感想を声に出していれば浄はそう否定しただろう。ただ、ナマエに対してそんな例外行為をする理由はまだ、彼の中にもはっきりと形になっていなかった。
「はあ……」
そう颯に言われたナマエは、気の抜けた返事をした。炎天下のこの季節でなおかつ配達業だというのに、車のエアコンの調子が悪くなったのだ。窓を開けてどうにかやり過ごそうとしたが、目的地のウィズダムに着いたナマエの顔は真っ赤に茹で上がっていた。注文された消耗品を無事届けることができて、力が抜けたのかもしれない。颯に押されて、上品な革張りのソファにナマエは崩れるように座る。調子が悪いと自覚した瞬間本当に目の前がぐらぐらと揺れた。堪えるように、ナマエは目を閉じる。冷房の風が一気に体を冷やしてゆく。大きく息を吸って、冷たい空気を肺に取り込む。
「やあ、来てたのかい」
すぐ近くで声がしたので、ナマエは驚いて目を開けた。見れば、テーブルを挟んで向かい側のソファに浄が腰かけている。ナマエは慌てて居住まいを正した。
「お、お邪魔してます……」
「楽にしていいよ、颯が引き留めたんだろ?」
「ありがとうございます、浄さんも颯さんも」
「気をつけてくれよ。明後日のアフターヌーンティーの予約、もう入れてるんだからさ」
つっけんどんな口調だったが、心配してくれているのが分かったナマエは気を付けますと笑った。ナマエと浄は甘党仲間である。提供期間ぎりぎりの限定パフェに、ナマエが浄を誘ったのがきっかけだった。ナマエはあらゆるスイーツを愛好しており、浄のアンテナ外の情報を共有してくれる。ナマエが教えてくれた店や限定メニューについて、浄はまずナマエと行くことにしていた。それは彼の情報網への敬意であったが、実際眼前のスイーツにのみ向き合うナマエを見るのは最近の浄には愉快だった。
「ちょっと待っててくれないか」
ナマエの肩から力が抜けたのを見て、浄は立ち上がる。バックヤードに消える彼の背中をナマエは見送った。そしてぼーっと残りの配達件数を数え、ルート取りを考え始めたところで急に頬に冷たいものが当てられた。
「うわ!?」
驚いたナマエが座ったまま上を見ると、端正な浄の顔が目に入った。ソファの背もたれごしに、いつの間にか背後に立っていたのだ。
「差し入れ」
頬に当てられたものは、よく冷えたペットボトルだった。
「ありがとうございます……」
浄の手からそれを受け取ったナマエは、感嘆のため息をつく。
(こういうのが嫌味なくできるから、ラウンジの仕事に向いてるんだろうな)
しかし、それはナマエの大いなる誤解であった。浄は、レディの許可なく首に触れるなどそんな不躾なことは――手や指先ならともかく――しない。また、他の男にこのような気安いアプローチをすることもそうそうない。ナマエが今の感想を声に出していれば浄はそう否定しただろう。ただ、ナマエに対してそんな例外行為をする理由はまだ、彼の中にもはっきりと形になっていなかった。
