その他
たきながリコリコに出勤すると、カウンターに見たことのない女性が腰かけてミカと話していた。この店に来るのはほとんどが常連客であり、見たことのない人間はすぐにわかる。ただ、ミカと談笑しているところを見ると自分が来る前の常連だったのかもしれないし、もしくはDAの関係者かもしれない。どちらなのか判断できないたきなに、ミカが気が付いた。
「彼女もDAの職員だ」
「どうも~」
ひらひらと手を振る女は、ミズキと同じくらいの年だろうか。たきなはDAの本部で彼女を見かけたことはなかったが、千束なら知っているだろうか。そんなことを思いながらたきなは会釈して、着替えに行った。
たきなが着替えから戻ってくると、彼女は他の常連と談笑していた。
「ミズキちゃんには連絡したの?」
「してないんですよ、驚かせようと思って」
たきなに気が付いた彼女は、愛想よく「おみやげカウンターに置いてあるから、取っていってね」と声をかけてきた。見ればどこかの温泉饅頭のようだ。
「いただきます」
余ったらクルミにも持って行ってやろう、とたきなが思ったとき、どさりと入り口から重いものが落ちる音がする。
「なんでアンタが居んのよ……」
買い出しに行っていたミズキ(と千束)が帰ってきたのだった。音はミズキが持っていた買い物袋を落としたものだ。
「連れないことを言うなよ、ミズキ」
お久しぶりでーす、と呑気な挨拶をした千束は温泉饅頭を一つ取って包装を剥いて頬張る。
「勤務中ですよ」
「まぁまぁたきなもひとつ」
千束がたきなの口に温泉饅頭を押し込む。ミズキに詰め寄られた彼女も、同じようにミズキの口に温泉饅頭を押し込んだ。一口齧り取って、ミズキは抗議する。
「温泉饅頭で買収しようとすんな!」
「次は一緒に行こうね」
「会話しろ!」
ミズキが彼女に掴みかかっているのを眺めながら、たきなは千束に耳打ちする。
「あの人もDAの職員なんですよね?」
「うん、同期らしいよ。あの二人」
リコリス二人のひそひそ話を耳ざとく聞きつけた彼女は、そう! と二人を指さした。
「長い付き合いなんだよ、ミズキとは」
それなのに……と泣き真似をする彼女。手にはミズキが置きっぱなしにした結婚情報誌がある。
「婚活してどこにいるかも分からない理想の男を探すよりここにいる優しくて養ってくれてミズキのことを愛している女を選ぶほうがいいと思うんだけどね」
たきなは曖昧に微笑む。どちらに味方しても面倒な気配を感じたからだ。しかし慣れている千束は彼女にスマホの画面を見せてわざとらしい猫なで声を出す。
「見てくださいよ~、この前会員制のバーに男漁りに行こうとしてたんですよぉ」
「あんなにアツい一夜を過ごした私を差し置いて……」
「過ごしてない!!」
首をかしげるたきなに、常連客たちが聞いてもないのに説明してくれる。
「ふたりで宅飲みした翌朝、ふたりとも全裸だったんだって」
「ミズキちゃんは暑くて脱いだだけか盛大に吐いたかしたって言い張ってるらしいよ」
「それもどうなんだ」
!」
ミズキの叫びに笑い声が上がる。元凶の彼女は優雅にミカの淹れたコーヒーのおかわりを楽しんでいた。ミズキは大きなため息をついた。
「……で、今度はどこに付き合えばいいの?」
「渋谷にできたクラフトビールの店がね。面白そうだと思って」
「クラフトビールだぁ?」
「ほら、スカしたもの飲みやがってって顔するから直接誘いにきたんだよ。次の木曜は休みなんでしょ?」
ミズキと目が合った千束がVサインをした。手にはどこぞの洋菓子屋の紙袋を持っている。また買収されやがって、とミズキは舌打ちをした。
「……次はまず連絡しなさいよ」
