引いた線を消す
▼
ラーメンが食べたくなって手頃な全国チェーンの中華料理屋に入ったら、サテツさんがいた。目の前のからあげの山に夢中らしく、こちらには気付いていない。お仕事終わりなのだろうか、それともこれから仕事なのだろうか、あのいかついアームをつけたまま器用に箸を使っている。店内ポスターによると、期間限定メニューらしい。だが量からして複数人でシェアするものなのではないだろうか。まぁ退治人は体力勝負だろうけど。あの部活がえりの高校生が複数人で囲むような量が一人の胃袋に入るのか。人体の神秘だ。
私は味噌ラーメンとサイドメニューのからあげ(三個)を頼んでから、スマホをいじるふりをして彼の方を盗み見る。プライベートの彼はニコニコとからあげを次々に頬張っていく。連れ合いはいないようなので、自然に出た笑顔なのだろう。以前見た照れ笑いとはまた違った種類の表情だ。嫌いなものとかなさそうで結構なことである。もっと近くで見てみたいと思う。ところでからあげの横にチャーハンも配置されている。私も人並みには食べるが、私の3食分を彼は一回で食べてるんじゃないか。
▼
ごはんを食べてるサテツさんをもっと見たいという願いは思ったよりも早く叶うことになった。役所の職員向け食堂で彼の姿を見かけたからである。超大盛りのカレーが乗った盆を持った彼はよく目立つ。本人は自分を地味だと思っているようだがそんなことないだろう。失礼かもしれないから言えないけど。きょろきょろと席を探していたようだったから、私は彼の名前を呼んだ。ちょうど向かいの席が空いていたので。この食堂のメニューに超大盛りカレーあることは知っていたが頼んでる人を見るのは初めてだ。たしかレギュラーサイズの3人前相当だったか4人前相当だったか。
本日も講座よろしくお願いします、とか無難な会話をする。彼がカレーに気をとられて半分くらい上の空なこともある。ここのカレーは結構しっかり辛いので、うっすらと彼の額に汗が浮かんでいる。
「おいしそうに食べますね」
そうですか?と彼は一瞬手を止めてこちらを見た。唇の端に米粒がついている。手を伸ばしてそれをとってやりたいと思った。でも私たちはそういう距離が許されている関係ではない。
「別に接待とかそういうのじゃないんですけど、今度一緒にごはんでも行きませんか。」
そう口にしてから、そういえば彼の連絡先も知らないことに気がついた。
ラーメンが食べたくなって手頃な全国チェーンの中華料理屋に入ったら、サテツさんがいた。目の前のからあげの山に夢中らしく、こちらには気付いていない。お仕事終わりなのだろうか、それともこれから仕事なのだろうか、あのいかついアームをつけたまま器用に箸を使っている。店内ポスターによると、期間限定メニューらしい。だが量からして複数人でシェアするものなのではないだろうか。まぁ退治人は体力勝負だろうけど。あの部活がえりの高校生が複数人で囲むような量が一人の胃袋に入るのか。人体の神秘だ。
私は味噌ラーメンとサイドメニューのからあげ(三個)を頼んでから、スマホをいじるふりをして彼の方を盗み見る。プライベートの彼はニコニコとからあげを次々に頬張っていく。連れ合いはいないようなので、自然に出た笑顔なのだろう。以前見た照れ笑いとはまた違った種類の表情だ。嫌いなものとかなさそうで結構なことである。もっと近くで見てみたいと思う。ところでからあげの横にチャーハンも配置されている。私も人並みには食べるが、私の3食分を彼は一回で食べてるんじゃないか。
▼
ごはんを食べてるサテツさんをもっと見たいという願いは思ったよりも早く叶うことになった。役所の職員向け食堂で彼の姿を見かけたからである。超大盛りのカレーが乗った盆を持った彼はよく目立つ。本人は自分を地味だと思っているようだがそんなことないだろう。失礼かもしれないから言えないけど。きょろきょろと席を探していたようだったから、私は彼の名前を呼んだ。ちょうど向かいの席が空いていたので。この食堂のメニューに超大盛りカレーあることは知っていたが頼んでる人を見るのは初めてだ。たしかレギュラーサイズの3人前相当だったか4人前相当だったか。
本日も講座よろしくお願いします、とか無難な会話をする。彼がカレーに気をとられて半分くらい上の空なこともある。ここのカレーは結構しっかり辛いので、うっすらと彼の額に汗が浮かんでいる。
「おいしそうに食べますね」
そうですか?と彼は一瞬手を止めてこちらを見た。唇の端に米粒がついている。手を伸ばしてそれをとってやりたいと思った。でも私たちはそういう距離が許されている関係ではない。
「別に接待とかそういうのじゃないんですけど、今度一緒にごはんでも行きませんか。」
そう口にしてから、そういえば彼の連絡先も知らないことに気がついた。
