ゲーム作品

「面白いもの、見せてあげよっか」
いつにもまして楽しそうで仕方ない、という顔でカフェに来たQに、エージェントは引っ張られてきた。不気味に渦巻くカオスワールドの扉をくぐると、その先は瀟洒な屋敷の廊下であった。
「ここは、どういうカオスワールドなんですか…………って、Qさんその格好どうしたんですか!?」
カオスワールドそのもののことよりも、エージェントはQの格好に驚いた。ややクラシカルなデザインではあるが、膝丈のスカートのメイド服を着用していたからである。丁寧なことに、猫耳のついたヘッドドレスまで一そろいだ。
「それはですね!」
頭上からの声に顔を上げると、豪奢なシャンデリアがゆらゆらと揺れていた。
「この世界を作ったご主人様がメイドを望んでいるからです」
「……というわけさ」
「いや、よく分からないですけど……」
気が付けば自分もメイド服を着せられている。しかも本式の、足首近くまで丈のあるクラシカルメイドだ。レオンを連れて来なくてよかったかもしれない、とエージェントは思う。Qはその場でくるりと一回転してみせた。後ろに結ばれた白いリボンも、Qの動きに合わせてひらりと揺れる。もともと可愛らしい顔立ちのQではあるが、袖口のフリルなどでQの骨ばった骨格がうまくカバーされていた。スカートの裾捌きも堂に入ったものである。
「げ、エージェントちゃん連れてきちゃったの?」
「あ、こんにちは」
話しているのを聞きつけたのか、デッキブラシを持った静流が向こうから歩いてきた。Qとスカート等の丈感は同じだが、袖の形など細部にデザインの違いが見える。また、ヘッドドレスには静流の髪色と同じ、ブラウンの猫耳が縫い付けられていた。エージェントには、静流もQと同じくいつもと変わらない態度に見える。
「静流さんも楽しんでます?」
「楽しんでるように見える?」
「ごめんなさい」
静流と知り合いになって以来一番低い声で返されたので、エージェントはすぐに謝った。
「Qがいつにもまして楽しそうだから嫌な予感はしたんだよね……」
スカートの裾をつまんで、静流はため息をつく。
「エージェントちゃんにこーんな格好見せたんだから、もう気が済んだでしょ?」
「えぇ~、まだひとり見せてないのがいるでしょ?」
かつん、とヒールの音を響かせて広い廊下をQは駆けていく。エージェントと静流も、慣れない靴でその後を追った。

「あ~! いたいた!」
やたら広い屋敷の隅の部屋のソファに、ルーイは大股開きに腰かけていた。ふんだんなパニエに遮られて下着こそ見えないが、品のない姿勢にQは眉を顰める。
「ちょっと、お行儀が悪いよ」
けっ、とルーイは舌打ちをする。着なれない服で、なおかつ布の重さがだるいらしい。ロシアンブルーを思わせる色の猫耳がルーイの動きに合わせて気だるそうに揺れる。
「じゃ、四人揃ったとこでもう一枚撮っときますか」
ルーイの周りに、Qや静流が身を寄せる。静流に手招きされて、エージェントもルーイの隣に座った。Qが腕を伸ばしてインカメラを構える。
「はい、チーズ」
パシャ、とシャッター音が静かな部屋に響く。Qが撮れた写真を確認してはいオッケー、と言う。立ち上がって、裾を直しながらエージェントはふとふと気がつく。
「……もう一枚ってことは、もうすでに撮ってるんですよね。そういうことなら、それを後で見せてくれればよかったのでは?」
「えぇ? どうせならキミが着たところも見たかったしさ」
「そうだよエージェントちゃん。犠牲者は多いほうがいいんだから」
ぺろ、とQは舌を出す。ルーイはため息をついて、気が済んだらさっさと片付けるぞと言った。
47/64ページ
スキ