引いた線を消す
吸血鬼の多いこの地域では、市や区が主催する下等吸血鬼対策・駆除の講座がある。健康のためのストレッチ講座とか貸し菜園でのイベントみたいなものだ。その際退治人ギルドに講師や実演を頼んだりする。吸血鬼対策課の方々に頼むこともあるけど大体はギルドに頼む。この辺りは慣習的なものだろう。ギルドに依頼をすると、ほぼ毎回いらっしゃるのがこのサテツさんである。初めてお会いしたときは、体も大きいしちょっと怖い人なのだろうかと思ったが、腰の低い温和な人だった。今日の「お庭に下等吸血鬼の巣を作らないための知識と実践」の講座でも、参加者の皆さんの質問に辛抱強くお答えしていた。対下等吸血鬼の薬剤が多種多様な園芸植物にそれぞれ及ぼす影響なんて、退治人がいちいち覚えていなくてもいいのではないか。丁寧に受け答えするから時間が毎回押してしまうのが玉に瑕だ。
「スイマセン今日も時間すぎちゃって……」
「むしろこちらこそ、お忙しいのに申し訳ありませんでした」
「そんなん自分で調べろ」と言い返してトラブルになるよりも、時間が押すほうがマシである。言い返したりしなければこちらも止めやすいし。
「いや、少しでも皆さんのためになったならいいんですけど……」
本当に腰が低すぎて体の大きさを時々忘れてしまう。彼がこちらに目線を合わせるために背中を丸め気味なこともあるかもしれないが。
「あの、いつも本当に助かってるんです。サテツさんにお手伝いしていただいた講座、すごく評判がいいんです。うちの上司、最近はギルドの退治人のどなたか、ではなくサテツさんを名指しでお願いしてたりもするんです」
私の言葉に、サテツさんは一瞬ぽかんとした顔をしたあと、真っ赤になってありがとうございます、と笑った。笑顔がいいんだよな、この人。と思う。私も彼のように優しくあれればいいのに。
「スイマセン今日も時間すぎちゃって……」
「むしろこちらこそ、お忙しいのに申し訳ありませんでした」
「そんなん自分で調べろ」と言い返してトラブルになるよりも、時間が押すほうがマシである。言い返したりしなければこちらも止めやすいし。
「いや、少しでも皆さんのためになったならいいんですけど……」
本当に腰が低すぎて体の大きさを時々忘れてしまう。彼がこちらに目線を合わせるために背中を丸め気味なこともあるかもしれないが。
「あの、いつも本当に助かってるんです。サテツさんにお手伝いしていただいた講座、すごく評判がいいんです。うちの上司、最近はギルドの退治人のどなたか、ではなくサテツさんを名指しでお願いしてたりもするんです」
私の言葉に、サテツさんは一瞬ぽかんとした顔をしたあと、真っ赤になってありがとうございます、と笑った。笑顔がいいんだよな、この人。と思う。私も彼のように優しくあれればいいのに。
1/13ページ
