ゲーム作品

▼パルデアの大穴について外部からの学生が考える
パルデア地方に来てから一ヶ月が経った。テーブルシティという学園都市というよりも学園を城に見立てた城下町のようなここは、住んでいる人間はほとんどあのアカデミーの関係者だ。門戸を広く開いているため学生が老若男女幅広くいるのもその一因といえる。
私の生まれた地方ではまだ旅立つまでに何年もあるような小さな子どもでも、ポケモンを連れて寮で生活しているような学生もいる。とにもかくにも学生や教員のバラエティの豊かさや、よく管理されている蔵書などは一ヶ月程度では把握できるはずもない。刺激に満ちた日々であった。そろそろ始まるであろう課外授業に向けて、最近はパルデアの地図を広げて計画を練っている。地図の真ん中にはぽっかりと一色に塗りつぶされた場所がある。紙面ですら嫌でも目に入るほどの大きさのそれは、どう見たって異様だ。
そりゃあどの土地にも険しい山々や深い洞窟、いつでも薄暗い不気味な森はあるものだ。しかし自分の知っているいずれの場所とも桁が違うように思えた。歴史の授業で、昔の王が宝の存在を信じて分け入ったが何も分からずそのあと破滅していったという話を聞いた。先生はあの大穴に興味があるようであったが、それ以外の日常であの大穴は話題にされない。課外授業では「危ないので行ってはいけません」という簡潔な注意喚起がされているだけだ。正直、反抗心に溢れた年頃の生徒はその程度の注意は聞かないのではないかと思う(学園の事故の記録を調べたが、そもそも近年のものは見つからなかった)。
私はまだテーブルシティくらいしかろくに知らないが、あんなに黒々と大口を開けた未知がいるのに、その隣で普通に生活をしているこの土地の人間に、私は今一番関心を抱いている。

▼砂漠でさまよう

砂嵐は止む様子がない。ぱちぱちと顔に当たる細かな砂粒に閉口しながら、さっきおぼろげに見えた物見塔を目指す。この天気だ、目指す方角はいつのまにか狂っているかもしれない。さきほど出くわしたヒポポタスとのバトルで、うっかり手から弾かれたあとまともに「じしん」に巻き込まれたロトムフォンはずっと沈黙している。使えた所で、こんな目印のないところではイキリンコタクシーも呼べないが。バトルはオリーニョがいればある程度なんとかはなるが、この砂嵐でバトルのたびに少しずつダメージは与えてしまう。ジリ貧状態に舌打ちをした口内もからからに乾いていて少し歯を擦り合わせただけでじゃりじゃりした感触がした。青空の街ではよく映える制服も砂埃にまみれてしまっている。ため息をつくために口を開ければまた砂が入ってくる。幸い水分はまだあるから落ち着くのだと自分に言い聞かせる。すぐそこに感じる苦痛に満ちた死の気配や、自分が死んだらオリーニョはどうなってしまうのかという不安から目をそらすためでしかない。ころころといくつも転がってくるアノクサを慌てて避ける。彷徨う魂が枯れ草に取り憑いたといわれているボケモンが砂漠にいるのは、妙な信憑性を持つ。今は肉体を持つ自分だが、ここで干からびて死んだらあぁなるのかもしれない。そんな馬鹿げた想像が、頭を振ってもこびりついて離れなかった。
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