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姉という生き物はある種小さな母親である。まあ自分……あるいは妹たちの実際の「母親」はスタンダードなそれとはまた違ったが。とにかく黒神真黒はそう考えている。
「真黒くん、またお風呂にも入らず着替えずに寝たでしょ!」
大きな工具箱を片手にナマエがそう噛みつくのを、真黒は平気な顔でスルーした。この旧校舎の管理人は黒神真黒ということになっているが、それはあくまで書類上の話だ。この年季の入った建物が倒壊しないようにあちこち修理しているのは実際ナマエの方である。そして、建物のついでに真黒も世話を焼かれていた。本当は、真黒の面倒を見ることは業務に入っていないのだろう。しかし「内臓がいくつか足りない元同級生が自堕落な生活をしているのは見ていられない」とナマエ本人が言い張るので、それに押し切られた形だ。弟を持つ姉というものは、だらしない男を放っておけないらしかった。
「別に僕が一日くらい風呂に入らなかったところで、君に何か都合が悪いのかな」
「一緒の職場の人がそんな不潔な状態なの、嫌なんだけど。知りようがないならいいけど、あなたの洗濯物の処理してるの私だよ」
「してくれと頼んだ覚えはないけどね」
「職場に他人の脱ぎ散らかしが存在するのがいかに不快か、真黒くん分かる?」
「分かんないね」
ぷい、と真黒はそっぽを向いた。壁にかかっているめだかの写真を見て、気分転換を図ろうとしているのだ。
「ちょっと、真黒くん!」
ナマエは真黒のほうへ近付こうと踏み出す。その右足がかかったところが嫌な音を立てた。さすがの真黒も、反射的に手を伸ばす。しかし、ナマエの腕を掴めたはいいが勢い余ってナマエごと後ろに倒れた。ナマエが踏んだ床板が腐っていたらしい。
「あ、ありがとう……」
真黒に受け止められた形になったナマエは、素直に礼を言った。顔が近いことやナマエの太ももが自分の脇腹に当たるその感触を、真黒は意識しないように努めた。実際、他人との肉体接触よりも妹を視界に収めるほうが何万倍も興奮するのだ。自分の上に乗っかっている相手は愛しの妹に比べればミジンコのようだ。そう真黒は考える。
「……早くどいてくれる? 重いんだけど」
「は? 小学生の憎まれ口じゃん」
こっちはちゃんとお礼言ったのに……とナマエはぼやきながら起き上がる。
「もしダイエットしたくなったら、声かけてよ」
「ありがとう。真黒くんにだけは絶対頼まないからね」
投げ出した工具箱を持ちなおして、ナマエはため息をつく。
「今日は早く帰りたかったのに、仕事増やしちゃったな……」
「そうなの?」
「久々におに……兄がこっちに帰って来てるから、ご飯行くの」
言わなかった? とナマエは不服そうな顔をするが、真黒からすれば初耳である。いるか分からない神に誓うレベルで。
「……お兄ちゃんいたの?」
「いるけど?」
真黒の妹萌えが常軌を逸していることはナマエも勿論知っている。しかしそれは実の妹にのみ向けられるものだろうと理解していた。実際、「他人の妹より自分の妹」なのは真黒にとって世界の真理である。しかし今回に限ってはそうとも言い切れなかった。
「不覚だった……!!」
他人の妹だからこそ発生した「他人の前で"お兄ちゃん"呼びを自然にやりかけ、慌てて訂正する」という萌えを真黒はしみじみと噛みしめた。
「卑怯な!」
唇を噛む真黒を、ナマエは不気味そうに見る。なんとも思っていなかった相手が実は妹だった、というギャップを受けた真黒は、がくりと膝をついた。
(なるほど。だからさっき顔が近づいたとき、僕は少し動揺したのか)
彼は不可解な自分の心の動きを、いったんそう結論づけることにした。
「真黒くん、またお風呂にも入らず着替えずに寝たでしょ!」
大きな工具箱を片手にナマエがそう噛みつくのを、真黒は平気な顔でスルーした。この旧校舎の管理人は黒神真黒ということになっているが、それはあくまで書類上の話だ。この年季の入った建物が倒壊しないようにあちこち修理しているのは実際ナマエの方である。そして、建物のついでに真黒も世話を焼かれていた。本当は、真黒の面倒を見ることは業務に入っていないのだろう。しかし「内臓がいくつか足りない元同級生が自堕落な生活をしているのは見ていられない」とナマエ本人が言い張るので、それに押し切られた形だ。弟を持つ姉というものは、だらしない男を放っておけないらしかった。
「別に僕が一日くらい風呂に入らなかったところで、君に何か都合が悪いのかな」
「一緒の職場の人がそんな不潔な状態なの、嫌なんだけど。知りようがないならいいけど、あなたの洗濯物の処理してるの私だよ」
「してくれと頼んだ覚えはないけどね」
「職場に他人の脱ぎ散らかしが存在するのがいかに不快か、真黒くん分かる?」
「分かんないね」
ぷい、と真黒はそっぽを向いた。壁にかかっているめだかの写真を見て、気分転換を図ろうとしているのだ。
「ちょっと、真黒くん!」
ナマエは真黒のほうへ近付こうと踏み出す。その右足がかかったところが嫌な音を立てた。さすがの真黒も、反射的に手を伸ばす。しかし、ナマエの腕を掴めたはいいが勢い余ってナマエごと後ろに倒れた。ナマエが踏んだ床板が腐っていたらしい。
「あ、ありがとう……」
真黒に受け止められた形になったナマエは、素直に礼を言った。顔が近いことやナマエの太ももが自分の脇腹に当たるその感触を、真黒は意識しないように努めた。実際、他人との肉体接触よりも妹を視界に収めるほうが何万倍も興奮するのだ。自分の上に乗っかっている相手は愛しの妹に比べればミジンコのようだ。そう真黒は考える。
「……早くどいてくれる? 重いんだけど」
「は? 小学生の憎まれ口じゃん」
こっちはちゃんとお礼言ったのに……とナマエはぼやきながら起き上がる。
「もしダイエットしたくなったら、声かけてよ」
「ありがとう。真黒くんにだけは絶対頼まないからね」
投げ出した工具箱を持ちなおして、ナマエはため息をつく。
「今日は早く帰りたかったのに、仕事増やしちゃったな……」
「そうなの?」
「久々におに……兄がこっちに帰って来てるから、ご飯行くの」
言わなかった? とナマエは不服そうな顔をするが、真黒からすれば初耳である。いるか分からない神に誓うレベルで。
「……お兄ちゃんいたの?」
「いるけど?」
真黒の妹萌えが常軌を逸していることはナマエも勿論知っている。しかしそれは実の妹にのみ向けられるものだろうと理解していた。実際、「他人の妹より自分の妹」なのは真黒にとって世界の真理である。しかし今回に限ってはそうとも言い切れなかった。
「不覚だった……!!」
他人の妹だからこそ発生した「他人の前で"お兄ちゃん"呼びを自然にやりかけ、慌てて訂正する」という萌えを真黒はしみじみと噛みしめた。
「卑怯な!」
唇を噛む真黒を、ナマエは不気味そうに見る。なんとも思っていなかった相手が実は妹だった、というギャップを受けた真黒は、がくりと膝をついた。
(なるほど。だからさっき顔が近づいたとき、僕は少し動揺したのか)
彼は不可解な自分の心の動きを、いったんそう結論づけることにした。