「次もあるんだ、嬉しいね」
ばしん、とミズキが彼女の背中を叩く。それを合図に、常連や千束は今日の漫才はここまでかぁ、とまたそれぞれの会話や作業へ戻って行った。
「彼女もDAの職員だ」
「どうも~」
ひらひらと手を振る女は、ミズキと同じくらいの年だろうか。たきなはDAの本部で彼女を見かけたことはなかったが、千束なら知っているだろうか。そんなことを思いながらたきなは会釈して、着替えに行った。
たきなが着替えから戻ってくると、彼女は他の常連と談笑していた。
「ミズキちゃんには連絡したの?」
「してないんですよ、驚かせようと思って」
たきなに気が付いた彼女は、愛想よく「おみやげカウンターに置いてあるから、取っていってね」と声をかけてきた。見ればどこかの温泉饅頭のようだ。
「いただきます」
余ったらクルミにも持って行ってやろう、とたきなが思ったとき、どさりと入り口から重いものが落ちる音がする。
「なんでアンタが居んのよ……」
買い出しに行っていたミズキ(と千束)が帰ってきたのだった。音はミズキが持っていた買い物袋を落としたものだ。
「連れないことを言うなよ、ミズキ」
お久しぶりでーす、と呑気な挨拶をした千束は温泉饅頭を一つ取って包装を剥いて頬張る。
「勤務中ですよ」
「まぁまぁたきなもひとつ」
千束がたきなの口に温泉饅頭を押し込む。ミズキに詰め寄られた彼女も、同じようにミズキの口に温泉饅頭を押し込んだ。一口齧り取って、ミズキは抗議する。
「温泉饅頭で買収しようとすんな!」
「次は一緒に行こうね」
「会話しろ!」
ミズキが彼女に掴みかかっているのを眺めながら、たきなは千束に耳打ちする。
「あの人もDAの職員なんですよね?」
「うん、同期らしいよ。あの二人」
リコリス二人のひそひそ話を耳ざとく聞きつけた彼女は、そう! と二人を指さした。
「長い付き合いなんだよ、ミズキとは」
それなのに……と泣き真似をする彼女。手にはミズキが置きっぱなしにした結婚情報誌がある。
「婚活してどこにいるかも分からない理想の男を探すよりここにいる優しくて養ってくれてミズキのことを愛している女を選ぶほうがいいと思うんだけどね」
たきなは曖昧に微笑む。どちらに味方しても面倒な気配を感じたからだ。しかし慣れている千束は彼女にスマホの画面を見せてわざとらしい猫なで声を出す。
「見てくださいよ~、この前会員制のバーに男漁りに行こうとしてたんですよぉ」
「あんなにアツい一夜を過ごした私を差し置いて……」
「過ごしてない!!」
首をかしげるたきなに、常連客たちが聞いてもないのに説明してくれる。
「ふたりで宅飲みした翌朝、ふたりとも全裸だったんだって」
「ミズキちゃんは暑くて脱いだだけか盛大に吐いたかしたって言い張ってるらしいよ」
「それもどうなんだ」
!」
ミズキの叫びに笑い声が上がる。元凶の彼女は優雅にミカの淹れたコーヒーのおかわりを楽しんでいた。ミズキは大きなため息をついた。
「……で、今度はどこに付き合えばいいの?」
「渋谷にできたクラフトビールの店がね。面白そうだと思って」
「クラフトビールだぁ?」
「ほら、スカしたもの飲みやがってって顔するから直接誘いにきたんだよ。次の木曜は休みなんでしょ?」
ミズキと目が合った千束がVサインをした。手にはどこぞの洋菓子屋の紙袋を持っている。また買収されやがって、とミズキは舌打ちをした。
「……次はまず連絡しなさいよ」
「次もあるんだ、嬉しいね」
ばしん、とミズキが彼女の背中を叩く。それを合図に、常連や千束は今日の漫才はここまでかぁ、とまたそれぞれの会話や作業へ戻って行った。
