ゲーム作品
「小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です」
岡村くんの音読が教室中に響いている。外から準備運動のかけ声が聞こえてくるからそれが少し邪魔だけど。私たちの国語の時間かあっちの体育の時間をずらしてくれないかな、と岡村くんが音読する時に思う。
今やっているのは物語だ。岡村くんの声と物語に出てくる澄んだ川底はぴったりあっている。この間、子ども向けに作られた、森の自然をテーマにした番組のナレーションをもふもふえんがやっていた。岡村くんの声はすっと入ってくるから、私はあの番組で森の木々が海を豊かにすることを覚えた。きっとこの物語の山も海を豊かにしているだろう、と挿し絵のカニをなぞりながら思う。
お仕事と同じ一生けん命さで岡村くんが授業でも音読していることは、岡村くんを知っている人ならみんな「やっぱりそうなんだね」って思うんじゃないだろうか。だからみんなが真剣に彼の声や歌を聞くんじゃないかと私は思う。このクラスはおとなしめの子が多く集まってるけど、それを差し引いても岡村くんが音読しているときはみんな静かに聞いている。日本中、もしかしたら世界中に向かって歌ったりする岡村くんの声が今は私たち38人(先生も入れて)のためだけにある。
少し開けられた窓から秋の風と体育のはしゃぎ声が入ってきた。読み手はもう岡村くんから交代しているから外がうるさくてもあんまり気にならない。
じきにストーブのスイッチが入り、そして受験があって、そしたらもう卒業だ。昨年卒業式には在校生代表で参加したけど自分達が卒業生になる実感はまだ全然わかない。
塾の先生たちは受験まであとどれくらいって授業の度に言ってくるけど、私はまだ直方体と立方体を組み合わせた立体の体積も求められない。学校の教室は直方体で塾の教室は立方体みたいだなと思っていたら昨日の授業は終わっていた。
お昼休みを過ぎるとこの教室は太陽の光がまぶしすぎるのでカーテンを閉めている。そのカーテンが揺れて私の足元には明るい日溜まりが出来ては消えていく。秋に窓際の席になってラッキーだった。今までで一番岡村くんとも席が近いし(とはいえ斜め後ろ前で班も違うんだけど)、ずっとこのままでいいなあと思ったりする。直方体の教室でずっと岡村くんの後ろ姿を斜め後ろから眺めたり、音読を聞いたりしていたい。受験する私とアイドルやってる岡村くんはきっと別々の中学に行くだろう。
クラスメート兼ファンとただのクラスメート、どちらが岡村くんにとって特別に感じるだろう。私は岡村くんと友達になれずじまいな気がする。だって今年はじめて同じクラスになったし、そもそも女子と男子だし。高学年でいきなり女子と男子が仲良くなるのは難しいことを私は知っている。仲良くできるのなんて物語の中だけだ。たとえば中学生とか高校生だったら違ったのかなあ、と私はため息をついた。授業が終わるまであと三十分だ。
岡村くんの音読が教室中に響いている。外から準備運動のかけ声が聞こえてくるからそれが少し邪魔だけど。私たちの国語の時間かあっちの体育の時間をずらしてくれないかな、と岡村くんが音読する時に思う。
今やっているのは物語だ。岡村くんの声と物語に出てくる澄んだ川底はぴったりあっている。この間、子ども向けに作られた、森の自然をテーマにした番組のナレーションをもふもふえんがやっていた。岡村くんの声はすっと入ってくるから、私はあの番組で森の木々が海を豊かにすることを覚えた。きっとこの物語の山も海を豊かにしているだろう、と挿し絵のカニをなぞりながら思う。
お仕事と同じ一生けん命さで岡村くんが授業でも音読していることは、岡村くんを知っている人ならみんな「やっぱりそうなんだね」って思うんじゃないだろうか。だからみんなが真剣に彼の声や歌を聞くんじゃないかと私は思う。このクラスはおとなしめの子が多く集まってるけど、それを差し引いても岡村くんが音読しているときはみんな静かに聞いている。日本中、もしかしたら世界中に向かって歌ったりする岡村くんの声が今は私たち38人(先生も入れて)のためだけにある。
少し開けられた窓から秋の風と体育のはしゃぎ声が入ってきた。読み手はもう岡村くんから交代しているから外がうるさくてもあんまり気にならない。
じきにストーブのスイッチが入り、そして受験があって、そしたらもう卒業だ。昨年卒業式には在校生代表で参加したけど自分達が卒業生になる実感はまだ全然わかない。
塾の先生たちは受験まであとどれくらいって授業の度に言ってくるけど、私はまだ直方体と立方体を組み合わせた立体の体積も求められない。学校の教室は直方体で塾の教室は立方体みたいだなと思っていたら昨日の授業は終わっていた。
お昼休みを過ぎるとこの教室は太陽の光がまぶしすぎるのでカーテンを閉めている。そのカーテンが揺れて私の足元には明るい日溜まりが出来ては消えていく。秋に窓際の席になってラッキーだった。今までで一番岡村くんとも席が近いし(とはいえ斜め後ろ前で班も違うんだけど)、ずっとこのままでいいなあと思ったりする。直方体の教室でずっと岡村くんの後ろ姿を斜め後ろから眺めたり、音読を聞いたりしていたい。受験する私とアイドルやってる岡村くんはきっと別々の中学に行くだろう。
クラスメート兼ファンとただのクラスメート、どちらが岡村くんにとって特別に感じるだろう。私は岡村くんと友達になれずじまいな気がする。だって今年はじめて同じクラスになったし、そもそも女子と男子だし。高学年でいきなり女子と男子が仲良くなるのは難しいことを私は知っている。仲良くできるのなんて物語の中だけだ。たとえば中学生とか高校生だったら違ったのかなあ、と私はため息をついた。授業が終わるまであと三十分だ。
