ゲーム作品
外とは比較にならないくらいの冷気に包まれると、感じるのは寒さではなく痛みだった。無論、外も極点の寒さなのだが。油断した末端の人間が状況を完全に正しく把握できるのは難しい。しかし只事ではないのだろう。ひどい襲撃を受けたのだということだけは分かった。護身用に持っていた武器に手をかけたが、向ける間もなく氷漬けにされる。砕かれる一瞬に見えたのは自分の人生の走馬灯ではない。ただ激しい怒りで目の前が真っ赤になった。世界が、人理が焼却されてから最後のマスターとしてあの子どもにどれだけのものを背負わせたのか、それをやり遂げさせた――ただの魔術のまの字も知らないような子どもに――のか。ドクターや他の職員がどう思っているのか/思っていたのか知らない。でも私はやっとこれであの子どもに日常を返す準備を始められると思ったのだ。それなのに。せめて怒鳴りでもしたかったが唇は少しも動かなかった。
気が付いたら私は、がらんとした荒野で焚火に当たっていた。薪が爆ぜるかすかな音も聞こえるくらいには静かな場所だ。
「よお」
焚火を挟んだ向かい側に、いつの間にか人影が座っていた。気さくに話しかけてきたその顔には見覚えがある。しかしそんなに気さくにされる理由は分からなかった。
「……テスカトリポカ神」
自分の母国語にない名前を、舌をもつれさせながら呼ぶと彼はにやりと笑った。あの子が召喚したサーヴァントのひとり、いや一柱である。現代風の格好をしていたり、何かを始めるときにはわざわざ許可を取りにきたという噂は聞いている。カルデアに召喚された神の中では「まだ話が通じるほう」という評判であった。まぁそれは職員の間で交わされていたものであって、あの子やマシュは分け隔てなく接していただろうが。
「……どこです、ここ」
「ここは俺の楽園だ。俺がお前を呼んだ」
それだけの答えで十分だろ、とばかりに煙草を吹かすテスカトリポカ神。
「なぜ」
「お前がカルデアの襲撃で戦死したからだ」
「…………そんな立派なものじゃない、でしょう」
あの子を脅かすものへの腹立ちはあったし、もっと抵抗できる手段があればしただろう。けれど自分は何もできていない。手に取った武器の引き金を引くことすらできなかったのだ。私の反論を、目の前の神は鼻で笑った。
「俺の楽園は敗者専用でね」
なんだそれ、と思ったがここでは分からないことを調べるための端末も本も見当たらないようだった。ただ煙草と、焚火の煙のにおいだけがあった。頬に感じる炎の熱は、昔に兄に連れていかれたキャンプのことを思い出させた。
気が付いたら私は、がらんとした荒野で焚火に当たっていた。薪が爆ぜるかすかな音も聞こえるくらいには静かな場所だ。
「よお」
焚火を挟んだ向かい側に、いつの間にか人影が座っていた。気さくに話しかけてきたその顔には見覚えがある。しかしそんなに気さくにされる理由は分からなかった。
「……テスカトリポカ神」
自分の母国語にない名前を、舌をもつれさせながら呼ぶと彼はにやりと笑った。あの子が召喚したサーヴァントのひとり、いや一柱である。現代風の格好をしていたり、何かを始めるときにはわざわざ許可を取りにきたという噂は聞いている。カルデアに召喚された神の中では「まだ話が通じるほう」という評判であった。まぁそれは職員の間で交わされていたものであって、あの子やマシュは分け隔てなく接していただろうが。
「……どこです、ここ」
「ここは俺の楽園だ。俺がお前を呼んだ」
それだけの答えで十分だろ、とばかりに煙草を吹かすテスカトリポカ神。
「なぜ」
「お前がカルデアの襲撃で戦死したからだ」
「…………そんな立派なものじゃない、でしょう」
あの子を脅かすものへの腹立ちはあったし、もっと抵抗できる手段があればしただろう。けれど自分は何もできていない。手に取った武器の引き金を引くことすらできなかったのだ。私の反論を、目の前の神は鼻で笑った。
「俺の楽園は敗者専用でね」
なんだそれ、と思ったがここでは分からないことを調べるための端末も本も見当たらないようだった。ただ煙草と、焚火の煙のにおいだけがあった。頬に感じる炎の熱は、昔に兄に連れていかれたキャンプのことを思い出させた。
