その他
セブン・リング・サーカスの団員は五人一組でひとつのトレーラーに寝泊まりしている。そうやって寝食を共にすることで結束を高め、難易度の高い技を成功させるというのが団長であるホワイトフェイスの方針だからだ。その組み分けは演者裏方、分け隔てないものである。
この街での公演も終わり、次の街へ向かう貴重な休息の日のことだ。よほど大きな街の長期間のものでない限り、その土地での公演が全て終わった夜は、各トレーラー内でささやかに打ち上げが開催されているのだった。シルバーキャット瞳やビーストの生活するトレーラーも例外ではない。危険と隣り合わせのショーが今回も無事に終わったことへのねぎらいと、次の公演へ気持ちを切り替える目的も兼ねて、酒を飲みたい者は飲み、いつもよりも賑やかに過ごしていた。
「えーっ!?」
シルバーキャットとビーストの黄色い声がふたつ重なって響き渡った。歓声の原因となったのは、彼女らと同室の小道具担当の言葉である。本人曰く、目立たないように努めているというその深いブラウンのボブが、傾げた首に合わせて揺れた。
「かわいい……ですか……」
ビーストが知らない言葉を聞いたかのように復唱する。シルバーキャットも腕を組んで怪訝な顔をした。
「そりゃ愛嬌があるタイプっていうのもいるけど、あいつはそういう質じゃないでしょ」
「そうかなぁ……」
思ったよりも同意を得られなかった彼女は、納得してもらえそうな具体的なエピソードを記憶から探す。ややあって、そうそう! と手を叩く。
「この前後ろでバゴ! みたいなすごい音がしたんだけど、振り向いたらシャモンさんがおでこ押さえてうずくまってたんだよね。ほら、設営のときって、一時的に天井が低い通路があったりするでしょ。そこにぶつけたらしいんだけど、背が高い人ってそういうの慣れてるだろうから何か意外だったんだよね。しかもあのシャモンさんがだよ? なんか可愛くない?」
思い出してはくすくす笑う彼女をよそに、ビーストとシルバーキャットは顔を見合わせた。そういえばこの街での公演前に、シャモン斎藤が額に作ったたんこぶをプリズムプリズムに笑われていたのを見かけたからだ。
「天才催眠術師ともあろうおまえが好きな子に見とれてそのザマとはな」
「うるさい」
プリズムプリズムの爆笑とシャモン斎藤のいつにない不機嫌な声色を二人とも聞いていたのだった。
もちろん目の前にいる当の本人にそのまま伝えるような野暮なことはしない。旅芸人の一座の中で惚れた腫れたは無いわけではないのだ。特にこのサーカスの仲間たちは皆一癖も二癖もあるが仲間想いであることにかけては保証できる。ただ、その良き仲間の恋路について応援よりも面白がる気持ちが勝っているのは、シルバーキャットもビーストも、プリズムプリズムと同じだった。
この街での公演も終わり、次の街へ向かう貴重な休息の日のことだ。よほど大きな街の長期間のものでない限り、その土地での公演が全て終わった夜は、各トレーラー内でささやかに打ち上げが開催されているのだった。シルバーキャット瞳やビーストの生活するトレーラーも例外ではない。危険と隣り合わせのショーが今回も無事に終わったことへのねぎらいと、次の公演へ気持ちを切り替える目的も兼ねて、酒を飲みたい者は飲み、いつもよりも賑やかに過ごしていた。
「えーっ!?」
シルバーキャットとビーストの黄色い声がふたつ重なって響き渡った。歓声の原因となったのは、彼女らと同室の小道具担当の言葉である。本人曰く、目立たないように努めているというその深いブラウンのボブが、傾げた首に合わせて揺れた。
「かわいい……ですか……」
ビーストが知らない言葉を聞いたかのように復唱する。シルバーキャットも腕を組んで怪訝な顔をした。
「そりゃ愛嬌があるタイプっていうのもいるけど、あいつはそういう質じゃないでしょ」
「そうかなぁ……」
思ったよりも同意を得られなかった彼女は、納得してもらえそうな具体的なエピソードを記憶から探す。ややあって、そうそう! と手を叩く。
「この前後ろでバゴ! みたいなすごい音がしたんだけど、振り向いたらシャモンさんがおでこ押さえてうずくまってたんだよね。ほら、設営のときって、一時的に天井が低い通路があったりするでしょ。そこにぶつけたらしいんだけど、背が高い人ってそういうの慣れてるだろうから何か意外だったんだよね。しかもあのシャモンさんがだよ? なんか可愛くない?」
思い出してはくすくす笑う彼女をよそに、ビーストとシルバーキャットは顔を見合わせた。そういえばこの街での公演前に、シャモン斎藤が額に作ったたんこぶをプリズムプリズムに笑われていたのを見かけたからだ。
「天才催眠術師ともあろうおまえが好きな子に見とれてそのザマとはな」
「うるさい」
プリズムプリズムの爆笑とシャモン斎藤のいつにない不機嫌な声色を二人とも聞いていたのだった。
もちろん目の前にいる当の本人にそのまま伝えるような野暮なことはしない。旅芸人の一座の中で惚れた腫れたは無いわけではないのだ。特にこのサーカスの仲間たちは皆一癖も二癖もあるが仲間想いであることにかけては保証できる。ただ、その良き仲間の恋路について応援よりも面白がる気持ちが勝っているのは、シルバーキャットもビーストも、プリズムプリズムと同じだった。
