ゲーム作品
最近スラムデイズのねぐらには何世代も前……メンバー全員が生まれるより前に発売された家庭用テレビゲーム機が、遊びやすい場所に転がっている。ルーイの私物であるゲーム機やコントローラーたちは、持ち主の興味の移ろいに合わせてその顔ぶれを変える。しかし、かのレトロなテレビゲーム機はここしばらく、珍しいくらいの長期間そこに存在していた。
「ただいまー……」
静流が一晩と午前中飲み明かして帰ってくると、玄関に知らない靴が揃えられていた。睡眠不足とアルコールでぼろぼろの体を引きずりながら部屋を覗くと、ルーイともう一人……ランスでもQでもエージェントでもない、が熱心にテレビモニターに向かっていた。画面には何かのパズルゲームが映っていた。
「あ、ナマエちゃん来てたんだ」
「静流さん、お邪魔してまーす」
画面から目を離さずに、ナマエは静流に挨拶を返す。いわゆる「落ちもの系」のゲームらしい。画面には目まぐるしく、顔がついた赤だの黄色だのの玉が落ちたり消えたりしていた。ナマエ側が押されているように静流には見えるが、ルーイがおもむろに舌打ちをした。
「え?」
静流は首を傾げたが、すぐに理由は分かった。ナマエが操作しているほうが、怒涛の連鎖を始めたからである。水色の髪の少女が、画面の中で拳を突き上げて同じセリフを繰り返す。そしてルーイのほうに大量に小さい玉が送られ、茶髪のキャラクターが苦しそうな顔になった。程なくして、ナマエ側のほうに「かち」と可愛らしい平仮名で表示される。
「また、私の勝ち越しですね」
ちっ、とルーイはまた舌打ちをした。これが、ここしばらくレトロゲーム機が出しっぱなしになっている理由である。ルーイが珍しく外出した中古ゲームショップで、同じゲームが目当てだったナマエと出会ったらしい。結局ゲームはルーイの手に渡ったが、その条件が、ナマエもたまに遊ばせてもらうことらしかった。しかし、最近はそのゲームよりも、今プレイしているパズルゲームばかりだ。ルーイが勝ち越せるまでそれは続くだろう。
「ナマエちゃん、相変わらずめちゃくちゃ強いね……」
はは、とナマエは照れ笑いをする。
「この辺のレトロゲームだけですけどね」
「そうだよ、テトリスなんてボクにも勝てないのに」
帰ってきたのだろうか、Qが静流の後ろからひょっこり顔を出した。声色と、髪型を確認してからナマエは律儀に挨拶をする。
「……Qさん! どうもお邪魔してます」
Qはひらひらと手を振った。ルーイは仏頂面のまま、コントローラーを持ち直す。
「おいナマエ、もう一度やるぞ」
「いいですよ」
「ボクも対戦したーい」
次交代しますよ、とナマエは言う。Qは唇を尖らせる。
「ナマエと対戦したいんだけど。だってルーイより強いんだよ?」
ルーイはQの憎まれ口を黙殺する。静流は苦笑いしながら、冷たい水を飲もうと冷蔵庫から氷を取り出す。冷蔵庫の開閉音に気付いたナマエは、声を張り上げた。
「あ! そういえばスイカ、冷蔵庫に入ってます!」
「マジ? わざわざありがとね」
ほとんど生鮮食品が入った試しがない冷蔵庫に、半分に切られたスイカが静かに鎮座している。ヒュウ、と静流は口笛を吹いた。
「俺が切るよ」
「ありがとうございます!」
画面を見ながら、ナマエは静流に礼を言う。組んだパズルに着火して、連鎖が始まったのを見ながらナマエは呟く。
「ゲームしながらスイカ切ってもらってって、なんか夏休みみたいですね」
ふうん、とルーイの横でQは腕を組んだ。Qには「夏休み」の経験はない。けれど、今その「夏休み」みたいな時間を過ごすことは愉快だった。
「ただいまー……」
静流が一晩と午前中飲み明かして帰ってくると、玄関に知らない靴が揃えられていた。睡眠不足とアルコールでぼろぼろの体を引きずりながら部屋を覗くと、ルーイともう一人……ランスでもQでもエージェントでもない、が熱心にテレビモニターに向かっていた。画面には何かのパズルゲームが映っていた。
「あ、ナマエちゃん来てたんだ」
「静流さん、お邪魔してまーす」
画面から目を離さずに、ナマエは静流に挨拶を返す。いわゆる「落ちもの系」のゲームらしい。画面には目まぐるしく、顔がついた赤だの黄色だのの玉が落ちたり消えたりしていた。ナマエ側が押されているように静流には見えるが、ルーイがおもむろに舌打ちをした。
「え?」
静流は首を傾げたが、すぐに理由は分かった。ナマエが操作しているほうが、怒涛の連鎖を始めたからである。水色の髪の少女が、画面の中で拳を突き上げて同じセリフを繰り返す。そしてルーイのほうに大量に小さい玉が送られ、茶髪のキャラクターが苦しそうな顔になった。程なくして、ナマエ側のほうに「かち」と可愛らしい平仮名で表示される。
「また、私の勝ち越しですね」
ちっ、とルーイはまた舌打ちをした。これが、ここしばらくレトロゲーム機が出しっぱなしになっている理由である。ルーイが珍しく外出した中古ゲームショップで、同じゲームが目当てだったナマエと出会ったらしい。結局ゲームはルーイの手に渡ったが、その条件が、ナマエもたまに遊ばせてもらうことらしかった。しかし、最近はそのゲームよりも、今プレイしているパズルゲームばかりだ。ルーイが勝ち越せるまでそれは続くだろう。
「ナマエちゃん、相変わらずめちゃくちゃ強いね……」
はは、とナマエは照れ笑いをする。
「この辺のレトロゲームだけですけどね」
「そうだよ、テトリスなんてボクにも勝てないのに」
帰ってきたのだろうか、Qが静流の後ろからひょっこり顔を出した。声色と、髪型を確認してからナマエは律儀に挨拶をする。
「……Qさん! どうもお邪魔してます」
Qはひらひらと手を振った。ルーイは仏頂面のまま、コントローラーを持ち直す。
「おいナマエ、もう一度やるぞ」
「いいですよ」
「ボクも対戦したーい」
次交代しますよ、とナマエは言う。Qは唇を尖らせる。
「ナマエと対戦したいんだけど。だってルーイより強いんだよ?」
ルーイはQの憎まれ口を黙殺する。静流は苦笑いしながら、冷たい水を飲もうと冷蔵庫から氷を取り出す。冷蔵庫の開閉音に気付いたナマエは、声を張り上げた。
「あ! そういえばスイカ、冷蔵庫に入ってます!」
「マジ? わざわざありがとね」
ほとんど生鮮食品が入った試しがない冷蔵庫に、半分に切られたスイカが静かに鎮座している。ヒュウ、と静流は口笛を吹いた。
「俺が切るよ」
「ありがとうございます!」
画面を見ながら、ナマエは静流に礼を言う。組んだパズルに着火して、連鎖が始まったのを見ながらナマエは呟く。
「ゲームしながらスイカ切ってもらってって、なんか夏休みみたいですね」
ふうん、とルーイの横でQは腕を組んだ。Qには「夏休み」の経験はない。けれど、今その「夏休み」みたいな時間を過ごすことは愉快だった。
