その他
日頃同じブラックノワールの仲間たちに振り回されているタッサムも、休日ばかりは一人静かな時間を過ごしたいものである。規則正しい時間に起き、部屋の整頓なども終わらせた彼は午後の陽光降り注ぐ庭で優雅に読書をしていた。丁寧に淹れた紅茶に口をつけながら、タッサムは文字を追う。まったく完璧な休日であるはずだった。それを打ち破ったのは、石畳を駆ける騒がしい足音だった。落ち着きのないそのテンポに、タッサムは嫌というほど覚えがあった。反射で罵り言葉を叫びそうになり、どうにか堪える。そのような語彙はタキシードサムの騎士にはふさわしくないと思ったからだ。
「少しは落ち着けないのか、キミは」
帽子をかぶりなおして、タッサムは嘆息する。その嫌味ったらしい抗議を相手は意にも介さない。長い付き合いのためだ。どこを通ってきたのか、髪は乱れ肩は土埃で汚れていた。
「いや、早くこれを渡そうと思って」
無造作に差し出されたのは、一抱えもあるバラの花束であった。
「どこでこんなものを」
タッサムの問いに返された地名は、レッドブーケのものである。またそんな遠くまでふらふらと、とタッサムの眉間に皺が寄った。この妖精の放浪癖はいやというほど知っている。幼い頃、どこに行ったか分からなくなったのを探しに行くのはいつもタッサムの役割だった。
「バラくらいここにもあるだろう」
「でも、きれいじゃん」
「話がみ合ってない!」
確かに珍しい品種であるのだろう。夜明けのかすかに白んだ空の色をそのまま写し取ったような花びらを持つバラたちは、甘く爽やかな匂いがした。その前に持ってこられたのは何だったのか、タッサムは詳細に思い出せる。その前も、さらに前だって。もうタッサムがこの幼馴染を探しに行くことはない。その代わり毎回何かしらを土産と言って見せてくるのだ。大抵がくだらないものである。今回はましなほうだ。しかしバラの匂いもタッサムの怒りを和らげる効果はなかったようだ。刺々しい口調で彼は注意する。
「ただいまの一言くらい言ったらどうなんだ」
「はいはいただいま」
適当な返答に、タッサムは抗議しようとする。しかし花束を押し付けられるほうが先だった。
「これでジャム作って、アイスとかにするのもいいよな。そしたらサムも喜ぶんじゃないか」
「呼び捨てにするな!」
しかし主が喜ぶと言われれば無碍にできないのがタッサムである。どこまで読んだか分からなくなった本を閉じて、彼は立ち上がった。ジャムを作るのもアイスを作るのも、当然持ってきた本人に手伝わせるつもりである。
「少しは落ち着けないのか、キミは」
帽子をかぶりなおして、タッサムは嘆息する。その嫌味ったらしい抗議を相手は意にも介さない。長い付き合いのためだ。どこを通ってきたのか、髪は乱れ肩は土埃で汚れていた。
「いや、早くこれを渡そうと思って」
無造作に差し出されたのは、一抱えもあるバラの花束であった。
「どこでこんなものを」
タッサムの問いに返された地名は、レッドブーケのものである。またそんな遠くまでふらふらと、とタッサムの眉間に皺が寄った。この妖精の放浪癖はいやというほど知っている。幼い頃、どこに行ったか分からなくなったのを探しに行くのはいつもタッサムの役割だった。
「バラくらいここにもあるだろう」
「でも、きれいじゃん」
「話がみ合ってない!」
確かに珍しい品種であるのだろう。夜明けのかすかに白んだ空の色をそのまま写し取ったような花びらを持つバラたちは、甘く爽やかな匂いがした。その前に持ってこられたのは何だったのか、タッサムは詳細に思い出せる。その前も、さらに前だって。もうタッサムがこの幼馴染を探しに行くことはない。その代わり毎回何かしらを土産と言って見せてくるのだ。大抵がくだらないものである。今回はましなほうだ。しかしバラの匂いもタッサムの怒りを和らげる効果はなかったようだ。刺々しい口調で彼は注意する。
「ただいまの一言くらい言ったらどうなんだ」
「はいはいただいま」
適当な返答に、タッサムは抗議しようとする。しかし花束を押し付けられるほうが先だった。
「これでジャム作って、アイスとかにするのもいいよな。そしたらサムも喜ぶんじゃないか」
「呼び捨てにするな!」
しかし主が喜ぶと言われれば無碍にできないのがタッサムである。どこまで読んだか分からなくなった本を閉じて、彼は立ち上がった。ジャムを作るのもアイスを作るのも、当然持ってきた本人に手伝わせるつもりである。
